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小さくて大きなわがまま  作者: しがない竜
第1章3節 全ての始まり

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第43話 「白竜の怪しい会議」

「聞いてくれる? あっくん」


 セロンは頼み込んだ。あっくんは相変わらず前方を見て、振り向くことなく突き進んでいる。


「いいぞ。聞いてやる」


「ありがとう」


 セロンは静かに返して、盗み聞きした会議の内容を話し始めた。


「僕がもっと幼い頃の話なんだけどね。もう夜だったから自室で寝ていたんだけど、用を足しに起きて、外にある(かわや)に行ったんだ。その後、部屋に戻ろうとしたんだけど、家の裏の方から声が聞こえて来て、気になって裏口まで聞きに行ったんだよね。そしたら、家の裏に作ってある大きな岩の集会所から兄弟の(こも)った声が聞こえて来たんだ。夜なのに寝てなかったんだ」


 あっくんは反応せずに、ただ前を歩いているだけだった。それでも聞いてくれているのが分かっていたのでセロンは話を続けた。


「少し気になって、聞き耳を立てていたら僕の名前が出て来たんだ。『セロンについてこの場で多数決を取ります』って聞こえて来た。多分、プヨル兄ちゃんの声だと思うけど、どうだろう? ただ一つだけ言えるのは、他の皆も居たってことなんだ。皆で僕をどうするかについて話し合ってた」


「そしてその内容なんだけど、僕をどうするかについて、五つくらい考えてたみたいで、それぞれ順番に『セロン自身に決めてもらう』、『小さな町で暮らす』、『多くの犠牲を引き換えにする』、『何もしない』、『セロンに犠牲になってもらう』って言ってたんだ」


「それで?」


 あっくんが相槌(あいづち)を打つように訊いてきた。


「音が(こも)っていて誰がなんて言ったか分からないし、そもそも一人の声しか聞こえて来なかったから、詳しくはわからないよ。だけど、少しの沈黙の後にまた同じ声が聞こえて来たんだよね。『三、二、一、一、三ってことになりましたね』って聞こえた」


「そんなに気にする事か?」


 あっくんは無関心そうに訊いた。


「聞いた並び順で考えたら『セロンに犠牲になってもらう』って思っていたのが三人もいることになるんだよ。不安になるでしょ」


 セロンは切実な思いを伝えるように述べた。


「他の七体はそうは思ってないんだろ? だったら多数決では少数派だろ?」


「けど、明らかに(みんな)何か隠してる気がするんだ。それに、誰が僕を犠牲にしてもいいなんて思ってるのかなって気になるんだ」


「それなら、兄弟達に訊いてみればいいだろう?」


「僕を犠牲にしてもいいと思ってるのって聞くの? そんなの怖くてできないよ。それにもし聞いてもはぐらかされるよ。プヨル兄さんとかに訊いてみたけど、『みんな僕を犠牲にしようだなんて思ってないよ』って答えるんだ。プヨル兄ちゃんとは沢山話しているから分かるけど、絶対嘘だよ」


「それでも聞かなきゃ分からないぞ。問い詰めればいいんだ」


「お兄ちゃん達にはもうしばらく会えないかもしれないし……そもそもしばらく会ってないお兄ちゃんとお姉ちゃんも多いんだ」


「それなら、旅が終わった後にでも、探して聞いてみたらいいだろ」


「それじゃあ、その時はあっくんも一緒に居てくれる?」


「なんで一緒に居なきゃならないんだ?」


「そのくらい付き合ってよ」


「わがままだろ」


「そんな(たい)したことじゃないでしょ。僕の些細なわがままくらい許して」


 セロンは食って掛かるように訴えた。


「忙しくない時に気が向いたならな」


 あっくんは受け流すように答えた。


 セロンはあっくんと一緒に鬱蒼(うっそう)と生い茂った草木の間を通り抜け、期待と不安が入り混じった気持ちで山を(くだ)って行った。


 空は青く、そよ風は温かかった。しかし、行く先の深緑の自然は何処までも続く暗闇のように感じられた。



            *



 白竜の住処、家の裏のホール前の広場に九体の白竜が集まっていた。図体の大きい者もいれば、小さい者もいる。各々が表情豊かに母に注目し、発言を待っていた。


「いない奴もいるが、取りあえず集まったな」


 母のディアンが白竜達を眺めまわした。


「ついに(われ)らが動く時が来た。人の目を避けるようになってから六十年程経つ。お前達ももう既に理解していると思うが、全ての運命はこの計画によって決まる。自らの役目を全うしろ。未練を残すな。いいな? わかったな? 作戦開始だ」


「はい!」


 白竜達は一斉(いっせい)に辺りに響き渡る声で返事をした。


 ある最も大きな白竜はそわそわして落ち着かない様子だった。ある中くらい白竜はけたけたと楽しそうに笑った。ある明るい白竜はウキウキと尻尾を揺らし、翼をはためかせていた。ある小さな白竜は(うつむ)いて(わずら)わしそうにしていた。あるしかめっ面の白竜は手足をロープで縛られて吊るされていた。


 白竜達は再び人々の前に姿を現し、世界に大きな影響を与えようとしていた。六十年前の所業は人々に大きな恐怖を記憶に植え付け、誰も忘れたくても忘れられないものだった。再び動き出す時、それは世界の人々にとって絶望か希望か、誰も知る由も無かった。


これで第一章完結です。ここまで読んでいただきありがとうございます。

よかったら、評価コメントよろしくお願いします。


次は二章です。これからもワクワクするような世界観を目指して作っていくので、もしよかったら先をお読みください。ありがとうございました。

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