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小さくて大きなわがまま  作者: しがない竜
第1章2節 ただ一人生き残った難民

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第11話「訳ありの店と店員さん」

おそらく焚火通りと呼ばれている所に来た。

 焚火が広場にあり、この街に来た時に、最初に通った道でもある。


 その道で僕は、教えてもらった【砕けた星と剣のマーク】がついている店を探した。

 店が両端に並んでいて、一つ一つ見ていくのは大変であり、少し時間がかかった。


 

 通りの中心の近くに、ようやく【砕けた星と剣のマーク】の店を発見した。

 

 店の看板には〈雑貨屋〉と書かれていた。


 店は、賑わっていた市場と異なり、屋台の露店ではなく、大きな建物型の店になっている。

 入り口は開かれているが、ドアがある。建物自体は金属板のようなもので作られている。


(市民街の家と違って、全体が硬い金属なのは、防犯のためなのかな)


 セロンは店に入ろうとした。すると中から、少年が急ぐように出て来た。


「邪魔だ! どけ!」

 先ほど見かけた少年が店に入ろうとする僕をよけて、何処かへ走って行った。


「ちょっと待って!」

 少年を呼び止めようとしたが、止まらなかった。


(何であんなに急いでいたんだろう?)


 そして、もう一つ気になる事があった。

少年が出て行くとき、右手首に【赤い紐】を巻いているのが見えたのである。


(最初に少年を見た時は、身につけていなかった気がする)


 僕は気になったが、店に入る事を優先した。



 店の中に恐る恐る入った。


「いらっしゃいませ、旅の方ですか?」

 女性店員がにっこりとあいさつした。


 見た目は、若く、華奢な身体である。髪型はミディアム、地味な服とスカートを履いている。

 

「白竜のセロンです。山から下りてきました」

 僕は、店員の方を見上げて挨拶をした。

 

「白竜?」

「はい、白くてふわふわの白竜です」

「……へー、そうなんですね」

 店員さんは、僕に関心を持っているみたいだ。


(あれ、ソリザ―って言われない。初めてだ。嬉しい)


 僕は、白竜と認識された事で、女性店員に好感を持った。


「そんな大したものはないですが、ゆっくり見ていってくださいね」

「はい、お邪魔します」

 ゆっくりと、商品を見るように店の中を周った。


 商品は、金属の道具類、木などの資材類、布、大小さまざまな紐などが棚ごとに分かれるように置かれていた。店の中は光があまり入っておらず、薄暗い。


 一通り見終わった。

雑貨屋の名前通りの品揃えだったが、一つだけ異色を放つものがあった。それは、店に入った時から、気になっていたものだった。厳重にショーケースの中に保管されており、明らかに貴重品である。


「すみません、これって何ですか?」

 ショーケースの中をまじまじと見ながら聞いた。


「それは、この店唯一の『魔法アイテム』ですね」

「魔法アイテム!」

 一向に見つからないものだったので、反応が大きくなった。


「はい、このアイテムは、物を浮かせて自由に運べるんですよ」

「自由に浮かせる⁉」

「重たい物とかを運ぶのにすごく便利なんですから」

 店員さんは得意げに説明する。


 『魔法アイテム』は両手に収まるくらいの大きさだった。持ち手がついていて、先端が丸くなっている。真ん中からは引っかけるフックもついていた。


「いーなー、欲しいなー、いくらなんですか?」

 羨望の目で『魔法アイテム』を見つめ、店員に聞いてみた。


「金貨二百枚です」

「二百枚⁉」

 僕は唖然として、店員の方を向いた。店員は、何食わぬ顔をしている。


(僕のへそくり全部でやっと買える……)

 

 衝撃の価格に、さっきまでの欲が薄れ、少したじろぐ。


「この街では、『魔法アイテム』は本当に希少で高価なものですから、誰も買う人はいないですね。もはや飾りです」

 店員さんは、微笑んで淡々と冗談っぽく言う。


「そうなんだ……」

 店員さんが言った事を真に受けるように反応した。


 一旦、『魔法アイテム』の事は諦めて、他に何か無いか、周りを見渡した。

 すると、店の角に追いやられるように乱雑に置かれたアクセサリーのようなものを見つけた。店員がいるカウンターの横にある。


 近くまで行って、見てみた。


 毛糸で編んだようなペンダントである。六角形に外側が花びらの様になっていて、【花びらは6つ】。内側には【星が1つ】あった。


「これは?」

 店員さんの方を向いて、聞いてみた。


「あー……それは……【友情の証】ですね」

 店員さんは、目を横に逸らしながら言った。


「【友情の証】?」

「それを持っている者同士なら友達になれるっていうだけです」

「へー、すごくいいね」

「そうですか…?」

 店員さんは同感ではないようだ。


「いくらですか?」

 【友情の証】を手に取って、聞いた。


「銅貨1枚です」

「安い! これください」

 カウンターまで持って来て、店員さんにお願いした。


「正直、意味ないと思いますよ……誰も買う人なんていないですし」

「お姉さんだって同じ【友情の証】持ってるでしょ」

 店員さんが首から下げている【友情の証】を指さして指摘した。


「あー……これですか? 売れないから身に着けているだけで……」

 店員さんは身に着けている【友情の証】を手でなでて答える。


 僕は銅貨一枚をカウンターに置いて、店員さんの断りもなく、【友情の証】を首から下げた。


「これで、店員さんとお友達になれるの?」

「ええ……そうね」

 店員さんは何だか乗り気ではないみたいである。


 少しの間があった。


 思い出したように、少年の事を聞いた。


「そういえば、さっき出て行った少年は何か買って行ったの?」

「……あー、あの子の事ですか?」

 店員さんは考える素振りをして、答えた。


「あの子は、特にうちでは何も買っていないですね」

「えっそうなの?」

 不思議そうに聞き返した。


 少年の事が気になるのでさらに聞いた。


「街の人々に無視されているように見えたけど、どうしてなの?」

「そうね……あの子は難民の子だからじゃないでしょうか」

「難民って?」

 川を眺めていた時に聞いたような気がするが、聞き慣れない言葉だったので首を傾げた。


「貧民区に住んでいる者達の大半のことを言うんです」

「貧民区?」

 またまた聞き慣れない言葉が出て来た。


「街の人々は大きく三つの層に分かれているんですよ」

 店員さんは、何もわからない僕に丁寧に説明してくれた。


この街の人々の層は大きく分けて三つ、『難民』、『平民』、『上級民』に分かれているらしい。



・難民 住む場所が無くなる、奪われるなどして、この街に逃げて来た者達。

・平民 もともと住んでいた、あるいは外から来た者で、家に住む権利を買って生活している者達。

・上級民 上位地区に住む、お金に余裕がある者達。兵士なども含まれる。



という説明だった。


「その中でも難民は、盗みやたかりをする者達ばかりだから嫌われてるんです」

 店員さんは、顔色変えず、話した。


「そうだんたんだ」

 納得した表情で返す。


「それじゃあ、難民が住んでる貧民区はどこにあるの?」

「この店を出て、向かい側の方に行けばありますよ。壁の向こうですね」

「わかった。色々と教えてくれてありがとう」

 微笑みながら、感謝の言葉を店員さんに送った。


「……そういえば、まだ名前聞いてなかった。教えて欲しい」

 店を出ようとしたが、親しくなった者の名前を知っておきたくて訊いた。


「そうですね。……私の名前は、カレン。この店の店主です」

 店員さんは軽く名乗ってくれた。


「親切に話してくれてありがとう。カレンさん。また店に来るよ」

 微笑みながら、軽く頭を下げ、店から出ていく。


「ありがとうございました」

 カレンさんの声が後ろから聞こえたので振り向いて手を振った。


 カレンさんがいるカウンターの後ろには扉があった。その向こうには何があるのかなと少し興味が惹かれたが、先に少年の事情をしっかりと知りたいと思った。



 店を出て、焚火通りを横切ろうとした。人がちらほらと歩いている。


(そういえば、【ユートピア】について聞くの忘れてた。少年と関りはありそうだよね……後でまた聞こうかな)


 店に戻って聞いても良かったが、まずは貧民区に行ってみようと思った。


 ふと通りを歩いている人々の中に【青い紐】を右手につけている男性が見えた。


(【赤い紐】と【青い紐】……どういう関係があるのだろうか)


 少し考えたが、今は貧民区に行く事に意識を向けた。


歩いているうちに焚火通りを抜け、並ぶ店を横切り、壁に差し掛かった。


昨夜にも壁があるのが見えてはいたが、この壁の向こうに貧民区があるとは思ってもいなかった。壁と店の間には狭い道がある。そして、壁の所々に、貧民区へ行くための細い隙間があった。


僕は壁の伝って歩き、隙間へ入って行った。


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