第一話 その日、自衛官は異世界に落ちた。
「隊長、後方からドローン三機接近!」
「うわっ!?まだ追って来てたのかよコイツら!」
202X年、千葉県沖を航行していた護衛艦「いかづち」がロシア海軍によって撃沈される。
そして千葉県・九十九里浜。
ロシア軍第39自動車化狙撃旅団が上陸を開始。
テレビではずっと「今回の軍事衝突において地上戦は起こらない」とか言ってたじゃないか。
だがその結果が、これだ。ドローンに囲まれ、ミサイルで吹き飛ばされ、成田空港は半日もたずに陥落。
俺の所属する第32普通科連隊も、壊滅的打撃を受けた。
我が分隊も敵の攻撃によって次々と倒れ、部隊は瓦解。
生き残ったのは、俺を含めて4人だけ。
・冷静沈着すぎる機関銃手・坂本一等陸士
・火力こそ正義な無反動砲手・川崎陸士長
・元秀才な皮肉屋・小銃手の森二等陸士
そして――
なぜか指揮官面してるだけの俺、田中正志・三等陸曹。
今、俺たちはボロボロのLAV(軽装甲機動車)に乗り、成田から撤退中だ。
だが、逃げ道はもうない。
「隊長、前方に崖です」
「嘘でしょ!? さっきの地図じゃ平地だったぞ!?」
「それ、2年前の地図です。新しいの持ってこなかったんですか?」
「おい、マジかよ……! 川崎、森、坂本! しっかり捕まってろ!」
急ブレーキをかけ、車両は停車
しかし、ドローンの一機が突っ込んできた。
俺たちの装甲車の真上で、真っ白に爆ぜる。
《――ああ、終わったな》
……と思った瞬間だった。
世界が、光に包まれた。
◆ ◆ ◆
「う……ぐっ……」
気がつくと、俺は柔らかい土の上に転がっていた。
空が青い。信じられないほど、どこまでも澄み切っている。
鳥のさえずりが聞こえる。見たこともないカラフルなやつが、飛んでる。
……あれ? ここどこだ?
「隊長の生存を確認。意識あります。」
「……坂本? 生きてたのか!?」
「はい。ほか二名も無事。LAVも一応動きます。ですが……」
そう言って坂本が指差した先には、遠くに見える巨大な城塞都市。
だが、あの建築様式は明らかにヨーロッパ風……いや、中世ファンタジーだ。
「これ、絶対日本じゃないよな……?」
「はい。というか、地球でもない可能性が高いです」
「……え、俺たち、転生した?」
「恐らく。ご安心ください。装備は健在です」
「装備より現実が受け入れられないんだけど!」
こうして、成田空港で爆死したはずの俺たちは、
なぜか装備と車両をそのまま持ったまま――異世界に降り立っていた。
自衛官? もう命令も司令部もない。
ここにあるのは、武器、仲間、そして俺のダメな頭だけ。
だが、この未知の世界でも、戦いは待っているらしい。
――そして当然のように、有能な部下たちに支えられながら、
俺の異世界サバイバルが、ゆるく、でもガチめに始まるのだった。