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ぽっちゃりシリーズ

今の私を受け入れてくれますか?

作者: piyo

勢いで書いたので、後ほど削除するかもです、、、



 婚約者であるラケルが一年の留学から帰ってくることになった。

 彼からの手紙によると帰国日は一週間後だという。


 ラケルは在学期間中、専攻している学問の権威である教授に教えを乞うため、隣国の学校に一年の短期留学をしていた。


 一方、私はというと、実家での花嫁修業の傍ら、結婚後のお金を少しでも稼ぐために街の食堂で働き始め、毎日忙しい生活を送っていた。


 この一年は手紙のやりとりで、お互いの近況を報告し合っていた。彼は隣国の文化の違いや、師である教授の話を面白おかしく綴ってくれた。


 私の方も、花嫁修業の成果なのか、ラケルの好きなパイを上手く焼けるようになったこと、バイト先の食堂であった出来事など、なんでもないような日常を彼への手紙に書いた。


 一年も離れ離れになっていたので、本来なら婚約者の私は、彼の帰りを喜ばないといけないのだろう。


 しかし、私は内心「もう、帰ってきてしまうの?」というえらく薄情な感情に支配されていた。

 というのも、



 (マズイ、体型を元に戻す前に帰ってくるとは、想定外よ…!)



 恐る恐る全身を映す姿鏡の前に立って、鏡に映った今の自分の姿を確認する。


 そこには、一年前のほっそりした面影が全くない、ぽってりとしたシルエットの肉付きのいい女性が青い顔でこちらを見ていた。


 まあるいほっぺのついた丸い輪郭、これでもかという位に存在感のある袖から覗くぷにぷにの二の腕、胸ももちろん存在感はあるのだが、それよりも下腹がぽてんと膨らんでいるのが服の上からでもわかる。足は長いスカートに隠れているので、見なくて済んでいるのが救いだ。



 ああ、どうしよう、絶対嫌われる。婚約破棄もあり得るかも。



 まるで幼児のようなぷにぷにの手で、顔を埋め絶望する。自分がこうなってしまったのも、全て食堂でのバイトのせいだった。





 ラケルが隣国に旅立った後、しばらくの間、リリアは昼中に花嫁修業をするだけの日々を過ごしていた。

 しかし、たまたま食堂で求人を募集していることを人伝に聞く。リリアは結婚後の生活の足しにちょうど働きたいと思っていたため、そこでバイトとして夜に働き始めることにした。


 リリアが働くことになったこの食堂は、こってりした料理と量の多さが自慢のお店である。店主の人柄もよく、地元の人から愛され長年に渡って繁盛していた。

 メインは接客だったが、バイトが少ないときはキッチンに入ることも多々あった。


 夜の営業が終わると、店から賄いが貰える。賄いは注文で出なかった余りものを頂くことになっている。もちろん、こってり料理である。シフトが終わる頃にはヘトヘトでお腹も同じだけ減っていた。食べきれないと思っていた心配もよそに、ペロリと毎回完食。

 それに加えて、店長は試作品をバイトみんなに持たせてくれる。最近デザートを出そうとしてるらしく、試作品は全て甘いもの。貰ったそれらはリリアのおやつになった。


 こんな生活を一年続けた結果、ぽっちゃりリリアが爆誕した。

 常連のお客さんからも、「最初は細っこくて可愛い看板娘って感じだったけど、最近ではまん丸な愛されマスコットって感じだな〜」とか、「リリアちゃんだんだん店に馴染んで貫禄ついてきたよね。」と遠回しに太ったことを指摘される。


 ラケルの帰国は一週間後…たった一週間でこのお肉たちが消える訳がない。リリアは絶望のまま、ラケルの帰国日を迎えた。





 扉を開ける音と同時に、一年振りに聞く婚約者の声が響く。


「!、久しぶり、リリア。」


「ひ、久しぶり…」



 再会は近所の教会を指定されていた。私はどういう態度で彼と会おうかを考えるため、指定時刻よりも早めに着いて、先に席に座っていた。しかし、それと同じくらいの時間にラケルがやってきたのだ。


(来るのが早すぎる!まだ心の準備ができてないのに)


 今の私の姿を見て、ラケルはガッカリするだろう。そんな彼の顔を見たくなくて、下を向いたまま答える。


「元気だった?」

「うん…元気。でも、ごめんね、ガッカリしたでしょう?私、こんなになっちゃって。」


 思わず声が震えた。ああ、お願い酷い言葉は聞きたくないの。


「なんで俺がリリアにガッカリするの?色々頑張ってくれていたのは知っているのに。」

 

 変わってしまった私の容姿については一切触れず、優しい言葉をかけてくれるラケル。一歩ずつ彼が私のほうに近付いてくる。

 私は勇気をだし、顔を上げて彼に向き合った。


 そして、



「ん?」



 と思わず呟いた。


「ごめん、ガッカリした?」


 そう言ったラケルは少し恥ずかしそうにしている。



 私の目の前にいるラケルは、私に負けないくらいぽっちゃりな男性へと変貌していた。


「えええー!」


 鋼色の髪は少し長くなっており、淡い緑色の瞳も変わらない。変わったのは、その肉付き。彼は上背もあるので、全体的に大きく見える。シャツの上にベストを着ているのだが、布がパンパンに張って窮屈そうだ。顔も前は鋭い印象があったが、丸くなったせいで柔和な印象に変わっていた。デブとまではいかないが、明らかに留学前より体重が増えているように見えた。


「な、何があったの?」

「隣国の食生活、かな。ヘビーなものしか置いてないし、自炊したら作り過ぎて勿体ないから食べてたら、この通り。」


 ぽんと突き出たお腹をさする。どうやら手紙にあった文化の違いは食文化のことも差していたようだ。


「リリアは?」


「私は、食堂のバイトの高カロリーなまかないと、あと毎日のデザートで。」


 証拠と言わんばかりに、ムニッと下腹を掴む。


「ふっ」


 しばらくして、どちらからともなく笑い声がし始める。


「ハハハ、俺たちは本当に似たもの同士だね。」


「ほんと、お互いに会うまで黙ってるところも同じだなんて!」


 笑いながら二人してお互いのぽっちゃりした部分を確かめ合う。


「あのバキバキの腹筋はどこに逃げたのかしら?」

「たぶん隣国に忘れてきたんだと思うよ。」

「私は折れそうだった二の腕に栄養を与え過ぎてしまったみたい。」

「触り心地がいいから、これは正解だ。」


 そこまで言って、彼の顔が真剣なものに変わった。


「リリア、一年も待ってくれてありがとう。…どうか、俺と結婚してください。」

「…はい。」


 お互いに見た目は変わってしまったけれど、中身は何も変わってなくて。彼と久しぶりに会ったけれど、やはり彼の隣は居心地がいい。


「でも、挙式は痩せてからにしない?」

「うーん、俺は今のままでも別にいいんだけど。」






 結局、ラケルの一刻も早く入籍も式もしたい!という強い願いにより、二人はぽっちゃりしたまま夫婦となった。


 結婚後も、リリアの花嫁修業とバイトで鍛え上げた毎食のこってり料理により、お互いにぽっちゃりを維持することになる。


 リリアはラケルのまん丸な頬を、ラケルはリリアのぷるぷる震える二の腕を、互いに毎日挨拶代わりにプニプニするくらい、いつまでも仲良しな夫婦だったそうな。



おしまい



落ちが弱い、、、


ぽっちゃりになったらぽっちゃりのまんま、というのを書きたかっただけです。

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