時給3000円のアルバイト
「時給3000円。性別年齢不問、正社員登用も検討だと。なんだこのアルバイトは」
商店街の裏路地にある小さな書店の前で鳥谷正は立ち尽くしていた。
「仕事が見つからない。貯金も底を尽きた」
大学を卒業後、就職した会社がいわゆるブラック企業であり、休む暇もなく12年間体に鞭を打って働き年齢も34歳になっていた。ちなみに恋愛などする暇もなく独身である。
そんな生活をしていたが、あるきっかけで上司を殴り、勢いのままに辞表を提出して無職になり現在就活中であった。
転職サイトを使ったが、すべての企業で書類選考に落ち、今日も近所のコンビニのアルバイトの面接を受けたが、それすらも落ちてしまった。
「ここはどこだ」
近所の商店街を当てもなく歩いていたところ気づいたら小さな書店の前に立っていた。
「浦島書店。こんな店商店街にあった知らなかったな」
その書店は古びた外装になっており、商店街の人の騒音などもなく不思議な空間となっていた。
俺は不思議な感覚を覚えながら、店を見ていたら、入り口のガラス引き戸のところにアルバイト募集の張り紙を見つけた。
(時給3000円。特別ボーナスもあり。性別年齢学歴不問。体力に自信のある方は楽しく働けます。正社員登用も検討。)
「は。なんだこのアルバイト。時給3000円、年齢不問だと」
怪しいという気持ちと、高時給かつ年齢不問という今の自分に最もうれしい条件にアルバイトの紙から目が外せなくなってしまった。
「すみません。入り口のアルバイトについて話を聞きたいのですが」
様々な葛藤の末、話だけでも聞こうという思いで、入り口を開け店内に足を踏み入れた。