2 何の病気?
渡辺宏之と峯岸亨はスポーツ系のタイプではない。どちらかといえば、オタク系だ。
2人だけで『廃墟同好会』というのを作って、あちこちの廃墟を回っているらしい。
知り合ったのは中学の時で、夏休みの廃墟探検ツアーで意気投合し、同じ高校に進学してきて同好会を立ち上げた。——と、瑠奈も啓介も純恋から聞いている。
純恋が「あたしとデートするより、渡辺とデートする方が多いんだから」とボヤいていた。
「あいつら、変な所でヘンなもの拾ってきたんじゃねーか?」
月曜の朝、啓介は通学のバスの中で瑠奈に話しかけた。
「その辺も含めて、今日聞いてみたい。先生は病気としか言わないしね。純恋は何か知ってるんじゃないかな。」
ところが‥‥。
朝、ホームルームが始まる時間になっても純恋は姿を現さなかった。
「どうしたんだろ?」
瑠奈が心配そうな顔で主人のいない机を眺める。
ホームルームが終わって1限目が始まる頃になっても、純恋は姿を現さなかった。
瑠奈が純恋にLAINEでメッセージを送ってみたが、返事はない。
「大丈夫かな? 純恋‥‥」
「電話してみる?」
純恋と瑠奈は仲がいい。互いの電話番号も交換している。‥‥が。
「それ、けっこうハードル高い。とりあえず、ちょっと待ってみる。」
1時限目が終わって瑠奈がスマホを取り出してみると、純恋からの連絡が来ていた。
『今病院に来てる あたしも顔に草生えちゃった』
苦笑いした純恋の顔の画像が一緒に送られてきていた。頬のところに何か緑色のものがくっついている。
「ちょっと、これ見て!」
瑠奈が啓介に画像を見せる。
啓介はすぐには反応できなかった。いや、どういう反応をしていいかが咄嗟にわからなかった。
「2人してかついでんじゃねーの?」
「あの子、そんなことする子? 学校休んでまで——。」
たしかにな‥‥と啓介も思う。これは最悪のレスポンスだったかも‥‥。
峯岸しても純恋にしても、そこまでガキっぽくはない。
「どこの病院?」
「理科医大だって。学校終わったら、行ってみようか?」
「そうだな。でも、午後も病院にいるのかな?」
診察が終わったら帰るんじゃないだろうか。
「峯岸くんと渡辺くんもそこに入院してるって言ってたから、たぶん純恋も入院になるんじゃないかな? お昼頃また様子聞いてみる。」
啓介はもう一度、純恋の顔写真を見る。
頬のあたりに何か緑色の細いものが生えているように見えた。
渡辺の腕といい、純恋のほっぺたといい、フェイクじゃないなら‥‥何なんだ、これ?
人間の体に植物が生える病気なんて、聞いたことがないぞ。