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第3話 〇の6人

 本城三上、初出社の日。


「本日から新たに社員となる本城三上さんです」


 そう全体朝礼で声高に彼女を紹介したのは光丘英樹みつおかひでき。58歳。

 一代でこの光丘製作所を築き社員500程を抱える社長だ。

 本城三上が面接で手を握り締めたその人である。

 今日もツルピカツヤツヤな見事な頭でまさにこの光丘製作所を代表する禿だった。


「皆さん、本日からお世話になります。微力ながら皆さんのお力になれる様努力してまいります。よろしくお願い致します」


 そう言いながらその場に居る社員達を渡り鳥の群れの中から特定の種だけをサーチする様な目をした。


「あれが噂の美女新入社員か、鋭く冷ややかな目が癖になりそうな娘だな…」


 実際は禿サーチをするために目を凝らしていただけだが…

 社員への印象は良かった様である。


「設備設計部門、田辺広喜たなべひろき課長」


「本城三上さんを貴方の補佐に付けるのでよろしくお願いします」


 ええ!私?

 確かに人手が足りず人を入れて欲しいとは言っていたが何で私の補佐という名目なんだろう。

 いくら優秀でもいきなり専門職では大変だろうに。

 相変わらずこのツヤツヤ禿の考えている事はわからない。


「それでは本日もよろしくお願いします」


 全体朝礼が終わり私の補助となった本城三上と共に設備設計部へ行った。

 設備設計部門は私を含め6人、彼女が加わり7名になる。


「おはようございます、先程社長より話しがあった通り本日から本城三上さんがこの部署の一員となります。名目として私の補助となっておりますが新入社員ですので皆さんも色々と教えてあげて下さい」


「では一人づつ自己紹介をお願いします」


 一人の男が前に出る。


「では私から、係長をやっています。菜島直樹なしまなおきです。主に課長と主設計を担当していますよろしくお願いします」


 そう言ってツルリとした頭を下げる。

 つまり禿である。

 彼女の目がキラリと輝く。


「私は電装関係の主任をしています。笹苗佑樹ささなえゆうきです。よろしくお願い致します」


 彼もまたツルリとした頭を下げる。

 申し訳程度にバーコード状に残っている状態。

 またもや禿である。

 彼女の目は平常に戻りニッコリと微笑んでいる。

 バーコードは範囲外らしい・・・


「では私から」


 そう言って残り3人の内一人が前に出る。


「菜島係長のアシストをやってます。斎賀友康さいがともやすといいます。こんな頭ですが怖くないのでよろしくお願いします!」


 この者の頭にはまったく毛が無かった。

 いわゆるスキンヘッドというやつだ。綺麗に全体がツルツルしている。

 彼女の美貌に少し興奮気味で赤くなっていた。

 彼女は微笑んでいたが左目の端がぴくぴくと引きつっていた。

 見事なツルツルだが禿げでは無いという事だろうか。


「俺は笹苗主任と電装してます~野口吉雄のぐちよしおです。よろしくです~」


 流石に禿てはいないが・・・

 だいぶ来てる・・・

 おでこがかなり広い彼。

 彼女は値踏みをするような目で彼の頭を見つめ、そして私の方を見た・・・

 ん?どこを見ている?なんか私の頭を見ていないか?


「最後は私ですね、設備設計の事務全般をやってます。北条加奈子ほうじょうかなこと言います。女性は私一人だったんで本当にうれしいです!よろしくね!」


 本城三上ほどではないが彼女もスラッとしたスタイルで美人系だ。


 ここで整理しよう。


【設備設計部門メンバー】


 ・田辺広喜  38歳 課長 かなり薄くなって来ている AGA Ⅶ型まっしぐら

 ・菜島直樹  53歳 係長 両サイドに少し残っているよく見る禿 AGA Ⅶ型

 ・笹苗佑樹  44際 主任 典型的なバーコード禿げ AGA Ⅴ型

 ・斎賀友康  32歳    スキンヘッド、本人曰く禿げてない

 ・野口吉雄  28際    おでこがかなり広い、もはや禿 AGA Ⅲ型

 ・北条加奈子 36歳 女性 スタイル良し明るめな性格

 ※AGA(男性型脱毛症)


 以上がこの部署のメンバーである。

 とんでもなく禿率が高い部署である。

 この部門はあまり表には出ず社内で黙々と業務を行う事が多い為、社内ではこう呼ばれていた。


 禿の6人


 影の6人に掛けているのだろうが禿げの6人である・・・

 当人達も気に食わないだろうと思いきやなぜかそう呼ばれるのをそれほど嫌がっていなかった。


 そして本城三上がこの部署へ配属されたのは偶然ではなかった。

 採用が決まった際に社長の光丘英樹より直接行きたい部署があるかを聞かれた。

 彼女は真っ先に設備設計部門と答えた。

 彼女はこの会社を選ぶ時点で社員全員をリサーチしていた。

 そしてもっとも彼女の欲する環境はどこか割り出していたのだ。

 それはもちろん。


 禿とイケメンである。


 禿の6人と呼ばれる設備設計部門だが禿を除けば実はイケメンが多いのだ。

 私自身はそうでもないと思うが他男4人は環境がそうでなかったらなら男性モデル、またはホストにでもなっていそうな者達だ。

 唯一女性の北条加奈子もまた美人でありあらゆる意味で奇跡の部署であった。

 禿の6人呼びも社内ではヒーロー扱いの雰囲気らしい。


「本日よりこの職場でご一緒させていただきます。本城三上と申します。少しでも早く仕事を覚えて皆さまのように光り輝く存在になりたいと思います」


 彼女がそういうと5人の男性は一瞬ピクっとした。

 さすがにそのような言葉には敏感なようだ。

 北条加奈子は必死に笑いを堪えていた。

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