15-3-1.永遠の吹雪の力、相手は死ぬ
3日目は班ごとにお土産ショップに寄っているという場面だった。
(うま〜……!)
ちょうど目の前がお菓子コーナーだったから、ひたすら試食を辿って歩いていく私。
ひょい、ぱくっ。
(むむっ、この一口チーズケーキもなかなか……!)
貧乏性とか言っちゃいけない。
(だ、だって……ここゲームの中ですし、おすし……)
多少やばい行動しててもお咎めないし、いくら食べても太らないし……ゴニョゴニョ。
実は同じ班の女子達もついさっきまでここにいて、同じように食べてたんだけど……トイレに行くとかいってまとめて三人とも行ってしまった。
多分こうして遊んでる今もまだ長蛇の列に並んでるんだろう。
これまた観光地あるある。
ちなみに、男子の皆さんはお店入ってから別行動。
最初は竜の巻きついた剣のキーホルダー、今は木刀見てキャッキャしてる……まさか本気で買うつもりなのそれ?
う〜ん……ただ食べてるだけじゃ暇だし、女子誰もいないし、食べてるだけだからなんの面白みもないし、みんないなくて暇だし(2回目)……
そうだ!せっかくだからここで、(お菓子売り場の)イカれたメンバーを紹介するぜっ!
主観バリバリなのはいつもの事!
まずは、観光地定番のジェネリック萩の月!
名前は色々あるけど、共通してるのはその見た目!丸くて黄色いアレだ!
お土産あるある過ぎて驚きも何もないけど、どこのどれを食べても大体うまいぜ!
でも一番は?と言われると……やっぱり本家が一番うまい気がするぜ!
アレはなんかもう格別で、カスタードが濃厚過ぎて……まるで卵に戻ろうとしてるかのような味がするぜ!(?)
説明意味不明でごめんだぜ!とにかくうまいんだぜ!
実はコンビニにも似たようなのがあるぜ!急に食べたくなった時に助かるぜ!
これまたど定番の『◯◯に行ってきました』クッキー!
味は正直う〜ん……だけど、気にしちゃ駄目だぜ!
そのネーミングといいパッケージといい、色々とコテコテ過ぎて買うのにちょっとだけ勇気がいるぜ!
でも、地名が入ってるおかげで渡した瞬間相手に伝わるぜ!会話のネタになるぜ!
お土産持って来たはいいけど『え、なんて言おう……』なんてなっちゃうようなコミュ障の私、大歓喜!
そして、安定の黒糖まんじゅう!
温泉饅頭って名前の時もある、あの茶色いヤツ!
別に温泉地じゃなくても普通に売られてる、謎に包まれた饅頭だ!餡子ももちろんうまいが……何よりあのしっとりとした皮がうまい!
開けていざ食べようって時、かなりの確率で包んでるフィルムに皮が貼り付いてて、しかもそれがなかなか取れない……食べる度に悲しみと怒りで感情をかき乱される、恐ろしい饅頭だぜ!
もはや観光地無関係だけど、コーナーのどこかしらに必ずあるチョコのお菓子!
クッキーだったりワッフルだったり、はたまた和菓子になってたり……それから、チョコの産地もまたフランスだったりイギリスだったりと多方面に色々変化付けてくるけど……結局チョコはチョコ、外国なのは変わらないぜ!
でも、普通に美味しいぜ!観光地ほとんど関係ないけど!
以上だっ!
あ、一つ忘れた。
あと、私の大好物のミルク饅頭。
白い餡を包んだベージュ色のお饅頭で……バターと白餡がもったりしてて美味しいのよね、あれ。
これもまたコンビニにあったりする。
コンビニってすごいね!(?)
そんなこんなで、もはや何個目か分からない試食をもぐもぐしていると……なんだかふと視線を感じて。
(……ん?)
顔を上げると、向こうもこちらを見ていたらしく緑色の瞳と目が合った。
「もぁ?!神澤君?!」
「もぁ、って何だよ」
ショーケースがいくつも並べられている中で、彼はちょうど私の隣の島にいて……ケースを挟んで私と向き合うように立っている。
右手には何も刺してない爪楊枝。
向こうも向こうで、私に気づくまでは食べるのに夢中だったのかもしれない。
「もぐもぐ……くひの中、いっぱいへ……むぐむぐ……発音れひなかった、の……もぐもぐもぐ」
「飲み込んでから喋りなよ」
もぐもぐもぐもぐ……
のそのそ歩いて彼の隣へ。
「行儀悪いなぁ」
もぐもぐもぐもぐ……ごくん。
「だって〜。すぐどっか行っちゃうかと思って」
「行かないし、別に行かなくても動いてたろ今の」
「確かに」
下品でごめん。ちょっと反省。
「ところで……神澤君もお土産探し?」
「それ以外ある?」
こちらからの会話をバチン!とシャットアウトするような、鋭い返し。
久しぶりの塩対応になんだか懐かしいような気分になって、彼の顔を見る。
「……」
「……」
私の顔が向いたからといって、その態度は変わらず。
人を見下すようなその鋭い視線にどこかホッとしている自分がいた。
「……」
「……」
久しぶりだな、こうなるの。
前に話した時はめっちゃ真面目な雰囲気だったから、逆になんか安心した。
「……あ。じゃあさ、これなんかどう?今味見して結構美味しかったし」
「じゃあ、それにする」
あれ?思ってたより刺々しさ控えめね?
「ところで……」
「ん?」
「一昨日は、随分盛り上がってたみたいだね」
「えっ」
キーンと何かが凍る音が聞こえたような気がした。
「枕投げ、楽しかった?」
(オゥ……)
刺すような氷の視線。でも、かつてのいっちーのそれとは訳が違う。
あれは規則に反する者を罰するための視線、こっちは純粋に目の前の人を刺そうとして刺してる視線。痛い。
まるで冬の外気のように冷たく澄み切っていて……みるみる氷点下まで下がった空気は一瞬で相手の周囲の大気ごと氷結させる。相手は死ぬ。
あれ?途中からなんか異物混入したな?
「えっ!えっ、え……それ、どこで?!」
「隣の部屋だったから全部筒抜けだよ」
聞かれてた、だと……?!
「おかげでこっちは寝不足だよ。うるさいったらありゃしない……」
「え、ほんと?ごめん……」
やっぱりそれなりにうるさかったのね、あれ。
「まったく、勘弁してよね」
それにこの彼の場合、そもそも歩君の事あんまりよく思ってないもんなぁ。
口調はいつもとほとんど変わらないけど、きっと心の中は……
「……」
「……」
フッと一瞬、視界の端に赤色がチラッと見えた。
(あっ)
まずい。
同じ班だし、最初からずっと近くにはいたけど……まさかのこのタイミングで……
ピンチ再来?再再来?
いや、もうこれ何回目?数えるのめんどくなってきたぞ?
人混みでその接近はゆっくりだけど、それでもピンチはピンチ。
ショーケースを覗き込んだり、また歩き出したり……どうやら彼もまたお土産用のお菓子を探してるようだ。
君達よく会うね。
いやむしろ、謎の力で引き合ってるというか……惹かれ合ってる?
(うん?待てよ、惹かれ合うって……!)
「って事は……!あの薄い本は、真実だった……?!」
つまり……やっぱり、赤×緑は本当に存在していた……?!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
お菓子売り場での追いかけっこ、いやかくれんぼか……その終わりはとても早いものだった。
「お、静音じゃん!」
見つかった!と肩をビクッと震わせる少女とは反対に、飼い主に駆け寄る子犬のような嬉しそうな声。
「なんだ〜、こんなとこにいたのか〜!」
赤い髪の青年はそう言って得意げな顔をしたが……しかし、すぐさまそれはハッとした表情に変わる。
「お、お前は……!」
驚いたのはその場の顔ぶれに対して、である。
「神澤!お前、こんなところで何してんだよ!」
「な、なんだよお前こそ!」
まさかいるとは思っていなかった相手との遭遇。
お互い睨み合い、一発触発のようにも見えた。
が、神澤と呼ばれた青年の目はなんだか熱を帯びているようにも見えて……




