表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その差、一回り以上  作者: あさぎ
平和のようでなんか不穏な
89/169

15-1-1.メインイベントは夜から始まる

修学旅行は夜になってからが本番。

 


 ふと目覚めたら、見知らぬ部屋にいた。


 和室で、真ん中に四角いテーブルと座布団がいくつか置いてあって、テレビも棚もあって。

 でも、ごちゃごちゃとしたものがないというか……生活臭のようなものが一切ない空間。


 少なくともここが人が住んでいる家ではないのは、雰囲気で分かった。


(……って事は、なんかのお店?)




「七崎さん!ほら早く!」

「へ?!」


 な、なんだなんだ?なんだかめちゃめちゃ急かされてるな……?


「何ぼーっとしてんの、早く早く!先生来ちゃうよ!」


 この声、聞き覚えがある……名前は分かんないけど、多分同じクラスの女子の誰か。


「『先生来ちゃう』?」

「も〜とぼけないでよ!隣の部屋に遊びに行くって話したじゃん、さっき!」


 先生来ちゃう、隣の部屋に遊びに行く……そしてこの見知らぬ和室……


(あっ!もしかしてこれ……修学旅行?)


 きっとそうだ。この感じ、そうだ。


 落ち着いて周りを見てみると……

 主人公の友達って設定のいつも一緒にいる子と、さっきのリーダーっぽい雰囲気のモブの子、そしてまたもう一人モブ子の……四人で一部屋らしかった。


(なるほどなるほど……そっか修学旅行かぁ)


 そういや、このくらいの時期のイベントだったっけ。


 確か、どこか観光地行って二泊三日するっていうシナリオだったような……


 場所については特にどこだか明言はしてないけど、一応モチーフは京都なんだとか。

 確か、背景スチルにも金閣寺っぽい建物が描かれてた気もする。




「何ぼーっとしてんの!ほら早くっ!」

「え?ああ、ごめんごめん!今行く!」


 当たり前のようにスパーン!と隣の部屋の襖をぶち開け、ドカドカ乗り込んでいく女子三人……とワンテンポ遅れて着いてく私。


「おじゃま〜!」「うわ、部屋汚っ!」「しくった!お菓子買ってくりゃよかった〜!」


「え、え〜っと……おじゃましま〜す……」




「うおわっ?!」「な、何?!」「わあっ?!」「えっ?!」


 なんと、そこは男子の部屋だった。


 しかもその驚きようからして、どうやらアポ無し突撃だったらしい。すごい勇気。




「え、何よ!同じ班のメンバーじゃない、来ちゃ悪い?!」


 いや、普通に悪いと思う。うん。


「いや……いいけど」


(や、優しい……!)


 いきなり押しかけられて、これである。良い子や……


 うちのクラスは、結構みんなこんな感じなのよね。


 気の強い女子と控えめな男子というはっきりした構成で……全然違うタイプ同士、なんだかんだうまくバランスを取れているらしい。


 ちなみに、女子の短髪率と男子の眼鏡率が高い。性格も見たまんままさにそんな感じ。


 まぁ、どっちも我が強いと崩壊しちゃうもんね。

 良い組み合わせって事なのかも。




 で、話を戻すと……この雰囲気から推測するに、どうやら私含めて男四女四の八人で一つの班になっているらしい。


「……で?何しに来たの?」


 お、聞き覚えのあるちょっとカッコつけた声。

 振り向くまでもなく、これだけでもう分かった。


(うげ、歩君じゃん!)


 先生が来てないか外を確認するフリをして、リダ子(今勝手に命名)の背中に慌てて隠れる。


 あだ名センスゼロなのは許して……

『リ』ーダー『モ』ブだからリモ子にするか迷ってたのよ……


「何って……今日は見学ばっかで全然疲れてないから、眠くなるまで遊んでようと思って」

「へぇ……だって、どうする?」


 歩君が他の男子に話を振ると、全員が無言で頷いた。

 ほんとに大人しいのね、ここのクラスのは。


(あ、歩君以外全員眼鏡だ……)




「賛成ってことね……じゃあみんな、何がいい?」

「あ、」


(あ!)


 げげ、目が合った!や、やべ〜!


 何がいい?の声と同時に女子側に体ごと振り向いたせいで、歩君の視界にバッチリ入ってしまった。


 やばい。バレたぞ、私の存在。


「ん?どうかした、早乙女君?」

「いや……なんでもない」


 だけど、目の前の子との会話を止めてまで、無理矢理こっちに来ようとはしなかった。

 相手は異性だし周りに何人かいる前だし、一応そういうの気にしてるんだろうか。


(とりあえずセーフ……!)




「一応私、トランプ持ってきたけど……他の案ある人〜?」


 歩君の視線が刺さる刺さる。


(ちょっと!前向きなさいってば!)


 リダ子達と会話しつつも、意識は完全にこっちに釘付けらしかった。


「はい、は〜い!」


 はい円楽さん早かった。


 ……ってこれ、挙手制なのね?


「はい、ユカどうぞ!」


 モブ女子の名前は『ユカ』っていうらしい。へ〜。


「王様ゲーム、どう?」

「あっ、それ私もやりた〜い!」「私も〜!」


 女子二人もノリノリだ。

 他の男子達はと見回すと……変わらず無言のままだけど、異議はなさそうな感じ。


「じゃ、じゃあ……私も〜……」


 じゃあ……私もそんなに嫌じゃないし、みんなに合わせて賛成で。

 右に倣えの精神。ザ・日本人。




 賛成多数、これで決まったかと思いきや……


「え〜、くじどうすんだよ?」


 あまり乗り気じゃ無い人が一人。


「そんなの適当でいいじゃん」とリダ子が言うも、渋い表情。


「割り箸なんてねぇぞ、ここ」

「それなら私メモ用紙持ってるからいいよ、赤ペンだってあるし」

「後でゴミになるじゃん」


 彼も彼でなかなか食い下がる。


「え、そこ?それを言うなら、割り箸だって結局捨てるじゃない」

「だけど……もっと他にあんだろ?トランプとか」


 やたらと屁理屈つけて嫌がるから、その場のみんなの頭上にはてなマークついちゃってる……




(あ〜……)


 他の人達には申し訳ないけど、その理由はなんとなく分かってしまった。


 多分……いや、この場合は絶対……私の事だ。


 王様ゲームといえば……定番は告白ネタとキスネタ。

 普通に遊ぶ分には面白いけど、今の歩君としてはどっちも絶対に避けたいシチュエーションのはず。


 モブ同士なら全然いいんだけど……問題はそれに私が絡んだ時。


 どちらかの番号に当てはまった時に、『何番が何番に告白して!』だとか、『何番が何番にキスしま〜す!』なんて言われちゃ……どっかの誰かさんが憤死してしまう……


(ここは止めといた方が良さそうね……)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ