14-1-1.アレを投げてくるのは威嚇だそうで
みんな大好き、ゴリラとう◯こ。
あれ?何だっけ?
一番最初誰だったっけ?ってか、何したっけ?
……あれ?あれれ?
冒頭から混乱してて申し訳ない。
でも、誰だって混乱すると思うの……毎回違う相手と、間髪入れず連続でデートしてたら。
文化祭も終わり、次はなんだろうと思ったら……また、これ。
と言っても、本来は二週間土日連続ってだけだったらしいけど……私にとっちゃただのデート4連チャンでした。わ〜い(白目)
そして今は、その最後の日曜日……
部屋に帰ってくるなり、ベッドにうつ伏せにダイブして死んでるところ。ち〜ん。
服はもちろん、ショルダーバッグまでそのまま。
地味にバッグのチェーンがお腹の下でゴロゴロして痛いんだけど、もう1ミリも動けない……
ラッシュなんてそんなの、もう二回目となっちゃ慣れてるだろうって?
ううん、全然慣れない。
ああまたかってゲンナリするだけ。記憶は普通にしっちゃかめっちゃか……
むしろ前回あそこまで覚えていられた私を褒めてあげたいくらい。
っていうか……これ、本来は一周につき各イベント一回しか見れない訳じゃん。
それも、好感度の高いキャラ一人だけ特別に見れるって感じの。
(なのに、こうもちゃんぽんされちゃ……特別感も何もあったもんじゃないよなぁ)
あ、ちゃんぽん。今のでちょっと思い出してきたぞ。
(そういや最初の日、確かお昼にちゃんぽん一緒に食べてから行った気がする)
(その後、動物園で猿見てたような……あれ、誰と一緒だったっけ?)
(う◯こ見て爆笑してた……って事は、歩君か……?)
我ながら酷い思い出し方。でも、合ってそう。
まぁともかく、これまた記憶が断片的だけど……回想ダイジェスト、スタート!
1日目、土曜日は動物園に行った。お相手は歩君。
(で、出た〜!そのTシャツ!)
まずそこ。彼に会って最初に思ったのはそれだった。
長袖デニムシャツの下に隠れるようにして現れた……あの青矢印Tシャツ。オッス!久しぶり!
ぱっと見あれまとも?とか思ったけどやっぱり平常運転でした。抜かりねぇな。
変なデザインだなぁとか思ってたけど、なんか一周回って好きになってきつつあって。
今はまだギリギリ冬手前だからTシャツだけど……もうこれからしばらく見れなくなるかもと思うと、謎の寂しさが。
他のキャラはあんまりそんな変なのはないから、ある意味希少価値なのだ。もっと尖ってもいいのよ?
唯も割と近いけどそのモデル体型のおかげでなんとなく誤魔化されちゃうし、秋水は普通にそれなりの服装、いっちーはお爺ちゃんっぽさはあるけどまぁ無難、ちよちゃんはまだ見た事ないけどおそらくユニ◯ロ系……
頼む!君の服装からしか得られない栄養があるんだ……!
どうか、そのままの君でいて……!(?)
それで、普通に動物園を回ってたんだけど……イベントシーンに選ばれた動物達もまたなんとも独特で。
チンパンジー、オランウータン、そしてゴリラ……と、わざとかってくらいの猿系オンパレード。
その辺に寝っ転がる姿はただのおっさんだし、いきなり真顔になったかと思えば尻掻き出すし、何を思ったか突然う◯こ投げてくる……
全くムードのかけらもございません……
っていうか、デートイベントで猿って!
いや、絶対わざとだろこんなの!もはや嫌がらせじゃん!時間稼ぎ手伝ったのに〜!
まぁ、結局は楽しかったんだけどさ!な〜んか悪意感じてしょうがないのは私だけ?
そんな中で、一番盛り上がったのはゴリラ舎だった。
「やべ!あのでけ〜やつ、また怒ってんじゃん!」
「げ、まじ?!逃げろ逃げろ!」
そんな小学生みたいな事を言いながら、二人でゲラゲラ笑って檻の周りを走り回って。
子供連れも多くて、それだけで十分賑やかだったけど、はしゃぐ私達の声も負けてはいなかった。
「うわ!めっちゃ見てくるやん!」
「静音、こっちこっち!そこ当たるって!」
「え、嘘?!やばやば、逃げとこ!」
「あ、ほら!やっぱりう◯こ投げて来た!……って、こっち?!」
投げてくると思って檻の端まで走って逃げてきたけど、狙いはまさかの歩君の方。
ノーガード、完全に油断していた彼の方にすごい勢いで飛んでいく。
「避けろピ◯チュウ!」
「無茶言うなって!……わ、わ、うわ〜っ!」
おはぎみたいなサイズ感のずっしりとした茶色の爆弾が、べちっ!とすぐ横の壁に当たって崩れ落ちた。
ゴリラのって、実は初めて見たんだけど……そのもの単品というよりは、その辺の土やら草やらの混じった塊って感じで……ええっと……
あんまり細かく説明してもあれだし、この辺でやめとく。
変に思い出しておはぎ食べれなくなっちゃうのも困るし。
「あ、あっぶな……!セーフ……!」
「避けた?」
「ああ、ギリギリな」
「お〜、神回避!運いいね」
「う◯こだけに?」
「それ私も思った」
「ドヤ顔すんな、全然うまくねぇから」
ゴリラに、う◯こ……そんなのでずっと盛り上がってるなんて、まるで子供だ。
そんなこんなで遊んでいて……そこを離れる頃にはもう、興奮していたゴリラ達も疲れたのかこちらに見向きもせず寝っ転がっていた。
もう勝手にしてくれ、と言わんばかりの。
彼らにとっちゃいい迷惑だ。
「いや〜、ゴリラ面白かった〜。あんな人間みたいな動きするんだね、知らなかったや」
「知らなかったのか静音?」
「え、普通そこまで知らなくない?なんで?」
「だって、お前の仲間じゃん?」
類人猿と人間のDNAって、ほぼ同じらしいよ。
99%は共通してるんだとか。
……って、そうじゃなくって!
「ちっが〜う!一緒にすんな!」
「やべ、う◯こ投げてくる!」
「投げないから!違うから!」
「あ、この隣に猿山あるって!そろそろ帰る?」
「家ちゃうわ!だから、猿じゃないっ!」
ここで私が勢いよく拳を上げて、彼に向かってパンチするフリをすると……彼もまた怯える真似をしながら呑気な声で、怖いわぁ〜なんて言って。
なんでもないこのやりとりすら、またなんともおかしくって……
「……ぶふっ!」
思わず吹いてしまった。
しかも吹き出した事で変にリミッターが外れ、私はしばらく笑いが止まらなくなる羽目に。
そんな私を見て彼もまた腹抱えて笑い出して、また私もこの意味不明な状況になんかじわじわと笑いが込み上げてきて……無限ループ。
こうやって思い出してみると、そんな大して面白い話でもないんだけど……お腹が痛くなるまでず〜っとその場で笑っていた。




