番外6隙あらば自分語り
お話の合間、ここでまたちょっと一休み〜……
……
…………
なんでこんなテンション低いかって?
いや、それがさ……さっき机の上に変なメモがあったのよ。
『ワシ、孫の相手をしていたらちょっと腰を痛めてな……次のシナリオを進める準備をしてるんじゃが、まだもうしばらくかかりそうなんじゃ。始まるまでちょっと何か面白い話でもして、なんとか場を繋いでくれんかのぅ?何を喋るかは自由、君に任せた。そんじゃシクヨロ⭐︎ (* >ω・)ノ ば〜い神』
って。
腹立つわぁ、特に最後の顔文字。
ってか、腰痛めたって……いやいや、なんでそんなののために私が時間稼ぎしなきゃいけないのさ。
そもそもあんた、神様でしょ〜が。そのくらい魔法でなんとか……
……でも、こうやってぶつぶつ文句言っててもしょうがないか。
シナリオ進めないって言われちゃ、もうどうしようもないし。
それでもこうやって意識起こしてくれて、さらに何喋ってもいいって言ってくれてるんだから……せっかくの自由時間、私の事喋ってみようかな。
隙あらば自分語りかよ、って?そんな隙を作った神様が悪い。私悪くな〜い!(開き直り)
……というわけで、気を取り直して!
突然ですが、自分語り大会開催!いえ〜い!ドンドンパフパフ〜!
攻略キャラ五人と一緒の、賑やかな毎日。
その主人公なんて言ったら、めっちゃポジティブで性格良くて陽キャな女子高生……そう思われてると思う。
しかし実際は、かなりのコミュ障で……
いきなり話を振られようもんなら、散々頭の中で悩んだ挙句「……」で終わり。
上手い返しなんて、一度もできた試しがない……うん、我ながらなかなかひどい。
ほんと、誰か助けて〜。会話が上達するお薬、誰かすごい人作って〜。
助けられない?そんなんどうしようもない?
デスヨネー。もういい年なのにこれだもん、どうしようもないわな。たはは……
でも、だからか……なぜかいつも聞く側に回る事が多かった。
ふと気づけば、なんだかんだ毎回聞く側にいた。
話せないからって、別に聞き上手って訳でもないんだけど……何かと聞いて聞いて!って言われる事が多くて。
自分も初めて来た場所なのになぜか道を尋ねられ、ハプニングがあった時はなぜか真っ先に呼び止められる……そんなタイプだ。
といっても、中身はただのコミュ障だから、適当に誤魔化すだけで終わっちゃう事もしばしば……いや、結構ある。ごめんなさい。
でもそんななのに、なぜかよく話しかけられる不思議。
だから、なんかもう……もはやこれはそういう星の元に生まれちゃったのかもしれないって思って。
人の話を聞くっていう使命の。
この世界に来て、五人の悩みを聞くようになって……より一層確信するようになった。
もしかしたら神様も、それを知ってて私を呼んだのかもしれない。
ここに来てすぐは、なんで私なんかが……?なんて思ってたけど。
でも、なんか分かってきた気がする。
私がやるべき事は、あの五人の悩みを聞いてあげる事。
それだけじゃ何の解決にもならないけど……多少苦しみの緩和くらいはできるはず。
だから、側にいて彼らの溢した本音を拾ってあげる事、それが使命……はっきりそう言われた訳じゃないけど、なんかそんな気がしてきたんだ。
彼らの悩みは、それぞれみんなバラバラ。
でも、どれもみんな本当に苦しんでる。誰が一番つらいなんて決められない。
まだ高校生だというのに家業を継がされる……そんな重い責任に潰れそうで苦しんでる、唯。
今一番本気で考えないといけない事は何か、あんなふわふわしてるけど……おそらく本人はちゃんと分かってる。
けど、直視したら心が潰れてしまうって本能的に分かってるから……何事も本気じゃないフリをして、ふざけてる風を装って……真面目な自分を封印している。
不真面目で遊んでばかり、常にヘラヘラしてて……そうやってまるで何も考えてない風を装って、つらい現実からひたすら逃げている。
一度話聞いてあげて、あれで少しは落ち着いたのかな……?どうだろ?
両親に姉、優秀すぎる家族と比べて劣等感に苛まれている、秋水。
有名すぎるがゆえにテレビや雑誌に取り上げられ、嫌でも何かと目にする家族の姿。
彼だって頑張っている。
頑張ってはいるけど、なかなか追いつけない……そんな焦燥感が彼を苦しめている。
まだまだ彼は高校生だし、伸び代だってたくさんあるはずなんだけど……本人には全くそれが見えていない。
彼もまた、私につらい気持ちを打ち明けてくれて……私はそれを応援したつもりなんだけど、なんか違う意味に取られてるような気が……ううう、コミュ障つらい。
それでも私の真意、ちゃんと伝わってるといいんだけど……
幼い頃から甘えられず育ってきて、まだ残る甘えたい気持ちとそれを抑える理性とで葛藤する、いっちー。
厳しい躾の元、なんでもそつなくこなせるようになったらしい。
でも、幼い彼の中にあった誰かに甘えたい気持ちは、鎮まる事なく心の奥底に沈められたまま。
彼だって本当は、誰かに甘えたい。
もっと胸の内語っていいのよ?みたいな事言ったはいいけど……どうかなぁ。
う〜ん、だからコミュ障……
理不尽ないじめの標的にされてもがき苦しむ、千世ちゃん。
彼の一番の特徴である長い前髪は、今も周りの世界を拒絶し続けている。
一体彼の身に何があったのか、どうしてあそこまで暗くなってしまったのか……私には何一つ分からない。
本人が話そうとしない限り、謎に包まれたままだ。
学年が違うせいか、今までほとんど彼とのイベントがなかったから、あんまり会話した事なくて……色々と謎ばかり。
LIMEも前に勝手に進んでる事気づいてから、たま〜に見るようにしてるけど……それでも分からない事だらけ。
歩君は……う〜ん。唯一まだその辺が全然分からないキャラなんだよな……
ほぼ毎日一緒に下校してて一番よく知ってる存在、なのにこういうところは一番分かってない。
本人も言いたがらないし。
でもなんか最近ちょっと様子が変だし、変な夢見たとかチョロっと言ってたし……全然何もないって訳じゃなさそうなんだけど……
きっとこの先また何か言ってくれるかもかもしれないし、注意しとこっと。
まぁ無かったら無かったで。無いに越した事はない。
……と、ざっとこんな状況。
でも、私が頼まれたのは『迷い人』を救えって事。
助けるよう言われているのはその人一人だけ。
だけど……できるなら、私は五人とも救ってあげたいと思ってる。
あ、あの爺さん……じゃなかった、神様には秘密ね。
そんな事言っちゃったらきっと、迷い人以外の人間に無闇に関わるな!って怒られちゃうから。
関わるなって言われたってさ、ほら……他の人だって苦しんでいるのに、それを見捨てるわけにはいかないじゃない?
人の話を聞くのが使命なら……彼らの悩みを聞いてあげるのも使命だと思うの、私は。
そして……!
そんな可愛い彼らにオタクパワー全開の歪んだ愛情をかけ……!
『迷い人』探ししてるって事を利用して、みんなときゃっきゃウフフしまくるのも……!
スキンシップの時間に好き勝手さわさわするのも……!
私の使命なのだ……っ!!!
ってかもう、これあれだよね?!
結構際どいところというかほら……腰のあたりまで触れたんだし……これもう、全身触ってもいいって感じじゃない?!(謎理論)
もうこれ全部許されたも同然じゃない?!いいよね?!これもういいよね?!(謎理論その2)
え?そこまでしてどこ触りたいって……そりゃ〜、あれでしょあれ!
決まってるじゃん、そりゃあ……お、
『はい、ストップ〜!』
あ、ちょ、急に視界がぐねぐねに……!
『お待たせ!ワシ、ふっか〜つ!』
聞き覚えのあり過ぎる声がする。気の抜けるような呑気な爺さんの声。
でも、周りを見回しても姿はなく。相変わらず声だけなのね……
え、でも待って、今めっちゃ大事なとこ……!ちょっ、せめて……最後まで……!
『させるかっ!』
あ〜っ!!!