13-5-3.僕の事をまだ知らないから
※神様視点です。
おやすみと言った後、すぐに視界はぐりんと回って天井に。
どうやらベッドで横になったらしい。
あれほど賑やかだった部屋はしーんと静かになって、今や聞こえてくるのは彼の呼吸の音だけ。
(……)
すると突然ふっと辺りが真っ暗になった。
む、明かりが消えた?
あっ!まさか君、もう寝るつもりなのか?
ま、まずい……!このままじゃ何も見れずに魔法が切れてしまう……!
ちょ、ちょ、ちょっとだけ……意識覚醒の魔法を追加じゃ……!ほいっ!
(……?う〜ん……?)
ふぅ、危ないところじゃった……
どうやらこの彼は今すぐにでも寝たい様子。
それもそうか……これまで連続で彼らの様子を観察してきて、最後の五人目ともなれば結構良い時間……そりゃ眠くもなるわな。
そうか……じゃが、ほんの少しだけ君の頭の中を見せて欲しいのじゃよ。
見終わったらすぐ解放する、そう約束する。だから、眠いじゃろうがもう少〜しばかり辛抱しておくれ……すまんのぅ。
(……ん?)
(んんん……あれ?さっきまですごく眠かったのに、なんか目が冴えてきた……)
うとうとして今にも眠りに落ちそうじゃったが、魔法が効いたのかなんとかまた目を開けてくれた。
眠い中の協力、ありがとう。
ようし、待ってろ……さっさと終わらせるからの。
(なんだろ?寝る前にコーヒー飲んだ訳でもないのに……ま、いっか。でも、こういう時ってなかなか寝れないもんだよな……ソイッターでもして時間潰そうかな)
(……いや、やめとこ。これから僕は変わるんだ、ソイッターも今からしばらくは封印だ)
ソイッター?
ええと……なんじゃ、あれか?えすえぬえすとかいうやつかのぅ?
(……すごいよなぁ、先輩は)
しばらくうとうとして……ようやく彼の頭に浮かんできたのは、もちろん七崎の姿。
それも、食堂でこの彼を助けた時の姿のようだ。
まぁそうじゃな……君の場合、あの時の印象が一番強いんじゃろうな。
(それに比べて、僕は……)
(僕なんて……碌な奴じゃない)
(先輩が思ってくれてるほど、僕は良い奴じゃない……本当はもっと陰湿で捻くれ者で、めちゃくちゃ卑屈で……)
(それでも……そんなでも、先輩は一生懸命僕の事庇って色々と言ってくれた。知り合いでもなんでもない僕なんかのために一緒に考えてくれた)
(そう、でもそれはきっと……僕の事をまだ知らないから。ただの無害な人だと思ってるから、だ。良い風に勘違いしてるんだ、本当の僕がどんなに酷いか知らないんだ……)
ここでいきなり視界が真っ黒になった。
これまでも十分暗かったが、さらに真っ黒。
どうやら瞼を閉じたらしいな。しかし、そのおかげで視覚情報はさらに遮断されてしまった……




