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その差、一回り以上  作者: あさぎ
彼らの胸の奥、しまい込まれた心の声
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13-4-3.これは果たして恋なのか?

※神様視点です。

 


 浮かび上がってきたのは……前回同様、制服姿の七崎だった。


(七崎……)


(呑気でお調子者で、いつもなんとなく騒がしくて……でもどこか肝が座ってるというか、達観しているような雰囲気もある……不思議な人だ)


 ここでおもむろに机の引き出しからスマホを取り出し、ベッド脇から伸びる紐に繋いだ。


 やっぱりそれ必要なのね……




 繋いだまま手元に手繰り寄せると、なにやら画面を指で器用に摩り始めた。


(……)


 スッスッスッスッとリズミカルに、太く骨ばった指が器用に板の上を滑っていく。


 大量の文字が流れていくのが見えるが……ワシには解読不能じゃ。

 自分のペースで見てるならまだしも、彼のペースで進めるから……目の焦点が合う前にどんどん次へ行ってしまう……


 う〜むむむ……駄目じゃ、読めん!


(……駄目だ、無い……どこにも書いてない……)


 おや?何か探してるのか?調べ物?


(参ったな、本当になんの手がかりもない……)


 探し物はなんですか♪見つけにくいものですか♪


(はぁ〜……)


 む?どうした、そんな大きなため息なんかついて?

 声だけだったが、彼の重い気分が十分過ぎるくらい伝わってくるほど。


 なんだなんだ、どうしたんじゃ?

 なんか知らんが、茶化してる場合じゃなさそうじゃの……仕方ない、ここは真面目に行こうか。ワシの素晴らしい歌声はまた今度。




(なんでだろう……会うとついつい、色々と話をしたくなってしまう。別に全然そんなつもりがなくても、そうなってしまう……)


(好きになったら誰だって話しかけたくなるって、恋愛の始まりはそんなものだって、色んな文献に書かれていた……)


(……でも、なんか違う)


(そうじゃなくって、何か違うんだ……話しかけたくなるのはそうだが……好き嫌いとかそれ以上に、自分の全てを知って欲しくなってしまう……全部伝えないと気が済まなくなってしまう……)


(聞かれてもいない自分語りをしてしまいそうな、強い衝動に駆られて……彼女の事云々を抜きにして、自分の話をいかに伝えるかって事ばかりに気がいってしまう……)


(それじゃまるで、母親にその日あった事を話す子供のよう……いや違うな、これはもはや夜の店に入り浸って武勇伝を語るおっさんか……)


(そんなの最悪じゃないか……)


(自分自身そういうの分かってて止めてるから、実際にそのまま口に出る訳じゃないが……いつかそのうちうっかり喋ってしまいそうだ……いつかは俺も、そんな最悪の男になってしまうかもしれない……)


(はぁ……)


 ほうほう。七崎といるとつい自分語りしてしまいそうになる、と。


(七崎に対してしか、そういう感情は起こらない。他の人は全然……それが女子であっても、そう)


(何か特別な感情があるのは確か……だが、これは果たして恋なのか?)


(確かに、彼女の事は嫌いじゃない。夢中と言うほどじゃないが、少しだけ脈の乱れを感じる事もあるし……どちらかというと……)


(ど、どちらかと言うと……好き……なのかもしれない)


 好きと言う前後の数秒、ほんのわずかだけ不自然な間があった。


 そうかそうか、何とは言わんが……そうか。

 心の中でまで淡々とした口調で、十代にしては落ち着いて見える彼じゃが……やはり年相応じゃのぅ。


 七崎が可愛いと興奮してたのもなんとなく分かる……これが今時の、いわゆるギャップ萌えってやつじゃろ?ワシ知ってるぞ。

 ……え?死語?




(でも……そうだとして、これはなんだ?なんなんだ?独りよがり?自己満足?我儘?甘え?)


(これは、本当に恋なのか?)


(こんなのが……恋だっていうのか?)


 ほほほっ、どこか腑に落ちないかもしれんが……残念ながらそれも恋じゃよ。


 この世界には多くの人間がおる……人の数だけ恋の形がある。誰一人として同じ展開はない。人それぞれ。

 君のそれもまた、恋なんじゃろう。


 一人の人間を心から慕う気持ち……それが恋。

 説明できなくても確かにあると感じているのなら、それはちゃんと恋じゃ。


 しかし……好きというだけでなく、同時にどこか母性的なものを求めてしまう自分に疑問……というか、何か抵抗を感じて悩んでおるようじゃの。


 ふ〜む……しかし、確かにその気持ちは分かる。

 どんな立派な男であろうと……いや、どんなに出来た人間であろうと、誰かに自分を分かってもらいたいもの……

 女神のような暖かく優しい存在に、ありのままを受け入れて欲しくなる……そんな思いは誰にでもある。




(分からない……どこを探してもなんのヒントもない……)


(これは……まさか、幼い頃母親にあまり構ってもらえなかったことの反動だろうか?)


(しかし、そうだとしても……これでは駄目だ。七崎は一人の女性なのであって母親ではない。こんなこと考えてちゃ、駄目だ……)


 ふむ。君が言うように、だからといって行き過ぎは良くない。


 本当の年齢はさておき……今の七崎は女子高生、十代じゃ。つまり同年代の少女なのであって、母親ではない。お互い、まだ未熟な者同士……


 だから尚更、それを彼自身よく分かっているようじゃ。

 よく理解してるからこそ、こうして悩む訳で……




(でも、いざ彼女を前にすると……うっかり色々喋って、いつかその本音が漏れてしまいそうで……怖いな)


(あの日、一緒に図書館で勉強していた時……ついうっかり色々と自分の事ばかり喋り過ぎてしまった)


(でも、あれは……とても心地良かった。うんうんと穏やかに聞いてくれて、気持ちを受け止めてくれて……心の中の何かがほぐれていくような感じ……今までのどんな時よりも幸せな瞬間だった)


(だがそういうのを含め、今こうして彼女の事を考えているというのも……やはり恋なのか?)


(……駄目だ、考えれば考えるほど分からない……)




 ふむふむ……これで分かったぞ。

 君の場合、少し頭でっかちというか……色々と考え過ぎるせいで悩んでしまっているようじゃ。


 他に同じ例がなく説明しきれない自分の恋に、理屈ばかり求めて……結局、悩む必要性がない事に気づけなくなってしまっている……


 心はどんどんほぐれていくが、逆に頭は凝り固まってしまっているみたいじゃのぅ。

 いずれその悩みの無意味さに気づいてくれるといいんじゃが……


 まぁそうじゃな……これをもし、無理矢理魔法でそれらしい理由作ったとしても、自分で結論を出さない限りは納得してくれないじゃろう。




 となると、この彼もまた……やはりワシは見守るしかできないという訳か……なんと焦ったい……


 いや……ならばせめて、これだけは……

 頭脳を休める静かな時間を与えてやろう、そうしよう……いっち、に〜の、それっ!


「……な、なんだ?いきなり眠くなってきたぞ……?」


 さぁ、思考を止めよ。理論を手放し……君の今の感覚を、感じるまま素直に受け取るのじゃ。


「ど、どういう事だ?!今何が起こってる?!」


 人間の知能には目を見張るものがある……じゃが世の中、全部が全部説明できるという訳ではない。


 そういう時は、何も考えず思うまま行動した方がかえって正解だったりする……たまには肩の力を抜いて、感じるまま動くのも悪くないもんじゃよ?


「くっ……眠気が強過ぎて、意識が……飛びそ、う……に……」


 君はいつもどこか神経が張り詰めてしまっているようじゃ、もう少し力を抜いてリラックスした方がいい……


「すぅ……」


 さぁ、ゆっくりおやすみ……



他と違って、好き好き度合い低めのキャラです。


というより、本心としてはおそらく他四人に負けないほど好きなんだけど、本人がそれをいまいち自覚できてない……というパターン。

そんなちょっとスローペースでもどかしい感じがまた良い……

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