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その差、一回り以上  作者: あさぎ
プ◯キュアじゃないよ
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2-4ー1.内気後輩パープル(???)



(まだ日が変わらない……今日は随分イベントラッシュだなぁ)


 今日がまだ終わらないという事はつまり、まだこの他にもイベントがあるって事なんだろう。


(次は誰のが来るんだろう……)




 そんな事を考えていると……突然フッと辺りが明るくなった。

 なんだろうと思って窓の外を見ると、眩しいほどの強い日差しが照りつけていて。


 さっきまでも晴れてはいたけど、日差しはもう少し控えめだったはず……


(これって、まさか……)




「しず、お昼行こ?」

「あ〜お腹空いたぁ。今日は何食べよっかな〜?」


 友達がお昼に誘ってきている。つまり、今は間違いなく昼休み。


(……!時間が飛んだ……!)


 一限始まった瞬間、ふと気を抜いていたらいきなり時間が飛んでしまった。



 あ〜びっくりしたぁ!もう、なんだよいきなり!


 たまに時間飛ぶってのはもう充分分かってるけどさ!

 いきなりじゃなくって、ほら!せめて予兆というか前触れというかさ……!




 心の中でぶつくさ文句言いつつ、友達二人と一緒にランチ。

 今日はお小遣いにまだ余裕があるから食堂で。


 私はタンメン大盛り、野菜マシマシ。

 他の二人はスタミナ丼とたぬきうどんをチョイス。


 友達二人の勢いに乗せられて大盛りなんて頼んじゃって……流石にキツイかって思ってたけど、いざ食べてみると普通に入るんだな〜これが。


 自分で自分がちょっと怖くなってくるレベル。

 腹ペコあおむしなんて可愛いもんじゃない……ブラックホールだ、ブラックホール。


(でも……そういや、当時の私もこんな感じだったっけな)


 大した運動してなくても常にお腹空かせてて……

 で、これだけ食べてもまたしばらくしたら小腹が空いて、またでかい菓子パンとか食べ出す……


(恐るべし、高校生の胃袋……!)






 そんな三つのブラックホール……もとい女子生徒は、ものの数分で食べ終わり暇を持て余していた。


 だからって、その場に居座ってお喋りしていたら……


「すいませぇ〜ん!」


 突然こちらを呼びかける声に遮られてしまった。


 声の主はチャラそうな男子、一人。


(え?何よ、急に……)


「隣、いいっすかぁ?」


 そう言いながらこちらを見てなにやらニヤニヤしている。


 食堂内はどこも四角いテーブル一つに対して椅子が四つあって。

 だから三人で座っている今はちょうど一人分、私の隣の席が余っていた。




 でも。それにしたって、なんか嫌な感じ。


「駄目っすかぁ?」


 ニヤニヤニヤニヤ。

 耳には校則違反のピアスが光っている。


(な、何だコイツ……)


 舐めてんのかい?私を?


 これが本物の女子高生なら、きゃ〜こわ〜い!って素直に引くんだろうけど。


 おばちゃんにとっちゃ、怖いも何もない。

 ただ、若い子が生意気ねぇってなるだけよ?


 ここはもういっそ……この彼の今後のためにも、そのアホ面一発引っ叩いてやろうかしら。


(いやいや、いかんいかん)


 ワタシハジョシコーセー。

 おばちゃんの私は封印したんだから、駄目駄目。


(でも何の理由もなく断るのも変だし……仕方ない、ここは大人しく引くか)


 渋々横に広げて置いていた財布や水のコップとかをどかして、席を確保してあげた。


「はい、どうぞ」

「あざっす!……ほら、いいってよ!『ちーちゃん』!」


 ちーちゃん?


「ほら!は〜や〜く〜!」


 後ろを向いて大きく手を振る、チャラ男。


(えっ、仲間いんの?)


「ほら!早く来いよ!お前が学食で食べるって言うから、席取っといてやったんだぜ?」

「やめてよ……」

「ほら、早く早く!せっかく先輩が空けてくれたんだぜ?」

「や、やめてってば……」


 大柄な男子二人に両腕をガッチリ抱えられながら、小柄な男子生徒が無理矢理引きずられてきた。


 連れてこられたのは、前髪の長い気の弱そうな男子。

 両側の二人はおそらくあのチャラ男の仲間だろう。


 ふざけてるとかそういった感じではないのは、雰囲気ですぐに分かった。


(えっ、まさかこれ……いじめ……?)


 異様な光景に辺りはさあっと静まり返り、なんとも言えない緊張した空気が漂い始める。




「ほら、座れって!」

「……っ!」


 空いた席に力ずくで無理矢理座らされ、今にも泣き出してしまいそうな雰囲気で……


「や、やめて……やめてよ……」


 すぐにでも駆けつけたい気持ちに駆られたけど、かといっていじめっ子達を刺激したらもっと悪化する可能性もある。


 もっとひどい事されるかもしれないと思うと……どうにも動けずにいた。


(どうしようこれ……先生に言う?)


「おら!お前、何食うんだよ!頼んでやろうか?」

「……いいって……もう、やめて……」


(いや……でも!もう無理!見てらんない!)


 気づいたら私は、その子を庇うように彼らの前に立っていた。


「ちょっと!やめなさいっ!」


 チャラ男達三人はバッとこちらを向いた。

 相変わらずニヤニヤしたままで。


「なんすか先輩?」

「嫌がってるじゃない!やめなさいよ!」

「もしかしてぇ、先輩怒ってる?怒っちゃってるぅ?」


 駄目だ、全然効いてない。


 先輩って言ってるから、おそらく一年生なんだろうけど……相当舐められてるみたいだ。


(何よその態度!ヘラヘラと……!)




「ちょっと!何よアンタら?!」

「舐めてんの?こっちは先輩なんだけど?!」


 とうとう一緒にいた友達二人まで怒り始め、私以上の迫力でいじめっ子達ににじり寄っていく。


 こんな状況下でも、後で噂になるの嫌だしなぁとか変に色々考えて声量抑え気味の私と違って……フルパワーのでかい声。

 現役女子高生、強し。




 三対三。数では互角になった。


「ちっ……くそっ!」


 しかし急に相手が増えた途端、狼狽始めるチャラ男達。

 向こうだって三人いるのに、だ。


 おそらく気の強い女子相手に威張れないタイプと見た。


「……ああ、くそ!めんどくせぇ!おい、帰るぞ!」


 悩んでいたようだったけど、結局撤収を決めたらしい。

 女子相手にえらい弱気だこと。


「待て!逃げんな!」

「こら!待ちなさ〜い!」


 と言っても、女子二人の怒りはまだ収まらないようで……慌てて逃げ出す彼らを般若のような形相で追いかけていった。


 現役JK流石っす。すごいバイタリティ。


 (おばちゃん)なんて、相手逃げたんだしもういいやってなっちゃったもん。

 いやぁ、若いなぁ……



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