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その差、一回り以上  作者: あさぎ
みんな違って、みんないい(感じにヤバい)
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12-5.パッと明るいビタミンカラー



「し〜ず〜ちゃん!」

「うわっ!」


 突然ニュッと現れた、黄色い髪とふにゃふにゃの笑顔。


 なんだか急に目の前がパァッと明るくなった……ような気がした。

 別に明かりが点いたとかそういう訳じゃないのに、なぜか急に視界が明るく見えてきたのだった。


「び、びっくりした〜!」

「大丈夫?なんかすごく暗い顔してたけど」


 ありがとう唯。

 こういう時のムードメーカーのありがたみよ……


「ううん、大丈夫大丈夫。ちょっと眠かっただけ〜」

「そっか、じゃいいや」


 そうやってあまり深追いしてこないのも、彼の良いところ。


 明るいしふわふわしてるけど、でもこういうところはさっぱりしてるタイプだ。

 色々喋るし聞いてくるけど、でも嫌なところは触れてこない……そんな良い感じの距離感を保ってくれる。


 これが歩君とかだったら、こうもあっさりとは引かなかっただろう。

 きっと、私の心配と単なる疑問でなんで?どうして?って質問責めされていた……


「……で、どう?楽しんでる?」

「う〜ん、まあまあかな。今のところ店番しかやってなくて、まだ他のお店全然回れてないからさ〜」

「え、全然?!」


 いや当番制なんだし、担当時間外は当然自由に遊べるはずなんだけど。


 何度も言うけど、ここはゲーム……システムという名の理不尽パワーがなぁ……


(肝心の自由行動の時間、見事に全部すっ飛ばしやがってなぁ……これなぁ……)


 ところであの爺さん、全然出てこないけどほんとどこ行った……?

 LIMEの件といい、色々と言いたいことが溜まってきてるんだけど……


(右フックの準備はもうできていてよ?覚悟はよろしくて?うふふふ……)




「あ……えっと、なんていうか、色々お店手伝ったりとかしてたら……うまく時間取れなくてさ」


 毎度こうやって言い訳を考えるのも、なかなかに一苦労。


「え〜それ最悪じゃ〜ん。まじか〜、変わってあげたいけど……別のクラスだからなぁ」

「いいよいいよ、店番もうすぐ終わるから。そっちこそ、こんなとこでのんびりしてていいの?」

「ああ、大丈夫大丈夫。俺のクラス、展示系だから」

「へ〜展示かぁ。どんなやつ?」

「教室のそこらじゅうに画用紙貼って、絵の具で絵描いて……あと、風船貼り付けたりしてさ。なんだろ、教室自体がアート作品ってやつ?」


 あ〜。なんとなく分かった。

 地味に準備めんどいけど、1番楽なやつだ。


 しかも唯のクラスの担任って、確か美術の先生じゃなかったっけ?それなら尚更だ。


「だから、お客さんには勝手に来て自由に見てってもらえばいいし〜。接客の必要がないって訳よ」

「え〜!いいな〜!」


 いいなぁ。

 お店出すのもそれはそれで楽しいけど、当日なんだかんだ慌ただしくてなかなかゆっくり他を見て回れないのがネックなんだよなぁ……




「静音ちゃん、ちなみにこれあとどれくらい?」

「ああ、当番?え〜と、あと……」


 時計を見ようと思ったけど……そういえば近くになかったんだっけ。


 スマホはここじゃなくてロッカーの中。離れてるから取りに行くのもなぁ。

 どうしようと思った瞬間、目の前にスッとスマホの画面が現れた。


「……!ありがと!」


 唯がスマホを突き出して見せてくれていた。


 ホーム画面はどっかで撮ったらしい自分のバイクの写真。

 雲一つない綺麗な青空が背景で、バイクの黒がなかなかよく映えている。


「ええと……あと五分かな」

「んじゃ、終わったら一緒に回ろうよ」

「えっほんと?やった〜」

「どこから行く?ってか、何食べたい?」

「えっとね……まずは……」


 お昼は余った焼き鳥をもらって食べたから……お肉はもういいかな。

 ケバブとか肉まんとかそういうお肉系のお店は一旦パス。


 う〜ん……じゃあ、まずは……


(あ、ドーナッツ……)


 ふと脳裏に数分前の映像がよぎる。

 ファンシーな桃色の袋を下げた、あの高身長男子の姿。


 今思い出すとちょっとじわじわ来るけど。

 くっそ似合わなさ過ぎて推せる。


 あれほど買い込むくらいだし、きっと美味しいんだろう。


「じゃあ、ドーナッツ食ぶぇ……た、うぃ……なぁ……」


 あれ?あれれ?

 はっきり発音したつもりがグニャングニャンに……


(わ、わわわ……!視界が……歪んでく……!)




 ふにゃふにゃの視界の中、意識がどんどん遠のいていく。

 イベントシーンが終わる時は大体いつもこう。フェードアウトってやつ?

 何度もやってもう慣れたけど。


 いや、確かに全キャラ出てきたけどさ……文化祭なのに私何も遊んでないぞ?普通にしっかり働いてたぞ?

 これで終わりって……いつもの事ながらひどくない?


 これはもう、右フックだなんて甘い事言ってないで、限界まで力込めた右ストレートを奴の顔面にプレゼントしてあげようか。うん、そうしよう。



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