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その差、一回り以上  作者: あさぎ
みんな違って、みんないい(感じにヤバい)
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11ー1.バイクの免許は16歳から

って、ご存知でした?

実はこれ書く前に色々調べてて、そこで初めて知ったっていう……恥ずかC〜。

 


 やべ。遊びすぎた……




 デート三昧の日々を送ったツケは、もろテスト結果に出ていた。

 全科目ボロボロ。


 再試験はギリギリ免れたけど……なかなかに悲惨だった。


(いくら勉強のシーンはカットされるからって、遊んでばっかりじゃそりゃ駄目だわな)


 いや、とはいえただのゲームだし点数低いからって何かある訳じゃないけど……赤い字で下の方に書かれた自分の順位を見てると、なんか凹む。


(はぁ〜ぁ……どこか気分転換しに行こうかな……)


 ちょうどいい事に、今日はまだ自分の部屋でのんびりしてるところで、なんのイベントも始まってない。

 いつもみたくこのまま自分の部屋で待ってれば、誰かから誘われて、どこか遊びに行くなりなんなりイベントが起きるんだろうけど……


(ええいっ!動くなら、今……!)







 結局、バス使ってちょっと遠出して……来たのは湖だった。


「ぶぇっくし!」


 女子力ゼロのくしゃみが静かな湖畔に響く。

 夏だっていうのに、まるでここは異世界……吹き抜ける風はキーンと冷え切っていた。


 湖、舐めてたわ。めっちゃ寒い。

 半袖にサンダルでくるような場所じゃなかった。


(ちょっと涼むつもりが、まさかこんな寒いなんて……)


 本当は木陰のベンチにでも座ってゆっくりするつもりだったけど、寒くて全然駄目。


 だから今は、熱を生み出そうと必死で歩いてるけど……開始たった数分で、もう早速死にそう。


(無茶してないで、そろそろ帰ろうかな……)


「はぁ、さむ……っ?!」


 思わず独り言を言いかけたところで、ストップ。

 突然ふわっと何かが肩にかかったから。


(な、何……?)


 よく見ると、それは男物の大きな黒いパーカーだった。




「ま、まさか……」


 驚いて振り返ると……そこには鮮やかな黄色がいて。


「やほ〜」

「唯?!」

「あはっ、びっくりした〜?」

「そりゃびっくりするよ!だって、まさかこんなとこで会うなんて……」

「そんな薄着じゃあ寒いでしょ?それ着なよ」

「ありがとう。でも、唯……どうしてここに?」

「友達とツーリングしてたの」

「えっ、バイク?!今17歳でしょ?!まさか……」


 ま、まさか……無免許運転?!


「ん?バイクの免許って16からだよ?」

「へ?」


 まじか!

 車の免許と勘違いしてたわ……やだ、恥ずかC〜。


「なんだ。じゃあ、よかった……」

「せっかくだし、どっか行こ?」

「あれ?バイク仲間は?」

「ああ、それなら大丈夫。朝から遊んでさっきここで解散したばっかだから」

「そっか〜」

「あ……逆に、七崎ちゃんの方は大丈夫?」

「え、私?」


 ぎくっ。ま、まさか……


「うん。いつだったっけ、前に誰かと遊んでるの見かけたから……あ、花火大会の時か」


 わ〜お、しっかり覚えてらっしゃる!


「えっ、あ、あ〜……その……違うの、ただの友達で……」

「いいよいいよ、無理に言わなくて」


 あ〜……勘違いされてる……っぽい……?


 いや、でも実際そう思われるような事してたからなぁ。お互いバッチリ浴衣でキメッキメだったしなぁ。

 あれをデートと言わずして何と言う。


 とはいえ実際のところは……あれは『浴衣着て花火大会』っていうイベントだったからああなった訳で……恋愛感情うんぬん抜きにして、システムで強制的にそうさせられてしまっただけ。


 こちらの事情としてはそれだけなんだけど、側から見りゃそりゃあ……ただのデートだわな。


 そしてなにより決定的なのは……

 花火大会提案したのは歩君だけど……彼の誘いを断わらなかったのは、あくまで私の意思って事。


 断ったら断ったで、どうせ好感度高い順に次々花火大会誘われて、誰かと行くって話になるまで次に進めなくなるんだろうけど。システム的に。


 でも少なくとも、あの五人の中から歩君を選んだ(事になった)のは、私の選択。


 そんな私の事情までは、流石に唯も知らないだろうけど……でも……


(……)


 なんだろう、この感じ。この感情。

 後悔?罪悪感?


 別に何も悪い事はしてない。

 けど、う〜ん……もやもやする。


 できれば、速攻で誤解を解きたいくらいだけど……どう足掻いても疑わしくなるのは目に見えてるから、それもできず。


 じっとしていられない。けど、何かできる訳でもなかった。


(う、うぐぐ……!)


 そうやってもどかしさに内心悶える私の目の前には、いつも通りのふにゃっとした笑顔が。


「……」

「……」


 そんな彼を前にして、より一層心の中はもやもやで埋め尽くされていく。


(なんとなく思い出してきた……そうそう、こんな感じ……私がプレイした時もこんな感じだった……)


 思い出すのはストーリーとか攻略法とか、あとは面白かったエピソードだけで良かった。

 ほんとはあまり詳しく思い出したくなかった。


 けど、はっきり思い出してきてしまった。プレイしていた当時の感覚を。

 胸に重いドロドロを詰め込まれていって、徐々に圧迫されて息ができなくなっていくような、あの感じを……


 こうやってじわりじわりとゆっくりと、微妙なすれ違いを何度も重ねて不穏な感じになっていく。

 といってもこれ恋愛ゲームだし、どのみち誰か一人選ぶ事になるから、他のキャラとこうやってギクシャクしちゃうのは仕方ないっちゃ仕方ないんだけど……


 でも、この気まずさこそがこの『きらメモ』というゲームの真骨頂なのだ。

 クソゲーたるゆえんであり、ある意味人を夢中にさせる魔のゲーム。


 悪意ゼロのキャラ達を前にして、悪事(イベント)を働く(こなす)主人公。

 吐きそうなほど重くて、とにかくしんどい……でもそれこそが、このゲームを修羅場ゲーとして確固たる地位を確立させていた。


 他に追随するものはない。というか、普通しない。

 そのくらい頭のおかしい(褒め言葉)ゲームなのだ、これは。


(まぁ、それを言うなら……そんなのをプレイして楽しんでる人達も同類な訳だけど)


 むしろこれでよく売れたな?よくこんなん流行ったな?

 別に製作者側としてはそういうの狙って作った訳じゃないらしいけど……それはそれである意味天才だな?




 ともかく、胃に穴が開くかエンディングに辿り着くかの戦いだ。頑張れ私の胃……



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