10-2-2.デートという名のただの面接
落ち着かない気持ちを紛らわせたいけど……このデートイベントが始まってから今までずっと、会話は一言も無く。
緊張感がほぐれるどころか、むしろ時間経過でどんどん緊張が増していた。
「……」
「……」
手持ち無沙汰だし、せっかく出されたんだからって少しずつモンブランをつまんでたんだけど……なんか、もうそろそろ食べ終わっちゃいそうな勢い。
(やばい、ここまで会話ゼロじゃん……なんか言わないと……)
気まずさが限界突破しそう。誰か助けて。
(何か、何かこう、いい感じの話題を……う〜ん……)
「……こういうとこ、よく来るのか?」
「へひゃっ?!」
び、びっくりした〜。いきなり喋ってくるんだもん。
話題探しに夢中な私の耳に、不意に入ってきた声。
男性にしては高くて、でも女性の声に聞こえるかっていうとちょっと違う。
少し鼻にかかった音色で……呆れてるような失笑してるような、冷たくて少し平坦なイントネーションの……そんな声。
「なんだよ、そんな驚く事ないだろ?」
「ごめんごめん。考え事してて」
「ふぅん……で?」
安定のこの態度である。
素晴らしいほどの上から目線。ブレないね君。
「え、えっと……」
こういうとこって?
つまり、今いるこのカフェみたいなところ?
いや、あんま高級そうなところは流石に……
「う〜ん、こういうおしゃれなところは滅多に来ないかなぁ」
「じゃなくて、カフェによく行くのかって」
そっちかい。言わなきゃ普通分からんて。
「え?あ、ああ……普通のカフェなら……そうだな、結構行く方かも」
「誰と?」
えっ、そこ突っ込む?
(どういう事?意図が全然読めないぞ……)
「誰とって、そりゃあ……友達とか?」
「ああ、いつもつるんでる奴?」
おい、言い方……
「そうだなぁ、よく行くのは……斉藤さんとか石川さんとか、あと山田さんとかかなぁ」
名前を上げた三人は、主人公の親友という設定の女子生徒達。
現実世界で飲んでた時に、友達に小ネタとして教えてもらっていたのだ。
チョロっと聞いただけだったけど、案外覚えてるもんだ。
(ありがとう友達、そして私の記憶力……)
本当はその誰とも遊びに行ったことがないし、むしろどれが誰だかすら分からないレベル。
あ、もしかしたら……前に教室で喋ってた子か、お昼食べた子かも。名前知らないままなんとなく一緒にいたけど、多分そうかも。
それすらも曖昧なくらい、本当に女子との絡みがなかった。
そもそもなんてったって……攻略キャラとのイベントしか起きないからね、この世界。
(ほんとはもっと、女子キャラ達ともお喋りしてみたいんだけどさぁ)
一緒にファミレスでだべったり買い物行ったりしたいのに、女子同士の親交をシステムは許してくれない……悲しい……
「女子か。じゃあいいや」
「……?」
「……」
……えっ?
それで終わりか〜い!何やねんお前!
興味ないなら、なぜ聞いたし!
(しまった!せっかくのチャンスが……今ので会話が途切れちゃった……!)
いや、まだだ!
ここをなんとか会話を拾って……!どうにか続け……
「じゃあ、神澤君は?」
「何が?」
「カフェとか好き?」
「嫌い」
(続け、られない……!)
一言バッサリ言い切って、顔ごと窓の方に向いてしまった。
嫌いって、君……嫌いって……
(ってか、それじゃあなんでカフェ行きたいなんて言ったのさ……)
「あ……そ、そうなんだ〜」
(もしかして……今日、機嫌悪い?)
「……」
「……」
どうしよう、この冷え切った空気感。
なんか言って温めないと……
「あ、えっと……そうだ!」
「何?」
お、こっち向いた。
「カフェ嫌いでもこうやって誘ってくれたくらいだし……神澤君って、もしかしてあれ?純粋に紅茶飲むのが好きってタイプ?」
「いや」
返事はノー。ああ、またそっぽ向く……
(え、選択肢ミスった感じ?今の?)
「ええっと……」
また気まずくなった……な、なんか言わなきゃ……
始終ずっとこんな感じだ。
何言ってもずっと不機嫌そうな顔のまま。
ひたすら私から一方的に質問して、一言答えが返って来て終わり。
それでもどうにか会話を繋げようとするけど……やっぱりプツッと途切れて、そのうちお互い無言になっていってやっぱり終わり。
会話というか、これじゃ面接だ。
(う〜ん、やっぱり気まずい……!何か、何か話題を……!)




