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その差、一回り以上  作者: あさぎ
みんな違って、みんないい(感じにヤバい)
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10-1-3.柔らかな唇が筒を食む

 


 ふとここで唯を見ると……ひどく動揺しまくりの私の内心を知ってか知らずか、ゆったりと待ってくれていた。


 全然急かさないどころか、気持ちの余裕まである……流石っす。


 多分これ歩君だったら速攻キレてる。はよ飲めや!って。

 圧倒的な経験値の差。




 とはいえ、彼も彼で喉乾いてるはずだし待たせちゃ悪いから……さっさとストローを引き寄せ数口ゴクリ。


(よし飲めた!……うん、普通にうまい)


 めちゃくちゃうんま〜い!って感じじゃないけど、まぁまぁ美味しい。


 ファミレスとかのドリンクバーでよくある味。


(う〜ん。青春の味……)


 よくファミレスとかでこれ飲んでダベってたな……

 あの古のオタクメンバーで。


(それで、毎回長居し過ぎで店員さんに追い出されるっていうお決まりのパターン……懐かしいなぁ)




 思わず手を止めて思い出に耽る私の顔を、彼は何も言わずしばらく眺めていた。


 やがて満足したのか、彼も飲もうとして体をこちらに寄せてきて。


 そして、ゆっくりと顔を近づけ……


「……」

「……」


 接近してくる彼の整った顔。

 ふわりと風でかかってくる彼のサラサラの髪。

 すぐ側で聞こえる彼の吐息。


 そして、そのまま上目遣い気味にこちらを見つめて……




 ここ、ドキッとすると思った?


 何度も言うけど……片や一回り以上年下の高校生、片や三十路。


 また歩君の時みたいに、まさか大の大人がティーンエイジャー相手にときめくとでも?

 こんな、いかにもなシチュエーションで……まさか、ドキッとしちゃうとでも?




 ……はい!!!しました!!!


 七崎、駄目です!超チョロい!

 来るぞ来るぞ!って思っていながら、心臓バックバク。全然駄目。


 さっきの謎の前振りは一体なんだったのか。

 本当は、ほ〜ら!私大人なんで!何も起きませ〜ん!ってやるつもりだったんだけど……そうだったんだけど……


(ぐぬぬ……顔のいいやつめ……!)


 ドキドキさせようとしてくるの分かってたのに、はっきり分かりきってたのに……悔しい。




 そんな私はさておき、唯はというと相変わらずマイペースで……

 顔が超至近距離のまま、風で煽られる長い髪を手で押さえ……


「そんじゃ、俺も〜」


 とか呑気に言って、自分のストローを口元へ引き寄せた。

 あそこまで意味深な動きをしておきながらも、あえて何もしてこない……焦らしてる?やっぱ確信犯だな?


 そして、柔らかそうな上唇と下唇でストローを優しく挟んで、ふにゅっと一食(ひとは)み。


(く、唇〜!)


 血色の良い鮮やかな赤で、艶々で瑞々しくて、ぷにってしてて……


 そして、一口ごくりと喉を鳴らしてすぐにストローから口を外し。

 そして唇に溢れた分を舌でゆっくりと舐め取って……


(あかん!えっちなやつだこれ!)


 これ以上見てたら……というか、これ以上この瞬間を描写したら違う物語になっちゃう!

 危険危険!デンジャー!


 私の頭の中が大変な事になっているとはつゆ知らず……またごくごく飲んで喉仏を揺らし、そして口の周りをぺろり。


(だから!あかんて!それ以上はR指定になるから……!)




「……どうしたの?俺の顔見て」


 彼の声でふっと正気に戻る。


「え?あ、いや……」

「なんかついてる?」


 そう言いながら、次どうぞと言いたげにグラスをこちらにススス……と寄せてくる。


「いや、そうじゃないんだけど……」


 グラスを受け取り自分の方に手繰り寄せながら、言葉を濁す。


「え?なになに、まさか見惚れちゃった〜?」


 そう言って揶揄ってくる彼に、何も言い返せず……仕方なくストローを啜った。


(図星っちゃ図星なんだけどさ……)



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