表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その差、一回り以上  作者: あさぎ
まずはフラグ立てなきゃ……あっもう立ってたわ
30/188

8.もうどうにでもな〜れ☆

 


 気分はずーんと重い。


 ついさっきまで生徒会長弄り(?)で楽しんでたのに……いきなり場面が変わってしまったのだ。


(うふふ、うふふふ……)


 楽しかった世界から急降下、天国から地獄。

 もう笑うしかない。


(うふふふふふ……)




 それは……友達に誘われて、期末試験の結果を見に行ったのが事の始まりだった。

 なんかのイベントなのは分かっていた。何か起こるなって感じはしてた。


 してたけど、してたけどさぁ……こりゃないぜ。


(うふふ、うふふふふふふ……)




 試験の結果はほとんど変わってなかった。大体みんな中間試験と一緒の順位。

 多少入れ替わったくらいでほぼほぼ同じ。


 でも一人だけ、明らかな異変があったのだ。




 今から遡る事1時間ほど……廊下の試験結果を見に行った時の事。


(……ん?あれ、秋水は?)


 上からいっちー、次にモブキャラが来て、その次もまたモブ。

 見間違いかと思ってもう一度上から順に名前を見ていっても、同じだった。


 前回はいっちーの次に彼の名前があったはずなんだけど……


(あれ?おかしいなぁ……確か、休みじゃなかったはずなんだけど……)


 ひたすら視線を下に下に送るも、モブキャラの名前がずっと続いている。


 そして真ん中ぐらいに私とか友達がいて……


(それで、ここから下が赤点ゾーン……まさか……いや、まさかな……)


 分かりやすく真っ赤なマーカーが引かれたその下は赤点で再試験となる人達の名前。


 歩君と唯は、堂々いつも通りの順位。褒められたもんじゃないけど。


 でも、まだ『神澤』の文字はなく。


(まさか先生が入れ忘……あっ、あった!)


 下からうん番目のところに。


(うそっ!二位だったあの秋水が……三桁……!)


 うそ〜ん!どうした、秋水!赤点じゃん!

 頭良いキャラのはずなのに……


「な、なんで?!嘘でしょ……?」




「……しず?」


 側にいた友達の声で我に返ると……周囲の不思議そうな視線が一斉に私に向いていて、慌てて口元を手で覆う。


(……っ!)


 やば。衝撃すぎてうっかり叫んじゃった……


「どうしたの?急に大声出して」

「えっ、ああ、ええと……びっくりしちゃって」

「何が?」

「同じクラスにさ、神澤君っているじゃん?いつもトップの方にいるのに、今回赤点なんて珍しいなぁって……」

「えっマジ?どこどこ?」

「ほら、下の方」

「あ、あった。ほんとだ……うわ、ボロボロじゃん。めっずらし〜」

「今までなかったよね、こんなの……何かあったのかなぁ?」

「あ〜……なんか分かるかも。最近さぁ、噂されてるじゃん?」


 なぬ!噂?!


「なになに?!それ、どんな噂?!」


(……っやば!)


 ついまた声が大きくなってしまって、さっと口を手で押さえる。


「あっ、な……なんでもない。続けて続けて」

「なんかさ、最近やけに授業中ボーッとしてるじゃん?前はあれほど真面目だったのにさ」


 確かに。

 秋水はどんなに眠くなる先生相手でも、ちゃんとしっかり授業受けてるイメージだった。


 なのに、昨日なんて……先生に名前呼ばれたのに全然聞こえてなくて。

 結局先生に小突かれてようやく気がついて、その後すごい怒られてたっけ。


「それさ……恋なんじゃないかって」




 わぉ、青春!


 ……なんて言ってられない。由々しき事態だ。


「……つっても、一部の女子がそう言って勝手に盛り上がってるだけだけどね」


 あの彼が恋。しかもこのタイミングで。


 これってつまり……

 犯人なんて、言わずもがな……


「あれ?なんか思い当たる事でもありそうな顔ね」


 思い当たる節めっちゃあるよ!ありまくりだよ!


 体育祭の日、アクセルを思いっきり踏み抜いてしまったせいで……おそらく怒涛の勢いで溜まってきてるであろう、彼の好感度。


 言わずもがな、その恋の相手はおそらく……


「えっ?思い当たる事?べ、別に……な、ない……よ……?」

「ほんとぉ?」

「ほんとだよ!」

「おんや〜?おやおやぁ?」


 あ、あれ?

 なんか……勘違いされてるっぽいぞ?


「しず、もしかして……彼の事気になってるんでしょ?」


 逆ぅ〜!


(ちゃうねん!逆や逆!ベクトルが逆!)


 まぁ、ある意味気になってるっちゃなってるけど……残念ながらそういう意味じゃない!


「ち、違うって!」

「友達なんだし、別に隠さなくたっていいじゃ〜ん」

「ほんとだってば、ほんと!」

「え〜、なによ〜」


 誤解を解こうと必死に否定すればするほど、余計に怪しくなっていく悪循環。


「ふ〜ん、でもそっか〜神澤君かぁ。それなら、相当頑張らないとだね」

「頑張るって?」

「ほら、バレンタインなんてチョコもらいまくりだしさ。しょっちゅう倉庫裏呼び出されてるみたいだし……」

「えっ、そんなに人気なんだ……」


 まじか。

 あんな冷たいのにモテるんだ……なんだろ、顔が好みとか?いや、声?


(う〜ん、よく分からん……)


 確かに秋水は顔整ってるし性格可愛いし、好きなんだけど……恋人にしたいって感じじゃないなぁ。

 むしろ他のキャラと付き合って青春して欲しい、そんな感じ。


 あっ、付き合うのはもちろん同性キャラで!そうじゃないと、彼の魅力が最大限引き出せないからね!

 なんでってそりゃあ、私的に彼は『右側』だからさ!


 え?右って何かって?いやぁ、それ以上の説明は……ゴニョゴニョ……


 それは置いといて、で……今のところ、私の感触としては……一緒に普通に過ごしてて楽しいのは歩君、ときめきをくれるって意味で楽しいのは唯って感じだ。


 ちよちゃん可愛いけど……まだあんまりよく知らないし。

 いっちーも何か悪いって訳じゃないけど……他四人と比べちゃうと影薄いっていうか、これっていうのがないっていうか、う〜ん。


 でも、ここでもし年相応に真面目に先を見据えて考えるなら……将来安定のいっちーだろうな。


 家、確かお医者さんらしいし。彼自身も頭良くて、医学部行くっぽいし。

 実家は上の兄弟が継ぐだろうから、跡継ぎとか同居とかそういった懸念もなし。これはなかなかの……


(いかんいかん、ついまたおばちゃんモードに……)




「まぁでも……私、応援するよ。友達として手伝える事あればなんでもやるから、言ってね」


 青春ドラマのワンシーンみたいで、めっちゃいい雰囲気だけど……

 いい感じなんだけど……勘違いなんだよなぁ。


 それともう一言付け加えるなら……

 どんなに人気あるっつっても、主人公の私は頑張らなくても勝手にそういう感じになる……というか、()()()()()っていうね……

 とんだチートキャラだ。


(これ、普通に頑張ってる他の女子にめちゃくちゃ申し訳なくなるやつ……ご、ごめんなさ〜い……)


「え、えと……あ、ありがとう……」

「頑張って、しず!」







 好感度急上昇中の秋水に、歩君も唯も相変わらずで、いっちーもなんか気持ちが動いてきてる感じがあって。


 それとあと……忘れちゃいけない、ちよちゃんもいる。

 他四人と違って後輩だし、まだほとんど喋った事ないけど……攻略キャラである以上、いずれは……




 いやぁ、エグくなってまいりました……!


 なんかもう早速やばめの雰囲気だぞこれ……

 恋愛のゲームだし、仕方ないっちゃ仕方ないのかもしれないけど……とうとう五人とも、本格始動(?)してしまった感。


 うふふ、うふふふ。

 楽しい楽しい修羅場ゲーの始まり始まり〜。


 さ〜て、いつ揉めるかな?

 いつ告白してくるかな?いつお断りする事になるのかな?


 五人とも譲る気なんて全然ないだろうしね。

 大人なら気を遣ったり色々駆け引きしたりして、また話が違ったんだろうけど……なにせ、まだみんな高校生だし。


 真っ直ぐな想い同士、いずれ衝突するのは目に見えている。


(……)


 ……って、考えてもしょうがないよね!人生、諦めが肝心って言うし!


 もう、どうにでもな〜れ⭐︎

 空元気でもやってないと、やってらんな〜い!


 うふふ、うふふふ、うふふふふ……


「……しず?どうしたの、顔色悪いよ?」

「ナンデモナイヨー、キノセイダヨー」

「そう?ならいいけど」




 でも、だからってここで引く訳にはいかない。

 元の世界には帰りたい……いや、帰るんだ絶対に。


 そこは絶対譲れない。

 本来の生活を取り戻すために、今こうして必死に(と言いつつかなり遊んでるけど)頑張っているんだから。


 本命というか、『迷い人』本人以外はいずれ断らないといけない……


(よ……よ〜し……ガンバルゾー……)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ