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その差、一回り以上  作者: あさぎ
まずはフラグ立てなきゃ……あっもう立ってたわ
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7-1.本屋さんってなんであんなに涼しいんだろね

 


 今日はバイト中のイベントらしく、目覚めたらそこは本屋さんの中だった。



 あれから季節は一気に進み、いきなり夏真っ盛りに。


 窓越しなのに充分過ぎるくらい喧しい蝉の声に、ジリジリと照りつける灼熱の日差し。


 時々窓の外を小学生くらいの子達が自転車を漕ぎながら真っ赤な顔で通り過ぎていく。

 ちゃんと水分取るのよ〜!なんて念を送ってみたり……余計なお世話?


 一応、これでも放課後のはずなんだけど……日差しが弱まる気配はまるでない。




 だから、今日は大賑わいだった。ある意味。


 エアコンスポットとして涼みに来てる人が、あっちにもこっちにも……

 あ、もちろん本を買いに来てる人もちゃんといるけど。


(本屋さんって、大体どこも決まって涼しいんだよなぁ……)




 ぼんやりそんな事を考えながら棚の整理をしていると、不意に視界の端を何かが通った。


(お、また一人来店か)


 すかさず挨拶。


「いらっしゃいませ〜」


(……って、あれは……)


 きっちりとセットされた青い髪。間違いない、いっちーだ。


(珍しいなぁ、外で会うなんて……どのコーナー行くんだろ?)


 ちょっと作業を中断して、興味本位で彼の後をこっそりつけていく。




 ズンズンと脇目も振らず歩いていき、彼が立ち止まったのは……参考書の棚。


(あ〜。やっぱりそういう系か……真面目だもんなぁ)


 漫画とか立ち読みしないか期待してたけど、そっちはチラリとも見なかった。

 堅物キャラの彼が何読むか見てみたかったのに、残念。




(で、何探してんだろ?ちょっと後ろから覗いてみようかな?)


 そろり。そろ〜り。


「……」

「……」


 抜き足差し足……


「……」

「……」


 忍び足……


「……俺になんの用だ?」


 わ〜お!バレテーラ!


「ええっと……ナ、ナニカオサガシデスカー?」

「なんだよ、急にそんなかしこまって。何を探してるかって……そんなのバイトのお前に言って分かるのか?」

「大丈夫大丈夫、棚の配置は大体覚えてるし」

「ほんとかよ……」


 さぁこい!どんとこい!記憶力には結構自信あるよ私!




「……英語の単語帳と参考書」


(なるほど。じゃあ、ここじゃなくてあっちの棚だな……)


 英語の参考書探してるのか……でも、それならギリ分かるぞ。

 どっかにいい本あったの、見たもん。


 これが数学とかだったら完全アウトだったけど……文系科目なら当時結構得意だったし、まだいける気がする。多分。


 と言っても、私の学生時代の古い情報だけど……まぁ、いけるっしょ!いけるいける!(?)


「ええと……それならお勧めがありますよ、お客様〜」

「お勧めって……だからお前、バイトだろ?」

「うん。でも自信あるよ!」

「自信って……」

「いいからいいから!任せて!」


 なんかため息が聞こえた気がしたけど、気にしない。


「まずは単語帳、単語帳っと……」


 謎の強い自信と共にいそいそと本棚を漁る。


「確かこの辺に……あっ!あった!これこれ!」


 これだよこれ!この犬の表紙!

 真っ青な背景に、ドヤ顔で明後日の方見てる犬の絵の……そう、これ!私が持ってたやつ!


(うっわ!懐かし〜……!)


 いや、ゲームだし……たまたま参考にした画像がこれだったってだけって可能性もあるっちゃあるけど……




 まぁ、それはさておき。


「これ、オススメだよ!見やすいし、小さいから持ち歩きしやすいの!」


 うんうん。これがなかなか役に立ったんだよな〜。

 受験当日まで、この一冊にはほんとお世話になった……


「それで……あっ!」


 単語帳の隣の列に、これまた懐かしい文法書を見つけた。


「そうそう、文法とかならこれね!問題解いててつまづくポイント、大体全部網羅してるから!悩んだ時はこれ見れば大体書いてあるよ!」


(単語帳に文法書、良書が二つ揃えばほぼ無敵!あとは、過去問解きまくって傾向を掴めば……!)




「な、七崎……」


 戸惑いの滲む声にハッと我に返る。


 まるで教育ママの魂が憑依したかのように興奮しまくりの私に、ドン引きのご様子。まぁそりゃそうだ。


「ええと……その……随分と詳しいんだな、君は……」


 いきなりあんな熱弁されたら、そりゃ引くわな!


「それも……やけに説得力があるというか、なんというか……一度受験を経験した事があるかのような……」


 ぎくっ!


 経験者?んな訳ないじゃな〜い!

 やだわぁ、オホホホホ!


「なんというか……変な感じがするんだ。まるで、親と買い物に来た時みたいな……」


 ぎくぎくっ!


「お、親?お母さんみたいって事?やだなぁ、もう!私、まだ高校生よ?」


(やばい、やばいやばいやばい……!まさか、中身に気づいちゃった……?)


 で、でもほら……中身は大人でも、体はちゃんと高校生だから……ね?


 某名探偵だって、頭脳は大人!とか言うじゃん?

 え?それは関係ない?




「そうだよな……」

「そ、そうよ!」


 そうだぞ!

 おばちゃんなんかじゃないぞ!ガワの方は!


「そうだよな……何言ってんだろうな俺。急に変な事言って、すまない……」


(おっしゃ、セーフ!危ねぇ!)


 こうも冷静なタイプだと、言動から分析されて正体がバレちゃう可能性がゼロじゃなくてだね……


 彼は彼で、恋愛とは違う意味でドキドキ。

 スリルたっぷりだ。



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