5-6.ボン◯ーマンだったら詰んでた
下手くそ過ぎていつもすぐみそボンに……
「お〜い!静音!」
噂をすればなんとやら……爆弾1号君のお出ましのようで。
っていうか、しれっと下の名前呼び……あの時の違和感、気のせいじゃなかったのね……
「……早乙女君!」
「派手にすっ転んだんだって?大丈夫か?」
「うん、なんとかね」
「ならよかった。怪我で保健室行ったって聞いたから……焦った」
流石、メインキャラ。セリフ回しがまさに王子様。
気のせいか、彼の周りにキラキラオーラも出てる気もする。
(おおぅ……眩しい……)
でもまぁ、そんな彼が見舞いに来てくれたのは嬉しいっちゃ嬉しいんだけど……
(あの……あのですね……今、タイミングがよろしくなくてですね……)
ひっじょ〜に、よろしくなくてですね……
なんでって、そりゃあ……
今ここには……もう一人の攻略キャラ、秋水君がいて、だね……
「あれ、神澤……?お前、なんでここに……?」
なんだか急に険悪ムードに。
(ですよね!やっぱりこうなっちゃうよね!)
「は?何が?」
秋水のただでさえキツめの顔がさらに険しく……
「お前こそ、何だよ?」
わぁ……こっちもこっちですごい形相……
いきなり爆弾二個に挟まれてしまった私。
部屋の奥の方で……片方は私の目の前にいて、もう片方は後ろという……非常に危険な配置。
なんだか某爆弾ゲームの軽快なBGMが聞こえてくるような……こないような……
(って、呑気に言ってる場合じゃない!これやばいやつじゃん!)
ちょ、ちょっと待ってよ!これ多分、修羅場になるやつだよね?!
待って、急すぎない?ちょっ、待って……!色々と待って……!
「は?」
「何?」
二人共〜!ちょっと、お顔お顔!
眉間に皺寄ってる!めっちゃ寄ってる!
顔崩れるから!
一応君達、乙女ゲームのキャラなんだから!そんな思いっきりガン飛ばさないの!
「怪我人がここにいて、悪い訳?」
秋水く〜ん!ちょっと!目!お目目が!
突然目のハイライト消さないで!人殺してそうな目になっちゃうから!
君、一応良家のお坊ちゃんなんだから!
ここは抑えて、もう少しお上品に……!
「ふ〜ん。怪我したんだぁ?」
こら!歩君もここぞと煽らない!
そこ、地味に彼が一番気にしてるとこだから……!
今さっき話したばっかりだから……!
「お前こそ何?暇なの?」
「は?俺は見舞いに来たんだよ」
お〜い……さっきまでのキラキラ王子様フェイスどこいった〜?
そして、秋水も……その顔、ほんとにどうした〜?
「お、お〜い……お二人さ〜ん……」
見ていられなくて、声をかける。
「あ、ごめん……怖かった、よな……?」
ハッと我に帰り、スルスルと元に戻っていく歩君の顔。
「本当にごめん。なんかアイツが喧嘩売ってくるもんだからさ、つい……」
「ふん、馬鹿も休み休み言え。吹っかけてきたのはお前だからな」
だから君達!顔!その顔やめい!
乙女ゲームのキャラらしからぬ顔、しちゃ駄目だって!
キャラ壊れるから駄目だって!
「なんか気分悪い……僕、そろそろ戻るね」
「おう、とっとと帰れ!」
歩君!ちょっと、お口!お口悪い!
秋水は怒りのままドカドカと部屋を出て、荒っぽくドアを閉めて去っていった。
なんかぼそっと呟くように吐き捨てながら。
声小さくてよく聞き取れなかったけど……なんかきっと悪い意味合いの言葉なのは、想像に難くない。
でも、むしろ聞き取れちゃったら伏せ字にしなきゃいけないやつかもしれないから……いや、多分絶対そうだから……今のは聞こえなくてよかったのかも。