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その差、一回り以上  作者: あさぎ
まずはフラグ立てなきゃ……あっもう立ってたわ
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4-3.おまわりさん、私です

おまわりさん、私です!アッアッ逃げないで!



 はっ!


 まさか、この微妙な間は……


(これは、もしかして……!いわゆるスキンシップタイムってやつ?!)


 私の気持ち悪い視線にピクリともせず、彼は完全に待ちの姿勢に入っている。

 どうぞ触ってください、と言わんばかりに。


 さすがシステム。強い。

 魔法でもかけたかのような圧倒的な強制力だ。




(やった〜!ご褒美タ〜イム!)


 ふっふっふ……そうと決まったら、どこにしようかな?

 うふふ。おばちゃん、触っちゃうぞ〜。


 どこでも触っていいんでしょ?

 どうしよっかな〜。うふふ、うふふふふふ……


 あっ、決してこれはセクハラじゃないからね!

 そういうご褒美タイム的なやつだから!


 あくまでそういうコミュニケーションであって、真面目な(?)お触りだから!




 さてさて……


 ここは無難に肩?いや、ちょっと攻めて腕組んじゃう?

 逆に、あえて控えめに……お互いの視線合わせてしっとりしてみたり?

 いやいやむしろ、ほっぺつついてキャッキャしたり?


 いや、待てよ。ここはやっぱり……




 決めた、あれにしよう!


「……うわっ?!」


 彼の心から嫌そうな声に、頭の上に伸ばした腕を慌てて引っ込める。


「なっ……!何すんだよ、急に……!」


 なんだかすごい剣幕で怒り出した歩君。


 どうやら触り方が違ったらしい。スキンシップ失敗。


(えっ、頭は駄目なの?!)


 わ〜ん!ここは変な事考えずに、普通にほっぺつついてればよかった!

 せっかくのチャンスだったのに〜!


(でも、さっきまであれほど良い雰囲気だったのになぁ。あれでも駄目なのかぁ……)


「駄目かぁ……ちょっとだけこう、ふわっと撫でたかっただけなのに……」

「はぁ?!『撫でる』?!んだよ、俺は子供じゃねぇ!」




(え……怒りのポイントそこ?)


 え?


 は?え?


 何それ。何だそれ……可愛すぎない?

 迫真の激おこフェイスすら、おばちゃんには可愛く見えて仕方ない。


 一生懸命怒ってるところ申し訳ないけど……そういう言動するから余計に子供って言われるんじゃ……


(本人的にはそんなつもりは全然ないんだろうけど……)


 何それ。何だその可愛過ぎる地雷。


「ごめんごめん」

「……俺、もう帰るから!」


 ごめんて。


「さ、早乙女君……!」

「ふん!」




 怒りの勢いのままスタスタと駅の方へ向かっていく彼を、駆け足で追いかける。


「ま、待って……!」


 スタスタ。


「待ってってば!」


 スタスタスタスタ。


「ねぇ!」


 歩幅の差により、どんどん離れていく彼の背中を息を切らせながら追いかける。


「はぁ、はぁっ……ま、待って!」


 走って走って、もう少しで追いつく……というところで……今度はいきなりピタッと止まって。


「んぶっ!」


 予想外の動きに避けきれなかった私は、そのまま背中に突っ込んだ。




 まだ背中に顔を押し付けたままの私に、広い背中が話しかけてくる。


「……あのさ」


 こちらを向く気はまだないらしい。


「お前、前からよく言ってたよな……」

「何を?」

「『恋愛するなら年上の落ち着いた人がいい』って」

「えっ?」




 えっ……?なにそれ?


 なにそれ、なにそれ?!ちょっと、初耳なんですけど〜?!


 うっそ、まじで?

 主人公、そんな設定あったの……?!


「忘れたのか?」

「う〜ん。ちょっと覚えてないかな……」

「まぁそれはいい。ともかく、お前は年上じゃないと嫌なんだろ?同年代とかじゃ……」

「え?いや、全然……そんなの気にしたことないよ?」


 何言ってるのか分からなくて、思わず素で答えてしまった。


 けど、かえって今はそれがうまくいったようで。


「全然……?」

「うん、全然」

「本当に?」

「うん」


 彼はようやく振り向いた。


 さっきとは打って変わって……穏やかな美青年の笑顔がそこにはあった。


「その……なんか、勝手に怒って……ごめん」

「いいよ、いいよ」


 別に、ええんやで。

 あれはあれで可愛かったから……


「俺、なんか勘違いしてたみたいだ……一緒に帰ろう、静音」


 いきなり勝手に機嫌が良くなった、歩君。

 鼻歌でも歌い出しそうな勢いだ。


(なんか機嫌治ったみたいで良かった。ほっ……)




 二人でお喋りしながら帰っていく途中で、じわじわとぼやけていく視界。


 そろそろこの日は終わりのようだ。


 時間をぶった切るの、正直やめてほしい。

 余韻もへったくれもないから。


(はぁ、これで今日は終わりか……次目覚めたらいつになってるかな……)


 今度は季節まで変わってたりして。

 どうせまた一気に飛ぶからなぁ。




(……って、あれ?)


 もしかして、あれ?あれれ?




 もしかして……さっき私、さりげなく『静音』って呼ばれてなかった?


(あれ?ちょっ、待っ、待って!私……あの時……)


 あれ?あれれ?もしかして私……歩君に下の名前で呼ばれ……




 しかし、ここでタイムアップ。

 無慈悲にも、こんな変なタイミングで私の意識はプッツリ途切れてしまった……



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