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その差、一回り以上  作者: あさぎ
終わりへ向かっていく
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28-1.突然の二者面談

 


「七崎さん、次だって〜」


 ん?今度はなんだ?


 目覚めるなり、いきなり学校の廊下にいて……

 しかもなんだか名前呼ばれてる……


「七崎さ〜ん?七崎さんってば〜?」


 言い方からしてそれなりに仲良さそう……同じクラスの子とか?


「早く〜。次だよ次〜」

「は〜い、今行く〜」


 次って……なんかの順番?


 またいきなり走らされるのかと思いかけたけど、ここは廊下……今回はそうじゃなさそう。


「先生待ってるよ?」

「うん、今行くけど……」

「え、私?帰るに決まってんじゃ〜ん」


 誰だか知らないモブの子、イベント中一緒にいるのかとも思いきやここで撤収のようで。


「あはっ、そっか。引き留めてごめんね」

「頑張ってね、七崎さん」


 何を頑張るのか全然分からないけど、とりあえず大きく頷いておいた。

 毎度のことながら、何も分かってませんこの人。




(……ん?)


 ひらひらと視界の端に白い物が……


(なんだろ?)


 羽みたいに白い何かがふわ〜っと落ちてきた気がしたんだけど……


 今見回しても、何も落ちてなかった。見間違いかも。




「七崎さ〜ん?」


 お?今度は違うところから声が。


 誰だろう、穏やかそうなお爺さんの声……


「七崎さん?七崎さん……?あれ……いない?」

「い、いい、います!ごめんなさい、今行きます……!」


 どんなシチュエーションか分からないけど、とりあえずなんか呼ばれてるっぽいから、声のする方……教室の中へ。







「失礼しま〜す……」


 待ち構えていたのは……私のクラスの担任の先生だった。

 あの、独特なアルファ波出まくりの口調のお爺ちゃん先生。


 真ん中あたりの適当な席に座って、手招きしている。


 放課後っぽい空気感、担任と教室で二人きり……つまり……


(面談かなんかかな……?)




「はい、そこね。座って座って……」


 言われるがまま、指差された椅子に座る。


(あ、やっぱり面談だ)


 普段通りの机の配置……だけど先生の座ってる席の前の椅子だけ反対を向いていて、一つの机に向き合って座れるようになっていた。


 高三の面談っていうと普通、親も含めた三者面談じゃないかって思ったけど……まぁいいや。


 多分これもいつものやつね、ご都合主義。これ以上突っ込まない事にする。




「では……ね。進路についてのお話なんだけど……」


(進……路……!)


 もう何年ぶりだろう、そのパワーワード。

 そういう時期か……そりゃそうか。


「色々と確認する事があってね」

「は、はい……」


 確認。

 まぁ、そうだよね。そりゃあ。


 窓の外には、葉っぱがすっかり落ちた木々が見える。

 ということは……今いる教室の肌寒い感じからして多分、今の時期は秋か冬の始めとかそこらへんだろう。

 前回のひぐらしからだいぶ飛んで、まさかのもう冬。


 とはいえ、もうそんな時期なら当日に向けての体調管理とかそういう段階だ……もう今から何したって無駄な足掻き、頑張るのは今更もう遅い。


 この状況で、先生の立場でできる事は『確認』くらい……それしかない。


 頑張るだけ頑張ったら、あとは運。泣くか笑うか、運次第……


(ごくり……)


 別に、だからって私がまた受験するとかそういう訳じゃないし、あくまでただそういう『シナリオ』ってだけなんだけど……なんだかすごく緊張してきた。


 もう何年ぶりだろう、この感覚。このドキドキ。




「よいしょ、ちょっと待ってね……」


 そう言いながら、手に持ったケースファイルから何かを引っ張り出す先生。


「七崎さん、七崎さん……これか。んしょ……と」


 何やら二つ折りにされた白くて大きな紙が机の上に出てきた。


 A3の二つ折り。

 ビジュアル的にもう、それが何かはなんとなく分かる。


(ドキドキドキドキ……)


「はいはい、お待たせ」

「……」

「で、これね……これが今までの成績なんですが……」


 ゆっくり丁寧に二つ折りを開き、見やすいように私の方に向けてくれた。


(どれどれ……)


 白い紙に大量の文字列。形式もちゃんの成績表のそれ。


(……んんん?)


 でも、思っていたものと内容がかなり違っていて……




『早乙女 歩、完了。多少の懸念はあるが概ね合格とする。ただし監視はまだしばらく続ける』


『姉小路 唯、完了。完全な更生とまでは至っていないが、改善の兆候が見られたため合格とする』




(えっ)




「え……なに、これ……?」


 ちょうど目についた見出しを二つ読み上げただけだけど……これだけでもう充分だった。


 その数行だけで、頭はもうとっくに混乱していた。

 他にも色々ごちゃごちゃ書いてあったけど……全然そっちまで意識が回らないほどに。


(え?え?え……?)


 さらに下にはいっちーや秋水、ちよちゃんの名前まであって……つまりこの謎の文章が全員分あるって事で。


「完了?合格?え……?」


(な、なにこれ……?!これ、私の成績表じゃない……!)




「卒業までに……あなたに一度は見せておこうと思いましてねぇ」

「な、何ですか……これは……?」

「成績表です」

「で、でもこれ……私のじゃない……」

「ええ。その通りです」


 先生は優しく微笑みながらそう言った。


「これはこの学校の、ある生徒達の成績をまとめた表です」

「な……何ですかこれ?なんでこれを私に?」

「これはつまり、あなたの成績でもありますからね」


 私の、成績……?あれが……?


「外の人間であるあなたの影響が彼らにどう及んだかが、これで分かるという事です」

「その言い方……まさか……!」

「……」

「私の事……何か、知ってるんですか?!」

「『何か』……というより、『全て』ですかね」


 全てを……知ってる……?!


「なにせ……私はあなたの事を見守っている存在ですから」


 見た目はあのお爺ちゃんのまま、だけど……

 そんな事って……あるの……?


(まさか、別人?だとしても……誰?)



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