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その差、一回り以上  作者: あさぎ
終わりへ向かっていく
143/188

24-1.えっ、君……誰?

 


「あの……今日、一緒に帰ってくれませんか?」


 えっ。


「あ、えと……ごめんなさい、こんな急に……」


 いや、その、ええと……


「や、やっぱり……駄目、ですか……?」


 え……えっと……




 いや、その……君、誰……?




「え、えっと……?あなたは……千世君……で合ってる?」


 見た目はそうなんだけど。

 でも……私の知ってる彼じゃない。


「……?は、はい」


(う〜ん、なんか違う)


「……」


 じーっと無言で見つめてみるも……


「せ……先、輩……?」


 違和感の原因は分からず。


 それでもやっぱり何か変……何かが確実に前会った時と変わっている……


 何が違うの?って聞かれると困っちゃうんだけど……でもやっぱり何かが違う。


「あ、あの……」

「……」

「その……色々と都合とかあると思いますし、無理には……」

「……」

「あ、や、やっぱりごめんなさい……忙しい、ですよね……?」


 この自信のない感じ、イメージ通りの彼だ。


(でも、なんか違うんだよなぁ……)


 いやさ、前にもあったにはあったよこういう事。

 LIME交換しようってなったあの時……あれも結構向こうからグイグイ来て、ああやっぱり乙女ゲームのキャラなんだなぁと思わされた訳なんだけども。


 そうなんだけども……


「でも、もしこの後何もないなら……一緒に帰りたい、です……」

「……」

「その……できれば、ですけど……」


 だけど、こんな公共の場で……そう、まだ説明してなかったけどここは学校の正門の真ん前。


 人の邪魔にならないように端の方に寄ってはいるけど……どのみちどこに立ってたって、正門前っていう目立つ場所なのは変わらない訳で。


 そんな所でこうも堂々と……しかもまさに下校時刻、みんながワサワサ通ってるそのすぐ横で……こんな面と向かって誘ってくるとか……


 これが他の、例えば唯とか歩君とかあの辺だったら分かるけど……だって、あのちよちゃんよ?


 むしろ『見た目はちよちゃんだけど、中身は唯でした〜!ドッキリ大成功!』なんて言われた方が……いや、それはそれで充分意味不明だけど……でもそっちの方がまだ納得できる。




「千世君、一つ聞いていい?」

「え?は、はい……」

「どうして誘ってくれたの?」


 ここは思い切って聞いてみる。一人で考えてても答え出そうにないし。


「え?」

「いや、どんな風の吹き回しかなって」

「理由、ですか?」

「うん」

「ええっと……そ、そうですね」

「……」

「えと、その……先輩って、あと一年で卒業じゃないですか」


 卒業ですねぇ。


「だ、だから……もうあまり時間がなくて」

「……」

「それまでには……先輩の事、もっと知っておきたいんです……」

「知って、どうするの?」

「え?」

「私の事、知ったところで……じゃない?もうすぐ卒業でいなくなるんだし」

「そ、それは……」

「でしょ?」

「でも……今のまま、何も知らないままで……お別れしたくないんです……」


 口調は相変わらず弱々しく、特徴的な分厚い前髪も健在……だけど、その視線は強く真っ直ぐで。


(やっぱりなんか……なんか違う……!)


 変だ。やっぱり違和感……前と全然違う。

 なりすました別人かってくらいに、全く違う。


(なんだろ、二年生になったから?)


 彼なりに何か成長したって事なのかもしれないけど……久しぶりに会った私からしたら、なんだか違和感がすごくて。


 あまりにイメージの乖離が著しくて、本人には申し訳ないけどなんかちょっと不気味……




「え、えっと……」


 一向に返事が返ってこない相手を前にして、さっきからずっと彼はモジモジしながら待っている。


 いや、別に一緒に帰っても全然問題はないんだけど……


(でもなんで?)


 そもそもの話、なんでよりによってこの彼と……?

 歩君とか、唯とかなら全然分かるけど、なんでこのチョイス?


 まぁ、そういうイベントって言われちゃそうなのかもしれないけど……あまりに唐突過ぎて。

 LIMEのやり取りはそこそこしてたんだろうけど……こうやって会うのは今が初めてだし。


 これまでそういうの全然無かったから、なんか……なんか……うん。




(……あれ?そういや歩君は?)


 下校イベントといえば、彼。

 今感じてる違和感の、その原因のうち何%かは多分そのせい。


(あっ!)


 ま、まさか……歩いてる途中で歩君がフッと現れて、かち合っちゃうパターン……?!


(げ!それはまずい……!)


 慌ててスマホを取り出し、LIMEを確認する。




『わり、先生から呼び出されたから先帰ってて』


 おお……ナイス回避。


 うまいこと調整するなぁ、あの爺さん。


 いや、違うか。今寝てんだっけ?

 じゃあゲームシステム自体が自動的にかち合わないようになってるって事?

 それはそれですごいけど。


 先生から話……なんか不穏だけど、ゲームだと割り切ってほっとく事にする。

 あんなでもきっと卒業できるはず……多分。




 よく分からないけど……

 ここで一人騒いでても仕方ない、一緒に帰るか。


 なんか前と変わり過ぎて違和感すごいけど、それはきっとこのまま過ごしていれば何か手掛かりが見えてくる……かもだし。


「……じゃ、一緒に帰ろっか」

「……!あ……あ、ありがとう、ございます!」


 この初々しい後輩感よ……いつもと違ってなんか新鮮。


「あっ」

「ん?」

「あの……公園、寄ってもいいですか?」

「公園?いいけど……」

「今ちょうど桜が満開だって、朝ニュースでやってたので……」


 その先は言わなかった。

 まぁ言わずとも、一緒に見たいって事なんだろうけど。


 途中からモニョモニョして言わない……というか言えない?のがなんともまた彼らしい。


(やっぱりちよちゃんだ……そういうとこが)




 でも……


(でも、なんか違う……!)


 なんかこう……うまく言えないけど、なんか変!やっぱりなんか違うんだよぉ!



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