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その差、一回り以上  作者: あさぎ
平和のようでなんか不穏な
140/188

番外9-1言わせたい、あの言葉 その1

言わせたいだけ。

 


 話が真面目な感じになってきたので、ここでちょっと休憩じゃ!


 堅い話が続いて、作者が飽き……ゲホゴホっ!

 失礼、作者がちょっと疲れてしまったみたいでのぅ。

 すまんのぅ、完全にこちらの都合で。


 またお前かよって?七崎出せよ?

 それがのぅ、今回やりたい話がちと特殊で……ゴニョゴニョ……


 え?そもそもワシ、この世界のキャラとあんまり関わっちゃ駄目なんじゃないかって?

 そ、そうなんじゃが……その〜、それもまた色々ありまして……




 お、おほんっ!

 そんな裏事情はさておき!さておけないけどさておき!


 今回の話は……『キャラ五人に好きと言わせてみたら……?』じゃ。

 なんか、大喜利みたいじゃな。




 しかし、一見簡単そうに見えるが……そのためには、シチュエーションをうまく作り出さねばならない。


 となると……う〜む、どうしたものか。

 そうじゃな……ワシがテレビ局のスタッフかなんかに化けて、彼らに取材するというのはどうじゃろうか?


 うん、それがいい。そうしよう。


 化けるとしたら……まずあれじゃ、彼らが話しやすいように親しみやすそうな感じの若い女性リポーターじゃろ。

 それで、怪しまれないようにメガネとポニーテールの地味目な見た目で……でも、せっかくだからちょっとだけ美人にしておこうかの。

 アイドルとか芸能人とかそこまでじゃないけど、平均よりは少し綺麗な人って感じ。


 うむ、決まった。これで行こう。

 バレないように機材スタッフに化けた部下も二人連れて、と。


 はい、ワシ整いましたっ!







 狙ったのは下校時間。

 それも早乙女が居残り補習で、ちょうど七崎が一人で帰った日の。


 これなら他四人はもちろん、早乙女も一人きりのところを狙えるって訳じゃ。




 噂をすればなんとやら……

 彼らの通学路をしばらくウロウロしていると、赤い髪の青年が歩いているのが見えた。


 どれ、早速話しかけてみるとするか……


「あの〜」

「……」

「あ、あの!」

「あ"?」


 おお、こわっ。七崎といる時とは大違いじゃ。


「すみません。私、テレビ局の者なんですけど……お話、いいですか?」

「……」


 あっ、無視……


 人間界で美人と言われる姿を模倣したつもりなんじゃが……それでも素通りか。

 なかなかやるのぅ。


「あっ、あ……ちょ、ちょっと!一瞬で終わりますんで!」


 慌てて駆け足で彼の前に回り込み、声をかける。


「あの!」

「……」


 またスルー……(´·ω·`)


 どれ、ちょっと微笑みかけてやろうか。意味深な感じで。


(にこっ)


「……」


 ほれ、ほれほれ……ほら、振り向いた。

 どうじゃ、気になるじゃろ?


「……」


 あ、それでも無視……むむぅ。




 ……って、いかん!ふざけてる場合じゃなかった!


 このままでは逃げられてしまう……

 まずい、どうするか……




 む、脇道がある!

 ちょうど良い!ここの道は狭いからな、先回りして通せんぼうしてやろう!


「……待って!」

「うわっ?!」


 両手を広げて〜⭐︎はい、通せんぼ⭐︎


「な、なんだ急に?!アンタ一体どっから……?!」


 脇道から!


「どうかお願いします!どうか、ご協力いただけませんか!」

「え……なんか、えらい必死だなアンタ」

「一言!一言言うだけでいいんで!お願いします!」

「……しょ〜がねぇな」


 おっしゃ!ワシの粘り勝ち!


「では!このマイクに向かって、『好き』と言ってください!さぁどうぞ!」

「は?何それ?」

「言い方は自由ですが……愛をたっぷり込めて、お願いします!」

「ええ……愛って……」

「なんなら、好きな人に告白するくらいの気持ちで!お願いします!」

「いや、こんな人前じゃ無理だって」

「いいからいいから!」

「よくね〜よ!」

「それじゃあ、行きますよチャレンジャーさん!はい、スタート!」

「おい!ちょっと俺の話……!」

「カメラ回ってますよ?」

「うっ……!」


 観念したらしく、文句の声はここで止まった。

 カメラ回ってるって言われちゃ、いくら彼だって変な事は言えんじゃろ。ふっふっふ。


「はい!それでは早速……このマイクに向かって、お願いします!」


 彼の声の邪魔にならないよう、ワシの声は一旦ストップ。

 マイクをずいっと突き出し、彼の口元に近づけて……ただ静かにその時を待つ。




「え、えっと……」


「え?えっ、ま、まじで?まじで言うの?ここで?」


「え?いや、え……?待って……ほんとに?」


「え、あ、いや……そ、その……」


「す、スキ……」




 鋤かな?いや、これは隙かな?それとも紙漉きの漉き?


 う〜む。清々しいほどの完璧な棒読みじゃのぅ。


 『ちっが〜う!もっと気持ちを入れて!』って言いたいくらいじゃが……

 だが、そんな事言おうものならきっと、余計に不審がられてしまう……今でさえ半信半疑でギリギリなのに。


 仕方ない、ここは大人しく引いておくか。

 悔しいのう、ぐぬぬ……


「わぁ!良いのが録れました!ありがとうございます!」

「は?こんなんで?」

「ええ!十分過ぎるくらいです!」

「へ、へぇ〜……」


 またドン引き。


「んで、いつ放送すんのさ?」




 あっ!しまった……!全然考えてなかった!


「ってか、どんな番組?俺知ってるやつ?なんてやつ?」


 おおっと!ワシ、ピーンチ!


「え、えっと!KMSテレビの『とりあえず生ビールで』っていう番組です!」

「ケーエムエスぅ?どこの地方局だよそれ?」

「えっ、ご存知ないんですか?!KMS、カミ(しま)テレビですよ!ほら!」


 もちろん、今言った事どれも存在しない。


 島の名前?ああ、それも架空じゃ。

 今適当に作った。神様→カミサマ→カミシマ→カミ島……ってな感じに。


「は、はぁ……」


 彼の顔にははっきりと『どこだよ』と書いてあった。


「……んで?そのなんとか島テレビ?の……?」

「『とりあえず生ビールで』、です。略して『とり生』」

「なにそれ……バラエティかなんか?」

「え、ええと……まぁバラエティ番組ですね。何かあらかじめテーマを決めて、それについて番組で検証していくって感じです」

「へ〜。で、今回はなんの検証?ってか目的は?」

「それはですね……」

「うん」

「あなたの他にも何人かこうやって声を録音させていただいて……その中から選んで、良かったものを……」

「良かったものを?」


 え、ええっと……


 考えろ、考えろワシ……もうなんでもいい、なんでもいいから良い感じの言い訳を……


「よ、良かったものを……サボテンに聞かせるって企画です!」

「え……」


 呆れとドン引きの混ざった、なんとも言えない表情。


「……」


 えっ俺、こんなのに真面目に応じてたって訳……?

 今の彼の気持ちを代弁するなら、きっとこんな感じ。




「今回はですね、言葉の力を試すのが目的なんです!蕾が全然ない状態から、花が一個でも咲いたら成功!」

「いやそれ、何ヶ月かけるつもりだよ……」

「花が咲くまで粘ります!長期戦は覚悟の上!」

「へ、へ〜……」


 心底どうでもよさそうな顔。


「あ!もしかして顔出しNGでした?!」

「聞くの遅ぇよ……もちろんNGだけど」

「なるほど!でも大丈夫です、分からないようにちゃんときっちりモザイクかけますから!」

「ああ……ならいいや」


 なら(もうどうでも)いいや……心の声が漏れている。


「ちゃんとその辺はしっかりしてますから!どうかご安心ください!」

「あぁ、うん……」


 おお!

 ウンザリしたその顔!そしてその『もういい加減帰りたいんですけど』オーラ!


 しめしめ、目論見通り……いいぞいいぞ、これで安全に撤収できそうだ。


「あっそうだ!せっかくですし、もう一言くらい何か……」

「や、もう……いいっす……」

「あ!ちょ、ちょっと!」

「……じゃ」


 一言それだけ残して、彼はスタスタと去っていった。

 背中にワシの視線を感じてはいたのじゃろうが、かといって一度も振り向く事はなかった。




「行ったか……ふむ……これで良し、と……」


 あ、いかん!うっかり普段の口調が出てしまった!

 綺麗なお姉さんの口から年寄り口調が……!


 慌てて見回したけど、誰も反応してなさそうだったからセーフ。


 さてさて、それじゃあ次じゃ次。



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