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その差、一回り以上  作者: あさぎ
平和のようでなんか不穏な
133/165

21-4-1.チで始まりコで終わる……

やだなぁ、チョコですよチョコ!

何変な事考えてるんですか〜!も〜!


ごめんなさい。

それを言うなら、そもそもそういう文章考えつく作者が……っていう。特大ブーメラン。


※ぼかしてはいますが、ちょっとだけアレな表現があります。ご注意ください。

 


 ……って、ホッとしてちゃ駄目なんだよ!

 今度こそ……唯を探さないと……!


 あのLIMEから、何分経ったんだか分かんないけど……もう流石にやばそう。


 教室にいないってなると……あとは下駄箱とか正門の前とかくらい?

 あるいは外歩いててばったり、とか?


(どのみち遠いなぁ……)


 考えてる暇もないか。

 ここはひとまず、急いで下駄箱に……




「あ、いた」

「うわっ?!」


 遠いかもなんて悩みながら廊下出た途端、これである。


「ゆ、唯?!」

「もう、帰っちゃったかと思ったよ〜」

「ごめん……ちょっと色々あって」

「うん。知ってる」

「そっか〜、それなら話は早……うぇえっ?!」

「大変だね、チョコ配んのも一苦労だ……」


 まさか……今までの過程を見てたって事……?


 え、どうやって?

 陰からこっそり?だとしてもどこから?


 いや、ここなんでもありだから……どこからとかいつからとか、そういったのを真面目に考えるのは無意味なんだろうけど……


 でも、そうはいっても……違う、よね……?

 まさか、ね?


「早乙女はいつも通りやかましい、神澤には酷い言われよう、市ノ川に至っては意味不明……それなのに、偉いよ静音ちゃん」


 詳細まではっきりとありがとう。

 ばっちり現場見てたって事ね、うん。


「え、ああ、うん……」

「大人気だね、静音ちゃん」


 淡々とそう語る彼の背後に、見事なグラデーションの夕焼けが見えている。

 ちょうど廊下の窓が真後ろにあって、その窓枠で区切られた空がうまいこと彼のスチルのようになっていた。


 表情はいつも通りだったけど、その彼の周りに漂う悟ってるような憂いを帯びたオーラのような何かが彼を耽美に魅せていた。




 これで、何もなかったら大興奮して心の中でワーワー言ってるところなんだけど……


(ぜ……全部見られてた……!)


 ズーン……


 今の気分はまるで、浮気現場を恋人に見られた悪い女。

 いや、まるでというか……割とそのまんまだけど。




「いや、それがどうって訳じゃなくてさ……大変だなって」

「ま、まぁね……」

「……ってな訳で、はい!」

「わ!」


 勢いよく何かが目の前に差し出された。


「いつも頑張ってるから……はい、ご褒美っ!」

「……え?くれるの?」

「うん!どうぞ〜!」


 透明な袋の中に、飴玉のようなリボン型の何かがパンパンに詰められているのが見える。


 飴……じゃないな。

 感覚的になんか違う。そういう感じじゃない。


(となると……)


 チョコ……交換になっちゃった。




「じゃあ私からも……はい」

「ありがと……わ、うまそ〜」


 はやっ。

 もらったら速攻開けるタイプらしい。


 とはいえ、これまでずっとあげた事への感想なしで来てたから……ちょっとだけ嬉しい。


「早速一個食べちゃおっかな、腹減っててさぁ」

「あはは、分かる。この時間お腹空くよね〜」

「そうなんだよ〜。だから早速一口も〜らおっと」


 男性にしてはだいぶ細いけど、女性と比べたらやや骨太な……

 そんな彼の親指と人差し指が……しなやかにチョコをつまみ出し、ゆっくり口の前まで持ち上げて……


 そして……血色良くふっくらとした唇のその隙間へ、するんと押し込む。


(わ……!)


 はい、アウトー!

 そういうつもりないって言うだろうけど、思いっきりアウトー!えっちが過ぎる!


 ストローの時以来久しぶりだけど、そういう動き駄目だって!

 R指定になっちゃうんだって!


 それに!チョコの真ん中を伏せ字にしたらもう完璧それじゃん!

 どうみてもそういうシーンじゃん!




 ◇ ◇ ◇ ◇




 彼の親指と人差し指が、しなやかに……をつまみ出し……

 ゆっくり口の前までソレを持ち上げて……


 そして……血色良くふっくらとした唇のその隙間へ、ぬるりと押し込む。


 そうしてしばらく唇や舌先で味わっていた彼だが……やがて、物足りないと言わんばかりに大きく頬張ると……




 ◇ ◇ ◇ ◇



 ほら〜!ほら、あんな事するから〜!


 ほらもう、七崎さんの頭の中18禁になっちゃった〜!ほら〜!(?)




 彼はというと……

 そうやって妄想してる間に食べ終わり、今度は長い指をぺろり……


「……ん、美味しかったぁ」


(わ〜っ!わ〜っ!)


 指舐めてるんだけど、違うモノ……いや、違う物が見えるぞ!

 幻覚なのは分かってる!でも見える!


「……ってあれ?静音ちゃん?」


 そして流れるように次は……食べ終わったからって口の周りを舌先でチョロリと舐めて……


(だからその動き……!)




「あはっ、静音ちゃんまた人の口元見てる〜」


 脳みそがピンク色に染まり切った頃、彼の声でやっと正気に戻る。


「えっ?!ち、違っ……!」

「ふふふっ、また見惚れちゃった〜?」

「え、いやその……」

「意識してくれてるんだ?嬉しいなぁ」

「そうじゃなくって……!」

「違うの?」

「いや、違うんだけど……その……」


 意識はしてるはしてるけど……その種類がですね……


「やっぱり、違うの……その、違うんだよ……」

「どんな結論〜?w」


 勝手に結論に飛ぶ私に、唯爆笑。


(だ、だって!人に言えるようなものじゃないんだよ〜!)


「っ、はははっ!あはははっ!あ〜、面白っ!」

「ちょっと!笑い過ぎ!」

「だ……だって……!っふ、ははははっ!」

「もう……!」


 さっきまでいっちーがテンパる見てる側だったのが、今度はまるで逆転させられてしまった。




「ああ〜おっかし……笑い過ぎて腹痛ぇ」

「と、とにかく!違うんだから!」

「違くないでしょ?」


 やっと笑いが治まり冷静になったらしい唯の口から、クリティカルな一撃。


「だって、目の感じで分かるもん」

「うっ」

「いつもよりキラキラしてて……明らかにいつもと違う目だった」

「むっ」

「人って、すごい興奮してる時目が輝くんだって……なんかで見たよ俺?」


(バッチリ見事にバレてる……)


 もうそれを言われちゃ、何も言えない……




「お、おおお、お腹減っちゃった!私も食べちゃお!あははっ!」


 無理矢理話題転換。

 こうでもしないと、雰囲気に呑まれちゃいそうだったから。


「ではでは、いっただっきま〜……」

「待って」

「わっ?!」


 ストップかけられるとは微塵も思ってなくて、指からチョコが滑り落ち……


(わ、わわわ……)


 でも、なぜかうまいことつるんと袋に戻っていった。

 ナイスキャッチならぬナイス着地。


「ごめんごめん……でさ、食べ合いっこしよ?」

「食べ合いっこ?」

「そ。お互い食べさせてあげるの」


 あっ、そういう……


(そういうとこだよな、君は……)


 他のキャラみたく直接何か言う訳じゃない代わりに、行動で何かしてくるんだよね君の場合は。


 またすぐそうやって見せつけようとする……今は周りに誰もいないから全然問題ない訳だけどさ。




「はい、あ〜ん」

「え?」

「ほら、口開けて?」

「え、あ……あ、あ〜ん……」


 心臓バックバク。助けて。


(ひぃ!顔が……良過ぎる……!)


 今更感半端ないけど!やっぱり綺麗なお顔ね!


 どちらかというとやや吊り目でシュッとした目元……!

 おできとかボツボツ系一切ない、ツルスベお肌……!

 健康的なピンク色の、もちもちほっぺた……!


 輪郭も目鼻立ちも曲線多めで中性的な顔立ちだけど……キリッとした眉毛に薄い唇、そしてなかなか立派な喉仏が雄みを演出……!

 女性的な顔立ちだから、余計にそのギャップが目立つ……!


(これで緊張するなって?!いや無理だって……!)


「あ〜ん……あ、ちょっと!後ろ行かないでよ!」

「ごめんごめん」


 無意識で顔を離そうとしてたらしい。


 見るのはもう全然慣れた。

 けど、近づいてくるとかそういうのにはまだちょっと……


(その……心臓が……慣れてなくてですね?)




「……あれ?ドキドキしてる?」

「してません!」


 察しのいい奴め!


「ふ〜ん?」

「ほ、ほら……!あ〜ん……」

「あ〜……」


「「ん」」


 お互いぱくっ。


(あ)


 口を閉じた瞬間、指先にふにゅっとした感触が。


(わ!唇……!)


 触れるつもりはなかったそれから離れようとする私の人差し指。

 しかし、すぐさまワシっと摘まれて彼の口の方へ引き戻されていく。


 きちんとお手入れされた、艶のある紅色の膨らみの方へ……


「え?え……?」


 指が引き寄せられると同時に、彼の顔がほんの少しずつ近づいてきている。


 混乱のあまり脳から何の指令も来なくなり、ただただされるがままの私の指。

 そして、そんなただの指を愛おしげに見つめて、優しく引き寄せていく彼の手。


 状況を理解するまで待ってほしいくらいだったけど……そうもいかず。


 訳も分からないまま、とうとう指先に彼の柔らかい唇が……



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