20-4.なんとか致命傷で済んだぜ……!
※テレビ業界全く無知の人間が作ってるお話なのでおかしな点多いとは思いますが、多めに見ていただけると幸いです……
「それで……うちの学校さ、芸能人いるじゃん?」
「へ?げーのーじん?」
「ほら、親が大御所女優とかって……」
知らんがな!!!(2回目)どこの誰だよ!!!
「小さい頃から子役やってたっていう……ほら、あいつだよあいつ」
(誰だよ)
っていうか、学業と俳優業って両立できるんだ……
(す〜ん……)
興奮メーター急降下。
急に現実の話来ちゃったもんだから、一気に萎えてしまった。
(その人には悪いけど……三次元はちょっと……)
「え〜?分かんない?」
「う、う〜ん……」
「絶対知ってるよ、最近バラエティ番組にも出てるし。なんだっけ、ほら『期待のイケメン二世俳優!』とかって……」
「あ、あ〜……知ってる……かも」
「でしょ〜?!ほらぁ!」
ごめん、嘘。その人全然知らない。
でもあんまりにも必死で説明してくれるから、なんか罪悪感がすごくて……とりあえず話を合わせることにしたのだった。
「で、なんか〜そいつがうっかり口滑らせて、放送始まる前なのにドラマのネタバレ言っちゃったらしくて」
「へ〜」
「それがなんか伝言ゲーム失敗して、途中で本当の話みたくなってって……」
「えっ、まさか……」
「うん、そのまさか。さっきのバイク事故って、元々はドラマの話。実際にあったって訳じゃない」
「えっ、え……じゃ、じゃあ……誰も怪我してないの……?」
「怪我してないし、そもそも事故なんて起きてない」
「ええ〜っ?!」
え?!私、そんなのに振り回されてたって訳……?!
あれほど心配したのが、全くの嘘って事……?!
「う、うそ……!そんな……!」
ごめん、ちょっと今……意味分かんないや。
言葉の意味は分かるけど……分かんない……
「……おっと」
ぐらっと来た私の体をナイスキャッチ。ありがとう唯。
倒れるっていっても、元々座ってるから大した事ないけど……
「え、大丈夫?ほんとに具合悪い?」
「ううん、大丈夫……大丈夫、だから……」
顔の良い男に抱えられて……本来ならドキドキするであろうシチュエーション。
でも、今はそれどころじゃない……
(いや、いやいやいや!ほんとに……そんなのってあり?!)
今までのあの不安感、恐怖……その元が嘘?
架空のドラマの話に怯えてたって事……?
「……静音ちゃん?」
「嘘だ……信じらんない、そんな事……」
「あれ?もしかして本気で信じてた?」
「そりゃあ、もう!めっちゃ不安になったし心配したよ!だって……死んじゃうかもしれないじゃん!」
「まぁそうだけど……クラスも名前を知らないような奴だよ?何も分からないような相手なんだよ?」
「違う!何も分からないから心配なんだよ!」
「え〜?関係ないなら放っておいてもいい訳じゃんか」
「もしそれが……唯だったらどうすんのさ!もしそれで死んじゃったなんてなったら……私……!私、は……!」
ここまでほぼ息継ぎなし。
オタク特有の肺活量(?)で難なく言い切りました、私。
「……って、あ!」
やば、言っちゃった。色々と。
「へ〜、なるほどそういう事かぁ」
久々のニヤニヤ顔。これまた可愛いのずるい。
色々まだ説明したい事あるんだけど……なんかもう弁解とかする隙がなさそうな……
(まずいぞ……)
「えっいや、その……違うの!ただ大丈夫かなって思っただけで……!」
「ふふふ〜」
「な、何?そんなニヤニヤして……」
聞かずとも分かってたけど、聞かざるを得なかった。
(だって、聞いてほしいって顔に書いてあるんだもんなぁ)
「ん〜?いや……嬉しいなって。俺の事、そこまで心配してたなんて」
返ってきたのは思った通りの返事。そう言うだろうなって感じの。
そういう甘いセリフ言って……んで、次はあれだろ?
そうやった後に、間髪入れずに……
(この後絶対……『アレ』がくる!超弩級の『アレ』が!)
避けろ私!当たったら死ぬぞ!
急げ、顔を反らすんだ!顔さえ見なきゃギリセーフだから!
彼の方に向いていた顔を僅かに逸らし、視界から危険因子を排除。
(ふっ、見切ったぜ……!)
こんな攻撃予兆演出がはっきりしてるんだから!
こんな露骨なのは即死攻撃の前触れだって、今まで散々色んなゲームやってきて知ってるし!
そんなこれまた想定通りに来た大技を、華麗に回避……
「静音ちゃん⭐︎」
「わひっ?!」
……できませんでした〜⭐︎
顔覗き込まれて目が合っちゃいました〜⭐︎はい、︎無理〜⭐︎
(わ、わわわわわ……!)
だから!!!至近距離で撃つなって言ったろ!!!
心臓もげるから!!!やめい!!!
(し、死ぬ……!これは……死ぬ……!)
左手が勝手に胸元を押さえている。
今まさに心臓が皮膚突き破って飛び出そう、いやガチで。うん。
いやいやいや!駄目だって!
分かってても避けられないよあんなの!
「ずるいって流石に!」
「へ?」
「あ、えと……」
叫んじゃった……
「ずるい、かぁ」
「いや、違くて……その……」
「ううん、分かるよ」
「えっ?」
「さっきの話でしょ?」
あ、そっち……?
「やっぱそう思うよね、俺もそう……疑われても仕方ないっていうか」
「……?」
「『うっかり』なんかじゃなくて、『わざと』言って宣伝してたんじゃないかって噂があってさ」
「宣伝?」
「うん。ちょっと学校内で話題にさせといて、それから放送……って流れにしたかったんじゃないかって。視聴率のために」
「へ〜」
「CM流してても大した視聴率見込めなかったからって、今度はここの生徒利用してSNSでバズらせよう、だなんて……ずるい事考えるよね、ほんと」
(お、おう……せやな……)
なんだか急にビジネスの話に……
「ただ、それが結構学校の外まで噂が広まってたみたいでさ……保護者から学校に連絡あったらしくて、今そいつ先生と三者面談してるって」
「え……結構大ごとになっちゃったんだね」
「そりゃもう、学校の中じゃ誰でも知ってるってくらい広まってたからね。あの市ノ川だって余裕で知ってた」
ああ、いっちー噂疎そうだもんね。
他の三人、いや唯含めて四人か……は普通に知ってそうだけど、そんな彼の方にまで……
「なんか保護者の間でも噂になってて……でもじゃあ、実際その怪我した子は誰なんだ?って話になって嘘がバレたと」
「おお……」
「そんで、本気で信じてた人が誰だそんな紛らわしいデマ流したの!って怒って学校に連絡……と」
「うわ、そこまで話広がっちゃったのね」
「らしいよ。でも、それを本人が考えたとは思えないから……きっと、周りの大人からそうしろって言われてやったって感じだろうけど……俺、普通の人で良かったわ〜」
「私も〜」
面倒事は私も勘弁。
そういう金銭とか損得絡む系は特に……
「そういやさ、静音ちゃん」
「ん?」
「……でさ、」
ん?これ、もしかして……
「……ん、でも……」
来たか、終わりが……!って言うとちょっと厨二っぽい。
「……?……で……ん?」
「しず……ん、……は……」
(はい、いつもの〜)
フェードアウトももう全然ビビらない。すっかり慣れたもんだ。
(やっぱ変だよなぁ、今回のイベント)
薄れていく意識の中で、余裕で他のこと考えられるレベル。
(なんかなぁ……)
あれほど不安を煽ってきたあの事故の話が、実はただの噂でしかも作り話だったなんてなぁ。
騙されてたというか、踊らされてたというか……
(……ほんとにそうだったのかな?)
だってほら……最初本気で言ってたもん、あの子。
あれから少し経って忘れてきてるし、記憶薄れつつあるけど、でも……どう考えても噂を信じてるって話し方じゃなかった。
あの時は事実として本当にあった……そんな気がする。
この世界、あの爺さんの支配下にあるっていうなら……何か裏でこそこそ操作してるのかもしれない。
イベントの内容を変えるなんて事もできるのかもしれない。
(途中で無理矢理話を変えた説……)
でも……なんで変えたんだろ?
なんか途中で都合悪い事でもあった?
思ったより噂が外に広がっちゃったから?
私と攻略キャラ五人だけに影響させるつもりが、他の人まで巻き込んじゃった?
いやそれとも……攻略キャラ達の反応を見るつもりが、思っていた反応と違ったとか?
はっ!まさか……私がつらそうなのを見てられなくて、五人のうち誰かが唯生存ルートに変えてくれた……?!
こう、なんか……愛の力的な謎パワーを使って……!(?)
(な〜んて、流石にそれはないか)
考えてもやっぱり……分かんないな。
でもなんか、裏で何かが動いているような気持ち悪い感じはある。
確証はないけど……途中で話を無理矢理捻じ曲げた感がすごいし、どうしてもそんな気がしちゃう。
保健室が近づいてきたっていうのも……やっぱり、本当な気がする。
誰かに操作されてるよ、やっぱ。
(あ〜も〜!なんか気持ち悪いけど、分かんない!)
分かるのは、なかなかひどいイベントだったって事だけ。
あとは一切何も分からない……不気味な感じだけが残ってる。
とりあえず終わった事だし、良かった事にしとくけどさ。
(もやっとするけど……しゃーない!)