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その差、一回り以上  作者: あさぎ
平和のようでなんか不穏な
118/166

18-2.三つ巴の戦い?

小麦粉の生地を丸く焼いて餡子とかを入れた、屋台でよく見かけるあのお菓子の話です。◯◯焼き。


あれ?軽いノリで投稿しちゃったけど、これもしかして本当に戦争になるやつ……?

きのこたけのこ戦争みたいな……



「あっ!あれは……!」


 突然、屋台を指差し叫ぶポテチ。


(ややっ!あの丸い焼き菓子は……!)


 ふわふわで甘くて美味しいやつ!

 焼いてる最中の匂いを嗅ぐだけで……口の中に涎が……!


「回転やk「大判焼きじゃん!」「今川焼きだ〜!」


「「「は?」」」




 戦争かな?戦争勃発かな?


「今川焼きぃ?大判焼きでしょ!」

「しず、違う!あれは今川焼き!」

「いやいやいや!昼間こそ違うって!」


「「むむむむむ……」」


 昼間vs私。ファイッ!

 戦いの火蓋が切って落とされたっ!


 私は大判焼き派……というか、今川焼きなんて初めて聞いた。

 いや、呼び方自体あるのは知ってたんだけど……でも、実際に言ってるのを聞いたのは今のが初めて。


「こういうのって大体、屋台の周りのどっかしらに名前書いてあるでしょ……あれ?無い……」

「ほんとだ。上の看板のとこなんか書いてありそうだけど読めない……」


 モヤモヤしてて読めないっていうか……これ、そもそも文字書いてないパターン……?


 はは〜ん……さては、手抜いたな?

 背景だからってなんか文字っぽい模様並べただけだなこれ?




「普通今川焼きでしょ」

「え〜?な〜んかしっくりこないよなぁ」

「大判焼きなんかじゃないよあれ、そっちのが違和感あるよ」

「ええ〜、変だよぉ」

「だってほら、冷食で売ってんじゃん」

「あっ!」

「ほら〜!」

「た、確かに……」


 いきなり劣勢に追い込まれてしまった……!


「それに……今川は地名だけど、大判焼きはただの商品名!たくさんある呼び名のうちの一つ!」


 言葉と共にドヤ顔を決める昼間。

 確かになかなか決定打ではある。


(あるけど……なんの!まだまだぁ!)


「でも!地名よりも商品名の方がこう、正式名称感あるし!」

「今川は江戸時代の地名、大判焼きの会社設立は昭和!」

「ぬぬぬぬぬぅ……!」


 手痛いカウンター!なんも言い返せねぇ……っ!


(もう、こうなったら……!)


「冷凍のやつ……あれさ〜、美味しいよね」


 喰らえ!唐突な話題変更!

 これ以上、一方的な攻撃はさせないぜっ!


「ね。ストックしといて、ちょっとずつ食べれるの便利だしね」

「私、あれのカスタード味好き」

「は?そこはあずきでしょ」


 あれ?あれあれ?


「だ、だって……!まったりしてる方が美味しいじゃん!」

「あずきだってまったりしてるよ?」

「けどほら、カスタードの方がクリーミーで美味しい!」

「ふん!西洋かぶれめ!」

「昼間だって!毎朝、ご飯食べてる?」

「うっ……そ、それは……!」

「はは〜ん、そのリアクション……毎日トースト食べてるな?」

「くっ……!」

「そっちこそ、西洋かぶれめっ!」

「そ、そんなの関係ないじゃん!それに私、お昼は必ず何かしらご飯食べてるし!」

「でも、その後は必ずデザートに菓子パン食べてる!」

「くぅ〜っ!」


 なかなかの接戦、互角の戦いだ……


 多分。




 ふとここで視線を感じて、その方を向くと何か言いたげなポテチがいた。


「……あ。そうだ、ポテチはどっち派?」

「うんうん。どっち派?どっち派?」


 期待に目を輝かせる二人。


「え?え、いや……だから……」

「「うんうん」」




「だから、その……か、『回転焼き』……」




「「か、回転焼き……!」」


 まさかの第三勢力現る……!




「うん。回転焼きだよ、あれは」

「え……えええ……」「え、え〜……」

「だ、だって……!大判焼きも今川焼きも、聞いたことないもん!」


 それを言うなら、回転焼きも聞いた事ないもん。


「……あ!」

「どしたの昼間」

「私、テレビかなんかで見たことあるかも……どっかの地方で回転焼きって呼んでるって」

「でしょ〜?!ほら、だから呼び名としてちゃんとあるんだってば!二人とも変に疑うんだから〜!」

「「そっか〜」」


(なぁんだ。そっか〜、他の地方か〜)




「「「……」」」


「「「……」」」


「「「……」」」




「「「……?!」」」




 三人とも、おそらく同じ疑問が湧いている。

 でもそれを真っ先に口にしたのは、昼間だった。


「いやいやいや!うちら住んでる地方一緒じゃん!」


 同じ学校に通ってる訳だしね。

 大学なら分かるけど私達は高校生……そんなわざわざ遠く離れた別の地方から来るなんて滅多にないだろう。

 というか、実家から通えないだろうし。


「小学校の頃からポテチと私、ずっと近所じゃん!」


 あ、それは初耳。へ〜。


「そんな事ってある?!近くに住んでて?!」


 言いたい事全て言ってくれちゃったもんだから、言う事がなくなってしまった私はただ頷いておいた。




「いや〜……でも、流石に一回くらいは大判焼きって聞いた事あるでしょ?……あるよね?」


 ずっと昼間のターン。


「え、ないない!ないよ〜!回転焼き以外なんて聞いた事ないよ!」


 全否定のポテチ氏。

 ふざけてるとかそういうのじゃなくて、本当に全然聞いた事が無いらしい。


「むしろ二人は?聞いた事あるの?」

「え?何が?」

「大判焼きとか今川焼き。二人ともお互い聞いた事あるの?」

「「ある」」

「え……じゃあそれならほら、回転焼きだって……」

「「ない」」




「「「え〜……」」」


「「「まじか〜」」」


 思わず三人で顔見合わせて苦笑い。


 日常会話でそうそう使わない単語ではあるけど……一度も聞いた事ないなんて、そんな事ある?

 しかも同じ地方、それもさらに同じクラスで。




「……まぁ、一旦それは置いといて。ちょっとお腹空いてきたし、なんか食べよ?」


 昼間の提案でなんか食べる事に。


(う〜ん、どうしよっかな……)


 人混みの中、ちょっと背伸びしてメニューの確認。どれどれ……


 焼きそばにたこ焼き、チョコバナナ、おしるこ、あと甘酒も……

 ざっと見た感じ、屋台のレパートリーは盛りだくさん。


 どれも普通に美味しそうだけど……

 でも、今の話の後だと……どうしてもアレが食べたくなる……


「私は……今川焼き食べようかな。他に今川焼き食べる人〜?」

「「は?」」

「そこは大判焼きでしょ〜!はい、大判焼き食べる人〜!」

「違うってば!回転焼き食べる人〜!」


 負けられない戦いが、そこにはある……!(無い)




「みんな強情だなぁ!じゃあ今川焼きは私の一つだけね!はい決定〜!」

「ああそう!じゃあ、大判焼きは私だけね!」

「ふん、もう知らない!回転焼き一個しか買わないから!」


 ※買おうとしているものは同じです




 結局、無駄に意地を張ってバラバラに同じものを買った三人は人混みを避けて参道の外れのベンチで頬張る事に。


「やっぱ大判焼きはうまいわぁ」

「今川焼きサイコー」

「回転焼き美味し〜」


 ただし呼び名は譲らない。


「「「うま〜」」」


 もぐもぐもぐもぐ。


 餡子たっぷりでなかなかにハイカロリーなそれも、高校生の胃袋には敵わない。

 まるでゼリーでも食べているかのように、何分も持たずスイスイ吸い込まれていった。






「……あ!」


 食べ終わるなり、今度は突然昼間が叫び出した。


「え、何?」

「しず、あれ!」

「え?え?」

「あれ!あそこ!」

「えっ、何が……」

「あそこ!」

「あっ」


(おおぅ、レッドヘッドボーイがアプローチング……)


 思わずルー語になっちゃうレベル。


 って、ルー語って今の時代通じる?普通に言っちゃったけど……もしかして古代文明?




 まぁいいや、しっかし……いやぁ、すっかり油断してたわぁ。


 向こうはソロ初詣かぁ。

 イベントのためとはいえ、一人でこんなとこよく来れたな。


(あっ……)


 しかも、見てたら目が合っちゃった……

 うわぁ……最悪。絶対来るやんこれ。


 いや、乙女ゲームだしそりゃあ来るんだけど。

 そうなんだけど……



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