17-1.藁から顔を出す男のテーマ
じゃないんだけど……某MAD動画のおかげで、どうしても本家より先にそっちが浮かぶ……
あと、藁をかき分けるあの金髪のお兄さん、無駄にめっちゃ目が綺麗なんですよね。薄〜い水色で。
モブにするにはなんか勿体無い気がしちゃう。
目覚めたら今度は昼休みだった。
今ちょうど、食べ終わった後のダラダラタイム中。食休みってやつ?
前回すごく思い悩んでたけど……今はなんだか気分がとてもスッキリしていた。
なんだろね、原因分かんないけど。お昼食べたからとか?
ほら……お腹が満たされてくるとさ、悩み事とかどうでもよくなってこない?え、ない?
それにもう、ぶっちゃけ悩んでてもしょうがないなって思って。
内心今もめっちゃ不安だし、なんかの拍子にまた気持ちが爆発するかもだけど……うだうだ言ってても結局仕方ないし。
最悪、あまりにひどいようならあの神様にお願いしようと思う。
そもそもの元凶があの人(神)な訳だしね。
とりあえず今は、今度はなんのイベントかな〜?とか思いながら友達と適当に過ごしている。
「チョコ◯ップメロンパンうめ〜」
「ス◯ートブールうめ〜」
伏せ字にしたものの、有名過ぎてメーカーまでばっちりバレるや〜つ。
ちなみにこれは、つい数秒前までカレーうどんとスタミナ丼をセットで食べていた人間の発言である。
◯ービィかな?ぽよー。
(若いって怖ぇ〜……!でも、うま〜!)
思いっきり頬張った瞬間、突然話しかけられる。
「あ、ほおほお」
「はひ?」
「はひ?」
「へ?」
「へ?」
「はんへ……?」
お互い何言ってるか分かんなくて、思わず見つめ合う。
「「???」」
目と目が合う〜♪
じゃなくて、とりあえずまずは食べてるもの飲み込もう?
彼女も、そして私も。
口の中を一旦綺麗にすべく、500ml紙パックにストロー突っ込んでズズー。
こういう飲み方、なんかやたら流行ってたよね当時。
紙パックにストロー突っ込んでズビズビ飲むっていう、このスタイル。
今もあるのかな?どうだろ。
(うんま〜い!けど、くっそ甘っ!)
ちなみに彼女はミルクティーで私はコーヒー牛乳。
こんなの、菓子パンと合わせたら……もう、最強だ。
カロリー的な意味で。
「……でさ、聞いた?同じ学年の誰かが入院したって話」
「えっ知らな〜い。何それ?」
「なんか〜、昨日バイクで誰か事故ったらしいよ」
「えっ、まじで?」
「まじ。今も意識不明だって」
(な、なんか……いきなりヘビーな話が来たな……)
ここまでめっちゃ平和な感じだったから、内心結構動揺。
「え、え……えっ?それ、大丈夫なの……?」
いや、意識不明ってことは少なくとも大丈夫ではないんだろうけど。
「う〜ん?分かんない」
「そっか……」
だよね。ただの噂だもんね、そこまではね。
「にしても……誰だか知らないけど、随分と派手にやったね」
「ね〜。名前とかクラスとかは分かんないけど……なんか金髪で、チャラチャラした人だって」
誰だ。えらいふわっとしてんな。
「ま、まぁ……そういう系の人って事ね……」
普段からやんちゃしてそうな感じのタイプね。
まぁそりゃそうか、こうやって噂になるほどやらかしちゃうんだからそういう人か。
(……って……ん?んんん?)
バイク?金髪?チャラい?
ちょっといや〜な予感。いや、でもまさか……
(いや……そんな、まさかね……?)
だって、そもそも彼の場合金じゃなくて黄色だもんね。
(いや、もしかして……この世界ではあれ、ギリギリ金髪って扱いだったり?)
む、むむむ……
考えれば考えるほど、なんだかそれっぽい気がしてきたぞ……
しかもこんなわざわざ、イベントの会話として出してくるってことは……やっぱり……
(いやいやいや!ないないない!)
チャラいっちゃチャラいけど、乗せてもらった時ちゃんと速度そこそこで安全運転してたし……危ない走りもしてなかったし……
(あっ、ノーヘル!)
ま、ままま、まぁ……ここはあくまでゲームの世界だから……!
ほら、イケメンを眺めるゲームなのに、肝心の顔が隠れちゃったら駄目じゃん?
うん、そういう事にしとこう。うん。
仮にあの時が私を乗せてるからっていつもと違ってわざとノーヘルだったとしても……確かにテストは悲惨だしアホキャラではあるけど、流石にそこまでやらかすほど本物のアホじゃない……
……はず、多分。希望的観測。
「ちなみに、そのバイクって何色?」
唯のは確か黒だった。前に見せてもらったスマホの待受のやつは確かそうだった。
「え、バイクの色?」
「うん」
黒じゃない事を内心祈りつつ、彼女の言葉を待つ。
「色ぉ〜?え〜、なんだっけ?そもそも、公表されてたっけな?」
「……」
「え〜、分かんない。バイクとか興味ないし全然気にしてなかったから……」
そりゃそうだよね、普通気にしないよねそこ。
「ってか、もはや色とかそういう次元じゃないっぽいよ?」
「え?どういうこと?」
「なんか、粉々になっちゃってバイクとしての原型留めてないとかって……」
(う、うわ〜……)
すごいの聞いちゃった。
そこまでバラバラってことはつまり、本人はさらに……
「うわぁ……」
かっ飛ばして気持ちいいのは分かるけど……
ここでなんだか急に友達の表情が曇ってきた。
この後にどうやら、さらに良くない話が続きそうな感じ。
「しかもその、なんか……」
「うん?」
「……」
「……」
大声で言えないような事なのか、ちょいちょいと手で近寄るよう呼ぶので、サッと身を寄せる。
「噂じゃ、その人自殺しようとしてたんじゃないかって」
「え、まじで?!」
「し〜!声でかい!」
な、なんだって〜?!
「事故が起きた場所って、周りに畑しかないような超のどかなところで……信号もない真っ直ぐな道がずーっとあるだけで、ほんとになんもないところらしいのよ」
「ふんふん」
「人もいなくて、普通にカモシカが歩き回ってるってくらいで……」
「思ってた以上に田舎だった」
「でも、その先に……自殺スポットで有名な雑木林が……」
「おっふ」
それもうほぼ行き先も動機も確定じゃないですか〜、やだ〜。
「何があったんだろうね、そんな何もかも嫌になるほどの事……しかも、そんなチャラい人が……」
「お母さんにえっちな本の隠し場所バレたかな」
「んふっw」
地味だけど、しばらく心に傷を負うや〜つ。
ある意味死にたくなるや〜つ。
「いや〜……そっかぁ。なんか色々あったのかもなぁ」
「見た目で判断しちゃいけないとは言うけど、だけど……ねぇ?そんないかにもメンタル強そうな人がそこまで追い込まれちゃうなんて……」
(繊細な人、か)
唯はああ見えて、その心はひどく繊細だ。
笑ってチャラチャラした風を装って、泣きそうな自分の心を隠しているだけで……本当の心はきっと、もっと脆い。
前に自分の話をしてくれた時……私の答えはとても曖昧だった。
少しでも気が紛れれば、と思って言ったつもりだけど……本当のところ、どうなんだろう。
(……)
あれからたまに、なんだか暗い顔をする時があったような、無かったような……
ほんの一瞬だしそんな気にするほどでもないかなと思って、特に気にしてなかったんだけど。
それがどういう意味なのかは分からない。
たまたま眠かっただけかもしれないし、調子が悪かったのかもしれない。
色々可能性はあるけど、それが私のせいじゃないという確証もなく。
「どうしたの、しず?」
「え?」
「なんだよも〜、急に黙るんだもん。なになに、誰か心当たりあるの?」
「えっ?あっ、いや〜なんでもないよ〜」
「ダウト」
くっ!ポーカーフェイス苦手過ぎてこんなところにも影響が……!
「いや、その……なんとなく同学年って聞いて気になっちゃってさ」
「あっ、もしかしてもしかして!神澤君?!」
期待に満ちたキラッキラの瞳が眩しいぜっ……!
全然違うけどな!
ていうか、その勘違いまだ続いてたのね……
「ううん、違うよ」
「な〜んだ、つまんないの」
「いやいや、流石にそれはないでしょ。彼そういうタイプじゃないし」
「まぁそうだけどさ〜……ええ〜……」
なんだかすごい不満げ。
友よ、そんなに私と彼をくっつけたいのか……
「そうじゃなくて。なんとなくだってば」
「え〜ほんとに?」
誤解はまだまだしばらく解けそうにない。