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その差、一回り以上  作者: あさぎ
平和のようでなんか不穏な
113/188

番外7-4もういい!もうたくさんだ!

シナリオを破壊する!



「ふむ、これも……彼女の影響か……」

「……」

「恐ろしいのぅ。ちょっと手伝ってもらうつもりが、全然ちょっとどころではなくなってしまったわい」

「やはり、これは七崎が……」

「む。言っておくが、彼女は悪くない。そこは勘違いしてはならんぞ?」

「……っ!」


 七崎に対してあまり良くない感情が湧き上がっているのが見えたから、軽く嗜めておいた。




「やれやれ……」


 実はこの頃、とうとうワシの部下の中に七崎の事を疎ましく思う者まで出てきてな……組織全体がなかなか混乱しておるのじゃよ。


 元はと言えば、世界を救うために苦肉の策で彼女を呼んだのじゃがなぁ。


 まぁこちらとすれば、用意しておいた計画が狂わされっぱなし……先の読めない不安と困惑、そして七崎という得体の知れない異世界人に対する不信感……気持ちは分からなくもないが。


 彼女の力が及ぶのはあくまであの五人の周りだけ……じゃが範囲は狭いとはいえ、あまりにも多くを変え過ぎた。


 もうなんか、部下達みんなストレスが限界でな。

 頭痛がひどいとか、髪の毛が抜けたとか、蕁麻疹が出たとか……もう、散々じゃ。

 後もう少しの我慢なんじゃがなぁ。厳しいのぅ。


 そういうワシもそう……

 部下達のそういったメンタルの相談も受けなきゃいかんから、流石にそろそろちょっと疲れてきてな……毛がパラパラと……


 あっ元々無かったわ(๑˃̵ᴗ˂̵)てへ⭐︎




 おっと、部下がまた少し不安そうな顔をしておる。

 また真面目モードに戻るとするか……


「それより、イベントが消えたと言ったが……具体的にどのくらいじゃ?」

「結論から言いますと、ちょっとした言い争いから全力の決闘イベントまで……そういったゴタゴタの話は綺麗に全滅です」

「ぜ、全滅ぅ?!」


 ありゃぁ?!全滅?!全の滅?!


「伏線がきちんと張られたかちゃんと確認までしたというのに、彼らの意思でそれらが全部消され……争うタイプのイベントは見事に全て消えてしまいました」

「な、なんと……!」

「影響を受けず残ったのはそれ以外、平穏な日常の話のみ……」


 い〜や、参ったのぅ……


 まさかの全滅……多少は残ってるだろうと考えていたのじゃが、甘かったか。

 流石のワシでもちょっと焦る……流石にここまでとは思ってなかったぞ。


 別に、彼らを争わせる事が平穏な日常より大事という訳ではないが……

 イベントが無くなったという事は、シナリオの終わりまでにワシらや七崎がテコ入れできるタイミングが減ったという事……それも一気に。


 ううむ……まずい、まずいぞ。




「……あっ!という事は、最後のイベントも消えたのか?!」


 物語の結末、一番大事なところ。


「いえ、そこは完全に確定しています。我々としてもそこは大切な部分、常に厳しく監視していますし……多少追加要素があったりして変化はあったとしても、その結末自体は何も変わらないはずです」

「ホッ……なら、エンディングは変わらずに済みそうじゃな」




 最後の日、クライマックスとしての一悶着……七崎を巡って誰かと誰かが揉めて……おっとこれ以上はネタバレ、やめておくとしよう。


 とりあえず最後の流れは変わっていないようじゃ。

 終わりよければすべてよし。その辺は最悪帳尻さえ合えばいい。




 どちらかと言うと、それより『迷い人』をどうにかする方が先か。


 ちなみに……七崎はまだ見つけられていないようじゃが、ワシは大体誰か目星はついたぞ。

 まぁ彼女と違って、俯瞰して全体を見てるからのぅ。


 じゃが、それをどう七崎に見つけてもらうか……

 うう、また悩みの種が……




「……やはり、見ていられません!」


 あら。また興奮してる、この子……


「このままでは駄目です!どうか、我々に許可を!」

「許可?」

「このまま見守っているだけでは、いつか計画が破綻してしまいます!もはや放っておけません!」

「……」

「彼らに関与してはいけないのは重々分かっております。しかし、今はそうも言ってられない緊急事態……特例として、どうかお許しください!」


 おっと。


 部下達の我慢はもう限界に近い。

 それはさっきも言ったように、とてもよく分かっておる。


 しかし、しかしな……


「ここまで来たらもう、力技しかない……!思考を乗っ取り、我々が強制的にイベントを……!」

「それはいかん」

「で、ですが!」

「前にも言ったが、どんな流れになろうとも極力彼らに任せることにしておる。我々のおせっかいは最小限にしたいのじゃ」

「しかし……!このままでは……!」


 焦る気持ちは分かる。


 分かるが……我々の接触は彼らの命を脅かす事になる。

 彼らだけで解決させたいというのもあるが、そもそもの話あまり無闇に近づいてはならんのじゃ。


「で、でも!それでも……!」


 じゃが、そうは言っても……こちらももう、我慢の限界……




「ぬぅ……分かった!よし!」

「……!」

「一回だけ!一回だけ彼らに関与していい事にしよう!」


 ワシ甘〜い。


 歳はワシの半分以下だし、まるで自分の子供のような可愛い部下だからって……つい許しちゃう。


「ほんとですか?!」

「ああ。じゃが、条件付きでな」

「条件……」

「直接ではなくて、噂として……あくまで間接的に影響を促す程度に止めておく事。良いな?」

「はっ!承知しました!」

「ちなみに何をするつもりじゃ?」

「それはですね……」


 あっ!このまま喋ったら誰かに聞かれてしまう!

 ネタバレ禁止!


「待った待った!ここは耳打ちで……」

「え?誰かいるんですか?」

「ああ、いや、まぁな……」

「……?」

「い、色々!色々とあるのじゃよ!」


 なんか納得いかない顔してるね、君?


「……分かりました。では……」


 おおう、ほっぺに髪がかかってくすぐった〜い。


「ヒソヒソヒソヒソ……」


 ほうほう。


「で……するので、ヒソヒソヒソヒソ……」


 なるほど。


「ここまですれば、流石に彼らだって嫌でも反応するでしょう」


 満足げな顔。

 この部屋に来た時と180度違って、とても誇らしげ。


「……まぁ、いいじゃろう。やってみなさい」


 ちょっとした事件……といっても本人達には直接影響ない程度の……を起こして、彼らに刺激を与えてみようという事らしい。


 どちらかと言うとこれは、あの五人より七崎の方が反応しそうじゃが……まぁいいか。

 ここは目の前の彼に任せよう。




「ありがとうございます!では、早速……!」


 バターン!


「あ、ちょ、扉はゆっくり閉め……!」


 ドタドタドタドタ!




 おお、もう早速姿がない……意気揚々とどこかへ行ってしまった。

 さっきまでの落ち込みようはどこへやら。



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