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その差、一回り以上  作者: あさぎ
平和のようでなんか不穏な
104/165

16-3ー3.真顔のまま突然ジョーク

無駄に三話連続でタイトル揃えてみました(๑˃̵ᴗ˂̵)

微妙に揃えきれてないけどオッケー⭐︎(?)


 


「そうだな、お前ももう高校生……教えてやってもいいだろう」


 結局その問いに答える係は皇になった。

 なったというか、他にいなくて回ってきただけだが。


「実は……去年から付き合っていた彼女に浮気されて、つい最近別れたらしくて……」

「なるほど、そんな事が「だ〜っ!ストップストップ!」


 聖の返事に晴樹の悲鳴が被る。


「くそっ!そう淡々と説明されると余計キツイわ!もういい、ストップストップ!俺が説明するから!それでいいっしょ?!」


 自分の失恋を人に説明されて……というか、まだこれから説明が始まるところだったのだが……

 どうやらそれは本当につい最近の出来事らしく、まだ立ち直れていない晴樹にとっては始まりの段階ですらギブアップのようだ。


「……?」


 突然喚き出した男にぽかんとする聖。




「ほら、医者ってモテるじゃん?」


 皇の顔には『そうとは限らないと思うが』とはっきり書かれていたが、聖の視界には入っていなかった。


「特に一年目なんて、毎日毎日合コンでほんと忙しくってさ……」


 皇の顔には『そんなのはお前だけだ』とデカデカと書かれていたが、やはり聖の視界に入らなかった。




「だから、色々付き合ってみたけど……見た目は良くても中身スッカスカだったり、あるいは逆だったり……なかなか良い塩梅ってのがいないんだよな」


「いや、見た目なんて好みの問題なんだろうけどさ」


「俺の好みって、なんて言うか……ギャルみたいな子好きなのよ」

「『みたいな』じゃなくてモロだろ」

「あはっ、流石皇。当たり〜」

「それに今、ギャルなんて死語なんじゃ……」

「え〜?じゃあなんて言うんだよ?」

「『JK』は高校生限定だし……なんだ、若い……女?」

「んふっw」


 悩みながら自信なさげに言うもんだから、破壊力は抜群。


 兄のいる手前、極力真面目にと思っていた聖。

 しかし、つい一緒に吹き出しそうになり……唇をグッと噛んでギリギリで耐えた。




「まぁともかく。自分の意見はっきりしてて、気が強くて〜。それで、おっ◯いでかい子?そういうの好みなのよ〜」


 皇はまた何か言いたげだったが……以下省略。


「だからさ〜。なかなか好みの見た目で話が合う子って、いないんだよなぁ」


 説明というより独り言に近いそれは勝手にどんどん進んでいく。


「むしろ仕事柄そんな派手な子なんて、なかなか周りにいないしな〜」


「んで。そんな中で、必死に探して……ようやく見つけたって訳。今の彼女を」

「むっ」

「なんだよ皇」

「『今の』では語弊がある。『前の』彼女だろう?」

「うるせぇな。人の揚げ足取るなって」

「揚げ足ではない。補足しただけだ」

「ほんと、そういうとこだよお前」

「ん?『そういうとこ』とは?」

「もう良いっす……」




「でさぁ……いつも強気で、でもどっか弱いところもあって……俺にしか見せないそのギャップが好きだったんだ」


「彼女のためなら結婚はもちろん、子供だって……あるいはその先だって……どんな苦労してでも一緒に生きたいって思えるような人だったって訳」


「なのに、なのにさ……全部水の泡。ほんと、やられたよ……」

「晴樹さん……」


 付き合うという事すらまだ聖にはハードルが高いというのに、それだけでなくその先の話まで。

 彼にとっては全くの未知の領域……いまいち分かったような分からないような、そんな表情をしている。


「……」


 どう反応したらいいか困っているらしく、黙り込んでしまった。




 そんな彼を見てか、晴樹はここで唐突に話題を変えた。


「ところで……お前はどうなんだ?」

「え?」

「ほら、好きな子とか……いないの?」

「い、いや……その……と、特には……!」

「お、いそうだな?」


 いないで通そうとしたようだが、その表情で見抜かれてしまい一気にピンチに。


「あ、その……それは……!」


 ぽぽぽ、と分かりやすく染まっていく彼の頬。

 バレた事が分かり、より一層焦りと照れが加速していく。


「やるじゃん、ひゅ〜ひゅ〜!」

「え、あ……その……」


 助けを求めて皇の方を見るも、目を逸らされてしまい絶望顔に。


 一方皇はというと、一人だけ会話に加わらず静かに晴樹の後ろへ回り込んでいく。

 一体何をするつもりなのか。


「あれか?同じ生徒会の中村さん?」

「え、名前まで知ってるんですか?!」

「爺さんが言ってたぜ。文化祭の時、仲良さそうに準備してたって」

「えっ?!あの人来てたのか!行かないってあれほど言ってたのに……!」

「さぁ、なんだかね。なんだかんだ言ったって孫は可愛いんじゃん?」

「……」

「名札見たら中村って書いてあったんだってさ。目ぇ悪いのに、そういうとこだけ目敏いよなあの爺さん」

「で、でもどうして……?」

「ほらその日、家族全員忙しくてうちから誰も行けなかったじゃん?だから、せめて自分だけで行ってやろうってなったんじゃないの?」

「なら最初からそう言えば良かったのに……」

「あの爺さん、そういうとこほんと臍曲がりというか……素直じゃないからなぁ」

「……」

「クラスでうまくやっていけてるかとか色々心配だったんだろ、きっと」

「……」

「まぁ、あの後特に何も言わなかったし……安心したんじゃん?知らねぇけど」


 これまで礼儀正しく晴樹の目を見ていた聖だったが……何か思うところがあったのか、ふっと視線を外した。




 しかし、そんなのお構いなしに話は続く。


「あ、思い出した!あの子だろ、お前が好きなの!」

「あの子?」

「ほら、お前が焼き鳥買ったお店の子!」

「なっ?!」


 雰囲気・顔色・表情のどれを取っても、どう見ても……大正解の態度だった。


 ピンポ〜ン♪なんて効果音が聞こえてきそうなくらいの、いかにも図星の顔。


「七崎さん、だっけ?」

「あ、あ……」

「どんな子?どういう系?」

「あ、え、いや……」


 一方皇はというと、晴樹の背後に到達したところで、今度は彼の頭の上に腕を伸ばしていく。


「そもそもきっかけは?どっちから話しかけたの?」

「え、えと……」


 まっすぐ指を伸ばして開いた手刀が、晴樹の脳天をきっちりロックオン。そして……


「同い年?後輩?それとmんったぁぁぁ?!」


 それともの最後の『も』と『(いた)ぁ!』という悲鳴が絶妙に合わさった何とも言えない声が部屋に響き渡る。


「痛ってぇ!チョップは駄目だって!」

「あんまり虐めるなと言っただろう」

「え〜、だって面白いんだもん」

「そうか、もう一発欲しいか」

「……はいはい、分かった分かった!分かったって!」


 再び頭上に現れた手刀。


「分かったってば!ほんとほんと!」


 顔の前で手を振り必死に降参アピール。


 そこまでしても手刀はすぐには退かず長いこと空中に留まっていたが……しばらくして引いていった。




「あ、あっぶね〜。危うく俺の頭がかち割られるところだった……」


 聖はというと、リアクションに困りまた無言。


「いやぁ、俺の今までの知識が脳みそから全部漏れちゃうとこだったぜ……モテテクとか」


 晴樹としては冗談のつもりだったようだが、どちらからも反応もなかった。




 そして、今度は真面目モードに。


「えっと……ま、まぁともかく……あれだ、俺らみたいになるなよってこった」

「……」

「まぁ、お前なら大丈夫だって。目の前にこうやって反面教師がいるんだから。な?」

「でも……」

「俺の失敗談とか、見てなくたってしょっちゅう聞いてるだろうし……それに、皇の方だって何かと見聞きしてる訳だし」

「そ、それは……」

「ちゃっかり者の末っ子として、美味しいとこしっかり持ってってくれよな」

「だけど……俺、そんな……」


 ここで再び救いを求めて皇の方を見るも、


「お前に託す」


 真顔でそう一言返ってくるだけ。

 助け舟どころか余計に悪化した。


「え、あ、え……」

「任せたぞ」


 圧が強い……


「ぜ、善処します……!」

「ぶふっ!善処ってお前……!」




 腹抱えて大爆笑する晴樹。


 一体彼は何をどう善処するつもりなのか。

 それに加えて……年齢にそぐわないその言い方がさらに笑いを誘うのだった。


 じわじわくる系の笑いに、流石の皇も耐えきれなかったようで……声は出さないが唇がプルプルしている。


「なっ?!わ、笑わないでください……っ!」


 弟の困り顔に、さらに大きくなっていく爆笑の声。




 笑いが一旦おさまったところで、今度は皇が何やら申し訳なさそうに話しかけてきた。


「聖」

「はい?」

「いや……その……すまん、聖」

「え?何がです?」

「今のは冗談だ」

「じょ、冗談……?!」

「厳密に言うと途中からだが」

「え?え?え?」

「いくら苦労してるからってお前一人に任せる訳がないだろう。俺達だって今のままぼーっとしているつもりもない、それなりに考えて動くつもりだ」

「……!」

「後継ぎの問題は俺達でどうにかする。聖はまだ若いんだ、そんな事よりまずは成人して自由を謳歌するのが先……お前まで家の騒動に巻き込むつもりはない」


 あれほど真面目に聞いていたのに。一大事だと思っていたのに。

 彼の脳内には怒りと困惑の気持ちでぐるぐるしている。


 今すぐ、おい!と何か一言言いたいぐらいだが……

 しかし……


「……」


 聖としては、兄二人に文句をぶつけるなんてできなかった。

 これまでの態度や本人の性格的に、無理な話だった。


 困惑する気持ちの、その矛先がどこにもなく何も言えない……謎の脱力感が彼を襲う。




「なかなか面白かったな」

「おいおい、お前こそ虐めてんじゃんか」

「虐め?まさか。ただ冗談を言ってみたくなっただけだ」

「お前の冗談は冗談じゃないっていうか、分かりにくいんだよ」

「そうか?」

「真顔で言うから、冗談なのか本気なのか分かんねぇんだもん」

「……?そうだろうか?」

「そうだよ!ってか、そうなの!」

「???」


 この後にも会話はまだ色々と続いていたようだが、聖の気力が復活するのはこのもう少し後なのだった……



後継ぎうんぬんは本当の話だし、実際二人とも相当参ってて悩んでる訳なんだけど……二人とも大人なので歳の離れた弟の前じゃ言わないし、関わらせない。

この後聖が寝てから飲み直すか、あるいは別の日にまた話し合うって感じ。


これを、お話の中でちゃんと表現できたら良かったんですけど、ねぇ……(遠い目)

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