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8の月第3週2日目(日記より)
小さく体を揺すられて、目を覚ました。まだ辺りは暗いようだった。
早朝に何か観察したいことでもあったのかと目をこすりながら起き出せば、バルバ助教は珍しく真面目な顔で「気付かないか?」と言った。
ぼんやりした頭で首を傾げた僕に、助教は綺麗な鼻梁にとんとんと触れた。
少し感覚を澄ませて息を吸い込めば、微かにキナ臭い。「荷物を纏めろ」という指示に、僕は無言で頷いた。
外に出れば、森の奥の方がぼんやりと光っているように見えた。だいぶ遠いが、アッケンデーレは燃えやすい。火災の広がるスピードは予想がつかなかった。
テントも手早く畳んで、少しでもその場から離れる。
明るくなるまで歩いて、ようやく宿のある街に辿り着いて、僕らは気絶するように眠ったのだった。