日常
「――…うっ」
目を開けると薄暗い部屋の中にいることは何となくわかった
ゆっくりと体を起こす
「……どうやら気絶していたみたいだけど …ここは?」
辺りを見渡すが、ここがどこだか皆目検討がつかない
まずは、状況を整理しようと記憶を遡る――
夏の匂いを感じながら妹のアンジェラと、庭でお茶を嗜み明日のおやつの予想をしていた
「お姉さま私はやはりアイスだと思いますわ♪」
クッキーを頬張りながらアンジェは嬉々として断言していた。もちろんアンジェが侍女と料理長に頼んでいたのを私は知っている
「そうね、私もアイスだと嬉しいわ」
そういうとアンジェは照れ笑いしながら ほらね。 と言わんばかりに侍女に目配せする。
「ミラ!アンジェ!ここに居たのか」
キラキラとブロンドの髪を後ろでひとつに縛り、たなびかせながら兄のアランが近づいてくる
「「お兄様!!」」
私とアンジェは勢いよくお兄様の元へ駆け出し抱きついた
「おやおや、僕の可愛い妹達は少し見ない間にお転婆になったようだね」
微笑みながら兄は私たち2人を抱きしめてくれた。
「お兄様今日帰ってくるなんて聞いてないわ!もっと可愛いドレスで待っていましたのに!」
アンジェがぷくっと頬を膨らませながらいうと
兄はアンジェを抱きかかえてくるくるーっと回り出した。
「きゃっ!!お兄様下ろしてください!私もう子供じゃありませんのよ!」
口ではそういうが嬉しそうに照れ笑いしている
(可愛いは正義とはこの事ね)
なんて思いながら眺めていると、アンジェをそっとおろし次は私の番とばかりにお兄様が抱きかかえ持ち上げようとする
「アランいくら妹とはいえ、俺の婚約者を抱きかかえるのはやめてもらおうか」
「へっ殿下?!」
我ながら情けない声が出てしまった
「―ミラ…会いたかった」
吸い込まれそうな深紫色の瞳でこちらを見つめそういうと兄の手を私から払い除ける
「あはは、ルイはミラの事になるとそれだ」
楽しそうに笑う兄とは対照的に殿下はむすっと不貞腐れている
こんな顔は滅多にお目にかかれない
なぜなら第一王太子であるルイス殿下は氷の王子と呼ばれている位表情に変化がない
「ルイス殿下お久しぶりです」
そういうと殿下は
「……だろ」
小声でなにか呟き少し不機嫌に
「ルイだ…婚約者なんだから愛称でいいといっただろ」
兄が私たちのやり取りでまたアハハと笑っている
ニコニコしているアンジェの視線もしっかり感じる
「ルイ殿下」
「……ちがう」
「ル、ルイ様」
すると殿下はにっこりと微笑み満足そうに頷き私の首に手をかけた
「俺の瞳と同じ深紫の石が入っているミラに似合うと思って―」
ネックレスだシンプルなデザインながら精巧に出来ているのが見てわかる
アクセサリーをあまり好まない私でもこれはどストライクであった
「―…ルイ様の瞳の色 ありがたく頂戴致します」
「……俺はこれだ」
そういって耳にかかっている黒髪をかきあげ見せてくれたピアスには私の瞳と同じ色のピンクの石が入っていた。
(こ、これは勘違いしてしまいそう…)
思わずにやける口角をキュッと引き締め、足早に自室に戻った。
―ぼふっ
「……はぁ ひなに会いたい…」
ふかふかのベッドに飛び込み大きな溜め息をつくと思わず言葉がこぼれおちた
ひなは、私の双子の姉 いつでもどこでも一緒だった
あの時までは――
「ひな〜ゲームばっかりしてないでたまには出かけようよ」
「まって!エンディング!これでコンプなの!」
そういいながらひなはハマっている[双子姫]に釘付けになっていた
「はぁ〜♡最高だった!!!やっぱり難易度高いだけあった!」
興奮気味に説明してくれる
「双子のお姫様がそれぞれ攻略対象の好感度を上げながらハッピーエンドを迎えるんだけど!……何が難しいってその好感度よ!片方に好感度を集めすぎるともう1人が闇落ちして世界滅ぼしちゃうの!」
……
「クソゲーでは???」
「まあそうだよね〜でもコアなファンには超人気!!登場人物がかっこいい可愛い!……あっ」
「どうしたの?」
ひなはぽちぽちっといじってゲーム機を渡してきた
「コンプしたから最初からになっちゃったぁ していいよ!」
画面をみると[世界を救いますか?]……もちろんYESだ。
その瞬間私は光に包まれ 赤ちゃんとしてこの世界の母に抱かれていた。
「―…っ よかったあなただけでも助かって」
目に大粒の涙を溢れさせながら母が呟いていた。
――あれから15年 ここが[双子姫]の世界だと気づくのに時間はかからなかった。
ただ、そうなるとあの時ひなはどうなったのか
あちらの世界に残っていたのか、こちらに来てあの時本当になくなってしまったのか。
幸せを感じる度、不安感に押しつぶされそうになる




