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美女戦士ABCの一週間BGS  作者: 弥生えむ
第2章 なにげに竜討伐に参加してみた

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(24)あきらめの悪さ

 昼過ぎになってトマスは目を覚ました。

 初めは状況がわからなかった。いつの間に寝ていたのか。しかもテントの中で。他にも目を覚ました者たちがいる。

「何だ。夢か」

 誰かが言う。しかしトマスは飛び起きるとすぐにテントを出た。自分だけは服を脱いでいない。

 何も残っていなかった。というより燃やされていた。地面には昨日の暴れた跡が残っている。

「あの平民が何かの魔法を使ったのか?」

 助けが入ったというのなら、自分たちが生きているわけはない。

「おい、二人死んでる!」

 テントの中で声がした。

 トマスは慌ててテントに戻る。一人はスタンレーだった。口と目から血を流している。

「平民女に蹴られたのが致命傷になったのか」

 明らかに目の周りが陥没している。昨夜は興奮状態だったからまだ動けたのだろう。

「こっちは無傷だぜ。だが冷たくなっちまってる」

 トマスが見るとウィリアムが死んでいた。死因が不明だ。しかし、トマスは思い出す。

「雷だ」


 全員がトマスを見た。トマスはテントの中から出る。他の部隊員も続いて出てきた。

「昨日。雷が鳴ったのを俺は見た。そこで意識が途切れている」

「俺はそんなの・・・、いや、なんかバチンと言う感じで・・・」

 ロイが言う。

「そうだ。確か、なんか光った感じがして」

 ノーマンも思い出したようだ。しかし、フィリップが言う。

「だとしても、俺たちをテントに放り込んだのは誰だ。雷で俺たちが倒れたんならその場にいるはずだろう」

 トマスは考えながらテーブルの合った場所まで行く。

「考えにくいが、あの平民女だろう」

 皆がざわめく。

「まさか」

「だったら俺たち、生きていないぜ」

 トマスは空を見上げた。

「もう昼も過ぎている。つまり俺たちはほぼ半日寝ていたことになる。平民女が先に気がついて、逃げた可能性はあるだろう。あの筋肉なら感電もしにくいのかもな」

 そして彼らを見た。


「俺たちを殺さなかった理由は分からないが、移動させた理由はあれだろう」

 トマスが指さした場所は何かが焼けた跡。

「テーブルもテントも何もない。全部燃やしたんだよ。燃やすのに邪魔だからテントの中に俺たちを放り込んだのさ」

 みんなが黙る。それくらいしか考えられなかったからだ。ノーマンが言う。

「で、あの平民女はどこに行った」

「ここから逃げたか、卵の場所に行ったか」

 当然そのどちらかしかない。

「で、どうするんだ」

 なぜかみんなトマスに聞いてくる。貴族としてはありがたいが、少々うっとうしくもある。

「平民女が逃げたとしたら、俺たちも逃げた方がいいだろうな。平民女が卵の所に行ったとしても、助ける筋合いはないな」

 トマスが言うと皆が笑った。

「つまり、逃げるしかないな」


「途中で平民女を発見した場合は気をつけろよ」

 トマスが言うと、皆が疑問そうに見た。

「おまえは逃げねぇのか」

「逃げるに決まっているだろう。ただ、あの卵の場所に武器や荷物が転がっていた気がするんでな。一度取りに戻る」

「おいおい、大丈夫かよ。またあの竜が出るぞ」

 ロイが心配そうに言う。

「それにあの平民女がいるかもしれねぇんだろ」

 ノーマンも続けた。

「その場合は逃げるだけだ。おまえ達は先に行ってろ。それとも一緒に戻るか?」

 トマスが言うと皆首を振る。

「じゃあ、出発しようぜ」

 トマスの合図で、他の四人は野営地を出て行った。



 トマスが一人で広場に戻ると、目を疑うような光景が見えた。マリアが果敢に竜と戦っているのである。

 竜はあの骨竜とは違い、迫力は無かった。生まれたてであることがわかる。それでもマリアは攻めあぐねていた。

 何か奪えるものはないかと見回すが、全ての荷物が一カ所にまとめられており、それはかなり見晴らしの良いところにある。どうやらマリアは、その場所を補給地として使い、戦いながら口に何か入れている。剣のたぐいは全て卵の殻の当たりにある。マリアに見つからずに近寄るのは難しい気がした。

 トマスは隙ができるまで、その場でじっと成り行きを見守った。



「まさか一人で竜退治するとはな。これはありがたくもらっていくぜ」

 マリアは立ち上がるが、膝ががたがたと震えていた。下手に休んだせいで疲れが膝に来ているのだ。


 トマスはマリアを警戒しながら後ずさりしていった。本当ならマリアを殺していくべきだが、武器がない以上無理だった。そして他の荷物もあるが、そちらによる余裕はない。とにかく一番重要な者はこの竜の頭骨だ。

 トマスは竜の頭骨を抱えて逃げるように走り去った。


 マリアは手を握りしめた。さすがに、走って追う力が出ないのである。立っているのがやっとだ。

 変に情けをかけて生かして置いた自分を呪う。やはり信頼関係など無理だ。

 マリアは途方に暮れて再度、その場に腰を落とした。



 マリアは大の字に寝たまま考えた。

 マリアには悪いくせがある。それはあきらめが悪いと言うことだ。だからこそ平民出身にも関わらず八年間も近衛隊の勤務を続けられている。


 近衛隊というのは近衛騎士と近衛魔術師が所属する、ダグリス王国唯一の正規部隊だ。基本的には王都ダグリシアにのみ存在し、地方の貴族が所有する軍部を牽制する。

 発足は十八年前。その時に宮廷騎士団と宮廷魔術師団が解体されて、現在の近衛隊ができた。

 この大変革を行ったのは当時王子だったジョージ王である。

 理由は、貴族中心で独善的。庶民からの反発も強く、冒険者や傭兵をさげすみ、抑圧しているので、組織を見直すとのことだった。当然、当時の宮廷騎士団、宮廷魔術師団の騎士・魔術師達はほぼ全員解雇された。

 近衛隊の人員には、地方の有力貴族の子が招かれた。そして、この近衛隊は貴族だけのものではない、と言うことで、平民からも力ある者が参加することになった。


 実際には、ジョージ王が父親ヘンリー王を廃するために行った陰謀の余波である。

 ヘンリー王はダグリス王国中興の祖とも噂される賢王だったが、子煩悩でもあった。それがジョージ王を増長させ、最終的には王位を奪われたのである。

 ジョージ王が宮廷騎士団・宮廷魔術師団を解体したのは、この組織がヘンリー王に仕える組織だったからである。後々問題を避けるために解体したのだ。そして、近衛隊に加わった貴族の息子達は、ジョージ王を推す勢力だったのである。


 平民から参加できるというのは、平民に対するリップサービスだった。平民は貴族や王族に対し、良い感情を持っていない。それを緩和するために、平民から貴族の社会に入れる道として近衛隊を使った。

 そもそも平民が貴族の世界に入る道は一つもない。もちろん雇用関係という形はあるが、貴族は平民の血が一族に混ざることを嫌うので、貴族の一員として迎えられる可能性はない。


 平民を近衛隊に加入させるとしても、貴族側としては力のある平民などに大きな顔をされたくはない。実力のある冒険者や、お金のある商人などは論外だ。

 そこでジョージ王は、「学校」を利用することにした。

 平民でも多少余裕のある家なら、子供を教会が主催する「学校」に通わせる。貧しい家ではその余裕すらないが、読み書き計算ができれば、だまされる可能性は減るし、将来も広がるので、「学校」に通わせようとする平民は多い。そして、「学校」では読み書き計算以外にも剣術などが学べる。これは最終的に生活のすべがなくて冒険者や傭兵になる子供も多いので、そういう子が死なないように基礎を教えるという感じである。先生は現役冒険者が行っている。

 ジョージ王は学校で剣術を学ぶ子をスカウトして、近衛隊に組み込むことで、「平民も採用している」という実績を造った。


 マリアはそんな平民出身の近衛騎士の一人だった。そして、平民では最年長である。

 毎年二、三人程度平民から入隊するが、早ければ一年で、長くても三年以内には辞めていく。それが現状である。


 理由は二つある。一つはやっぱり身分と実力の差だった。平民出身の腕自慢など、幼い頃から親に英才教育を受けた貴族の騎士に敵うわけがない。

 たたきのめされ、馬鹿にされ、ゴミのように扱われるのだから、普通の精神力だと長続きはしない。

 もちろん部隊内では表向き平等であり、実力主義の縦社会だ。そこに男女、貴族、平民の区別はない。それでも実際は陰湿ないじめがはびこっている。


 そしてもう1つ。これは女子限定だが、ほぼ百パーセント、○○される。間違いなく入隊一年目で性欲のはけ口にされるのである。

 ○○もいじめも当然規律違反である。規律の内容自体は至極まっとうだが、運用は穴だらけである。上官に訴えたからと言って何か改善されると言うことはない。厳重注意を受けたり、減給とか追加訓練とかの罰が科せられたりする場合もあるが、それでおしまいなのだ。

 このような場所で、いじめや性被害に苦しみながら続けられる平民などいない。


 マリアは性被害を受けたときは、必ず報告したし、自らも対策を練った。対策に失敗しても更に対策を考えた。

 近衛隊自体にそれほど愛着があったわけじゃ無い。ただ逃げるのが嫌だったと言うだけのことだ。それに給料も良い。

 マリアが鍛えているのはもちろん強くなるためではあるが、それ以上に女らしくならないようにするというのがある。女らしさを見せれば、必ず男に襲われる。

 そうしているうちになぜか地位が上がり、とうとう第一近衛隊副長まで上り詰めてしまった。もちろん平民では初だし、女でも初だ。しかしここが上限であることはマリアも理解している。


 こうなってしまったのも、やはりあきらめが悪いことに起因するだろう。マリアはどんな嫌がらせのような任務でも、雑用に近い任務でも、全力で取り組み成果を上げてきた。いじめや嫌がらせをものともせず、結果を出す。周りの貴族近衛隊はマリアに協力しようとしないので、一人で成果を上げることに慣れてしまっていた。はなから自分を○○するような貴族は信用していない。


 だからこのような絶望的な状況でもどうにかできないかと、考えてしまうのである。


 マリアは少し体の状態が良くなってきたので、立ち上がった。

 もう足はしっかりしている。基礎体力はあるので、もう大分回復している。竜と一日中戦った割りには擦り傷程度で済んでいた。


 マリアは荷物の置いてある場所に戻った。

 まだ食料が残っていないかと袋をいくつか裏返すと、串焼きが落ちてきたのでそれを食べた。残っていた水も全て飲んだ。そうすると頭が回ってきたような気がした。


 マリアは残った荷物は一つにまとめ、空になった袋を持って、死んだ竜に近寄り、残った全ての竜の骨と卵の殻をしまった。殻は固いが意外と軽かった。

 剣も二本程度回収した。どちらも刃がつぶれてただの鉄の棒と化している。


 マリアの出した結論は、トマスより先に王都に戻ることだった。トマスは歩きなので、先行していたとしても追いつけないわけではない。それにこちらには鎧の裏地に縫い付けてあるお金がある。ダスガンで馬を買えば、間違いなく先に王都に着けるはずだ。途中で出会うなら殺して竜の頭を奪えば良い。


 マリアは準備を整えて、広場を後にした。



 マリアが野営地に着いたときはもう日は沈んでいた。

 火は付いていないが、大テントは残されていた。

 マリアは注意深く、その中を探った。二人ほど寝ていた。


 マリアは刃のつぶれた剣で二人の体を刺す。しかし反応はなかった。マリアはほっとため息をつく。

 マリアは顔を見てそれが臨時部隊であることを確認した。当然トマスではない。


 マリアはテントを解体し、ロープや布といった資材を集めた。次に木を集め、ロープを巻き、火口を取り出して火をつける。荷物を全て平原に持っていったのが幸いしている。

 マリアは作った松明を持って野営地を出た。


※※


 トマスは走って野営地まで戻った。そこで息をつく。後ろからマリアが追ってきそうで焦る。

 しかし、竜の頭を手に入れたことは幸運だった。これを持ち帰れば、トマスに恩赦がかかる可能性は高い。


 トマスは息が落ち着くのを待って、そのまま野営地を出て道を進んだ。

 しばらく進んだところで言い争いの声が聞こえてきた。


「貴様、よく戻って来れたな!」

「だから、謝っているだろう。あのときは慌てていたんだ」

「一人で生き残ろうとしやがって。あの後俺たちはひどい目に遭ったんだ」


 トマスはそっと近づく。もう日が沈みかけているので、薄暗く、そう気づかれることはない。

 前方には馬を手で繋いでいるオリヴァーとそれを囲む四人の臨時部隊がいた。

「他の奴らは俺をおいて行っちまうし。どこに逃げたら良いかもわからないし、どうしようもなくなったんだよ」

「それより食い物はねぇのか。俺たちはあれから全然喰ってねぇ」

「そんなの俺も一緒だよ。ずっと彷徨っていたんだから」


 トマスは考える。彼らと合流すべきか。

 竜の頭を持っている自分が彼らと合流すれば、持ち逃げされる可能性がある。彼らも恩赦が欲しいだろうが、この首は自分のものである。奪われるわけにはいかない。そしてオリヴァーが馬を連れてきてくれた。馬は今一番欲しいものだった。


「まずは、馬を奪うか」

 トマスは竜の頭骨を道の横に隠すと、彼らの方に歩き出した。

「何をしているんだ。もっと先まで進んでいたと思ったが」

 トマスが声をかけると全員がトマスを見た。

「トマス、無事だったんだな」

 ロイが言う。

「何か残ってなかったか。食い物とか」

 ノーマンが続くがトマスは首を振った。

「何も残っていなかった。もしかしたらあの平民女が全部持って先に行っているかも知れない。追いつければ奪えるが、難しいかな」

 全員が肩を落とした。

「トマス、すまん。馬を奪って逃げちまって」

 オリヴァーが言うがトマスは笑って答える。

「俺も同じ立場ならそうしたかも知れない。気にするな。それより馬が腹を減らしているんじゃないか。その辺りの草でも食べさせてろ」

「ああ、でもこいつ結構いろいろなところで食べてたからな。俺が何も喰ってないってのに」

 オリヴァーは馬を道の横に放す。馬は草をむしり始めた。


 その時トマスがオリバーの腰に剣があることを見た。

「おい、オリヴァーその剣はどこで見つけた」

「ああ、これかい」

 オリヴァーは剣を手に取る。

「馬車に一本残っていたんだ」

 ノーマンがオリヴァーの胸ぐらをつかむ。

「てめぇ、余裕あったじゃねぇか。それさえ残ってれば、もっと楽にやれたんだ。ポールなんて顎が砕かれて何もしゃべれねぇんだぜ」

「ちょ、いったい何があったんだよ。謝るよ。謝るよ」

 オリヴァーが慌てたところで、トマスが割って入る。

「すぎたことだ。そう攻めるな。オリヴァーその剣をかしてくれないか。使えるものか調べたい。残していったって事は実は故障品だったのかも知れない」

「ああ、良いぜ。そういや鞘から抜いてもいねぇや」

 トマスは受け取りながら言った。

「馬の食事もあるし、ここで少し休んでいこう」

 トマスが提案する。全員が同意した。早速みんな地面に座り込みだらけ始める。中にはそのまま寝転ぶ者もいた。

「腹減ったー」

「力でねぇよ」

 トマスだけ立ったまま全員の位置関係を確認する。そして剣を鞘から抜き、剣の作りを調べている振りをした。

「ノーマン、オリヴァーに何があったか説明してやれよ。聞きたそうだぞ」

 トマスが言う。

「そうだな。あれから・・・」

 寝転んでいるフィリップ以外全員の視線がノーマンに集まる。

 トマスは剣を手でいじくりながら、適正な位置に移動した。


 皆がノーマンの話に聞き入っているのを確認し、トマスはまず、背後からロイの首を貫いた。隣にいたオリヴァーが見上げた瞬間、抜いて剣でその首を切りつけた。皆が驚きで固まっている。

「わーっ!」

 すぐにトマスはオリヴァーをまたいで飛び越えると、正面にいたノーマン心臓を正面から貫いた。

「何する、トマス! 狂ったのか!」

 トマスは慌てて起き上がったフィリップを蹴り倒す。寝転んでいるから反応が一歩遅れている。そして倒れたフィリップの背後から剣を心臓に突き立てた。

 さすがに最後の一人のポールは逃げ出していた。

 しかし予定通りである。最後に残したのはマリアに顎を蹴り砕かれて苦しんでいたポールだ。走って逃げるなんてかなりしんどいに違いない。トマスが走ると簡単にポールに追いつく。そしてトマスは背後からポールを斬った。

「うーっ、うーっ」

 ポールはもんどり打って倒れる。トマスは倒れたところを踏みつけて、驚いた顔のポールの首を貫いた。


 やっと息をついたトマスは更に一人ずつとどめを刺して回った。

 いくら無手の相手とは言え、五人全員を倒すのはかなり難しい。だから順番と位置が大切だった。一人寝転んでくれたのが良かった。あれなら立つのに時間がかかる。

 トマスは竜の首を回収すると、草を食んでいた馬を連れ出し、その場から去った。


※※


 マリアは、月明かりのみの暗い道を急ぎ足で歩き続けていた。馬車が通るだけの道幅があるので迷う事はない。

 ある程度進んだところでマリアは道に倒れている人影を見つけた。


 夜盗か。


 マリアの武器はひん曲がって刃がつぶれた剣二本のみ。あまり戦いたくはなかった。

 マリアは深呼吸をしてから、松明を地面に置き、その人影に近づいていった。

 死んだふりかも知れないので、剣を振り上げながらゆっくり歩みを進める。


 こういう状況ではたいてい左右から襲撃される。前方と都問左右にも注意を払う必要がある。

 しかしマリアが、倒れている人影のそばに来ても動きはなかった。

 マリアは注意深く剣先で倒れている男達の体を刺した。反応がなかった。近づいてみると複数人いる。一人ずつ剣を刺していく。

 結局、全員に剣先を突き刺しても誰も起き上がらず、周りからも襲撃はなかった。

 マリアはほっとため息をついて松明を取りに戻った。


 マリアは改めて松明の火で彼らを確認した。

「こいつらは・・・」

 革鎧を着ていないので気がつかなかったが、彼らは臨時部隊だった。剣で切られて死んでいる。


 一カ所に四人、少し離れた場所に一人。全部で死体は五つだった。その中にトマスの顔はなかった。

「つまりトマス以外全員死んでいる?」

 死体を探っても、何持ってはいなかった。

 マリアは立ち止まって考える。誰がやったのか。可能性があるとすればトマスだが、なぜ彼らを殺す必要があったのか。そもそもトマスは剣を持っていないはずだ。


 マリアはそれ以上考えるのをやめた。しかし、トマスに待ち伏せされている可能性もあるため、慎重に進む必要があった。



 結局その先トマスは現れず、マリアは明け方近くでダスガンの門というところまで来た。 まだ門は開いていない。待つ間マリアは仮眠を取ることにした。

 マリアは森に入っていき、幹の太くて枝の太い木によじ登ると、袋を枝に引っかけて、タオルを二枚枝に敷き、仮眠を取った。

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