(20)夜の宴その二
ランプ明かりの中、テント内でマリアは準備を進める。ちなみにランプがあるのはマリアとドナルドのテントのみ。大テントは何もないので、中に入れば寝るしかない。
マリアは薬ケースを取り出した。そして数ある薬の中から、赤い丸薬を見つけて取り出す。そしてそれを四粒飲んだ。その後、いつも通り、粉状の薬も飲む。マリアは一旦眠りについた。
夜、そろそろ良いだろうと思い、マリアは身を起こす。
いや、実際はマリアはあまりの気持ち悪さで、今まで動けなかったのである。体内を気持ち悪さが這いずり回っている感じなのだ。気持ち悪いと言っても吐き気がするわけでは無い。これが赤い丸薬の効果である。
丸薬はマリアがなじみの女性薬師に処方してもらったもので、魔法にかかりにくくする作用があるようだ。本来一粒で良いものなのだが、処方してもらったのがもう数年前であり、薬効が薄れている可能性があることと、キャロンの魔法が強力であることを加味してマリアは四粒飲んでいた。
そのせいでマリアは身動きが取れないほどの気持ち悪さに悩まされることになった。まだ落ち着いたとまでは行かないが、マリアもあまり時間をかけていられない。
マリアは気合いを入れて立ち上がり、革鎧の上から金属鎧を着けた。
そして武器を持つと、テントを出た。
周囲を警戒しながら、抜き身の剣を構えた。鎧だと動く度に音が鳴るが、マリアはできるだけ慎重に行動した。
二つ並ぶテントは静まりかえっており、火だけが燃えている。
まずマリアは見張りを探した。かなり離れている場所に松明の明かりが見えた。恐らくそれが見張りだと思われる。
マリアはまず見張りに接触すべきか、テントを確認すべきか迷うが、まずはドナルドを起こすことにした。
マリアは昨日のようなことにならないように、背後に特に注意して前に進んだ。
そこでまた、昨日感じた風のようなものに当たった。
これだ!
マリアは一度剣を大きく振り回してみる。特に何かに当たったわけではない。しかし何かがあるのは間違いない。マリアは一気に風の中に飛び込んだ。
途端にざわざわとした音が聞こえてきた。
マリアが焚き火の方に歩き出すと、急に大テントが開き、中から人が出てきた。
マリアは剣を上げる。
それはトマスだった。トマスは正面にいるマリアに気づかず、まっすぐ馬車の方に歩いて行った。マリアはトマスに駆け寄った。
「おい、トマス」
しかしトマスは気づいた様子がない。マリアは更に近寄ってトマスの肩に触れようとしたが、そこで体の動きを止めた。いや、勝手に動かなくなった。
〈なんだ!?〉
「トマス」
またマリアは声を出す。しかしトマスは気づかない。
マリアは自分の体を見る。別に動かないと言うことはない。それなのにさっきトマスに触れられなかったのだ。
トマスはまっすぐ馬車に向かっている。マリアはトマスを追った。
トマスは馬車と馬車の間を通っていく。
脱走か?
マリアは後を追い、馬車の間を抜けたところでトマスを探すと、トマスはまだ先に進んでいた。
マリアは更に追っていった。
「おい、トマス、どこに行く」
するとトマスが立ち止まった。しかしそれはマリアに気づいたからではないようだ。彼の前。一本の木の辺りに女性が立っていた。
「ベアトリスだと」
マリアはトマスの夢の話を思い出す。トマスも夢と思っているだけで現実にベアトリスと○○したのでは。
そしてそれは現実になりそうだった。
「ベアトリス。会いたかった」
「私もよ。トマス」
宙に光が現れて、ベアトリスとトマスの姿を照らし出した。かなり目立つ光だ。一瞬まぶしくてマリアは目をそらす。
すると遙か先に、見張りの男が見えた。松明を持っているが座り込んでいるようだ。手持ちぶさたなのか松明を振って遊んでいる。
しかしこちらには気づいていない。こちらから見えるほど明るくなっているというのに。
「ああ、ベアトリス。ベアトリス」
「トマス。嬉しいわ」
声に振り返ると。二人は抱き合い唇を重ねていた。愛をささやき会いながら何度も唇を当てる。完全に二人の世界に入っているように見える。光の演出も相まって、まるで演劇のようだ。
〈これは単なる逢い引きなのか?〉
マリアは、放っておくわけには行かないと判断した。しかし、二人の方に歩き出そうとしてすぐに足を止めてしまった。
〈どういうことだ?〉
何かがあったわけでは無い。ただ体が動かなかった。
いや、動かないというのは正確ではないだろう。マリアの体の自由は利いているのだ。しかし、トマスを止めようとすると、行動する気持ちが失われ、体が動かせなくなってしまう。
その時、ベアトリスはちらりとマリアを見た。光球があるから、マリアの体はベアトリスから完全に見えているはずだ。トマスが気づかないことがおかしい。
そしてベアトリスとトマスの激しい○○が始まった。
マリアは当惑する。ベアトリスはたまにマリアに視線を向けている。やはりベアトリスはマリアに気がついているのである。
ベアトリスが何かの魔法を使っていることは間違いなかった。
しかしマリアにとってはこんなもの見せられるのは不愉快だ。マリアは諦めて来た道を戻ろうとした。しかしやはり体が動かなかった。
「おまえ達。やめろ」
マリアは大声を出した。
しかし二人はまるで聞こえていないようだ。
マリアは首を回してまた叫んだ。
「そこの奴、来い、こっちだ!」
見張りは全く聞こえた様子もなく、松明を振り回しながら寝転んだ。
「くそっ」
マリアは舌打ちをするがどうすることもできない。
マリアとトマスの逢い引きは激しさを増していった。
マリアは嫌々デバガメをやらされていたが、気がつけば彼らに近づいていたようだ。マリアは戦慄する。
〈体を操られているのか! とにかくこの呪縛から逃れないと〉
マリアは剣を持っていたのを思い出し、振り上げた。痛みで体を取り戻そうとした。
しかしそれで終わった。マリアは手を下ろし、剣を地面に落とした。
〈そんな馬鹿な〉
マリアはベアトリスを見た。
ベアトリスがマリアを見て笑っていた。
そして唇でマリアに言葉を伝えてきた。
(だ・め)
マリアは必死で逃れる方法を考えた。
目を閉じてベアトリスを見ないようにし、さっき飲んだ薬の気持ち悪さを思い出す。丸薬の力で乗り越えようと思った。すると、マリアの中で気持ち悪さが復活してきた。それと同時に体が自由になった気がした。
「ベアトリス!」
そんなとき、マリアの後ろで声がした。マリアが驚いて振り返る。
そこにはドナルドがいた。ドナルドはずんずんと二人に向かって歩いて行く。
「ドナルド、良いところに来た」
マリアは声をかけるが、ドナルドはマリアに気づいた様子もなく横を過ぎていく。
「どうした、ドナルド。待て!」
しかしドナルドはベアトリスに話しかける。
「ベアトリス。昨日の事は嘘だったのか。私という者がありながら、他の男と抱き合うなんて!」
「ドナルド。嘘じゃないわ。大好きよ。だからあなたも来て」
「くそっ」
ドナルドは乱暴に服を脱いでいく。
〈茶番?〉
マリアはまるで三流小説のような展開に驚く。
そして本当に三人で○○を始めてしまった。
マリアは頭を抱えたい気分だった。
マリアは逃げるタイミングを失い。ただそのポルノショーの鑑賞者になった。
ベアトリスと饗宴を続けたトマスとドナルドは、自分の服を抱きかかえて、そのまま帰って行った。
二人は帰るときも、声をかけたマリアに全く気がつかなかった。
そしてマリアも、声をかけることはできても、立ちふさがったり捕まえたりすることはできなかった。
残されたのはマリアとベアトリス。
ベアトリスは裸のままマリアの方に歩いてきた。完全に露出狂だ。
「楽しんでもらえた?」
「何のつもりだ」
ベアトリスの指がマリアの顔に当てられる。
「予定外の観客がいたから張り切っちゃった。私もびっくり。魔力量は多いと思ったけど、私の魔法の一部がキャンセルさせられているのね」
「私の体を解放しろ」
マリアは思うように体が動かない。
「せっかくだから。もっといろいろ見に行きましょうよ」
ベアトリスはマリアの手を取り、歩き始めた。
マリアはその手を払いのけたかったが、どうしてもその気にならなかった。やはり何かされている。マリアは必死に自分の意志で体を動かそうともがいた。
「無・理・よ。私とふれあったら、もうあなたは私のもの」
マリアがぞっとするようなことを、ベアトリスは笑顔で言うのだった。
二人は馬車の間を通ってテントのある場所まで戻ってきた。
「これは結界なのか?」
「そう。この野営地は外からは認識されない。だから魔獣も寄ってこない。そして中でどんなに大声を出しても外に漏れない」
マリアの予想通りだった。
マリアはベアトリスに連れられて大テントに近づいた。ランプなど無いはずなのに、中から明かりが漏れている。そして大声が上がっている。間違いなく男女の○○の声だ。それも複数。
「中はこんな感じ」
ベアトリスはマリアの手を引いてテントの中に入っていった。
「なっ!」
その中のおぞましい狂乱にマリアは衝撃を受けた。いたのはアクアと男達だった。ベアトリスは楽しそうに中で起こっていることをマリアに見せる。
そんな直視するのもはばかられるような宴の中で、マリアは気がついて声を上げる。
「なぜ、ルーイスとガイがいる!」
その饗宴には竜を見張っているはずの二人が入っていた。するとベアトリスが解説した。
「アクアったら、昨日ドナルドとトマス以外は全員食べちゃったんだって。ああ、ケネスは別ね。体力なさそうだからパスって事で。それで今日は別のが欲しいって、連れ出してきたのよ」
「なんてことを」
マリアの驚愕などお構いなしで、激しい○○が繰り広げられる。
「ははっ。どうだいマリア。一緒にやらないか」
アクアが陽気に言う。
「だ、誰が!」
「まぁ、いいけどな」
また、マリアの腕が強く握られる。
「隣のテントも見に行こうね」
ベアトリスは楽しげに言う。ベアトリスに腕を引かれると、マリアはなぜかそれに従ってしまう。
二人は大テントを出た。
「貴様ら、なんのつもりだ」
できるだけきつい口調で問い詰める。しかし、腕を捕まれているせいで、マリアは全く抵抗する気が起きない。自由になるのは口だけだった。
ベアトリスは楽しげな声で答えた。
「私達、男がたくさんいるから今回の遠征に参加したのよ。邪魔されちゃ困るわ」
マリアは唖然とするが、一方で妙に納得できた。
なぜなら、彼女たちの露出の高い格好や、隊員達のとの距離の取り方は明らかに、男を誘う娼婦のような手口だから。
それでもマリアには疑問が残る。普通、男を誘うためだけに竜討伐の遠征に参加するだろうか。
「なぜ、わざわざ」
マリアの声が思わず漏れる。
「そう思うでしょ。でもひどいの。ダグリシアだともう誰も私達の相手をしてくれないのよ。冒険者仲間なんて私達から逃げるくらいよ。受付のソーニーもいつもひどい事言うんだから」
マリアは意味がわからなかった。
マリアはベアトリスに導かれるままに隣のテントに入っていった。
そこではキャロンが男達と○○していた。またしても顔を覆いたくなるような有様だ。
そのうち、キャロンがマリアを見た。
「マリア。○○も欲しい。おまえも参加しろ」
「ふざけるな!」
マリアは叫ぶ。体が自由なら殴りかかっているところだ。
ベアトリスが言う。
「ダメダメ。キャロンは昨日さんざんマリアと楽しんだでしょ。今日は私。この部隊でたった一人の女なんだから、みんなで順番にシェアしなくちゃ」
マリアはベアトリスに腕を強く握られる。
マリアの頭にぞっとするような考えが浮かんだ。
まさか、自分も昨日のように・・・
マリアはベアトリスの腕を振り払おうとするが、やはり無理だった。
「仕方がないな。昨日のマリアの○○は最高だった。もう一度味わってみたかったんだが」
キャロンの言葉にマリアはかちんとくる。しかし言い返す前に再度○○が始まる。
呆然としているマリアの耳に声が聞こえた。
「お邪魔しちゃ悪いから、私達も行きましょ」
マリアはベアトリスに腕を引かれるままテントを出た。
「おまえ、私の体が目当てであんなものを見せつけたのか」
「半分は嘘よ。今日もドナルドとトマスだけにしようと思っていたし。男は多いけど、美形が少ないのよね」
「私も美形じゃない。おまえ達の事はとがめないから、放っておいてくれ」
マリアはベアトリスから逃れたい一心で言う。
「気になるのよね。あまり私の魔法が効いていないみたい。何かしてるでしょ」
「十分おまえの魔法は効いている」
そうでなければ、マリアはこうして一緒に歩いていたりなどしないだろう。しかしベアトリスは言う。
「記憶が混濁していないじゃない。もっと夢心地になるはずなのに、私に言い返せるくらい自我が残っているわよ。要は魔法の掛かりが悪いのよ。あなた」
ベアトリスの目的地はマリアのテントだったようだ。
マリアのテントを開けると、仕掛けた罠をものともせず、内側に入り込み、テントを閉めた。
そしてマリアは二日連続で弄ばれることになってしまった。
※※
「いやー、楽しかったなぁ」
アクアが湯に浸かりながら言う。まだ朝は遠い。饗宴は昨日より早めに終わった。さすがに男達も二日連続はつらかったらしく、早々にダウンしてしまった
「あんたはやりすぎるからな。もう少し手を抜け」
キャロンが言うと、ベアトリスがじっとりした目で見る。
「キャロンも同じでしょ。相手の人たちほとんど身動きできない状態になっていたけど」
「そうか? まぁ、あいつらも楽しめただろう。それで、マリアはどうなった?」
キャロンが問う。ベアトリスが笑う。
「うん。実は私の魔法があまり効いていなかった。だから明日起きても夢とは思ってくれない」
「げっ、それまずいんじゃねぇのか」
アクアが言う。
「まずいのはまずいんだけど、もう、良いかなって。明日が本番なわけだし、今更私達を追い出したりしないでしょ」
ベアトリスが言うと、キャロンも少し考えてから言った。
「まぁ、そうだな。ここで私達を処罰しても何も良い結果を生まないし、あれだけベアトリスに操られていたのなら、私達にかなわないこともわかっただろう」
「そういうこと。だから失神はさせたけど隠蔽もしてこなかった」
「それはそれでひどいと思うがな。それにしても、なぜあんたの魔法が効かない?」
ベアトリスは湯から体を出して縁に座る。
「薬。彼女特殊な薬を飲んでいたの」
「魔法を阻害する薬なんてあるのか? 私は知らないが」
キャロンが言う。
「キャロンは魔法オタクだけど、薬草には詳しくないわね。ブファリとかビリルビという薬草があるの、どちらの効果も似たようなものなのだけど、これは魔力を活性化させて動かす作用があるのよ」
「魔力を動かす? それで魔法が阻害されるのか?」
アクアが聞くと、ベアトリスは首を振った。
「これ、本当は魔力循環を覚えるときに使うのよ。私も初めはブファリを煎じたお茶を飲んで魔力循環のコツを覚えたもの」
「そんなものがあったのか。そんなのがあるなら私も飲みたかったな」
キャロンが言う。
「そうね。魔力循環て、覚えてしまえば簡単なのに、初めのコツをつかむのが難しいのよね」
「そうか? 私は苦労したことねぇな」
アクアが言うとキャロンは呆れた顔で言った。
「あんたの場合は生まれつきできたからだろう。そういう奴はまれだ。しかし、それで魔法が阻害される理由が分からんな」
ベアトリスはにやりと笑った。
「キャロンは精神系の魔法を破りたいときどうする? 呪文を使わないとしたら」
するとキャロンはピンときたようだ。
「そう言うことか」
「わかんねぇよ。ちゃんと説明しろ!」
アクアがわめく。ベアトリスはアクアをどうどうといさめる。
「精神系の魔法ってね。その時の相手の魔力の状態に影響するの。だから、わざと自分の魔力の流れを変えたりすると、相手の魔法を破れる。もちろんかける側も多少魔法の流れを変えたところで破られないように工夫はするんだけど」
「だからアクアには精神系の魔法は効きにくいって事だ。あんたは魔力が勝手に増大するから魔力の状態が常に変化している。私なら、いつもの魔法循環を数倍の速度で行ったりすれば破れるな」
「ん? つうと、その薬のせいでマリアの魔力の状態が変わったって事か」
ベアトリスが手で丸を作る。
「正解。マリアは魔力は多いけど魔力循環なんてしたことがないから魔力が完全に凝り固まっているの。普通そんな状態だと魔力を動かすことなんてできない。それを薬の力で無理矢理動かしたって事」
「かなり気持ち悪くなりそうだな」
「そうね。気持ち悪かったと思うわ。まぁ、私が丁寧に魔力をほぐして上げたから、調子は治ったと思うけど」
キャロンが考えながら言う。
「しかし、それは普通の方法か?」
ベアトリスが答える。
「普通じゃないわね。多分、腕の良い薬師に知り合いがいるんじゃないかな。マリアの魔力の状態を知らないとそんな方法思いつかないもの」
「薬の世界もかなり深いものだな」
キャロンはうなる。
「そうそう。それとねマリアのあの異常な筋肉。あれも薬のせいよ」
ベアトリスが言うとキャロンが納得したような顔をする。
「やはりそうか。あの異常な体は普通では作れないと思ってたんだ」
「でも薬で体をつくるなんて、よほど力に飢えてるんだな」
アクアも言うが、ベアトリスは首を振った。
「そうじゃないの。避妊薬のつもりで飲んでいたみたいなの」
「避妊薬?」
アクアが首をかしげる。
「テストステロという薬草があるんだけど、これの効果は男性の性質を強くすることよ」
「男性の性質って何だ?」
ベアトリスは解説する。
「男でも女でも男性の性質と女性の性質があって、バランスを取っているの。男性の性質が強いと、筋肉や筋量が付きやすくなって、体毛も濃くなる。女性の性質が強いと、体が丸みを帯びて、肌がきめ細かくなって胸が大きくなる」
「じゃあ、それを飲み続けると男になるのか」
アクアが言う。
「そんなわけ無いじゃない。ただ、体の性質のバランスは崩れるから、男っぽくはなるわね。マリアの体はそのせい。何しろずっと飲み続けているみたいだもん」
キャロンが疑問の声を上げる。
「それと避妊にどういう関係がある?」
「完全に、というのは無理だけど、確かに着床はしにくくなるわね。完全な避妊薬なんて存在しないし、苦肉の策って事かしら」
「逆に言えば、それを飲み続けなければいけないくらい、妊娠の危機があると言うことなのか」
キャロンが言うとベアトリスは答えた。
「キャロンも気がついたと思うけど、彼女の体、結構開拓されている。つまり、性の経験を積んでいるわけよ。その割りにはエッチが好きと言う感じでもないから、きっと相当ひどい目に遭ってきたんじゃないかしら。自分の部下達も信用していない感じだし、男性不信なんじゃないかしらね」
「昨日一緒のテントに入れようとしたのも、私達を男から守る為ってか?」
「そうなんじゃない。男から女の子を守る。まさしく騎士の鏡ね」
ベアトリスが言うとキャロンは苦笑した。
「私達とは真逆だな。まぁ、妊娠すれば自由は利かなくなるし、気持ちがわからないわけでもない」
キャロンが湯から上がる。
「さて、そろそろ片付けるか。明日からが本番だ」
アクアも立ち上がった。
「やっと竜とご対面だ」
しかしベアトリスは少しため息をつく。
「あーあ、明日でマリアともお別れか。もう少し○○したかったな」




