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美女戦士ABCの一週間BGS  作者: 弥生えむ
第2章 なにげに竜討伐に参加してみた

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(18)三日目の午前

 翌日。

 マリアは目を覚ましてすぐ身を起こした。

 傍らの剣を取って膝をついたまま身構える。素早く視線を回すが、誰もいなかった。


 それからやっとマリアは自分の状況を確認した。

 そこは自分のテントの中だった。テント内は汚れも、臭いもなく、自分が整理したままの状態だった。つまり昨日寝たときと何も変わっていない。


 自分の姿も同様だった。いつも通りしっかりと革鎧を着ていた。すぐに上半身の鎧を外して、服をめくり、肌を見た。

 何の痕も残っていなかった。


「あれは、夢、だったのか?」

 だとしたら、あまりにもリアルで破廉恥な夢だ。まだ体に感触が残っている気がする。マリアは鎧を再度装着し、もう一度テント内を調査した。

 何も異常は発見できなかった。


 マリアはテントを滑り出た。

 まだ、日が昇ったばかりのようで、空気が少し冷えている。


 外からもテントを一周してみる。設営したときと変わっていなかった。

 それでもマリアは納得できなかった。


 テントに連れ込まれた後に起こったあれが夢だったとしたら、マリアは心の中でキャロンとそういう関係になりたいと望んでいたことになる。それはあり得ない。キャロンとは昨日一緒の馬車にいたと言うだけで、会話らしい会話もしていないのだ。警戒しているし、好感など一切持っていない。


 マリアは野営地を回ることにした。

 昨日空気の塊を感じた場所に進み、身構える。今は何も感じられない。注意深く進みながら、馬車のそばまで来た。そこでマリアは夜番をしていた臨時部隊のロイに声をかけた。

「おい」


 ロイは声をかけられてやっと気づいたようだった。

「あ、マリア副長」

「おまえ一人か?」

「いえ、裏側にウィリアムがいるはずですが」

 マリアはそちらの方に目を向ける。しかしマリアの方からは物陰になっていて見えない。再度マリアはロイに向き直る。

「昨夜何か異変はなかったか」

「私は三交代目ですが、特に異常はありません」

 ロイはなぜかげっそりとした顔をしていた。

「冒険者達はどこだ?」

 マリアがロイに尋ねると、マリアの横から声がした。


「呼んだか」

「朝早いのね」

 振り返るとそこにアクアとベアトリスがいた。



 日が昇る少し前に、三人の冒険者達は野営地から離れた場所で水浴びしていた。水浴びというか湯浴びである。

 キャロンが魔法で穴を作り、ベアトリスがそこに魔法で湯を貯める。そして三人で体を洗っていたのだ。

 ここに来る前に、テント内のクリーニングはすませてある。アクアの激しい汚しようにクリーニングをしていたベアトリスはずっと愚痴を言っていたが、とりあえず、何事もなかったかのように偽装はできたはずだ。

 そして、こうして体を洗いに来た。


「うーん、楽しかったわ」

「そうか? まだヤリ足りねぇけどな」

 アクアが言うとキャロンは呆れた声を出す。

「あんたはついさっきまでヤッていただろう。寝不足で力が出ないなんて言うなよ」

「大丈夫だよ。二、三日は寝なくてもヤリ続けられるぜ」


 ベアトリスがキャロンに言う。

「それにしても、マリア、やっぱり来ちゃったのね。あの人、自分の部隊を信用していないようだったから、自分で見回るかもとは思っていたのよね」

「結界にも反応していたな。体内の魔力が高いから、結界の魔力を体で感じてしまったんだろう。私に感謝しろよ。うまくごまかしてやったんだ。今夜は面倒見ないから、今日中にしっかりコインを貼り付けろ」

 アクアも口を挟む。

「ってか、そこまでやっちまったら、もうキャロンのことはばれたんじゃねぇの? 大丈夫かよ」

「一応テントは完全に元に戻してきたからな。記憶は残っているだろうが半信半疑だろう。いきなりクビになると言うことはないと思う」

「ま、キャロンを信じるとするわ。今日中にコインを貼り付けるから大丈夫だと思うけど、今夜は私もマリアを警戒しておくわね。じゃあ、そろそろ戻りましょうか」

 ベアトリスが湯から上がる。キャロンもアクアも立ち上がる。

「あら、近くにイノシシちゃんがいるわね」

「おぅ、朝飯に丁度良いじゃねぇか」

「じゃあ、結界で閉じ込めるから、捕まえてきて、アクア」

「わかった」

 三人はすぐに服を着け、行動を始めた。



 マリアはアクアがイノシシを担いでいるのを見て、怪訝な顔をした。

「なんだ。それは」

 しかし、アクアは答えず、イノシシを担いだまま、焚き火の方に歩いて行った。

 焚き火のそばでは、すでにキャロンがテーブルを立てていた。ベアトリスも歩き出す。マリアが更に話しかけようとすると、それを読んでいたかのようにベアトリスが振り返った。

「昨日から携帯食ばかりで、飽きちゃった。せっかく近くに獲物がいるんだから、捕らないなんてもったいないでしょ」

 そしてベアトリスはウィンクをした。マリアも慌てて着いていく。


 アクアはテーブルに猪を置くと、ナイフで捌きはじめた。どうやらすでに血と内臓は抜いてあるよううだ。

「夜ならスープにしても良いが、今は手っ取り早く焼いて食べよう」

 見ると、キャロンが消えそうになっていた焚き火を復活させているところだった。

 キャロンを見てマリアは一瞬、動揺した。キャロンは内心微笑む。さすがにあれだけやられまくれば、キャロンの顔を見て平静でいられないだろう。

 マリアが何も言えないでいると、彼女達は手際よく肉の串焼きを準備し、焼き始めた。


「なんだ。この匂いは」

 テントから臨時部隊が出てきた。焼けた肉の匂いは食欲を誘うものだ。

「えっ、肉!」

 ドナルドもテントから飛び出てきた。


「みんなに私達からのプレゼントよ」

「また今日一日楽しくいこうぜ」

「しっかり食べて、力をつけてくれ」

 彼女達は、見る間に食事の準備を整えていく。

「すげぇ、肉だ!」

「昨日食いたかったぜ」

「久しぶりだ。二度と食えないかと思っていた」

 部隊員達は歓声を上げた。マリアは何も言えずに、にらむような視線で彼女達の行動を見ていた。さすがに今邪魔をすれば暴動が起こることくらいわかる。


 その代わり、マリアはわらわらと集まってくる隊員達を少し離れたところからチェックしていた。昨日のことが夢ではないとすれば、あの大テントの中でも何かが起こっていたはずだからだ。

 近衛隊達は、多少元気がない。腰をたたいたり、そらしたりしている。しかし、逆に言えばそれだけでもある。女性に乱暴を加えたのだとしたら、抵抗された跡が残るはずだが、そういう傷はなさそうだ。


「はい。マリア副長もどうぞ」

 ベアトリスが歩いてきてマリアに串焼きを差し出した。それを受け取りながらもマリアは文句を言う。


「別にこんなことはしなくていい。報酬は増やせないぞ」

「マリア副長、考えすぎよ。狩りは私達の生活の一部だもの。報酬なんて望むわけないでしょ。せっかくの料理はみんなで食べた方が楽しいし、おいしいわ」

 マリアはベアトリスから串の肉を受け取ったが、警戒は怠らなかった。

「今回はありがたくいただくことにするが、今後は不要だ」

 そしてマリアは肉を食べた。ずっと見張っていたし、他の近衛隊達も食べていたので、この肉に仕掛けをしている事は無いと判断した。

 ベアトリスは首をすくめて去って行った。


 食事を終えてテントを畳むと、一行はダスガンの町に向かって出発した。

 先頭は昨日と変わらずマリアが御者をする。違うのはベアトリスがいることだ。もちろんケネスも乗っている。

 残りの二つの馬車は昨日と同じようにキャロンとアクアがそれぞれに乗り込んで大いに盛り上がっている。


 ベアトリスはケネスに色々質問し、ケネスが得意げに話しているのがうかがえる。キャロンとは違ったアプローチのようだが、マリアにとっては好都合だった。基本的におしゃべりなケネスは、話し相手がいないとずっとマリアに話しかけてくるのだ。

 横耳で聞いているとどうにも魔法の話のようでちんぷんかんぷんだった。ケネスの方も答えられなくておろおろすることがある。もちろん、ベアトリスはケネスを不快に感じさせるような話し方はせず、ケネスをたいそう持ち上げている。

 後続の馬車は相変わらずといった様子だが、昨日ほど盛り上がっていなく感じた。


 街道を進むのは本来危険で、必ずと言って良いほど盗賊が襲ってくる。しかし、今のところマリア達を襲ってくるような盗賊はいなかった。

 近衛隊の馬車は目立つ赤色で、遠くからも認識可能だ。そして近衛隊は遠征訓練中に盗賊を発見したときは、必ず皆殺しにするという決まりがある。だから近衛隊のことを知っている盗賊なら率先して襲おうとはしない。しかしダグリシアから離れればそのような常識も知らないような盗賊も現れてくる。

 二日目となる今日は、盗賊が出てくる可能性がある。


 何事もなく、昼近くになってやっとダスガンの町に着いた。朝の食事に少し時間がかかったので、休み無しでここまで来た。

 ダスガンはそれほど大きな町ではない。しかし、数十人の集落しか周りに存在しない土地柄を考えると、この辺りでは大都会と言って良い。

 実際、ある程度の物資の購入は可能なのである。そもそもマリアは、ここでの補給を見越して荷物を少なくしてきた。


「ここで休憩を取る。ドナルド、二人ほど連れて買い出しに行ってこい。余計なものは買うなよ」

 ドナルドは真面目な顔でうなずいた。

「はい、あ、わかりました、マリア副長。えーと、じゃあ、オリヴァー、ロイ、着いてきてくれ」

 その後マリアは冒険者達を見る。

「時間はあまりないが、おまえ達は、冒険者繋がりで情報が集められるのなら集めてきてくれ。確かこの町にも冒険者の宿はある」

 少し離れたところにいた三人の冒険者は顔を見合わせる。

「まぁ、それくらいならな」

「竜の情報を知っているのか調べてくればいい?」

「ああ、それで十分だ」

 マリアは答える。三人の冒険者達もその場を離れた。


「残りはトイレ休憩だ。終わったらすぐに戻ってこい」

 そしてマリアはトマスを呼び出した。

「はい、何でしょう。マリア副長」

 トマスがすぐにやってくる。マリアは声を潜めて尋ねた。

「トマス。昨日の夜、何かなかったか?」

 トマスは少し考えてから答えた。

「特に報告は受けていません。私自身は初めの見張りを行いましたが、特に異常は見られませんでした」

「あの女達は見張りの間、どうしていた?」

 するとトマスは少し動揺した。私がにらむと話を続ける。

「見張りをしている間、彼女達は見ませんでした。嘘ではありません。実際、辺りを探索もしましたが、ポールと私しかいませんでした」


 マリアはじっと考える。そして更に念押しをした。

「本当に出会っていないのだな」

「はい、それは間違いありません。一度も現れませんでした」

 マリアはトマスが嘘を言っているように思えなかったが、何か隠しているようにも感じた。

「テントの周りで変な風を感じたり、奇妙な声を聞いたりしなかったか?」

「いえ、テントの方も全く異常はありませんでした」


 マリアは少し問い詰めることにした。

「何を隠している。知っていることを全て報告しろ」

 トマスは動揺した。

「何も隠していません。ただ、ちょっと夢見が・・・」

「夢?」

 トマスは苦笑しながら頭をかく。

「本当に見張りの間は何もなかったです。マリア副長には言いにくいですが、少し魅力的な夢を見てしまったので」

 それにマリアは反応する。

「どんな夢だ。具体的に聞かせろ」

 するとトマスは困ったような顔をしたが、小声で話し出した。


 しかしそのあまりの内容に思わずマリアは遮る。

「あー、もう良い。もう良い。悪かった」

 トマスは話しながら興奮してきたらしく、どんどん饒舌になって声も大きくなっていた。トマスもマリアの言葉でハッと気づいたようだ。

「す、すいません。マリア副長がこういう話を好きだとは思わず、調子に乗ってしまいました」

「つまり、ベアトリスとヤッた夢を見ただけということだな」

「はい。見張りの時は誰も見ていません。あっ」

「んっ。何だ?」

「えーと、これも言う必要ないことなのですが、驚いたことに夢精はしていませんでした」

「夢精?」

「こういう夢を見た後は男は出してしまっていることが多いんですよ。でも、あんなに生々しい夢を見たのに、パンツの中は綺麗なままでしたね」

 マリアは顔をしかめる。

「すまない。おまえが何か隠していることがあるかと思って聞いただけだ。別に猥談をしたかったわけじゃない。それよりトマス。あの冒険者達は油断ならない。部隊員にも注意を促せ。何かあればすぐに私に報告しろ」


 それで話を終わらせようとしたマリアに、トマスは少し不機嫌そうに言った。

「お言葉を返すようですが、マリア副長。彼女達は非常に友好的に我々に接してくれています。しかも我々の話をしっかり聞いてくださり、アドバイスすらしてくれるのです。私達は囚人として不当に捕まった者ばかりです。彼女達は我々の不満を全て聞いてくれ、わかってくれています」

 マリアの顔が更に険しくなる。しかしトマスは止めない。

「アクアは私達と同じ目線で語り合ってくれますし、ベアトリスはまるで母親のように私達の心を救ってくれます。そしてキャロンは私達の欠点を指摘し、改善を促してくれるのです」

 マリアはトマスを遮る。

「これは命令だ。彼女達が奇妙な行動をしたら必ず私に伝えろ。全員に周知させろ」

 トマスは不満な顔をしていたが、マリアに頭を下げて、馬車に戻っていった。


 そのうち、ドナルド達が買い出しから戻ってきて、その後で冒険者達が現れた。

「情報はあったか」

 マリアは彼女達に聞く。

「かなり前に竜の目撃例はあるようだぜ」

「方向からしても、目的地は合っていると思うわ」

「最近は竜の目撃情報はなさそうだから、すでに卵を産んでいると判断して良いだろう」

 彼女達はあっさりと答える。


 マリアの疑念は更に深まった。本当は情報なんて無いと思っていたのだ。ただトマスと会話をするために追い出しただけだ。

 それなのに彼女たちは的確に情報を集めてくる。つまりB級は伊達じゃないということだろう。だとすれば、本当に彼女達の戦闘力が低いということはありえるだろうか。何か目的があって、実力を隠しているんじゃないだろうか。

 今回の任務は失敗が許されない。マリアは素性の知れない彼女達を参加させるべきではなかったと悔やむ。

「ありがたい情報だな。では先を急ごう」

 マリアは買い出してきた携帯食を皆に配り、すぐにマガラス山に出発した。



 情報集めに行く途中で、キャロンがベアトリスに尋ねた。

「どうだ、うまくいったか」

「もちろん。馬車から降りたときにね。私がバランスを崩した振りをしたらちゃんと支えてくれたわ。さすがに紳士。惚れちゃいそう」

「じゃあ、今夜はしっかり夢の中にいてもらえるわけだ」

「そうね。夜中に起きても大丈夫」

 ベアトリスは胸を張って答える。

「起きないように眠らせておけば良いだろ」

 アクアが言う。コインを貼り付けたのだから、ケネスのように夜起きないようにしておけば良いのである。

「あら、どうせ夢の中の出来事に勘違いさせられるんだもの。起きてきたらそれなりに歓迎して上げないと。今夜もマリアのテントは結界から外しましょう。二度同じようなことが起こったら、さすがに夢だと信じるんじゃないかしら」

「まぁ、好きにしろ。私は今夜は男達と楽しませてもらうぞ。マリアが何かしそうなら、相手はあんたがしろよ」

「良いわよ。マリア、結構好みだし」

 するとアクアが口を挟んできた。

「だったら、ドナルドとトマスともやらせろよ。もう全員喰っちまって、他の奴の○○も味わいてぇや」

「私の後だったら良いわよ。でも私の後だと体力無くなっているかもね」

「アクア、今夜は私も三人くらいはもらうからな。全員相手できると思うな」

「仕方がねぇな、昨日の奴らなら譲ってやるよ」

 アクアは楽しげに言った。


 そのうち三人は冒険者の宿に着く。ダスガンの冒険者の宿は閑散としていて。カードゲームで遊んでいる奴や、単にたむろしている奴が五、六人いるだけ。そして正面のカウンターには眼鏡を拭いて退屈そうにしているおじさんが座っている。

「いらっしゃい」

 そのおじさんは言った。キャロン達はまっすぐ近づいていった。

「よそから来たんだろ。冒険者登録がお望みかい。ここなら推薦がなくてもすぐに作って上げるよ」

 キャロンが冒険者カードを見せた。

「それは冒険者の宿のルール違反じゃないか。冒険者は誰かの推薦がないと登録できないだろう」

 そのおじさんは眼鏡を直してカードをのぞき込む。

「ほぉー。すごいねぇ。B級なんて久しぶりだ」

 ベアトリスが来てコインを置く。

「情報無い? マガラス山について」

「特にないねぇ。まぁ、あそこは魔獣がいるから、やっつけてくれるに越したことはないけどねぇ」

 ベアトリスは呆れる。

「情報を売るのも冒険者の宿の仕事でしょ」

「うちはあまり冒険者が居着かなくてねぇ。仕事は多いんだけどなぁ」

 キャロンは言う。

「安すぎて魅力が無いと言うわけだ」

 するとその受付のおじさんは大いに笑った。

「そりゃそうだろう。ここいらの貧乏農家からの依頼だよ。そんなに金が出せるわけ無いじゃないか。どうだい。人助けしていっては」

「あいにく急ぐんだよ。情報がねぇってんならもう用はないさ」

 アクアが言う。

 すると、キャロンが店内を見渡した。面白そうにこちらを見ている農夫のような男や、まったくこちらを無視してばくちを打ち合っている男達がいる。キャロンは大声を出した。

「ゴールドコイン二十枚だ。良い情報をくれた奴の総取りだぞ。マガラス山と竜についての情報を知っている奴に全部やろう」

 キャロンが叫ぶと、一気に皆の目がこちらに向いた。

「お、俺、知ってるぞ。あの山には・・・」

「やかましい、竜だ。竜を見たことがあるぞ。」

「嘘つくな。こいつの言うことはでたらめだ。俺は猟師だから知っている!」

 皆ががっついて集まってくる。三人は彼らを言いたいように言わせておいた。そして全員が思いつくまましゃべるのを聞き続け、何も出なくなったところで、コイン二十枚をカウンターに置いた。

 キャロンは受付の男に言う。

「誰が一倍良い情報だったのか、判断はおまえに任せる」

 そして愕然としている男を尻目にキャロン達は店を出て行った。


「どこまで本当の話かしらね」

 ベアトリスが笑いながら言った。

「ちょっと奮発しすぎじゃねぇのか」

 アクアが指摘する。キャロンは首をすくめる。

「あまり時間が無かったからな。あれくらいやらないと情報なんて集まらないだろう。まぁ、古い情報でも、竜がいることは間違いなさそうだ」

「盗賊の情報は? この先現れるって誰かが言っていたぜ」

 アクアが言う。キャロンは顔を曇らせた。

「間違ってもこちらの実力を見せたくはないな。結界でどうにかならないか」

 ベアトリスはむすっとする。

「キャロン、私を良いように使いすぎ。私はあなたの部下なの、もう止めてよ」

 キャロンは苦笑する。

「わかったわかった。結界が一番やりやすいんだがな。だったら私が手っ取り早く蹴散らすか」

 するとアクアが言う。

「結界で良いじゃねぇか。その代わり、竜退治はしっかりやるからよ。みんなで楽しくやろうぜ」

 ベアトリスがアクアの頭を小突いた。

「もう、あなたは遠慮が無いんだから。いいわ。アクアへの貸しはマシマシにするから」

 三人は馬車の方に戻っていった。

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