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美女戦士ABCの一週間BGS  作者: 弥生えむ
第2章 なにげに竜討伐に参加してみた

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(13)気分転換

 キャロンはアクアを連れ、ダグリシアを出て荒野の方に向かう。

 そして、町から少し離れた場所でキャロンは立ち止まった。

「んで、なんの用だよ。今日は明日からの遠征準備だろ」

 アクアは不機嫌そうに言った。

「飯くらいおごってやるからそう不服そうにするな」

「金欠すぎるんだよ。たかる男探すのも大変なんだぜ」

 アクアはブチブチ文句を言う。

「そもそも私達に遠征の準備など無いだろう。パーティではないのだから、役割分担もないし、自分の分を勝手に用意すれば良いだけだ。今回はちょっと気になることがあってな。まずは、魔力を解放してくれないか」

 キャロンが言う。アクアは眉を寄せた。

「魔力の解放? なんでいきなり」

「何となくなんだが、一年前よりも魔力が増えているような気がしたんだ。気のせいか確認したい」

「それでこの場所か。確かに私が魔力を解放すると、ちょっと騒ぎになるからな。良いさ。えーと、いつも魔力を遮断しているから、やり方忘れちまったよ」

 アクアが自分の体を触りながら言う。キャロンがため息をついた。

「むしろそれが異常だと思え。魔力を常に遮断していると言うことは常に魔法を使い続けていると言うことだ。常人なら魔力切れを起こして倒れる。そもそも魔力を遮断しているなら外からの魔力も入ってこない。それなのに動けている方がおかしいんだ」

「おかしいとか言われてもよ。それが私の普通だし。よし」


 アクアがいきなり魔力を解放した。アクアを中心に圧力が放出される。キャロンは身構えて、その魔力を受けた。

「おおっ、なんか前よりすげぇ事になってる。私、こんなに魔力出せたっけ?」

 アクア自身が驚いていた。アクアから放出する魔力は特に攻撃の意志も防御の意志も無い、ただの魔力の流れだ。

「いや、前はこれほどじゃなかったはずだ。一年前のゾーロー大地の時から違和感はあった。もう遮断していい」

 アクアは両手を胸に当てると、目を閉じた。その瞬間アクアから流れてきていた魔力がぴたりと止まる。


「で、何なんだ?」

 アクアが尋ねた。キャロンは少し考えてから言った。

「魔力というのは成長と共に増大するのは間違いないが、それはあくまで体の成長に伴った程度のものだ。人間が体内に保管できる魔力の量は人によって決まるが、誰であっても放出すれば、外から魔力を取り入れるくらいしか回復する手段はない」

「んなこと、知っているよ。じっちゃんに習ったさ」

 アクアが答える。

「馬鹿言え、あんたは外から魔力など取り込んでいない。自分の魔力を使って魔力を遮断しているんだぞ」

「あ、そっか。まぁ、でも私は魔力切れ起こさないし、それだけ魔力量が多いって事だろ。とっくにわかっている話じゃねぇか」


 キャロンは頭を抱える。

「ふざけるな。あんたは一日中、それこそ寝ている時間も魔力を遮断し続けているんだぞ。魔力を放出しているのはせいぜい戦っているときだけだろう。それで魔力切れを起こさないわけがない」

 アクアが口を尖らせる。

「何が言いてぇんだよ。実際私は魔力切れ起こしていないんだ。そういう体だって事で良いじゃねぇか」

「あんたは恐らく魔力が勝手に増える体質だと言うことだ。出会ったときのあんたはそこまで魔力が多くなかった。一年前もあんたの魔力を利用して魔獣どもを蹴散らしたが、思った以上の魔力量にうまくコントロールができなかった。だから違和感があった。今感じた魔力量は去年よりも多い。増加し続けているんだよ」

 キャロンが言う。アクアは首をかしげた。

「なるほど。でも良いじゃねぇか。私は困ってねぇぞ」

「そこも不思議なんだ。魔力が増大しているのなら、遮断し続けるのも難しいはずだ。それなのに、あんたは別に苦も無く魔力の遮断を続けている」

「そりゃ、放出するとろくな事にならねぇしな」

「私達程度に放出していれば良いだけだ。どんな人間だって、多少の魔力は持っているし、それなりに空気中に漏れている。それ故探知魔法というのが可能なのだからな。完全な遮断は必要ないはずだ」

「そういう中途半端なのは面倒くさいんだよ。じっちゃんも特に文句言わなかったし、褒めてくれたぜ。私の魔力遮断は完璧だってよ」


 キャロンはため息をつく。

「実はモンテスの研究書に気になる記録があった」

「気になる記録?」

「これは学術的に証明されたわけではなく単なる仮説だが」

「まどろっこしいな。何なんだよ!」

 アクアがじれて怒鳴る。

「魔獣がどうして生まれるかについてだ。一般的には魔力の高い場所に住む動物が魔力を吸いすぎて魔獣に変質すると言われているが、この人の仮説では、動物の中で魔力が常に増大するような変異種が生まれたとき、それが後に魔獣になると推察している」

「ん?」


 アクアがきょとんとした顔をする。

「だから、魔力が増大し続ける特異な生物が後に魔獣になるという話だ」

 アクアは焦り出す。

「ま、待て。それはないだろう。私が? えっ! 冗談だろ。おい」

 キャロンはにやりと笑った。

「魔獣になったら私が討伐してやるよ」

「や、止めろ、おい!」


 アクアが後ずさりする。しかし、キャロンは笑い出した。

「ただの仮説だ。正しいと決まったわけじゃない。その書物でも証明できるところまではいっていなかった」

 アクアは立ち止まって大きく息をついた。

「脅かすなよ。ただでさえ、この魔力の大きさには難儀しているんだからよ」

 キャロンが近づいて、アクアの手を取った。

「魔獣になるかどうかはともかく、あんたの体は結構危険なものだというのが私の判断だ。魔力を遮断するのではなく、うまく利用することも考えろ。せっかく剣を鍛えてきたところで悪いが、あんたの魔力は定期的に発散した方がいい」

「結構うまく使っている方だと思うんだけどな。そもそも魔力遮断だって、めちゃめちゃ高度に組んでいるからな。組むと行っても、イメージだけだけどよ」

 そこでキャロンは納得した。

「そう言うことか。魔力が増える度にあんたは無意識に遮断魔法を強めて、魔力の消費を増大させているわけか」

「っつうか。キャロンはなんで私の心配なんてするんだ。まさか私に惚れたか?」


 キャロンは心底嫌そうな顔をする。

「あんたに惚れるなどあり得るか。私達は単なる○○フレンド程度だろうが。あんたは研究材料として面白いんだよ。私が知るかぎり、あんたのような体質の人間は他にいない」

 アクアはほおを膨らませる。

「モルモット扱いかよ」

 しかしすぐににやりと笑った。

「じゃあ、ちいと魔力を放出するのを手伝ってもらえるか。定期的に発散した方がいいんだろ」

 アクアは剣を抜いた。しかしキャロンは平然という。

「もともとそのつもりだ。あんたの上達具合と、私の魔法の出来を確かめたいからな。ここなら多少暴れても被害は出ないだろ」

 キャロンはアクアから離れると杖を構えた。

 キャロンとアクアの激しい攻防が始まった。



 夜。居酒屋

 キャロンとアクアがいつもの飲み屋で飲んでいると、ベアトリスが現れて同じ席に座った。そして葡萄酒を頼む。

「で、どうだった?」

 早速キャロンが尋ねる。

「結構可愛い子だったわよ。マリアって子。ものすごく筋肉隆々で、一見女には見えないけどね。キャロンの倍以上あると思うわ」

「強そうだな。やり合ってみたいぜ」

 アクアが拳を手のひらで打つ。昼に戦ったせいでちょっと高ぶっているようだ。

「戦っているところは見ていないけど、副長まで上り詰めたんだから、それなりに力はあるでしょうね。今日は牢獄に行っていたわ」

「牢獄?」

 キャロンが尋ねる。

「そう、囚人を呼び出して、選抜して戦わせていた。遠征に連れて行く気ね」

「なるほど。冒険者が集まらないから、無理矢理戦力を集めようとしているのか」

「そんなところでしょうね」

 しかしアクアが疑問そうに言う。

「囚人に腕の立つ奴なんているのか?」

 それに答えたのはキャロンだった。

「囚人と言っても、捕らわれているのは貴族ばかりだろう。平民ならすぐに処刑されるからな。そういう奴らは幼い頃から武術を身につけさせられている事が多い。特に家を継ぐ可能性のない奴は、軍隊送りになる奴が多いな」

「当たり。捕まった事情も聞いたけど、やっぱり三男坊以下の軍隊崩ればかりね。腕の方はいまいちかな。どちらかと言えば、マリアは技よりも力のある奴を中心に選抜したような気がするわ。一人だけ貴族の長男とか言うのが紛れ込んでいたわね。そいつはそこそこ腕が立ったわよ。そこそこだけど」


「なるほどな。竜の情報はどうだった。何か話していたか?」

 キャロンが言う。

「そうね。竜はもう卵を産んじゃったみたい。近衛隊はその場所をもう特定していたわ」

「やはりか。時間が経ちすぎていたからな」

 キャロンは残念そうにうなった。

「となると、ベアトリスでも魔力を追えないわけか」

「さぁ、それはやってみないとわからないけど。キャロンなら何か特殊な探知方法開発しているんじゃないの」

 ベアトリスはキャロンに無茶ぶりをする。

「魔力のほとんど無い奴の魔力を追う魔法なんて無い。やはり卵を攻撃して呼び寄せるしかないようだ。それで近づいてこないなら、マガラス山中を探し回ることになる」

「そいつはかんべんだぜ」

「マガラス山って結構広いわよね」

「ああ、あまり遅くなれば、モンテスは捕まり、仕事は失敗と言うことになる。モンテスは監視されているからな」

 アクアは酒を飲みながら言った。

「ま、それでも場所がわかっているなら都合が良いじゃねぇか。近衛隊に参加すれば、卵の場所までしっかり案内してくれるんだろ」


 するとベアトリスはにんまりと笑った。

「そ。そして、遠征中、私達はたくさんの男に囲まれているわけよ」

 アクアが目の色を変えた。

「最高じゃねぇか。食べ放題だ!」

「でしょ。私はもう目をつけて置いたわ。ふふ。たのしみ」

 ベアトリスはうっとりと目を閉じた。キャロンもにやりと微笑む。

「これは遠征中の楽しみが増えたな。しっかり快楽を味わわせてやろう」

 三人はにやにや笑いながら酒を飲む。不意にベアトリスが言った。

「でも、もう冒険者を集める必要が無いと判断するかも知れないわ。依頼取り消しになる前に急いで受けないと」

「明日の朝一で受けるか。せっかくの二重取りを逃す手はないからな」

 三人はしばらく猥談で楽しんだ。

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