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美女戦士ABCの一週間BGS  作者: 弥生えむ
第2章 なにげに竜討伐に参加してみた

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(7)夜の獲物探し

 食堂でキャロンはモンテスと別れて冒険者たちの方に行った。モンテスの方は他の同乗者と一緒の席に着く。護衛の集まる席にはミグとマグ。そして若い男女の冒険者がいた。

「席を一緒にしていいか」

 キャロンが声をかけると、ミグが顔を上げた。

「やぁキャロン。遅かったね」

「あの近衛騎士たちに絡まれてね。面倒なことだ」

 そしてキャロンは食事を注文した。

「キャロン。朝は出発間際だったから紹介していなかったな。必勝亭の冒険者たちだ」

 一人は二十歳前後の男性。ほぼキャロンと同年代と言っていいだろう。軽装で、腰に剣を持っている。

「モアレだ。いつの間にか一人護衛が増えているとは思わなかった」

「さっきのスケートみたいな魔法、すごかったわ。私はシャルピーよ」

 その女性は魔術師のようだ。ローブと杖という典型的な格好をしている。目が大きくて愛らしい顔をしている。

「私はキャロンだ。護衛といってもログとミグに無理矢理仲間に入れてもらっただけでね。目的はグレスタに来ることさ」

「グレスタに用事があるの?」

「仕事の一環でね」

 キャロンとシャルピーが話していると、ミグが割り込んできた。

「キャロンはB級なんだってさ。すごいだろ」

 内心キャロンは舌打ちをする。B級というのは男を口説くのには使いにくい。だからあまり言わないようにしているのだが。

「すっごーい! さっきの魔法を見て、ただ者じゃないと思っていたの。私より少し年上くらいよね。どうしたらそんなにレベル上げられるの!」

 シャルピーが迫ってくる。キャロンは思い直す。女ならB級でも口説き落とせるのではないだろうか。

 キャロンは運ばれてきた料理を食べながら、シャルピーに魔術師の修行について教えた。同じ魔術師同士ということを利用して、信頼させるように誘導する。

「ねぇ、キャロン。話しているところ悪いけど、もう出発だよ」

 ミグが口を挟む。

「まったく、女同士ってのはおしゃべりだね」

 モアレはあきれ顔だ。

「さぁ、行くぞ。親父、金はここに置いておくぞ」

 マグが席を立った。キャロンもシャルピーと会話を切って立ち上がった。まずはこれくらいでいい。十分好感度は稼いだだろう。次はしっかりいただくとしよう。


 午後も何事もなく乗合馬車は進んだ。やはり近衛隊が付いてきているのが大きい。たいてい一度くらいは襲撃があるものだ。

 グレスタについたのはもう日が落ちたあとだった。市門で乗客一人一人の身分証をチェックされ、中に入ったかと思えばすぐに乗合馬車の降り場で慌ただしく降ろされた。

 先払いが基本のダグリシアの仕事でも、乗合馬車の護衛だと報酬は後払いである。乗合馬車組合が信用があることと、ダグリシアだけ別ルールだと他の町とのやりとりに不都合があるからだ。そのため冒険者たちはお金を受け取るために、乗合馬車組合の事務所に向かうことになる。

「私はここでお別れだ。もし今晩打ち上げがあるなら場所を教えてくれないか。ぜひ参加したい」

 キャロンは事務所に向かおうとする四人に言った。

「依頼料くらいもらっていけよ」

「言っただろ。今回はあんたたちに便乗しただけだ。それに実際仕事なんてしていないし、あんたらの分け前をもらうのはまずい。そもそも、私はモンテスさんの護衛をしないといけないからな」

 シャルピーが駆け寄ってきてキャロンの手をつかむ。

「ぜひ飲みましょう。明日はまたダグリスに戻るし、今夜だけしか楽しめないもの」

「明日ダグリスに帰るのか? 早いな。もっとグレスタを観光していけばいい」

 彼女はもう少しこっちにいると思っていたのに当てが外れた。モアレが残念そうな顔で答えた。

「そういう契約なんだよ。もちろん、片道でもいいんだけど、そうすると減額されるんだ。減額は俺たちには結構きつい」

 キャロンがミグとマグを見る。

「まさか、あんたたちも明日帰るのか」

 マグが答える。

「そのつもりだ。俺たちは減額の問題じゃなくて。ダグリスで別の依頼を受けることにしているからだ。アークっていう冒険者に誘われて遠征することになった」

 ミグが続ける。

「本当は今回の仕事もキャンセルしようかと思ったんだけど、ギリギリ間に合うし簡単な仕事だから受けることにしたんだよ。日程的にはきつかったけどね」

 キャロンがつぶやく。

「アーク、やはりまだ引退していなかったのか・・・。ジブと一緒に引退していればいいものを。何歳まで冒険者をするつもりだ」

 ジブは三年前で四十代前半だった。それくらいで引退するのは普通だ。一方でアークはその頃すでに四十代後半だったはずなので、現在なら五十を過ぎただろう。あまりキャロンとは絡みはなかったが、一年前は必勝亭の数少ないB級の一人だったので覚えている。

「ん、何か言ったか?」

「いや、飲む場所が決まっていないなら、冒険者の宿、確か順風亭だったかな。あそこの受付にでも伝えておいてくれ。じゃあ、またな」


 キャロンは走ってモンテスのところに行く。モンテスはキャロンを待っていた。

「すまないな。待たせてしまって」

「いや、むしろ君はもう彼らと合流しても良いのだけどね」

「そうもいかないさ」

 そしてキャロンは馬に乗ったままの二人の近衛隊を見る。

「ちっ、その女を待っていたのか。いつまでこんなところで時間を潰しているつもりかと思っていたが」

 アーチボルドが忌々しげな顔をする。

「おまえたちこそ、さっさと宿を探しに行ったらどうだ」

「その隙に逃げようって魂胆だろうが。騙されるか!」

 当然キャロンはアーチボルドを無視した。

「行こう、モンテスさん。バロウズさんが心配している」

「そうだね。では行こうか」

 そして二人はグレスタの町を進んでいった。少し離れたところから二頭の馬が付いてくる。そして二人はグレスタの家まで来た。

「キャロン君は宿など取っていないだろう。家に泊まっていくと良い。広いばかりで部屋は余っているのだよ」

「ありがたいが、実は今夜は冒険者の仲間と会うことになっている。夜遅くになると迷惑だろうから、適当な宿を取るよ。打ち合わせが終わったらすぐにおいとまさせてもらう」

「それなら無理にとは言わないが」

 そしてモンテスは鍵を開けて中に入った。

「モンテス様!」

 奥からバロウズが現れる。

「心配かけたね。帰ってきたよ。まぁ、まだ問題は山積みだが」

 キャロンは中に入らず玄関口で道を見ていた。近衛隊の二人が馬を下りてこちらにやってくる。

「家の場所がわかったのならもう帰れ」

 キャロンは近衛隊たちの前に立ちふさがる。

「何だと、貴様!」

 アーチボルドは息巻くが、レナードは彼を追いやって前に出た。

「言ったように私たちはモンテス殿に協力するように言われている。挨拶をさせてもらいたい」

「常識が無いのか? もう夜だ。そんなことは明日にしろ。どうせあんたたちは大して協力などできないのだろう。モンテスさんは高齢だ。彼に本気で仕事をさせたいのなら、邪魔はしないことだ」

 しばらくにらみ合いが続いていたが、やがて二人は帰っていった。キャロンは安心して扉を開けると中に入った。中では三十代半ばの紳士がキャロンを待っていた。

「お久しぶりです。キャロンさん。以前はありがとうございました」

「仕事を受けただけだよ。三年ぶりかな。バロウズさん。あなたに会いたかったよ」

「あの頃もお美しかったですが、本当に綺麗になられましたね」

「嬉しいね。あの頃はまだ十八の世間知らずだった。少しは大人になれたかな」

 キャロンが笑い、バロウズもやさしい笑みを浮かべた。

「どうぞお入りください。モンテス様がお待ちです」

「ありがとう」

 そしてキャロンは案内されるまま奥に入っていった。


 キャロンが応接室に入ると、すぐにバロウズがお茶を運んでくる。そしてバロウズも席に着いた。

「ありがとうバロウズ。ちょっと厄介なことになってしまい、君にもしっかり話しておかなくてはいけないと思ってね」

「はい、聞かせてください。私にできることがあるなら協力させていただきます」

 バロウズが答えると、さっそくモンテスは今までの経緯をバロウズに語って聞かせた。

「そうですか。人工魔石を作ると。それは、可能なことなのでしょうか」

「以前も一応は調べたんだよ。作れないことはないと思うが、恐らく私の魔力では足りないだろうし、そもそも材料も揃えられるかどうか。そしてもっと気になるのが、人工魔石の状態だね」

 モンテスは言う。

「人工魔石の状態? どういう意味だ」

 キャロンが口を挟んだ。

「人工魔石は七色に輝いているんだ。その美しさは本当に素晴らしいものだ。だからこそエドワード王子が欲したわけだけどね。でも、当時の資料には人工魔石は黒色の玉だと書かれているんだ。この謎を解かないと、作ったところで同じものはできないだろう。明日から記録を調査しなくちゃいけない」

 モンテスの言葉にバロウズが応える。

「しかしそれでは人工魔石を作るのが間に合わないでしょう。私はあまり魔法の知識はありませんが、記録を調べるのは手伝えると思います。モンテス様は人工魔石の制作に当たってください」

「そうだな。私も手伝おう。問題はあの近衛隊たちだな。明日、必ずこの家に来る」

 しかしモンテスは気軽に答えた。

「なに、気にすることではない。彼らが来ても私の邪魔をするということはないだろう。彼らの好きに見学していってもらっても構わないよ」

「盗まれては大変だろう」

「盗むといっても、あるのは本ばかりだよ。魔法書を盗むようなことをすれば、私の仕事に差し障るのはわかるだろうし、それ以外の蔵書は日記だったり、歴史書だったりとそれほど重要なものではないよ」

「貴重品は私がしっかり管理させていただきます」

 バロウズが答えた。キャロンは肩をすくめた。

「ま、モンテスさんが言うのならそれでいい。人工魔石作りはそう無理はしなくていい。私たちが必ず竜を倒して奪ってくるから安心してくれ。ここで研究しているのは時間稼ぎだと思ってくれて問題ない」

「自信があるのだね」

 モンテスがキャロンをしっかりと見た。当然キャロンもそれに答える。

「もちろんだ。この仕事が終わったら、改めてモンテスさんの蔵書を読ませてくれ。とても勉強になりそうだ」

「それくらいのことならお安いご用だよ。しっかり礼ができればいいのだが、エドワード王子からの褒美くらいしか、渡せるものはなくてね」

「気にしないでくれ。私にはこの家の蔵書の方がよほど価値がある。では、そろそろおいとまさせてもらおうか。仲間が待っているだろうからな」

 キャロンが立ち上がった。

「明日の朝また来させてもらう」

「ああ、喜んで待っているよ」

 キャロンはモンテスと固く握手をして、モンテス家から出た。


 キャロンは順風亭に向かいながら計算をする。こちらにいられる期間は今夜と明日の夜だけ。明後日にはダグリシアに向かって出発せねばならない。

「まず、今夜を誰にするかだな。シャルピーが一番狙いだが、マグやモアレも喰っていないからな。まぁ、マグにはまた会うこともあるだろうし、その時にするか。明日は一日中モンテスの家にいるわけだから、バロウズをたらし込むチャンスだな」

 キャロンは順風亭に向かった。

 順風亭に行って受付で伝言がないか尋ねると、マグから言付けがあった。それを読んでいると声がかかった。

「あ、もしかしてキャロンさん」

 顔を上げると、三年前に色々世話を焼いてくれた受付嬢のスピナだった。一度食べたことがある。

「久しぶりだな。ますます綺麗になった」

「口がうまいですね。キャロンさんもすごく格好良くて驚きました。あのときの少年たちはどうしていますか。キャロンさんの言づてを持ってきた」

 言われて一瞬なんのことだか迷う。そしてやっと思い出した。キャロンたちは三年前、依頼を二重取りしようとしたが、ベアトリスに泣き付かれて当時○○奴隷にしていた少年たちに報酬を譲ったのだった。だから、あのとき報酬を取りに来たのはその時の少年たちだ。きっとスピナは彼らをキャロンの弟子だとでも思っているのだろう。

「さてな、すぐに別れたからあとのことは知らないよ。今日は予定があるんだが、時間があるときにまた話をしよう」

 そしてスピナの手を取る。スピナはすぐに手を払った。少し渋い顔をする。

「そういうのはやめてください。本当に、もう、嫌ですから」

「そう言うな。成長したスピナも見てみたいんだ」

「ダメです」

 スピナはにらんでくるが、あまり怖くはない。キャロンは少し脈がありそうだと判断した。でも今はその時じゃない。キャロンはスピナと別れ、指定された酒場に急いだ。


 そこは結構大きな酒場だった。入って中を見渡す。

「あ、やっときた。キャロン!」

 遠くで声がしてやっとキャロンは気がついた。マグ、ミグ、モアレ、シャルピーが一つのテーブルに座っている。手を振っているのはミグ。キャロンはそちらに向かった。

 この中で手を出したのはミグだけだ。キャロンに手を出された相手は、キャロンから逃げるようになるか、キャロンに惚れ込むかどちらかになる。特に男は逃げる奴の方が多い。ミグはどうやらキャロンに惚れてしまった方のようだ。また今度手をつけてもいいが、他にもたくさんターゲットがいるので、当分ないだろう。

「遅くなった。もうすっかりできあがっているようだな」

 特にシャルピーは顔が真っ赤になっている。

「しょんなことないよぉ。待ってたんでゃかりゃー」

 そしてシャルピーはキャロンにしなだれる。キャロンはもちろん喜んで抱き留めた。

「ああ、騙されない方がいいよ、キャロン。シャルピーは赤くなりやすいだけだから。全然しらふだぜ」

 モアレがばらす。シャルピーは座った目でモアレをにらむ。

「あのね、当たり前でひょ。酔わせて言い寄る奴の言いなりになるきゃってにょ!」

 その割にはろれつが回っていない。キャロンは苦笑する。

「それでも心配だな。少しは加減して飲め。あんたが傷つくのは見たくないからな」

「ああっ、キャロン様には何されてもいいっ」

 シャルピーがキャロンに抱きつく。

「聞いていなかったが、おまえとシャルピーはペアを組んでいるのか」

 マグがモアレに尋ねる。モアレは首を振った。

「違う違う。シャルピーとは前からの知り合いだけど、一緒に行動することはないよ。今回は俺たちのメンバーがたまたま別行動だったから、小銭を稼ぐために参加したんだ。俺にはいい稼ぎだしな」

「シャルピーは普段からソロなのか?」

 キャロンが尋ねる。

「ソロじゃないですよぉ。私、魔法しかつかえないし、いつもどほかのチームに入れてもらってみゃすよぉ」

「そういうキャロンはソロなんだよね」

 ミグがキャロンに尋ねた。

「私は昔からソロだな。別に薦める気は無いぞ。確実に早死にするからな。その代わり、生き延びることができたなら早く成長できる。私がこの年でB級になったのはソロで行動していたからというのが大きいだろう」

「修羅場をくぐった回数が実力というわけか。わかっていてもそこに身を投じるのは勇気がいるな」

 マグがうなる。

「マグももうB級が見えているんじゃないか。B級ってのは実践の実力以上に生き延びる力が必要だぞ」

「そいつは、依頼に失敗してでも生き延びるって事か」

 キャロンは笑う。

「依頼に失敗すれば冒険者なんて無価値だろ。命を捨てずに依頼を完遂する技量が必要なのさ」

「言っていることは簡単だけどな」

「まぁ、難しい話はこんな席では止めておこう。冒険者らしく楽しくくだらないネタで盛り上がろうじゃないか」

 そしてキャロンは人数分の酒を勝手に注文する。しかもかなり度数の高い酒を。

 それから小一時間ほどしてから、キャロンは声をかける。

「あんたたち、今日の宿はどうしている」

 しかしみんなつぶれる寸前になっている。やっと、マグが声を出した。

「もう、宿は、取ってあるよ。そろそろ、お開きで、いいか。明日も護衛の仕事が、あるしな」

 モアレも答えた。

「みんな、同じ宿だよ。冒険者の宿に紹介してもらったから」

 だいぶん堪えているようだ。ミグの方は何も言わずにうつむいている。

「じゃあ、シャルピーは私が運ぶか。そろそろ精算しよう」

 シャルピーはキャロンに徹底的に飲まされたために、すでに眠りについていた。マグたちが料金を支払い、そのまま宿へ五人で向かう。宿で彼らは別れを告げて、おのおのの部屋に行く。シャルピーは一人部屋だったので、キャロンが部屋に運んだ。

 

 キャロンはシャルピーをベッドに寝かせると、すぐに宿の受付に戻った。

「すまないが、先ほどの女性。調子が悪そうなので、私が看病することにした。そこで、私も同室で泊まらせてくれ。これが料金だ」

 キャロンは問答無用に金をつかませる。

「えっ、まぁ、そういうことでしたら」

 受付の女性が答えると、すぐにキャロンはシャルピーのいる部屋に向かった。キャロンの魔法を使えば、すぐにシャルピーは酔いを覚まし正気に戻るだろう。そして、正気に戻ったシャルピーはキャロンに・・・。

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