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美女戦士ABCの一週間BGS  作者: 弥生えむ
第1章 思いがけず弟子を取ってみた

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(28)アクアの仕事

 カーランクルズは順風亭に来ていつもの椅子に座る。順風亭の中は仕事の依頼を待つ冒険者達でごった返していた。当然カーランクルズも仕事を得にきたのだ。

 ふとカーランクルズがカウンターを見ると、受付のスピナが冒険者と話し込んでいた。冒険者は首を振ってそのままカウンターを離れていく。スピナがため息をついて顔を上げると、ちょうどカーランクルズと目が合った。

「カーランクルズさん。ちょっといいですか」

 スピナに呼ばれてカーランクルズはカウンターに歩いて行く。カウンターに着くなりカーランクルズは言った。

「急ぎの仕事か」

 普通の依頼は壁に貼り出され、冒険者達が取り合うことになる。しかし急ぎの仕事の場合、冒険者に選ばれるのを待っているといつ受託されるかわからないので、個別に順風亭の職員に相談されることがある。すでにベテランのカーランクルズはそうした依頼を何度も受けたことがあった。

「はい。衛兵さんの依頼です」

 カーランクルズは依頼書を見た。

「盗賊の討伐、か。相変わらずけちくさい報酬だな」

「まぁ、相場通りではありますが・・・」

「ん、この『近衛隊の指示に従うこと』というのは何だ?」

「そこが問題なんですよ」

 スピナがため息をつく。

「実はダグリス王国の近衛隊の方たちがグレスタにいらしておりまして、盗賊を探しているそうなんです。それで、昨日グレスタの街から逃げた盗賊を追いかけているということらしく」

「衛兵替わりに俺たちについて来いって訳か。貴族様は思うように動く手下が欲しいらしいな」

「いかがでしょうか。決まり次第出発なのでぜひ受けて欲しいのですけど」

 カーランクルズは少し考える。

「まぁ、いいか。最近湖の魔物討伐ばかりで飽き飽きしていたんだ。たまには街から出ないとな」

 スピナはホット胸をなで下ろす。

「良かった。さっきからみんなに断られていて」

「いいってことさ」

 そしてカーランクルズは順風亭内を見渡した。

「お、やっと来たか。コリキュリ、キュームレセズ。来い。仕事だ」

 ちょうど店内に入ってきた小太りの男と小柄な男が走ってきた。

「もう決めちまったのかよ」

「まだ張り出し前だぜ」

 二人が言うが、カーランクルズは二人に冒険者カードを出させた。

「よし、手続きしてくれ。スピナ」

「はい。ありがとうございます」

 スピナが手続きをしている間に、カーランクルズは依頼書を二人に読ませた。

「げっ、なんだよ、この依頼。俺たちに貴族様の手足になれってか」

「割に合わねぇな」

「そのうちダグリシアに行こうという話をしていただろう。今のうちに近衛隊って奴に慣れていた方がいい。どうやら近衛隊と冒険者は向こうではかなりぎすぎすした関係のようだぞ」

 スピナが戻ってきた。

「はい。受諾できました。近衛隊の方はもう門の前で待っていると思いますので、急いでください」

「わかったよ」

 三人は冒険者カードを受け取って順風亭を後にした。


 カーランクルズたちが門まで行くと、馬に乗ったままの近衛隊二人が待っていた。カーランクルズが近づいても馬から下りようとしない。

「あんたらが俺たちと一緒に仕事してくれる近衛隊の人かい」

 カーランクルズが言うと、一人が吐き捨てるように言った。

「口の利き方に気をつけろ。平民風情が」

 そして男は金貨をカーランクルズに投げつける。カーランクルズが避けると、金貨が数枚地面に落ちた。

「何の真似だ」

 カーランクルズはひるまずに言った。するともう一人の近衛隊の男が答えた。

「お前たちはここで待機だ。付いてくるな。これが俺たちの命令だ」

 カーランクルズは眉を寄せた。

「どういう意味だ。俺たちは衛兵からの依頼で盗賊退治を承っている」

 近衛隊の男は苛立たしそうに言う。

「あの衛兵どもめ。貴族としての自覚が足りん。何が『街の外の仕事は冒険者の仕事』だ。平民ごときに頼るなど気が狂っているとしか思えないな。お前たちなど邪魔なだけだ。盗賊は私たちが調べる。付いてきたら貴様らも盗賊同様斬り捨てるからそう思え」

 そして二人の近衛隊はさっさと馬を翻し門の外に向かっていった。

 コリキュリが地面に落ちた金貨を拾った。

「カーランクルズ。どうするよ。一応この金だけで元は取れているぞ」

「馬鹿言え。ここで引き下がれば、俺たちは任務失敗となるんだぞ。依頼主は衛兵隊であって、あの近衛隊野郎どもじゃない」

 キュームレセズがため息交じりに言う。

「面倒くせぇ。あれが近衛隊ってのか。ダグリシアでは平民と貴族が対立していると聞くが、その通りなんだな」

「だが、こんなに金払いがいい。対立してても平民にとってはいいお客なんだろう。じゃなきゃ誰もダグリシアには居着かねぇさ」

「で、どうする」

 カーランクルズは少し考えてから答えた。

「一旦帰るか。昼前くらいに俺たちは出発しようぜ」

「先越されるんじゃないか」

 コリキュリが心配そうに尋ねるとカーランクルズは肩をすくめる。

「かもな。だが、あいつらはこの町が初めての近衛隊で、俺たちはここがホームの冒険者だぜ。探し方が違うだろ。まずは衛兵隊のところに行って詳しい話を聞こうぜ。冒険者は地道に行くのが鉄則だろう」

 そしてカーランクルズ達は道を戻っていった。


※※


 ラフィエンは順風亭で依頼書が張り出されるのを待っていた。ラフィエンがやらなければならないのは、グレスタ城に関する情報の封じ込めだ。今のところ城の調査を頼んだ依頼者とそれを受けた冒険者がターゲットになる。すでに昨日から掲示してある依頼には目を通していた。

 やっと、職員が現れて依頼書をボードに貼っていく。ラフェインは他の冒険者と混ざって張り出される依頼書をチェックした。張り出されてすぐに奪われるものもあるので、見落としがないとはいいきれないが、ラフェインが見る限り城に関する依頼はない。

「あれから三日も経っている。このまま放置されているのはおかしい」

 ラフェインが周りの噂話から判断したところ、衛兵は町を守るばかりであまり外での行動はしないようだ。それならば城に盗賊が住み着いたことがわかればすぐに冒険者に依頼が来るはずだ。もしすでに冒険者が依頼を受けていたとしたら、すでに冒険者の襲撃があってもいいはずだが、それもない。

 その時、順風亭の扉が開き、一気にざわつきが広がった。

「おい、何だ。あの女」

「裸? ありえねぇ」

 ラフィエンもそちらを見ると、ビキニアーマーを付けた小柄で赤髪の女性がそこにいた。

「あれは・・・」

 ラフィエンも三日前には城にいた。だからすぐにその時の女だとわかった。まさか変装もせずにそのままの格好で現れるとは思わなかった。

「あ、すいません。あなた、アクアさんですか」

 急に受付からその女性は呼ばれた。

 その女性は首をかしげながら受付に行く。そしていくつか会話をするとすぐにそこを離れて、掲示板に行った。ラフィエンは少し離れて彼女の様子をうかがっていた。

「あんた。冒険者か」

 さっそく一人の冒険者が女性に声をかけた。

「ああ、見ての通りちゃんと防具を着けているだろう」

「いやいや、それのどこが防具だよ。色々とむき出しじゃねぇか」

「素早く脱ぐのに便利なんでな。やめられねぇよ」

 女性はにたりと笑った。

「じゃあよ。俺たちとパーティ組もうぜ」

 冒険者は勧誘を始めるが女性は首を振る。

「実は仲間と仕事を受けている最中さ。それが終わったら考えてやってもいいぜ」

「何だよ。先約がいるのかよ」

 ラフェインはじっと聞き耳を立てていたが、後ろから肩を叩かれる。慌ててラフェインが振り返ると、そこには仲間のレッチがいた。彼も冒険者カードを持っている男だ。昨日からグレスタに潜るつもりだったが、エイクメイの命令で帰って行った。

「見つけたのか」

 レッチも当然ビキニアーマーの女のことは知っている。

「さっき入ってきた。どこかで捕まえて、依頼主を吐かせよう」

 二人は女を見張りながら椅子に座って様子をうかがった。


 アクアはしばらくすると順風亭を出ていった。その後をラフィエンとレッチは付ける。

 急にアクアは走りだした。ラフィエンとレッチが慌てて追いかけると、アクアは歩いていた冒険者の肩を叩いた。

「よぉ、カーランクルズ」

 カーランクルズは驚いて振り返る。

「何だ。アクアか。脅かすな。今日はやけにおしゃれしているんだな」

 カーランクルズがアクアの髪飾りを見ながら言った。しかしアクアはカーランクルズと肩を組む。

「どうだ。また今夜当たり遊ばないか」

 カーランクルズはアクアの腕を優しく払う。

「もう御免だ。あのあとコリキュリの野郎は一日使い物にならなかったぞ」

「ば、ばか」

 横でカーランクルズをうらやましそうに見ていたコリキュリが慌てて叫ぶ。

「それくらい良かったってことだろ。また楽しもうぜ」

 アクアがコリキュリの腕を取ると、コリキュリは顔を赤くした。

「こいつらが盛っているところを見るのはもう御免だよ」

 カーランクルズはコリキュリからアクアを押しのけた。

「お前だって楽しんでただろ。何だ。独り占めしたいのか。私はそれでもいいけどな」

「お前を独り占めにしたら死ぬだろう。その無限のスタミナはどこから来るんだか」


 アクアは大人しく離れた。

「それで。また仕事を探してるのか。やけにのんびりだな」

「もう仕事は受けているよ。お前の方は」

「私も似たようなもんかな。仕事中ではあるけど、今はただうろついているだけさ」

「まぁ、お互い頑張ろうぜ」

 アクアがコリキュリとキュームレセズを見た。

「カーランクルズはへたれているから、今度は三人で遊ぶか。きっと楽しめるぜ」

 アクアが自分の胸をコリキュリに押しつける。

「冒険者なのか娼婦なのかわからん奴だな」

「金取ってねぇから娼婦じゃねえだろ。むしろダグリシアでは金を払っていた方だぞ。なかなか相手が見つからなくてよ。みんな逃げちまう」

 カーランクルズが呆れた顔をした。

「そう言う事かよ。じゃあ行くぞ。また今度な。アクア」

「はいよ。またな。私もそろそろ場所を変えるよ」

 そしてアクアはカーランクルズたちと別れた。


 物陰から見張っていたレッチとラフィエンに、ジャークとピロックも合流していた。

「あんな目立つ格好で歩いているなんてな」

「すぐにとっ捕まえようぜ」

 それをラフィエンがなだめる。

「注意しろ。今まで一度も姿を現さなかったんだ。今日になってから急に姿を現すのはおかしい」

「考えすぎだろ。四人がかりで押さえちまえばどうにでもなるさ」

 四人はアクアを追って歩き出した。


 アクアはのんびりと大通りを歩いた。

「釣れたかねぇ」

 できるだけ目立つ場所にいたので、相手はアクアを見つけられただろう。

 ふと、脇に裏路地の入り口があるのを見つけた。オウナイ一味も人目の多いところでは襲ってこないはずだ。アクアは裏路地の方に入っていった。細く汚い路地に潜り込んでいくと、物陰からたくさんの視線を感じる。しかし声をかけてくる者はない。

「懐かしいねぇ。貧民街ってところか。どちらかって言うと、暗黒街の方がおもしろいんだけどな」

 裏通りは当然治安が悪いが、貧しい弱者が集まっているのと荒くれ者が集まっているのでは雰囲気が違う。ここは明らかに弱者が集まっているような場所だった。少し残念に思いながら、アクアは複雑な路地を歩いた。


 そのうちアクアは金網で囲まれた場所に来た。子供が二人遊んでいたが、アクアを見るなり逃げ去ってしまった。アクアは首をすくめると、その場に座って休憩する。

「この辺りが丁度良いな。釣れたならそろそろ現れてくれてもいいんだが」

「何を調べておる」

 すると物陰からしわがれた声がした。アクアはがっかりする。目当ての相手ではなさそうだ。

「道に迷った冒険者だよ。なにぶんここは初めてでね」

 白髪の老人が姿を現した。

「道を教えるから出て行ってもらえないかね。君のような人にうろつかれると私たちも安心して暮らせない」

 仕方がなくアクアは立ち上がった。

「邪魔して悪かったな」

 老人は道を指さす。

「二つ目の横道を右に曲がってまっすぐ進むと出られる」

 それだけ言うと老人は立ち去った。アクアは指示された道を戻り始めた。


 少し進むと細い路地に四人の男が立って道を塞いでいた。アクアは微笑む。確かここに入り込んでいるのは四人。無事全員釣れたようだ。

「この間は世話になったな」

「誰に依頼されたか教えてもらうぞ。こっちも事情があるんでな」

 前の二人が剣を抜いてアクアに近づいてくる。

「そう慌てるなよ。この間の続きをやろうぜ。ここならあの魔術師に邪魔されないだろ」

 アクアはいきなり剣を捨てると、胸と腰のビキニアーマーを外して地面に落とした。盗賊たちは目を剥く。

「ほらほら。いい体だろ。そのたくましい○○でかわいがってくれよ」

 アクアは自分の体を触りながら唇を舐める。盗賊たちが唾を飲み込む音が聞こえる。それでも盗賊たちは油断なく剣を持ったまま近づいてきた。

 少しの間にらみ合いが続いたが、盗賊達は剣を引いた。

「そう言うことなら楽しませてもらおうか」

 アクアはにやにや笑いながらその場に立っていた。

「笑っているんじゃねぇよ」

 盗賊たちはアクアにつかみかかり、その場に押し倒した。


 その時、大きな声がした。

「こっちです。あいつらです」

 子供の声だった。そして大勢の足音が響く。

「婦女暴行の現行犯だ。逮捕しろ」

 突然わらわらと衛兵が現れた。

「へっ?」

 アクアも予想外だった。当然盗賊たちも青ざめる。あっという間にオウナイ一味の盗賊たちは衛兵に取り押さえられ、アクアは衛兵の一人にマントをかぶせられた。

 たくましい体付きの男が近寄ってくる。

「怪我はないか。私は回復魔法が使える」

「あ、大丈夫だ」

 アクアはそう答えるのがやっとだった。

「知らせを聞いてきたんだ。間に合って良かった」

 男は親切そうに言う。

「一応形式的なのだが話を聞かせてもらいたい。一緒に来てくれたまえ。ああ、まだ名乗っていなかったな。私はコウンズ。衛兵隊長をしている」

 アクアは連れて行かれるオウナイ一味を見ながらため息をついた。


 アクアは衛兵の詰め所に連れてこられた。少しふてくされたように椅子に座る。

「まず、名前を教えてもらえるか」

 もうすでにアクアはビキニアーマーをつけていた。アクアは冒険者カードをテーブルに置いた。

「アクアだ」

 コウンズはそのカードを確認する。

「C級の冒険者か。グレスタには最近来たのか」

「四日前くらいだな」

「一人でか」

「仲間がいるよ。今は別行動だ」

 コウンズは冒険者カードをアクアに返した。

「冒険者の宿に君宛ての言づてを頼んでいたのだが、聞いていないか」

 アクアは舌打ちをする。今朝順風亭に行ったとき、いきなりスピナに呼ばれて近衛隊の詰所に行くようにいわれていたのだ。当然面倒なので無視することにしていた。

「知らねぇな。なんか用か?」

 アクアはしらばっくれる。しかしコウンズは態度を変えなかった。

「二日前の事を教えてもらおうと思ったからだ」

「二日前?」

 アクアは思い出そうとするが、特に衛兵に出会った記憶はない。二日前と言えばログを連れ帰ったくらいだ。

「グレスタでは冒険者が町を出たくらいで文句言われるのか?」

「君はグレスタの街に戻ったときに、門番に街道を調査するように言っただろう。彼らもあまり気にしていなかったようだが、念のために町を出る馬車に確認を頼んだところ、盗賊に襲われた馬車を発見した。君はそれを知っていたんだろう」

 やっとアクアは思い出す。ログをおんぶしたまま帰ってきて、中に入ろうとしたところ、ログの身元が証明できなくて、少しごたついてしまった。最終的にはお金を払って中に入ったが、その時に「街道に何かあるみたいだぞ。調べてみたらどうだ」と話したような気がする。どうやらそれが記録に残っていたようだ。

「偶然じゃねぇの」

「では、君は何も見ていないというのかな」

 コウンズの目が鋭くなる。アクアは両手を挙げて降参した。そもそも交渉なんて面倒なことは嫌いだ。

「わかったわかった。単に襲撃後の馬車を見つけたんで調べていたら、盗賊に襲われたんで返り討ちにしただけさ」

「普通そのような事件を見つけた場合は私たちか冒険者の宿に報告するものだろう。何となく話す程度のものではないはずだ」

「そうなのか? こっちの事情は知らねぇな。街道で盗賊に襲われるなんて日常茶飯事だ。いちいち報告なんてしていられるか」

「被害者が高位の貴族の場合、問題になるのはわかるだろう。確かに盗賊を倒しただけだというのなら大目に見る場合もあるが、今回は襲われた馬車があったはずだ。それを報告しなかったのはどういうことだ」

「だから衛兵に軽く伝えただろ。それで十分じゃねぇの。私は相手が貴族かどうかなんてわからねぇよ。何せ身ぐるみ剥がされていたんだからな」

 コウンズはため息をつく。

「それで、どういう状況だったんだ」

「どうもこうも無いさ。馬車と馬がいて、馬が一頭死んでいて、後はじじいが二人とばばあが一人殺されていたってところさ」

「なぜ現場を調べていた」

「調べていたのは私じゃなくて、ログってガキだ。私はそいつを保護して連れ帰ってきたに過ぎないよ」

 どうせログのこともばれているのだろうから、隠すのは無駄だと判断した。

「ログという子供を保護した後に盗賊団に襲われたのは言うことか」

「どちらかっつうと、襲われている最中だったな。ログが何でそこを調べようと思ったのかは知らねぇよ。あいつは経験が薄いから、襲われた現場を見て呆然としていたんだろうな。そこを戻ってきた盗賊に見られたって訳だ」

「それを助けたのか。しかしそれだとおかしいな。なぜ彼らは下半身裸だったのだ。あまりにも違和感がある姿で殺されていたぞ。君がログを救っただけというのならそんな格好でいるわけがない」

 アクアはにやりと笑う。

「そっちの意味でも襲われていたって事さ。ログは美少年だからな」

「冗談を言うな!」

「はは。単なる私の作戦だよ。多勢に無勢の時は有効なんだぜ。私は美人だろ、ちょっと隙を見せたら、半身をむき出しにして迫ってくる。ほら、いい体だろう。自慢なんだぜ」

 アクアが胸をふんぞり返るように見せつけると、コウンズは侮蔑の視線でアクアを見た。

「まさか。さっきも・・・」

「私が誘ったのさ。だからさっきの奴らは解放してやってくれよ。あれは婦女暴行未遂なんかじゃないぜ。合意さ。合意」

「奴らも盗賊なのか」

「それは考えすぎだ。私はただ大勢の男と遊びたかっただけだ。あんたもどうだ。私はいつでもウェルカムだぜ」

 コウンズはアクアの考えを読み取りきれないでいた。

「その格好は服を脱がされたわけではなかったのだな」

「ああ、私はいつもこの格好さ。脱ぎやすくていいだろ」

 コウンズは顔をしかめた。

「もっとと嗜みをもったらどうだ。そもそも冒険者としてその格好は危険だろう」

「余計なお世話だ。話は終わりか。もう行くぜ」

 アクアが立ち上がる。

「待て、まだ話は終わっていない」

「もう話す事なんてねぇよ。せっかく相手が見つかったのに邪魔されて迷惑しているんだ。じゃあな」

 アクアは構わず、歩き出す。入り口にいた衛兵が止めようとした。

「何だよ。じゃまするなよ」

 アクアの背後で大きなため息がした。

「わかった。もう良い。さっさと出て行け」

 すると、衛兵は道を空けた。アクアはその衛兵の肩を叩く。

「あんたも、私とヤリたくなったらいつでも声をかけてくれよ。楽しませてやるぜ」

 アクアは衛兵の取調室を出て行った。


「無駄な時間を過ごしちまったぜ。そろそろ昼か。順風亭に行くかな」

 アクアは、順風亭に向かった。

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