表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美女戦士ABCの一週間BGS  作者: 弥生えむ
第1章 思いがけず弟子を取ってみた

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/137

(21)ログとの再会

 アクアは宿を出るとすぐに門まで来た。一応服を持ってきているが今はまだビキニアーマーのままである。

 眠くなかったのですぐに宿を飛び出してきたが、まだ人々が動く時間ではない。ログを探すのはもっと後になってからじゃないと無理そうだ。

 アクアは門に近づいていった。

「よう、元気か」

 アクアが声をかけると門番たちは眠そうだった目を見開く。

「うわっ、なんて格好しているんだ」

「冒険者か。痴女じゃねぇか」

 アクアはなれなれしく門番にすり寄った。

「ちょっと確認してぇんだけどよ。昨日栗色の髪の美少年が町を出ていかなかったか」

 門番の仕事は外から中に入る者を調べることである、出ていく人間についてはあまり厳密に管理されていない。アクアは元々あまり当てにしていなかった。


「昨日、朝か?」

 すると一人が反応した。むしろアクアが驚く。

「何だ。知っているのか」

 するとだらしない顔をしていた門番は少し警戒の色を強める。

「そんなことを聞いてどうする」

「困ったな。あいつは私が保護していたガキなんだよ。昨日私が見ていない間に勝手にいなくなりやがったんで探していたんだ。まさか町を出ているとはな。だが、あいつは通行証なんて持っていなかったはずだぞ。確認しなかったのかよ」

 門番は少しばつが悪そうな顔をする。

「まぁ、ガキだったが。一人前の男だろ、保護者がいるとは思っていなかった」

「一人前かねぇ。まだあれは十五にもなっていないだろ。ただのガキだよ。それよりあいつの方が心配だ。どこに向かったかはわかるか」

「街道の方に行ったな。俺も止めようとはしたんだが、聞く耳を持たなくてな」

 門番が言い訳をするが、アクアは門番の肩を叩いた。

「責めているわけじゃねぇよ。私の監督不行き届きだ。じゃあ、追ってみるか」

 アクアは冒険者カードを門番に見せる。

「C級冒険者か。それなりの腕だな」

 もう一人の門番が帳簿を確認する。

「おい、お前昨日の昼に出ていった記録があるが、入った記録がないぞ。お前、いつグレスタに戻った」

 アクアは心の中で舌打ちをする。門の側にオウナイ一味がいると重い塀を越えて侵入したのだった。慌てて言い訳を考える。

「ああ、南のグレスタ湖の方から入ったんだよ。あっちからここまで戻るのは大変だろ」

 カーランクルズの話ではグレスタの南は湖と岩山で仕切られているという。そこからなら誰でも侵入できるはずだ。

 門番は舌打ちをする。

「それは禁止されているんだよ。ったく。そのうち東に門を作る計画もあるが、一応はここが玄関口だ。勝手に入られては困る」

「わかったよ。次からはここまで戻ってくるさ。面倒くせぇけど」

「そもそもグレスタ湖の方に行くなら門を出なくても街中から行けるだろう。わざわざ外側から回る必要なんてない」

「次からはそうするよ。どうでもいいから早くカードを返せ」

 アクアがせっつくと門番はカードをアクアに返した。

「昨日の朝だぞ。今から行っても見つからないと思うぞ」

「見殺しにもできねぇさ」

 アクアは門を出た。


 門でログの情報を聞いたのはほんの暇つぶしのつもりだった。外で死にかけたログが早々に町を出て行くとは想像してもいなかったからだ。

「レクシアの保護者探し。結構大事になっちまったな」

 一度宿に戻ってキャロンと情報共有した方がいい気もしたが、昨日の行動をさんざん文句を言われたのがしゃくで、一人で探すことにした。


 一日経っているので、街道を歩いたとすればかなり先まで行っているはずだ。

 アクアは街道を走った。しかし途中で草原の向こうにある森のざわめきが気になった。森には霧がかかっていた。

「相変わらずか。盗賊どもがまだ森を散策しているってか」

 そう思ったがアクアはすぐに足を止めて森を見入った。

「さすがに奴らも夜に森に入るわけ無いか。なのに魔物が作る霧がひどく濃い」

 アクアは草原に入り、森まで進む。霧がより濃くなってきた。

「霧の魔物。まだ怒っていそうだな。私も縄張りをさんざん荒らしたからな」

 アクアはしばらく森を見ていたが、やがて確信した。

「今まさにちょっかいをかけた奴がいるな」

 霧の濃淡が異常な速度で入れ替わる。霧の魔物が興奮している証拠だろう。少なくともアクアを威嚇しているのではない。

 盗賊が朝から森に入った可能性もあるが、もう盗賊たちもこの霧のことは知っているだろうから好んで入ろうとはしないはずだ。

「もしかするとログの仕業か」

 アクアはログが森の中に逃げ込んだのだと考えた。そうすると、あまり遠くまでは進めていないはずだ。

 アクアは森沿いに草原を進むことにした。


 しばらく進むと、アクアはまさにログが森から出てきたところを見つけた。アクアの読み通りだったようだ。街道を進めば盗賊に出会う危険はあるが、森や草原で魔獣とで会うのも致命的である。ログがなぜ森を選んだのかアクアにはよくわからない。

「結果オーライだな」

 見つけたは良いがどう接触しようか悩む。ログを連れ帰ることが今回の任務だが、正直に話しても意固地になって戻ってこない可能性がある。アクアは面倒な交渉は嫌いだ。

「攫っちまった方が良いな」

 アクアが方針を決めると、街道の方で悲鳴が聞こえた。ログにもその声は届いたようだ。ログが街道の方を見ている。そして、ログは街道の方に向かった。

「何しようってんだ。まさか人助けでもしようってか」

 一昨日の状況を見る限り、ログが何とかできる見込みはない。しかし面白いとも思った。何をするつもりなのか観察してみよう。アクアはそっとログの後を追っていった。


 ログはすぐには街道に出なかった。遠くから動かない馬車を見ている。助けようとしているわけではなかったらしい。もっとも明らかに手遅れではあるが。

 しばらくしてやっと、ログは街道に向かった。

「以外と頭良いじゃねぇか。死体から装備を奪おうってか」

 あまり褒められたことではないが、死体から持ち物を漁るのはかなり一般的だ。アクアだって、道すがら行き倒れがあれば、装備の確認くらいはする。たいていはすでに盗賊に奪われてしまって何も残っていないが。

 しかし、襲撃場所まで着たログは死体を見て戸惑っているようだ。アクアはその隙に、馬車のそばに近寄って隠れて様子を見守った。

「のんびりしていて良いのかねぇ。この馬車だって馬だって金になる。すぐに回収に来るはずだ。そんなこともわからねぇんだな」

 案の定、盗賊たちは戻ってきた。ログはかなり焦っている。アクアは様子を見ることにした。そもそも一昨日だって兄妹を助けたがっていたのはベアトリスとキャロンであり、それも下心があってのことだ。ログに何の思い入れもないアクアにとって、ここで盗賊に襲われるのは自業自得としか思えない。とはいえ、レクシアのこともあるので、最後には助けなくてはいけないのだろうと考えていた。


 ログを襲った盗賊は、盗賊とは名ばかりの農民か平民崩れだった。街道にいる盗賊はこんなのが多い。だが、数が多くなればそれなりに脅威ではある。

 様子を見ていると、ログは危なっかしくはあったが、結局盗賊たちを撃退してしまった。一人を殺し、三人を追い払った。アクアは素直に感心した。

「へぇ、意外と構えはできているんだな。相手が弱すぎるが、追い払えたのは上できってところか」

 大人相手に素人戦士が撃退できたのだから、冒険の始まりとしては成功に近いのじゃないだろうか。

「良いね。じゃあ、褒美でもやるか」


 アクアはそっと馬車の陰を出ると、ログが気づけるように足音を大きく立てて斬りかかった。ログはすぐに身をかがめ、背後に剣を振ってきた。アクアはその剣を剣で受ける。振り返るログに向かってアクアは今度は強く剣を打ち込んでいった。

 ログはアクアの剣撃に翻弄されたようで、そのまま地面を転がって逃げた。その判断は正しい。こういう相手なら逃げを考える方が正解だ。ログはすぐに立ち上がって剣を構えた。逆にアクアは剣を降ろす。

「意外だな。結構やるじゃないか」

 素直な感想だった。さっきのなんちゃって盗賊相手では、剣の実力は全くわからなかった。打ち合ってみると、対人的な剣術は覚えているらしい事がわかる。獣の動きには付いていけなかったようだが。

「アクア……、どうして」

 ログはつぶやいた。

「おまえの○○が忘れられなくてな」

 アクアは冗談のつもりだったが、ログはちょっと怒ったようだ。

 アクアは肩をすくめた。

「もうちょっと遊ばせろよ」

 途端にログの顔に緊張が走り、剣の切っ先が持ち上がる。それでもアクアは剣を構えずににやにやと笑っていた。緊張した面持ちで構えるログに向かって、アクアは無造作に剣を振り上げた。

 それは剣術とは言えない隙だらけの降り降ろしだった。しかしログは、恐ろしいほどの威圧を感じた。それでもログは逃げずに剣を振った。普通ならログの剣の方が先に届く。しかし、アクアの剣の軌道はすぐに変わり、ログの剣をあっさりはじき飛ばした。

 ログの首に剣が当てられる。

「私の剣に向かってくるなんて、思い切った選択だな。だがそれじゃ命がいくつあっても足りないな」

 アクアの威圧は嘘だった。隙を見せてログの剣の軌道を固定しただけ。親に剣術を習っただけのログに太刀打ちできるわけがない。アクアは当初の目的を果たすことにした。

「さてと。おまえが負けたんだから、まずは○○らせろ。楽しいご褒美タイムだ」

 アクアは獣のような笑みで、ログを押し倒した。


 アクアがログを楽しんでいる最中、盗賊たちが舞い戻ってきた。

「なんだこいつら。こんなとこで盛っていやがる」

 しかしアクアは気にしない。ログと○○を続ける。盗賊たちもはやし立てた。しかし当然そんなものは罠である。盗賊たちが油断しきったところでアクアはログから離れ、あっという間に盗賊たち五人を殺してしまった。

 ログは唖然としていた。さっきまでの興奮がすぐに冷める。地面が血の海に染まった。盗賊たちを殺して戻ってきたアクアが、また○○を再開しようとしたので、ログはその手を払いのけて立ち上がった。

「一体、何しに来たんだよ!」

 アクアは棒立ちになって少し首をかしげた。

「ああ、そうだった。目の前に美味しそうな獲物があったんで忘れてたわ。お前を連れ帰りに来たんだっけ」

 アクアは落ちていたビキニアーマーを身にまとう。

「言っている意味がわからない」

 ログはアクアをにらみつけた。

「レクシアが熱を出してね。邪魔なんだよ。お前が引き取ってくんねぇ」

「レクシアが熱を!」

「そうそう。まぁ、特訓のやりすぎと栄養不足でぶっ倒れただけだろうし、私は放っておいても良いと思うんだけどな。邪魔だからお前が引き取れ。兄貴だろう」

 やっとログは状況を理解した。

「ひどい状態ではないんですね。なら、僕は帰らない」

「おいおい。わがまま言うなよ。私たちだって仕事があるんだ。妹の面倒くらいお前が見ろ。こっちは忙しいんだ」

「レクシアを引き取ったのはあなた方だ。都合の良いことを言わないでくれ」

 ログにも意地がある。勝手にレクシアを引き取り、邪魔になったから返すと言われて納得できるわけがない。

「駄々をこねると無理矢理攫っていくぞ!」

 アクアはログをにらみつける。ログも無言のままアクアをにらみ返す。

 しばらくの間二人はにらみ合っていた。ベアトリスがいれば眠らせるとか結界で縛り付けるとかの手が使えるのだが、アクア一人では力任せに担いでいくくらいしかできない。抵抗されるのは面倒だ。

「そもそも何でこんな所まで来ている。町で働くんじゃなかったのか」

「僕は弱い。僕はまだレクシアを守れない。だから僕は帰らない」

「おいおい、武者修行の旅のつもりかよ」

 アクアは呆れる。ログの実力で一人旅というのは無謀でしか無い。アクアは面倒くさくなって、剣を抜いてログに突きつける。

「良いから大人しく付いてこい」

「やだ!」

「ぶっ殺して死体にして連れ帰るぞ!」

「やってみれば良いさ!」

 死体にして連れ帰っても全く意味は無い。保護者が必要なのだから。

「この頑固者め。お前たち兄妹のことで私たちを足止めするな」

「最初にちょっかいをかけてきたのはあんたたちの方だ!」

「それで命が助かったんだろうが。恩を仇で返すな」

「その代わり僕らを襲っただろう。あれで救ったなんて言われたくない」

「お前的には気持ちよかっただろ。こんな美人とやれる機会なんてそんなないぞ」

「それとこれとは話が別だ!」

 アクアはため息をつく。レクシアも結構しつこい性格をしていたが、ログも相当だ。このまま言い合っていても説得できそうにない。

「ああ、面倒くせぇなぁ」

 アクアは叫ぶ。もう、ぶん殴って眠らせようかとも考えた時、ふと思いついた。

「わかった。お前、妹を守れるくらい強くなりたかったんだよな。だったら、私の弟子になれ」

「は?」

 ログは面を食らった。

「おまえが望むなら、ちょっとは鍛えてやるよ。それなら帰ってくる口実になるだろ」

 ただの思いつきである。ベアトリスに習うことにしたのである。とにかくログが町に戻ればそれでいい。後はどうとでもごまかせる。

 その時、ログの目の色が変わった。今までのこちらを警戒しきっていた顔から、羨望の目に切り替わる。アクアは少し引きつった。

「いいの? 僕に剣の修行をつけてくれるの?」

 それは純粋なまなざしだった。アクアはその本気の瞳に恐怖した。考えてみれば仕事中にこんなことを安易に約束するものではない。明日にはダグリス城襲撃というイベントがあるのだ。

「いや、ちょっと待て。やっぱり今のは無しだ。一度戻ってきてくれればいい」

「だったら帰らない!」

「ぐっ……」

 ログは期待に充ちた目でアクアを見ている。ここで断ればログは絶対に従わないだろう。アクアは少し考え直す。顔が割れてしまっている自分はこれから町でナンパができない。昨日はベアトリスのおかげで楽しめたが、今後はそうはいかないだろう。○○しないと夜を過ごせない自分にとって、ログは丁度良いおもちゃと言える。

 アクアはログの顔を引き寄せると言った。

「私たちの○○になると誓いな。あたしの○○は半端ないぞ」

 ログは驚いた顔をしたがしっかりうなずいた。

「わかった。僕はアクアの○○になる」


 ログを捕まえれば、後は帰るだけだ。もう昼は過ぎてしまったが、走れば一、二時間でグレスタに着く。

「じゃあ帰るぞ。着いてこい」

 アクアは走り出した。ログも慌てて走り出すが、みるみる離れていく。ログは必死で走ったが、全然追いつかなかった。

「ま、待って」

 全力疾走は長く続かない。すぐに足が重くなって走れなくなる。ログは立ち止まり、息を整えようとする。

「すまんすまん。おまえの速度を忘れていた」

 ログが顔を上げると遙か先に走り去ったはずのアクアが目の前にいた。アクアはいつものつもりで走っていたが、それが普通ではなかったことを思い出して戻ってきた。

「だが、それじゃあ今日中にグレスタには着けないな」

 アクアは心の中で舌打ちした。結局担いでいく羽目になるのなら、わざわざ交渉なんてする必要がなかった。初めから殴って気絶させて運べば良かったのだ。

 ログは唇を噛んでいる。力の差が見せつけられて、悔しいのだ。

 アクアはログを見ながらにやにやと笑う。

「だっことおんぶのどっちがいい? ○○に触りたいだろうから、やっぱりだっこだろ」

「走る!」

 そしてログは走り出そうとしたがアクアは首根っこを捕んで止めた。

「だから、その速度じゃ遅すぎるんだよ。早く選べ」

「・・・おんぶでいい」

「そうかそうか、後ろから触りたいか」

 アクアはログを持ち上げるとさっさと背中に背負った。剣も取り上げる。

「しっかり捕まっていろよ」

 そしてアクアは全速力で走り出した。ログは振り落とされないように、首にしっかり手を回して捕まった。アクアの速度は、人一人抱えているとは思えないほどだった。

 途中で盗賊の残党を見つけたが、アクアはそれもあっさり倒した。

 更に、走り続けているにもかかわらず速度が落ちない。休憩も取らない。ログは改めて、アクアの人間離れした力を思い知るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ