(14)一日目
昼近くに近衛女性部隊の十人はグレスタ城に付いた。心細そうな顔で待っていたスーザンがやっと安堵する。男たちに囲まれて怖かったのである。
城はに近衛隊たちが待ち構えており、歓迎ムードで、ヴィヴィアン王女は城内に招かれた。一方で商人のものらしき馬車は城の敷地内の隅に追いやられていた。
馬車から十人の女性が降りると、明らかに男たちの顔がほころんでいた。マリアはそれを危険な兆候と考えた。近衛隊に女性隊員はいない。町から外れたこの場所に何日も住み込んでいる男たちは明らかに女に飢えているだろう。
近衛女性部隊はそのままエドワード王子のいる二階の謁見の部屋に案内された。正面には簡素な王座に座ってふんぞり返っているエドワード王子がいた。
いきなり挨拶もなしにヴィヴィアン王女は話しかける。
「お兄様。久しぶりね。ずいぶん物々しいじゃない」
エドワード王子の周りには近衛隊たちと側近がいる。エドワード王子は多少呆れた顔で応えた。
「何で、わざわざおまえがここに来たのだ」
「だって、近衛隊たち総出の作戦なのでしょう。私たちだけ仲間はずれはひどいわ。私たちも近衛隊よ」
近衛女性部隊は膝を突き頭を下げているがヴィヴィアン王女だけは立ったまま話をする。
エドワード王子はふっと笑う。ヴィヴィアン王女がわがままで自分勝手なのは周知の事実だ。もちろんエドワード王子も人のことはいえないが、それが王家の振る舞いだと信じている。
「来てしまったのだから仕方がないな。ゆっくりしていくといい。ここは今後重要な拠点となるだろう」
ヴィヴィアン王女が首をかしげる。
「やけに辺境な場所にあるお城だけど、重要? もしかして、ここの制圧が今回の仕事だったのかしら」
「まぁ、そういうことだ。ここの重要性は後でしっかり教えてやろう。おまえたちの部屋はすでに用意してある。俺がこの城を案内してやろう」
エドワード王子は席を立ち、ヴィヴィアン王女の手を取って歩いて行った。近衛隊の数名が王子に付き従い、近衛女性部隊たちはその後に続いた。
エドワード王子が説明を始める。
「この階は会議室や謁見の間、そして食堂だ。もちろんヴィヴィアンの食事は部屋に運ばせるから安心しろ」
「料理は大丈夫?」
「ダグリシアから料理人を呼び寄せた。安心していい」
「グレスタで雇わなかったのね」
「奴らには何も話していない。この城は私のものであってグレスタのものではない」
二人は三階に上がる。
「ここと四階は兵士どもの部屋だ。適当に割り振っている」
「なんか面倒な構造ね。階段がばらばらなの?」
「馬鹿な奴が設計したんだろう。この城は一階上がる毎に場所を変えないと行けない。そのまま上まで続く階段はない」
「それに結構古びているわ」
「今近衛隊たちに修繕をやらせている。調度品もどんどん届いているしな」
マリアは近衛隊たちが気の毒になる。まさか遠征に来て城の修理や模様替えをやらされているとは。
ヴィヴィアン王女はあまりこの城を気に入ったようではなかった。エドワード王子も近衛隊たちのいるところをわざわざ説明したくなかったのか、四階の近衛女性部隊が過ごす部屋を見せると、すぐに階を上がっていった。
そして五階に行く前の階段で近衛隊と近衛女性部隊は待たされた。エドワード王子とヴィヴィアン王女だけが階を上がっていく。
「五階は私たち王族の部屋だ。私以外には、ジョシュア、フレッド、エドマンド。そしてカーメラ、キャロライン、マージョリーが住んでいる」
エドワード王子は三人の側近と三人の侍女の名を言った。
「あら、ジョシュアさんとフレッドはあそこにいたけど、他は見なかったわね」
「執務も五階で行っている。私は商人どもとの話で忙しいからな。ここがおまえの部屋になる」
エドワード王子は部屋の一つを開けた。ちょうどエドワード王子の侍女たちが掃除をしているところだった。まだベッドとカーテンと棚くらいしか用意できていないため、閑散としている。
彼女たちは手を止め深々と礼をする。淑女然とした女性たちだった。ヴィヴィアン王女が唇を舐める。
「さすがお兄様のお気に入りね。綺麗な子ばっかり」
「おまえにはやらんぞ。何をされるかわかったものじゃない」
エドワード王子が言うと、ヴィヴィアン王女は笑った。
「あら、残念。でも飽きたら私にも貸してちょうだいね」
「まったく。もう荷物を運び込んでいいぞ。一度降りよう」
そこでヴィヴィアン王女がエドワード王子を呼び止める。
「お兄様。さっきの話の続きを聞きたいわ。この後すぐに時間を作ってくれる?」
エドワード王子は肩をすくめた。
「私も忙しい。色々と約束がある。おまえたちは休んでいろ」
「休むのは後でもできるでしょ。こんなちっぽけな城が重要な拠点なんておもしろいじゃない。早く教えてよ」
ヴィヴィアン王女はすがりつくような勢いで迫った。とうとうエドワード王子は根負けした。
「わかったわかった。これからの予定は明日に回すか。後で二階の会議室に来い。後処理をしたら私もすぐに行く」
そして二人は階を降りた。
エドワード王子はそのまま去って行き、近衛隊たちもそれに従う。残された近衛女性部隊にヴィヴィアン王女は言った。
「荷物を運び込んで片付けるわよ」
「はい」
近衛女性部隊員たちは一階に移動した。馬車から荷物をヴィヴィアン王女の部屋に運んで一通り整理した後、四階の自分たちの部屋に行く。マリアは一人残ってヴィヴィアン王女の荷の整理に当たる。荷ほどきをするマリアに向かってヴィヴィアン王女が言う。
「あなたはいつも通りこの部屋ね」
「はい」
マリアは素直にうなずいた。マリアはそう言われることを予測していた。
「鍵をかけるから、指輪を忘れないでちょうだいね」
王宮ではヴィヴィアン王女の使う部屋の全てに「施錠の魔法」がかけられている。つまりヴィヴィアン王女の部屋にはヴィヴィアン王女が許したときしか入れない仕掛けになっている。これではヴィヴィアン王女に何かのトラブルが起こっても誰も助けに入れないことになるが、ヴィヴィアン王女は自分の居場所に勝手に人が入ることが許せなかった。もちろん、高位の魔術でヴィヴィアン王女の施錠の魔法を打ち消して侵入することはできる。しかし、施錠の魔法が破られればヴィヴィアン王女も気がつくし、その痕跡もわかる。ヴィヴィアン王女にとっては物理的な鍵よりも自分の施錠の魔法の方がより信頼できた。
ここで一番困るのはヴィヴィアン王女の部屋で暮らすマリアだ。当然マリアは解錠の魔法などつかえない。いちいち出入りする際にヴィヴィアン王女の許可をもらって、解錠してもらわなくてはならないのである。この不便さの解決策としてマリアには「解錠の指輪」を与えられていた。この指輪は一時的にヴィヴィアン王女の施錠の魔法を打ち消すことができるものだ。マリアが出入りした後は指輪の効果が切れて勝手に扉は施錠される。
当然、初めはそんな高価な物が初めからマリアに与えられるはずもなく、マリアはトイレなどで部屋を出る度にヴィヴィアン王女にお願いして開けてもらっていた。ある日、いたずら心を起こしたヴィヴィアン王女が「トイレなんてその場でしたら」とからかってきたので、マリアが本当にその場で排泄したところ、ヴィヴィアン王女は怒りのあまりさんざんマリアを殴りつけた後、二度とそんなことが起こらないようにマリアに解錠の指輪を与えたのだった。
そもそも、マリアは今までも貴族たちの前で排泄行為をやらされたことがあり、言われた通りにすることは慣れっこなのである。なぜ貴族のジジイたちが女性の排泄行為を見たがるのかは全くわからなかったが。
荷物自体はそれほど多くないので。ヴィヴィアン王女の部屋の片付けはすぐに終わった。
他の九人の近衛女性部隊員は三階の部屋に自分たちの荷を置きに行った。部屋にはベッドは備え付けられているが、それだけだ。近衛女性部隊たちは自分の荷物を置くと荷を片付けることなく、すぐにヴィヴィアン王女の部屋に向かった。
階段に付いたところで五階から降りてきたヴィヴィアン王女と鉢合わせ、そのまま彼女たちはヴィヴィアン王女に付き従いながら階を降りた。
近衛女性部隊員たちは二階の会議室に入った。中央にテーブルが置いてある。いくつか調度品が設置され始めているがまだ殺風景だった。当然近衛女性部隊員の席など無い。ヴィヴィアン王女が座り、その背後に近衛女性部隊がずらりと並んで立つ。
しばらく待っていると、やがてエドワード王子が近衛隊たちを連れて現れた。エドワード王子が座ると、給仕が現れて、軽食とお茶を置いていく。
「まったく。私は忙しいのだぞ。わがままばかり言わないでくれ」
エドワード王子が苦笑するが、ヴィヴィアン王女は気にした素振りを見せずに応えた。
「あら、商人の相手なんて、ジョシュアでもできるでしょう」
「我が城に入れる物は自ら選ぶのが当然だろう。何しろ飾り気のない奇妙な城だ。私にふさわしいものにしなくてはならない」
「いっそ壊して立て替えればいいんじゃないの?」
ヴィヴィアン王女が大雑把なことを言うが、エドワード王子は素直に肯定した。
「そのうちそうするつもりだが、さしあたっては私が住むにふさわしい状態にまで仕上げておく必要がある」
ヴィヴィアン王女は少し驚いたようだった。
「住む? こんなところに」
「ずっとというわけではないがな」
ヴィヴィアン王女はおもしろそうに自分の兄を見た。
「それだけの秘密がここにあるってことね」
「その秘密については極秘事項だ。この場で安易に話せるわけじゃない」
「あら、ずるいわ。教えてよ」
ヴィヴィアン王女は前のめりでエドワード王子に懇願する。しかし、エドワード王子は後ろに控える近衛女性部隊に視線を移してから応えた。
「後でだな。ただ一つ言えることはここには重要な魔法装置があると言うことだ」
「魔法装置?」
エドワード王子は首肯する。
「そうだ。この城には秘密の部屋があり、そこに魔法装置がある。それを不法占拠者から奪還し、私の支配下に置くことが今回の遠征の意味だった」
「つまり、その不法占拠者を追い出すためにほとんどの近衛隊を動かしたのね。でも、それにしてはこの城にいる近衛隊たちは少ない気がするわよ。お兄様は何を隠しているのかしら」
ヴィヴィアン王女はいたずらっぽく言うが、エドワード王子は首を振った。
「隠しているわけではない。ここの占拠者が私の大切な魔法装置に仕掛けをしたのだ。そのために今はその魔法装置が動かせない。近衛隊にそいつの仲間を追わせている」
エドワード王子は苦々しく言う。
「上手くやられたってことかしら」
「元々私が来ると予測していたのだろう。したたかな女だ」
エドワード王子の言葉にヴィヴィアン王女は驚く。
「女? その不法占拠者って女だったの」
「あれを女と呼んでいいかは知らんがな」
「おもしろいわね。盗賊だと思っていたわ」
マリアもそう思っていた。実際にマリアはこの城に来た事があり、その時は盗賊の根城になっていたのだ。もちろんマリアはその事を誰にも話していない。
「似たようなものだ。魔法装置については夜にでもじっくり説明してやる。ところで、おまえたちはここで何をするつもりだ」
ヴィヴィアン王女は肩をすくめる。
「もっとおもしろいことになっていると思ってきたのに残念だわ。攻め込む前に教えて欲しかったわね。その逃げたって仲間でも退治に行こうかしら」
「やめろ。相手は冒険者だ。大っぴらに動けば奴らは雲隠れする。近衛隊も数人毎に別れて町に潜入させている状況だ。それに退治するんじゃない。彼奴らが持っているアイテムを回収するんだ」
「面倒くさいわね。でも私は城の片付けなんてしたくないわ。退屈なら帰ろうかしら」
するとエドワード王子はにやりと笑った。
「やることがないなら丁度良いな。おまえにとっておきの仕事がある」
「あら、何かしら。面倒事は御免よ」
「この城を不法占拠していた女を捕まえてある。仲間の居場所は知らんとしらばっくれるのでな。口を割らせて欲しい」
「あら、処刑していなかったのね」
するとエドワード王子は不機嫌な顔になる。
「殺してやりたかったんだがな。理由は直接見た方が早いだろう。何をしても良いぞ。死んでも構わん。今は男どもの○○処理用に使っているだけだ」
ヴィヴィアン王女は唇を舐める。
「美人かしら」
「それは保証する。俺はあんな女御免だがな」
「いいわね。ぜひ見てみたいわ」
「わかった。付いてこい」
そしてエドワード王子は立ち上がった。
ヴィヴィアン王女を初め近衛女性部隊は三階の一つの部屋に案内された。先ほどは素通りして案内されていなかった部屋だった。
扉を開けると異臭が流れてきた。男と女のあれの匂いだ。
見ればやはり一人の男が○○しているところだった。他には誰もいない。
「くそ、なんだこの女。もう○○」
そして、彼は満足そうに女から離れたところで初めてエドワード王子に気が付いたようだ。引きつった顔をしながら慌てて敬礼する。
「で、殿下。いつからそこに」
「まずはズボンを上げろ、そんな醜い物を見せるな」
「は、はい」
そして近衛隊の男は慌ててズボンを上げて出て行った。
残されたのはエム字に脚を広げられたまま椅子に体を固定された女性だった。激しく○○を汚されている。
マリアはその人物を見て驚いた。相手がキャロンだったからだ。マリアは二年前の竜討伐の仕事で彼女を雇ったことがある。二年ぶりに見るキャロンは、相変わらず美しくもたくましい体をしていた。いつも縛っていた青髪が解かれていて、ちょっと扇情的にさえ見える。
キャロンは入ってきた一行を見て、にやりと不敵な笑みを浮かべた。
「王子、おまえも○○に来たのか。一瞬で昇天させてやるぞ」
ヴィヴィアン王女は興味深そうに体を固定されたままのキャロンを見た。
「その雌がここを占拠していた奴なの?」
「そうだ。この女がここを不法占拠していた冒険者の魔術師だ。捕まえてから魔法を封じ、○○処理用に使っている」
「わざわざ警戒するほどの相手とは思えないのだけど」
ヴィヴィアン王女は不思議な体を持つキャロンを気に入ったらしく唇を舐めた。
「おまえは二年前の混乱を知らないからな。この女の魔法は尋常なものではない。王宮の結界を破り、謁見室を破壊した。更にこの女とその仲間どもは貴族を次々と淫蕩させて騒ぎを起こした上、国庫から金を盗み出したのだ。こんな女どもに溺れる貴族どもは一掃したがな」
エドワード王子が言うと、キャロンは笑い出した。
「おいおい、一掃されていない奴がここに一人いるぞ。あんたは何度アクアの中に○○をはき出した? 私に○○を犯され、泣きながら、もう許してと泣いていたあんたも大概だったな」
「貴様!」
エドワード王子は腰に差していた剣を抜いて、キャロンに斬りつけた。近衛女性部隊たちは僅かに悲鳴を上げて顔を背けた。マリアは一瞬体が動きかけたが、我慢してキャロンの様子を見ていた。そして驚く。キャロンの肩辺りに剣が入ったはずだが、赤い線が一瞬入っただけだった。やがてそれも消える。
「剣筋がなっていないな。それでは斬れるものも斬れない」
「くそっ」
エドワード王子が悔しがって叫ぶ。
「あら? 魔法は封じたんじゃないの?」
ヴィヴィアン王女が言うと、エドワード王子は剣の切っ先でキャロンの首を指した。そこには細かい文様の施されたチョーカーがあった。
「まぁ、お兄様、そんなものまで持ち出してきたの。王家の宝物じゃない」
ヴィヴィアン王女はキャロンに近づいて、首に付けられた金属のチョーカーに触れた。
「宝物庫はもう俺のものだからな。特級品を持ってきた。しかし、この女はなぜか傷つけられない」
ヴィヴィアン王女はチョーカーに触ると思い切り引っ張った。
「この「魔法封じのネックレス」をはじき返す魔法があるというの? 不可能だわ」
首がかなりきつく閉められている状況なのに、キャロンは平然としていた。さんざん引っ張ってからヴィヴィアン王女は納得したようだった。
「あなた。いったい何をしているの?」
キャロンは呆れたような顔をする。
「手の内を明かす馬鹿がいると思うか。私のことより、早くアクアやベアトリスを探しに行った方がいいんじゃないか」
「ふん。言われなくてもやっている。全員見つけたら並べて処刑してやる」
エドワード王子は吐き捨てた。
ヴィヴィアン王女はいきなり、キャロンの体のいびつな部分を手で握った。
「それにしてもこれは何?」
ヴィヴィアン王女はそれ握りつぶすかのような力で触っている。キャロンは笑みを浮かべた。
「無駄だ。私の体を傷付けることはできない。そいつを○○なら○○を下ろして、私に○○と良い。○○させてやるぞ」
キャロンはヴィヴィアン王女をあおるように卑猥で侮辱的な言葉を投げつけた。ヴィヴィアン王女はキャロンの顔を平手打ちした。
「口を慎みなさい。私は王女よ」
「馬鹿王子に変態王女か。ダグリシアで有名な二人の顔を拝めて嬉しいよ」
キャロンは全く動じずにヴィヴィアン王女を挑発するが、ヴィヴィアン王女はキャロンから離れてエドワード王子の側まで戻ってきた。
「なかなか面白い雌ね。可愛がり甲斐がありそうだわ。それより、アクアとかベアトリスって何のことなの?」
するとエドワード王子は事情を話し始めた。
「それが魔法装置のアイテムを盗み出した残りの二人だ。魔法装置には穴が開けられていてな。そこに三つの石をはめ込まないといけないらしい。一つはこの女が持っていたが、残りはアクアとベアトリスが一つずつ持っているそうだ」
「信用できるの」
「さあな。だが、魔法装置に新しく作られた穴が三つあったのは事実だ。そしてそれを作った魔術師の記録も見つけた。学者どももそれが埋まらなければ動かせないと言っていたしな。アクアとベアトリスを見つけて奪い取るしかない」
ヴィヴィアン王女はキャロンを見た。
「その仲間の居場所を隠しているってわけね。仲間思いだこと」
キャロンが笑った。
「勘違いしているようだな。私はちゃんと教えただろう。私たちは一年前に別れてから一度も会っていない。奴らの居場所など知るわけがない。ただ、拠点を変えていなければ、ベアトリスはまだこの近隣にいるだろうし、アクアはダグリシアの周辺にいるはずだ。あんたらは数だけ多いんだから、頑張れば見つけられるさ」
ヴィヴィアン王女はキャロンをじっと見ていた。キャロンもエム字開脚で固定されたまま見返す。
エドワード王子が言った。
「こういう生意気な女だ。一応はダグリシアとグレスタの周辺の町を当たっている」
「見つけられそう?」
「見つけるさ。まぁ、学者どもにはその石がなくても動かせるように研究してもらっているがな。おまえはこの女を好きにしていい。もし、有益な情報でも聞き出せたら私に知らせてくれ」
ヴィヴィアン王女は微笑む。
「良いわよ。興味が出てきたわ。傷つかないっていう体を試させてもらうわね」
「私は戻る」
そしてエドワード王子は部屋を出て行った。