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美女戦士ABCの一週間BGS  作者: 弥生えむ
第4章 喧嘩を売られたので返り討ちにしてみた
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(12)グレスタ城制圧作戦

 部隊は三百人以上の規模になった。近衛魔術師隊、近衛騎士隊、そして学者たち、エドワード王子の側近たち、料理人、そしてエドワード王子の侍女たち。

 これはグレスタ城を制圧するというよりもその先であるグレスタ城を要塞化する準備も含まれている。人員という意味ではグレスタの貴族たちを招集することもできたが、彼らは必ずしも王族に従順ではない。今回は兵器の確保であるため、エドワード王子には王宮関係者のみで進めたいという意向があった。当然このことは父親のジョージ王に伝えておらず、独断である。

 部隊はグレスタの街には入らず、付近で野営し、そのままグレスタ城に進行した。もちろんこれだけの大部隊であるため、現在のグレスタの代表からもすぐに確認があったが、エドワード王子は演習の一言で追い払った。

 その日の午前中にグレスタ城制圧隊はグレスタ城を大人数で囲んだ。

 グレスタ城は小さな城であるため、百人もいれば囲むことができる。今回は非戦闘員も連れてきているので、彼らは後方で待機している状態である。


 エドワード王子はグレスタ城の正面に立った。近衛魔術師隊が拡声の呪文を唱える。

「私はダグリス王国皇太子エドワードだ。キャロン。ここを大人しく引き渡せ。返事がないようなら突入する」

 エドワード王子は端的に言った。しかし待つつもりもないらしく、すぐに手を上げて突入の準備をさせる。するとすぐに扉が開いてキャロンが出てきた。いつもの体にフィットした皮鎧を着た出で立ちである。

「大勢のお客さんだな。私に用はない。悪いが、帰ってくれるか」

 大部隊を前にしてもキャロンは全く動じずに言った。

「おまえは王国の城を不法占拠した疑いがある。抵抗はやめろ」

 エドワード王子がいう。

「相変わらずの馬鹿王子だな。ここは正式な手続きを持って私が受け取ったものだ。おまえは無知なのか」

「貴様、私を愚弄するのか。不敬罪に当たるぞ!」

「馬鹿を馬鹿といって何が悪い。消えろ」

 キャロンはにべもない。エドワード王子が合図をすると、近衛騎士たちがキャロンを囲んだ。

「ここは私の持ち物だ。異論は許さん」

「話しても無駄か。馬鹿に言葉は通じないらしい」

 キャロンは手に持った杖をくるりと回した。周りに緊張が走る。

「これだけの騎士に囲まれて余裕だな。だがすでに魔法封じは済んでいるぞ」

 ここについてすぐにエドワード王子はこの城を囲うように魔法結界を張らせたた。これは王宮にある宝物で、王宮を魔法攻撃から守るためのものだ。もちろん持ち出しは禁じられている。今回はこれで城を囲い、魔法を遮断した。そうすると近衛魔術師隊も行動不能に陥るが、キャロンも魔法を使えなくなるだろう。エドワード王子は二年前の経験から、キャロンの攻撃魔法を恐れていた。

 キャロンは首をすくめる。

「まぁ、だとしても問題は無いのだが、無益な殺戮は好まないからな。いいぞ。城を明け渡してやろう」

 キャロンは微笑みながら言った。

「さすがのおまえも、抵抗は無理とわかったか」

 エドワード王子は少しほっとして騎士たちに合図する。もともと過剰戦力で戦意を喪失させる作戦だ。騎士たちは突然キャロンを取り押さえた。

「もう私には用はないだろう」

 キャロンは抵抗もせずにそう言うが、エドワード王子は笑みを浮かべた。キャロンは後ろから首輪を巻かれた。

「ん?」

「ふ、ははは! 油断したな、キャロン。その首輪は強力な魔法封じだ。これでおまえはただの小娘同然だ」

 エドワード王子が大笑いをする。

「なるほど。魔法の結界を残しておくと魔術師が使い物にならないからな」

 キャロンは別に困った風でもなくつぶやいた。

「そいつを城のどこかの部屋に閉じ込めておけ。行くぞ」

 エドワード王子は城の中に突入していった。


 城は小綺麗にはなっていたが閑散としていた。キャロンが一人で住んでいたため、使われている部屋は僅かだ。

 エドワード王子は近衛隊たちに城内の捜索を指示すると、自分は魔法研究者と側近を引き連れ先に進む。先導するのはレナードだ。別にレナードはこの城に詳しいということはないが、資料を読みあさっているので大体わかる。

 まっすぐ五階まで上がると、更に上階の塔の間へ進んでいった。

「ここです。ここに「エドワードの奇跡の石」を保管する台座があります。それが魔法装置の中心部です」

 レナードは声高々にいう。

「よし、いくぞ」

 部屋には余り物が置いていなかった。周りの書棚にはいくつか魔法書のような物が置いてあるが、それくらいである。大切にしている場所には見えない。

「よし、おまえたち、あの台座を調査しろ」

 魔法研究者たちは台座に群がっていく。彼らはレナードから渡されたモンテスの蔵書を研究し、この台座の部分をしっかり理解してきている。レナードは同じ魔術師でも魔法研究者とは違い実戦魔法を得意としているので、このような研究書を詳細に読み解くことはできない。

 エドワード王子は初めは目をらんらんと輝かせて彼らの行動を見ていたが、だんだん飽きてきたのか少し不機嫌になっていく。エドワード王子は基本的にせっかちなのだ。

「殿下。彼らの調査にはもう少し時間がかかるでしょう。他の部屋でお待ちになってはいかがでしょうか」

 側近の一人が言った。

「いや。ここで待つ。おい、椅子を持ってこい」

 エドワード王子は側近の一人に言う。

 その間レナードも暇になって、周りの書棚に置いてある本を手に取った。基本的に本を読むのが好きなのである。

 エドワード王子が運ばれてきた粗末な椅子に座りふんぞり返る。

「早急に調度品を整えなくてはならないな。グレスタから商人を呼べ。この大切な城をこのような状態に置いておきおって。キャロンめ、許さんぞ」

 ここは戦術基地になる予定だ。もっと豪奢でなくては行けない。

 魔法研究者たちはエドワードの王子に見張られているので必死に解読を進めるが、なかなか終わらず少しざわめき始める。エドワード王子がその様子に眉をひそめた。

「おい、どうした」

 すると一人の魔法研究者がエドワード王子の前に来た。

「申し訳ありません、殿下。「エドワードの奇跡の石」をお借りできませんか。確認したいことがあります」

「ああ、そうだったな。これはその台座に置くか。龍を招くものだがその辺は大丈夫か」

 側近からエドワード王子に箱が渡される。「エドワードの奇跡の石」は龍を招く性質があった。そのせいで二年前に龍に強奪される事件が起こってしまった。この箱は特殊な術式が組み込まれているようで、この箱にある限、石は竜をおびき寄せない。ただ、そうすると七色に輝く美しい「エドワードの奇跡の石」を飾れないため、エドワード王子は不満に思っていた。

「台座にはその箱に込められている術式と同じようなものが刻まれておりました。恐らく問題は無いでしょう」

「だとしたら、元々そのような台座を作らせれば良かったのだな。あのモンテスとか言うジジイは私を馬鹿にしていたのか」

 エドワード王子は吐き捨てる。エドワード王子から箱を渡されると、魔法研究者たちはさっそくその石を台座にはめ込んだ。そして装置を動かし始める。

「おい、まだ動かすな。何をしている!」

 思わずエドワード王子が立ち上がった。しかし、動き始めた台座の魔力はすぐに消えてしまった。

「やはり・・・」

 魔法研究者たちは台座の周囲をチェックしながら言葉を漏らした。

「どういうことだ」

 エドワード王子が台座に近づいていく。

「こちらをご覧下さい」

 魔法研究者は台座の横にある丸いくぼみを示した。

「その穴がどうした」

「これは恐らく新しく削られたものです。この魔法兵器に魔力が流れるとここで途切れてしまいます」

「くそっ、キャロンか!」

 元々魔法兵器にキャロンが気づいていたとしたら、これに細工しておくことは十分にあり得るだろう。

「すぐ塞げ」

「それが、特殊な材質が必要で、すぐには塞げません。しかも三カ所もあります」

「あの女め! すぐにキャロンを連れてこい!」

 エドワード王子は怒鳴る。

「少々お待ち下さい」

 突然レナードが口を挟んだ。皆の目がレナードの方を見る。レナードはまだ本から目を離していなかった。

「何だ。レナード」

 エドワード王子は不機嫌に言う。やっとレナードは本からエドワード王子の方に目を移した。

「この本はモンテス氏の研究書です。ちょうどその穴について書かれています。どうやら、穴を開けると同時にそれを塞ぐ為の人口魔石を三つ作ったようです」

 魔法研究者たちが近づいてきたので、大人しくレナードはその魔法書を渡した。レナードもそれ以上のことを解読するのは難しい。専門家に任せた方がいい。

「ここには他にも本がありますが、どうやらその台座の改造に付いて記されたものが多いようです。モンテス氏はここで台座改良の研究をしていたのでしょう」

「あのジジイが私の魔法兵器を台無しにする研究をしていたのか。くそっ、私が直々に殺してやれば良かった」

 魔法研究者たちは他の本も持ち出して、さっそく調査し始めた。エドワード王子もイライラしながら椅子に座り彼らの調査を待っている。全部本を奪われてしまい、レナードも暇になってしまった。そうこうしているうちに研究者の一人がエドワード王子の前に来た。

「殿下。魔石は三つあるようで、本によればすでに完成しています。特殊な術式で台座の回路は切断されているため、この石をはめ込まなければ使えません」

 エドワード王子は椅子から立ち上がる。

「ふざけた真似をしおって! どうにかならないのか!!」

「台座の設計図はわかっておりますので、一から作り直せば何とかなるかも知れません。ただ、材質が特殊なので、素材集めにはかなり時間がかかると思います」

 エドワード王子は激昂する。

「そんな暇があるか! 切断されているだけなのだろう。何とか繋げろ」

「切断面に錬金術系の魔法が使われております。すでに石が変質しており、ただ回路を繋げるということもできません。そのため魔石を使用するのですが、非常に希少な鉱物を大量に集める必要があるようです。製法はわかっていますが、すぐに作るのは難しいかと」

「モンテスのジジイができたのだろう。なぜできない」

「鉱物の量と場所が問題です。特にグレスタ湖の湖底にある鉱石を集めることはかなり困難です」

「くそっ」

 設計図もあり製法もわかっているのだから時間をかければ何とかできる。しかしいち早く魔法装置を使ってみたいエドワード王子にはそれが耐えられない。

「その石はこの城のどこかにあるのだろう。探させろ」

 レナードは口を挟んだ。

「殿下。それでしたら、キャロンを問いただすべきではないでしょうか」

 エドワード王子はレナードをにらみつけた。

「キャロン? 冒険者風情がこのような高度な魔法装置について知るわけがないだろう」

「いえ、その希少な素材集めは冒険者に依頼しないとできないことです。モンテス氏はキャロンと懇意にしておりました。キャロンがその作成に関わっていたことは間違いありません。そうだとすれば魔石の隠し場所についてもキャロンが知っているはずでしょう」

「ふむ。なるほど。彼奴らは共謀して私を馬鹿にしていたというわけか。許されんな。おい、キャロンをすぐにここに連れてこい!」

 エドワード王子は側近に命令した。


 レナードは自分で言っておきながら少しばかり違和感を感じていた。それはこの部屋に魔石の研究記録が残されていたことだ。それがなければ調査にはもっと時間がかかったに違いない。もし魔法兵器を使わせたくないのなら研究記録も隠すか滅却すべきだろう。モンテスがその前に死んだという可能性もあるが、この城を受け継いだキャロンがそれを放置しておくというのがよくわからない。

 キャロンが魔法装置に興味が無かったということだろうか。


 キャロンが縄で繋がれて引き立てられてきた。しかしいつも通りの余裕綽々という顔をしている。

「頑張っているようだな」

 キャロンはクスクスと笑う。エドワード王子がキャロンに近寄って顔面を殴った。

「何がおかしい!」

 キャロンは殴られたというのに、全く平然とした顔をしていた。エドワード王子の方が手を押さえている。

「馬鹿が右往左往しているのを見るのは楽しいぞ。喜劇俳優にでも転職したらどうだ?」

「ふざけるな! 貴様、私の魔法兵器に細工をしたな。許さんぞ」

 キャロンはぐるりと見渡し、本を見ている魔術師を見つけた。

「やはりあんたは馬鹿のようだな。あの研究書を読んだのなら細工を作ったのがモンテスだとわかるだろうに」

「やはり知っていたのだな!」

「当たり前だ。私も手伝ったのだからな」

 キャロンが言うと、今度はエドワード王子が剣を抜いた。

「許しがたい女だな。命乞いしても遅いぞ」

 キャロンは肩をすくめる。

「おやおや、知りたいことがあったから呼んだんだろうに。馬鹿だけじゃなく気も短いらしい。為政者失格だな」

 エドワード王子はキャロンに剣を振り下ろそうとする。慌てて側近が叫んだ。

「おやめください。まだ・・・」

 しかし遅かった。エドワード王子の剣はキャロンの首を切りつけた。

「ふざけおって!」

 エドワード王子は一仕事が終わったかのように剣を空で振る。

「おいおい。手の感触で切れたかどうかもわからないのか」

 エドワード王子が顔を上げると、見下したような視線のキャロンがいた。首を切ったのだから、落ちるとまで行かなくても致命傷を受けていなければいけない。それなのにキャロンの首には傷一つ無かった。

「なんだと」

 エドワード王子は疑問に思う前に、キャロンの態度に激昂して、何度もキャロンを斬りつけた。キャロンを押さえていた近衛隊たちが慌てて離れる。

 好き放題斬りまくり、やっとエドワード王子が剣を振るのを辞めて肩で息をしていると、キャロンの落ち着いた声が聞こえる。

「あーあ、もったいない」

 キャロンの鎧はぼろぼろに刻まれ、一部では肌が露出していた。しかしキャロン自体に全く怪我はない。キャロンを縛り上げていたロープもなくなってしまっている。

「どういうことだ」

 エドワード王子は唖然とするが、キャロンは笑いながら答えた。

「教える義理はない。単にあんたの腕が悪いだけかも知れないぞ」

 エドワード王子が更に斬りかかろうとすると、さすがにすぐに側近が止めた。

「殿下。彼女の体は奇妙です。まずはもう一度縛り上げてからです」

 側近が合図をすると、すぐに近衛隊がキャロンに縄をかけた。キャロンは大人しく立っている。やっとエドワード王子は落ち着きを取り戻した。キャロンを呼んだ理由に今更ながら気がついた。

「くそっ。おい、キャロン。わが魔法兵器「エドワード砲」に使う魔石のありかをいえ。三つあることはわかっているぞ」

 キャロンは一瞬怪訝な顔をするがすぐに気がつく。

「勝手に奇妙な名前をつけるな。私を笑わせる気か。その三つの魔石はモンテスからの依頼の報酬として私たちが受け取ったものだ。当然三人で分けたぞ」

「三人? まさか残りはあの二人か」

 エドワード王子がキャロンをにらむ。二年前の騒動ではキャロン一人で巻き起こしたものではない。他に二人ほどいた。

「おまえの石を渡せ」

 エドワード王子は怒鳴る。

「そうだな。土下座してお願いするなら聞いてやるぞ」

「このっ!」

 エドワード王子はまた剣を振り上げるが、そこで手を止めた。

「くそっ、馬鹿にしおって」

 キャロンはクスクスと笑っている。

「なかなかおもしろい寸劇だ。青い石は私が受け取り、ベアトリスが緑色の石、アクアが赤い石だな。結構綺麗な色の石だぞ。大きさもその穴を見れば大体わかるだろう。拳より少し小さいくらいだな」

 側近の男がはっと気がつく。

「おい、この女の部屋を探せ」

 すると近衛隊たちは慌てて部屋を出て行った。それを見てレナードの違和感は更に強くなった。なにげにキャロンが石の特徴を言ったからだ。もちろん魔法書には書いてあったのだろうが、まだ魔法研究者たちはその形状なり色なりをエドワード王子には伝えていない。キャロンがうかつだったという可能性もあるが、とてもそんな感じには見えない。

「他の仲間はどこにいる」

 エドワード王子は剣をキャロンののど元に突きつけながら言う。

「あんたらは勘違いをしているのかもしれないが、私たちは普段ソロで活動している。彼女たちと最後に一緒に行動したのは一年前モンテスの依頼を受けたときだけだ。それ以降は会っていないよ。行き先なんてわかるわけがない」

「嘘をつくな!」

 剣がキャロンの首に当たるが、やはり突き刺さるような気配はない。

「以前貴様らが不敬を働いた時も同じメンバーだっただろうが!」

 しかしキャロンはのほほんと答える。

「二年前に私たちがあんたに○○した件か? 結局あの後も私たちは別れて、一年前に再会したところだ。そもそもその前だって一年くらいは奴らに会っていない。年に一回同じ仕事をする程度の間柄だ」

「騙されんぞ。言え、奴らはどこにいる」

 エドワード王子はキャロンに詰め寄る。

「知るか。まぁ、アクアはダグリシアを拠点にしていたし、変わっていなければあの辺りだろう。ベアトリスはもう長旅はしたくないと言っていたから、案外周辺の街で仕事をしているのかもな、天下のダグリス近衛隊だ。人手はあるんだろ。頑張って探すことだな」

 その時、近衛隊の一人が部屋に飛び込んできた。

「見つけました。青い石です」

「なんだと!」

 エドワード王子はすぐにその石を受け取る。

「おお、これをどこで」

「五階の寝室です。テーブルの上に置いてありました」

「よし。でかしたぞ」

 エドワード王子は石を抱えながらキャロンを見て笑う。

「うまく隠していたようだが、無駄だったようだな」

 そして魔法研究者に渡した。

「何か仕掛けられているかも知れん。慎重に調査しろ」

「わかりました」

 魔法研究者は丁重のその石を受け取ると、さっそく魔法書と照らし合わせながら調べ始めた。

「で、用事は終わったか?」

 キャロンは澄ました顔で言う。

「まだあの二人の居場所をはいていないだろうが!」

「知らんと言っているだろう」

 エドワード王子はにやりと凶暴な笑みを浮かべた。

「おい、こいつを裸に剥け」

 すると近衛隊たちは急に元気になって、キャロンのぼろぼろの鎧を我先にと剥がしていった。キャロンは全く抵抗せず大人しく全裸にさせられる。

 近衛隊たちは感嘆と驚愕の声を上げる。感嘆はあまりにも美しくプロポーションの整った体を見たから。驚嘆はそれなのに異質な部分を見つけたから。

 エドワード王子は突然剣を振り下ろした。

「奇妙なものが付いているな。去勢してやったぞ」

「無理だろ」

 キャロンは笑う。事実エドワード王子は何も斬っていなかった。エドワード王子は舌打ちする。

「こいつを縛って好きに使え。おまえたちのおもちゃに丁度良いだろう。なぶり殺しにしてやれ」

「おおっ!」

 近衛隊たちは興奮の叫びを上げた。そしてべたべたとキャロンの体を触りながら、部屋から連れ出していった。

「ふん。後悔するといい」

 エドワード王子は自分の椅子に戻った。


 レナードはキャロンに不気味さを感じた。終始無抵抗なのもおかしいが、それよりも素直に石を渡したことが変だ。テーブルに置いていたということは隠してすらいない。もちろん、近衛隊が来たのが突然すぎて対処できていなかった可能性はある。ただ、報酬としてもらったならばかなり高価なもと理解しているだろう。それをテーブルの上にただ放置しておくだろうか。

 上機嫌のエドワード王子を見ながら、レナードは身震いした。


 キャロンは部屋に押し込まれて鎖に繋がれ、近衛隊たちの性欲処理係をやらされた。もっともキャロンは性的に奔放な方だし、男たちを虜にして楽しむタイプだ。むしろ喜んで男たちを手玉に取っていた。暴力的な行為を行う奴もいるが、キャロンは全く怪我をすることもないし、痛がることもない。キャロンは身動きが取れなくとも楽しげに彼らの行為に身を任せていた。

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