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美女戦士ABCの一週間BGS  作者: 弥生えむ
第4章 喧嘩を売られたので返り討ちにしてみた

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(2)二年前-マリア2

 その日の午後、急遽ヴィヴィアン王女による選抜試験が行われることになった。呼ばれた近衛隊の女性隊員は全員で二十四名。平民はマリアを含めて三人だけだった。

 今年入隊したばかりのプリクルは顔が輝いている。マリアは彼女が辱めの洗礼を受けていないからだと分かっていた。平民は十五歳で入隊してくる。そんな何も知らない娘が男社会に入ればどうなるのかは分かるというものだ。

 もう一人のスティッカは二年前に入隊した平民で表情が死んでいた。日常的に男たちにひどい目に遭わされていることが分かる。マリアはスティッカを初め、平民女性の相談窓口になっているが、第一近衛隊副長という立場であるため常に彼女たちを保護するわけにもいかず、性的被害はなくならない。第二近衛隊所属のスティッカもマリアに何度も相談したことがある。スティッカは貧しい家族を抱えているため、給料のいい近衛隊から逃げ出すのをためらっていたが、そろそろ限界が来ていた。日々の訓練には付いていけないし、普段から奴隷のように扱われ、隙を見せると性的乱暴を加えられる。身も心もぼろぼろだった。

 それ以外は全員貴族の娘だった。十八歳から二十三歳くらいまで。それ以上の娘がいないのはそのくらいになると結婚して除隊するからである。

 今年入隊した新人の六名は多少期待感のある目をしているが、残りの近衛隊員は少し怯えていた。つい昨日のでき事はすでに近衛隊の女性たちに共有されていた。


 ヴィヴィアン王女の背後には整った顔立ちだが屈強な体付きの騎士が五人控えていた。ヴィヴィアン王女の護衛のようだった。

 ヴィヴィアン王女は皆を見渡しながら言った。

「近衛隊を改革することにしたわ。新しく発足させる近衛女性部隊の隊長ヴィヴィアンよ。名前の通り、女性のみで編制する部隊になるわね。そして仕事は私の護衛とサポート。今後女性が近衛隊になるとしたら私の直属以外にないわ」

 ヴィヴィアン王女直属の部隊ということで貴族の近衛隊たちは顔を輝かせた。貴族の娘が王女のお付きになれるというのは、かなり出世したことになる。一方、平民の方はよくわからないといった顔だ。

 ヴィヴィアン王女は口元に笑みを浮かべた。

「でも私の部隊に無能者はいらないわ。悪いけど実力を試させてもらうわね。私が認める水準に達していない者は近衛隊をクビよ」

 全員が顔を見合わせる。新人にとっては受け入れられない事態だ。近衛隊は、学園でそれなりに魔法が得意だったり戦いが得意だったりすれば入隊でき、結婚まで給料をもらいながら過ごせる場所である。あまり人気が無いとはいえ、定員の許す限り希望すれば誰でも入隊できた。それがこれから選抜されるって事になる。つまり、入隊して三日でクビになる可能性があるのだ。

 だが、誰も怖くて意見は言えない。相手は姫殿下である。

 ヴィヴィアン王女は続けた。

「まず魔術師は前に出なさい」

 すると八人ほどが前に出た。全員貴族の娘だった。


 ヴィヴィアン王女は彼女たちを見て言う。

「防御魔法は使えるわね。これから雷の矢を打ち込むわ。それを防御しなさい。本気でやらないと、死ぬわよ」

 皆がゴクリと唾を飲み込んだ。マリアは内心ヴィヴィアン王女が魔法を使えることに驚いていた。昨日の一件からてっきり戦士だと思っていたのだ。

「じゃあ、右の人から前に出なさい」

 恐る恐る一人の女性が前に出る。

「さぁ、準備しなさい」

 そしてヴィヴィアン王女は呪文を唱え始めた。慌ててその魔術師も呪文を唱え始める。

「シールド」

「エレキショット」

 ほぼ同時に呪文が完成する。近衛魔術師の差し出された両手の前に白い壁が現れると同時に、ヴィヴィアン王女が放った光の線が到達した。

「きゃっ」

 シールドは簡単に砕けて、攻撃を受けた彼女は後ろに吹き飛ばされた。

「サリー!」

 他の子たちが彼女に駆け寄る。サリーは両手で雷を受けたので、両腕を痛めていた。胸に当たっていれば死んでいたかも知れない。

「当たり所が悪くなければ平気でしょ。痛いだけよ。治癒魔法くらい自分で使いなさい。ほら、次!」

 しかし、ヴィヴィアン王女は全く動じずに続ける。

 本当のエレキショットであれば、体が焼け焦げるはずだが、ヴィヴィアン王女が放ったエレキショットは衝撃の方に力点が置かれているようだ。それでも、学園を卒業したばかりのサリーに防げるものではない。

 次の魔術師がすぐに立って呪文を唱える。少しでも遅れればシールドが間に合わない可能性がある。

 結果はほぼ全員同じだった。卒業したばかりの三人はほとんど衝撃を抑えられずに飛ばされた。近衛隊で訓練をしていた五人も多少ましとは言え、吹き飛ばされることに変わりは無かった。一人はシールドが間に合わずにもろに胸で受けてしまいぴくりとも動かなくなった。慌てて年長の魔術師が回復魔法を唱えて、何とか息を吹き返した。

 全てが終わると、死屍累々という状態だった。皆強い衝撃を受けて、体が痺れてしまい立ち上がれない。

 ヴィヴィアン王女はフンと鼻を鳴らす。

「全然ダメね。その程度で、近衛隊を名乗った罰よ。全員裸になりなさい」

 いきなりのことにそこにいた全員が目を丸くする。この部屋には男がいる。罰だからといわれても脱ぐことには躊躇する。

「二度言わせるつもり」

 しかしヴィヴィアン王女は表情を変えない。すると、慌てて魔術師たちは服を脱ぎ始めた。痺れた体でなかなかうまくいかないようだが、何とかみんな全裸になった。そして、手で体を隠して震えている。

「しっかり立ちなさい」

 そんな屈辱的な命令をしてから、今度は残りの近衛隊たちに顔を向けた。

「次はあなたたちね。剣を渡すから私と打ち合いなさい。手加減の必要はないわよ」

 また緊張が走る。

「じゃあ、端の人から」

 ヴィヴィアン王女が言うと、一人の女性騎士が震えながら剣を取った。そしてリンチが始まった。

 たいていの女性騎士たちはやられっぱなしだった。一応は打ち合えるがほぼ圧倒されて倒され、頭をふまれたり蹴り飛ばされたりする。そもそも王女に対して剣を向けること自体に抵抗があるし、ヴィヴィアン王女の実力もあるので、結果は分かりきっている。

「全然ダメ。はい、つぎ」

 次々とヴィヴィアン王女は近衛隊たちを打ち倒していった。貴族の女性たちは全員倒れてうめいている。最後に残ったのはマリアを初めとする三人の平民だけだった。


 まずマリアが前に出た。しかしヴィヴィアン王女は首を振る。

「マリア、あなたは最後よ。他の二人から来なさい」

 仕方がなくマリアは下がった。マリアとしてはヴィヴィアン王女を少し疲れさせておきたかったので、先に戦いたかった。何しろ平民たちの実力なんて、貴族の女性たち以下なのだ。まともにやり合えるわけはない。

 そして、予想通り、平民の二人プリクルとスティッカは更にひどい状態にされた。剣を合わせる間もなく剣をはじき飛ばされ、何度も蹴り転がされた。二人の平民は身動きができないほどに叩きのめされた。

 どうやら、ヴィヴィアン王女はそういう嗜好の持ち主らしい。嬉々として女たちを痛めつけている。


 とうとうマリアの番になった。マリアは悩んでいた。相手から興味を持たれないように振る舞うのがいつものやり方である。今回は勝つわけにはいかないから、とっとと負けた方がいいのだろう。しかし手を抜けばバレる可能性もある。

 ただ、マリアは自分が迷っている振りをしているだけだとわかっていた。マリアは、ヴィヴィアン王女が近衛隊の女性たちをここまで痛めつけたことに怒りを感じていた。以前までは曲がりなりにも自分の部下だった者もいる。それをこんなに一方的に傷つけられるとさすがに腹が立つ。

「最後はマリアね。言っておくけど、手を抜いたら首をはねるわよ」

 ヴィヴィアン王女は連戦にもかかわらずまだ余裕があるようだった。

「わかりました」

 そしてマリアは剣を取った。

 マリアとヴィヴィアン王女は激しく剣を打ち合う。ヴィヴィアン王女の顔にどんどん喜悦の表情が浮かんできた。サディストであるだけじゃなく戦闘狂でもあるようだ。マリアはヴィヴィアン王女の剣を受けながらもあまり積極的に攻撃しなかった。相手の実力を見定めようと思ったからだ。

 ヴィヴィアン王女はかなりの技量持ちで様々な技を打ち出してきた。しっかりと剣術を身につけていることがわかる。周りから見ればマリアの防戦一方に見えたはずだ。

 しかしマリアはヴィヴィアン王女の実力を読み切ってしまった。所詮、彼女は訓練所で優秀という程度の実力なのだ。実践などしたことがないのだろう。訓練所では天才かも知れないが、この程度ならマリアが本気で打ち返せば一瞬で終わらせられる。

 ヴィヴィアン王女は激しく打ち合いを続けた後、マリアから少し距離を取った。ヴィヴィアン王女は激しく息を乱していた。もう笑っていない。ヴィヴィアン王女はマリアの防御を破れないことに怒りを覚えていた。今までヴィヴィアン王女はこんなに手こずったことがなかった。しかもマリアは息を乱していない。以前師範からも一本取れたトリッキーな技を駆使しても容易に防がれてしまう。

 こうなったら・・・。ヴィヴィアン王女は呪文を唱えようとした。


「今度は私から行かせてもらいます」

 その時、いきなりマリアは打ちかかっていった。ヴィヴィアン王女は慌てて呪文をやめ、相手の攻撃を見極めようとする。すると、振りかぶった脇に隙を見つけた。ヴィヴィアン王女は目を見開き、マリアに打たれる前に左脇に剣を打ち付けた。マリアが後ろに跳んだのでヴィヴィアン王女は追い打ちをかけようとしたが、その目の前に剣が降ろされてきて驚いて後ろに引き、尻餅をつきそうになった。

 マリアは大きく後ろに飛ばされて倒れていた。そしてうめくように言う。

「参りました」

 ヴィヴィアン王女はとっさに体勢を整えると、息を整えながら言った。

「ふん、なかなかやるわね。私ほどじゃないけど」

 そして女性戦士たちに言う。

「全員裸になって立ちなさい」

 もう誰も逆らわなかった。全員鎧を外し服を脱いでいった。マリアも何とか立ち上がり、鎧をはずそうとする。しかし、ヴィヴィアン王女はマリアに言った。

「マリアは脱がなくていい」


 ヴィヴィアン王女は全員を脱がして何をしたかったのか。それは性的な拷問だった。女性たちはヴィヴィアン王女直々に体をさんざんいたぶられた。全員の陵辱が終わるとみんな涙顔になっていた。ヴィヴィアン王女だけが嬉しそうだ。

「人数が多くて疲れたわ。でも、なかなかいい顔になったわね。本当は全員不合格にしたいところだけど、それじゃ、私が困るわ。じゃあ、次は全員にアピールしてもらおうかしら。私が気に入ったら取り立ててあげる。その代わり、ダメだった子は、罰を受けてもらうわよ。そのために彼らがいるのだからね」

 ヴィヴィアン王女は後ろで黙って控えている男たちを見た。女性たちから小さく悲鳴が上がった。次は今以上の辱めが待っていると分かったからだ。

 そしてまた、女性たちは破廉恥な姿を見せなくてはいけなかった。これは精神的な拷問である。ヴィヴィアン王女は興奮した顔で女性たちを見ていたが、やがてマリアの側に戻った。

「もういいわ。さて、選ぶわね」

 ヴィヴィアン王女はどうでもいいというふうな態度で平民二人を指さす。

「あなたたち、二人が不合格よ」

 二人の平民女性の悲鳴が上がった。反対に、貴族女性たちは安堵した顔になる。初めからそのつもりだったのだろう。すなわち今までの選別もどきはすべて茶番だったのである。

「皆は服を着てこちらに来なさい」

 貴族の女性たちは安心して素早く服を身につけていった。残った平民二人の顔に絶望が浮かぶ。この先の展開は想像が付く。そのための男たちなのだから。

「姫様。私はどうしたらよいですか」

 マリアはヴィヴィアン王女が次の命令を出す前に尋ねた。

「あら、あなたは初めから私の部隊よ。今朝言ったでしょう」

 マリアは唇を噛む。どうやら自分は参加させてもらえないらしい。自分がいれば彼女たちの負担が少しは減っただろう。


 ヴィヴィアン王女は控えている男たちに言った。

「あなたたち、彼女たちを○○しなさい」

 その後行われたのは目を覆いたくなるほどの激しい陵辱だった。

 ヴィヴィアン王女はうっとりとした顔をしてその光景を見ていた。その一方で近衛隊の女性たちは青い顔をしていた。もしかしたら自分たちもあんな目に遭っていたかも知れないのだ。

 陵辱はなかなか終わらない。近衛隊の女性たちは目を伏せているが、マリアは我慢して彼女たちを見ていた。この行為を止めることはできないが、もし彼女たちが殺されそうになったらさすがに手を出すつもりだった。すると、いきなりヴィヴィアン王女がマリアを見た。

「マリア、あなたも男枠で取ったんだから、彼女たちを○○しに行きなさい」

「男枠?」

 マリアは驚く。ヴィヴィアン王女は面白そうにマリアにほほえみかける。

「あら、自分が女扱いされるとでも思ったの。あなたはどう見ても男でしょ。近衛女性部隊の唯一の男として、しっかり働いてもらうわよ」

 マリアは愕然としたが、むしろ好都合だとも思った。自分が参加すれば少しは彼女たちをサポートできる。マリアはすぐに服を脱いでいった。近衛隊の女性たちもマリアに注目している。恥ずかしげも無く全裸になったマリアを見て、皆の顔があっけにとられたようになる。

「ぷっ」

 誰かの声が漏れた。

 マリアの裸はかなりいびつで、汚らしい。

 マリアは筋肉質だが、それは女性が筋肉をつけたとは思えない醜い筋肉の盛り上がりだった。しかも肌の色も黒く、日焼けでぼろぼろ。もちろんむだ毛の処理など一切していないから女ながらにすね毛すら生えているのに、髪は男の隊員以上に短髪である。

 もちろんわざとである。マリアは十五歳で入隊してから近衛隊の男たちに○○され続けた。それに抵抗するために体を鍛え、強くなった。そのかいも合って、近衛隊の男たちには抵抗できるようになったが、その後は貴族に呼ばれるようになった。貴族からの指名だと性接待を断ることはできない。そのため、マリアは自分の体を汚くするように心がけた。貴族が相手をしたくないような不細工な体になれば呼ばれなくなると考えたのだ。髪を短くしているのも、むだ毛の処理をしないのもそのためだ。

 おかげで、貴族に呼ばれて脱がされると、だいたい笑われるようになった。そしてさんざん笑いものにされたあと、何もされずに返されるということが増えた。


 だんだん笑い声は連鎖していく。ヴィヴィアン王女ですら、口を手で押さえて肩をふるわせている。しかし限界が来たようだ。ヴィヴィアン王女が大声で笑い出す。

「な、何なの。その体。女でも男でもないわ。ゴリラかしら」

 近衛隊の女性たちも大笑いを始めた。

 もう慣れっこであるマリアはそのまま、男たちの方に行こうとする。向こうの男たちもマリアを見ていた。彼らは笑っていなかったが、なんか不気味な物でも見たような顔をしていた。

「ちょっと待ちなさい。マリア」

 マリアはヴィヴィアン王女の方を見る。するとまたヴィヴィアン王女は笑い出す。どうやら壺に入ってしまったようで、涙を流しながら笑っている。

「その毛むくじゃらの体を何とかしなさい。おしりにまで毛が生えているじゃない」

「申しわけありません」

「すね毛もひどいわね。ちょっと手を上げて」

 私が腕を上げるとまた、ヴィヴィアン王女は口を押さえて笑う。

「やっぱり。脇の毛くらい処理しておきなさい」

「はい」

 これもよく貴族たちに言われていた。少しは女らしくしろと、当然そんな言いつけを守ったことなど無い。

「髪も短すぎるわ。その坊主頭はどうにかしなさい」

「もう少し伸ばすようにします」

「そうね。初めから思っていたけど、あなたはあまりにも私の部隊にふさわしくないわ。もっと小綺麗にしてもらわないとね」

 ふさわしくないならクビにしてくれ、とマリアは思うが、口には出せない。ヴィヴィアン王女はやっと笑いが収まったようだ。

「マリア、もう服を着ていいわ」

 マリアを見るとまた笑いそうになるらしく、必死でヴィヴィアン王女はマリアから目を背けている。

 マリアは素直に服を着た。ヴィヴィアン王女は笑いをこらえながら続けた。

「マリアのせいで、興が冷めてしまったわ。もうお仕置きは終わりよ。あなたたち、戻りなさい」

 男たちはじっとこちらを見ていた。彼らももうすでに興が冷めているだろう。彼らはすぐに平民の女性たちから離れて戻ってきた。そして服を着始める。

 残ったのは裸ん坊で倒れたままの平民二人。

「マリア、あの二人を追い出して。服なんて着せなくていいから」

「わかりました」

 マリアは倒れたまま動かない二人に近づいていった。そして片腕に一人ずつ彼女たちを抱え上げると、ヴィヴィアン王女に礼をして部屋を出た。


 部屋を出たところで、彼女たちを降ろし、足で立たせる。彼女たちは表情を失ったまま涙を流していた。特にプリクルは初めての経験だったようだ。こんな形で奪われて、心が壊れそうになっていた。

 マリアは二人に声をかけずに彼女たちの背中を抱いて歩き出した。

 宮使いの男や女たちがこちらを見てなにかぎょっとした顔をしていた。しかしそれ以上の騒ぎにはならない。

 マリアは近くにいた侍女を呼んだ。

「あの、何でしょうか。あなたはどなたですか」

 彼女はいぶかしげに尋ねる。

「私は姫様付きの近衛女性部隊の隊員だ。彼女たちを洗って、古着を着せて裏口から外に追い出してくれ」

「えっ。それは姫様の指示ですか?」

「私は姫様直属の部下だ。なにか疑問でもあるのか」

 マリアはその侍女をにらみつける。その侍女は少し怯えた顔をした。

「嫌なら。その旨を姫様に伝えておこう」

 すると明らかに侍女の顔がゆがんだ。

「や、やめてください。そんなことされたら、私が・・・。わかりました。すぐに用意します」

 そして彼女は仲間の侍女を呼ぶと、全裸の平民女性を連れていった。

 マリアは彼女たちを見送ると、王宮内を少し見回って時間を潰してから、ヴィヴィアン王女のいる部屋に戻った。


 そうしてマリアの近衛女性部隊生活が始まった。

 近衛女性部隊の仕事はヴィヴィアン王女の護衛とサポートということになっている。だが、実際はヴィヴィアン王女が公務の時に二人程度付き従うくらいである。ヴィヴィアン王女の方が強いのだからそもそも護衛など必要ないし、仕事上のサポートは侍女がしっかりやっている。

 近衛女性部隊は他の近衛隊と違い、王宮警備や街警備、市街の見回りなどという仕事は与えられていない。せいぜいヴィヴィアン王女が気まぐれで街を巡回したり、遠征に出たりするのに付いていくだけだった。そのため、近衛女性部隊のほとんどの時間は訓練に費やされることになる。

 ヴィヴィアン王女は公務よりも武術や魔法が好きなので、訓練にも積極的に参加して部隊員たちをぼろぼろになるまでしごきまくる。ヴィヴィアン王女は痛めつけても大丈夫な人間を集めるために近衛女性部隊を設立したようなものなのだ。彼女たちに実務など求めていなかった。


 近衛女性部隊は、貴族の女子であっても、実家で寝泊まりすることを禁じられた。だから、全員がヴィヴィアン王女の部屋の側に住まされた。良くいえば王宮生活ができるのであるが、それを喜ばしいと思う人はいなかった。自由があるわけでは無いのだ。

 マリアも同様だ。いや、もっとひどい。なぜなら、マリアはヴィヴィアン王女の部屋に住むことになったのである。王族のそばに侍女でも無い平民がいること自体が異常事態である。もちろんヴィヴィアン王女の嫌がらせだ。ヴィヴィアン王女はマリアが意外としたたかな人間だと気づいており、目を離すと何か理由をつけて逃げてしまう可能性があると考えたのである。

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