絨毯で眠る少女
秋も深まり、日に日に寒くなってくる季節。とある森に少女と母親が暮らしていました。
「赤ずきん、私の可愛い赤ずきん。おばあさんの家にパンを持っていておくれ」
そう言って、お母さんは赤ずきんに大量のパンの入った籠を渡しました。
「あぁ、忘れていわ。最近この付近に狼が出るようなの。だから気をつけて行くのよ」
赤ずきんはコクリと頷くと家を出ました。扉を閉めると鍵を閉める音が聞こえ中からお母様の声が聞こえます。
あぁ、今日も寒い。なんでこんなに寒いのでしょうか。
あぁ、おばあさんの家はまだ遠い。
◇
赤ずきんが歩いていると前から猟銃を携えた猟師のおじいさんが現れました。
「やぁ、赤ずきん。今日はどうしたんだい?」
赤ずきんは猟師のおじいさんにおばあさんの家にパンを届けていると伝えました。
猟師のおじいさんは白い髭を撫でながら赤ずきんの話を聞いています。
「そうか、赤ずきん。気をつけて行くんだよ。あぁ、そうだ、花畑に近づいちゃあダメだよ。狼が出るからね」
猟師のおじいさんと別れた赤ずきんはおばあさんの家を目指してまた歩き始めました。
あぁ、寒い。体の芯が凍ってしまいそうです。
◇
赤ずきんは体を震わせ歩いていました。
気づくと猟師のおじいさんの言っていた花畑にいました。
どうやら、途中で道を間違えたようです。
赤ずきんは来た道を戻ろうと後ろを振り向きました。 するとそこには大きな狼がいるではありませんか。
驚きのあまり赤ずきんは尻餅をついてしまいました。
「やぁ、赤ずきん。僕は悪い狼じゃないよ。だから怖がらないで欲しい。さぁ、立って。どこも怪我してないかい?」
そういうと狼は赤ずきんに前足を差し出しました。赤ずきんが手を掴むと狼は優しく立ち上がらせてくれます。
「赤ずきん。こんな何もないところに何しにきたんだい? もし僕が悪い狼だったら今頃襲われていたよ」
赤ずきんは土を払い狼にお礼を言いました。
そして、ここにいる理由を説明しました。
「なるほど、お婆さんのお家に向かっていたら道を間違えてここにきてしまったんだね」
狼は赤ずきんの話を頷きながら聞いていました。
赤ずきんは来た道を戻ることを狼に告げると狼は言いました。
「そうだ、お婆さんのお土産に秋桜を一つ積んで行ったらどうだい? この先に行くとたくさん咲いているんだ。え? お婆さんの様子が心配だからそんな暇はない? なら、僕がお婆さんの様子を見てきてあげよう」
それならと渋々赤ずきんはお婆さんの家の場所を狼に教えてしまいました。
狼はすぐに戻ると言いお婆さんの家がある方に向かっていきます。
赤ずきんはとりあえず狼に教えてもらった通り道を進んでいきました。
少しすると狼の言った通り沢山の秋桜が咲き誇っているではありませんか。
赤ずきんは美しい景色を見てお婆さんに秋桜で編んだ冠を作っていこうと思いつきました。
赤ずきんは近くにあった切り株に腰掛けせっせと冠を編んでいきます。
秋桜の冠を作り終え、気がつくと日が沈み始めてました。赤ずきんは慌ててお婆さんのお家に向かいました。
お婆さんのお家に着く頃にはすっかり日も暮れ真っ黒になっていました。
赤ずきんは扉をトン、トン、トンと三度ノックします。
すると中からお婆さんのくぐもった声が聞こえてきました。
「おぉ、赤ずきんかい? 鍵は開いているからお入りなさい」
扉をあけて赤すぎんは家の中に入ります。
中に入ってみるとお婆さんは台所でお肉を切っていました。赤ずきんがお婆さんの元へ行くとお婆さんは手を止めて振り返りました。
「おぉ、赤ずきん。よくきたねぇ」
お婆さんに遅くなった訳を話し赤ずきんは籠と秋桜で編んだ冠を渡しました。
お婆さんはとても嬉しそうに受け取ると赤ずきんの頭を撫でます。
「ありがとうねぇ。そうだ、赤ずきんや今日は泊まっていきなさい」
そういうとお婆さんは玄関の鍵を閉めてしまいました。赤ずきんは少しずつですが違和感を感じていました。
赤ずきんは違和感をただの気のせいだと思うことにしました。
「赤ずきんやこのお肉は美味しいかい?」
お婆さんの用意したお肉料理を一口食べた赤ずきんはあまりの肉の臭さにむせそうになりましたが折角お婆さんが作ってくれた物を吐き出すわけにはいかないと無理やり飲み込みました。
「このトマトのジュースも美味しいからお飲み」
赤ずきんはトマトジュースを受け取ります。 さぁ、飲もうとコップを手に取った時でした。ジュースが生臭く。まるで血のような匂いがするではありませんか。
赤ずきんはトマトジュースが腐っていることを伝えようとお婆さんの方を見るとお婆さんはとても美味しそうに飲んでいました。
「どうしたんだい? こんなにも美味しいんだから沢山お飲み」
ニコニコと笑いながら見てくるお婆さんを悲しませたくないという思いから赤ずきんはトマトジュースを一口で飲み干してしまいました。
「美味しいかい?」
赤ずきんは顔お真っ青にさせながら頷くとお婆さんは嬉しそうに頷きました。
「おや? 顔が青いじゃないか。風邪でも引いてるのかい? 倒れちゃいけない。ベットにお入り」
そういうとお婆さんは赤ずきんを抱えあげベットへ連れて行きました
途中赤ずきんはお婆さんに質問をしました。
――お婆さん。どうしてこんなに手が大きいの?
「それはね。赤ずきんをこうやって抱きかかえるためさ」
――お婆さん。どうしてこんなに毛深いの?
「それはね。赤ずきんを温めるためさ」
――お婆さん。どうしてこんなに耳が大きいの?
「それはね。お前の声をよく聞くためさ」
――最後に質問。どうしてお婆さんの口が裂けてるの?
「それはね。お前を喰うためさ」
そういうとお婆さんの体は裂け。中から先ほど出会った狼が出てきました。
赤すぎんが驚きのあまりベットから動けずにいると狼は舌舐めずりをしながら徐々に近づいてきます。
「赤すぎん。お前が食べた料理と飲んだジュースは婆さんだよぉ」
それを聞いた瞬間赤すぎんは胃の中の物を全て吐き出してしまいました。
吐く赤ずきんを見て狼はニタニタと笑っています。
「おやぁー? 赤すぎん。逃げないでいいのかい。お婆さんみたいになりたくはないだろぉ」
赤ずきんはなんとか立ち上がるとジリジリ近づいてくる狼から逃げ出そうとしましたが狼に捕まえられてしまいました。
「ざぁんねぇん。それじゃあ、いただきます」
狼は大きく口を開けると鋭利な牙を赤ずきんの頭目掛けて振りかざしました。
「が……ふっ……」
床に赤い液体がぽつぽつと滴り落ちる。
何が起きたのかわからない狼は赤ずきんを離しました。
床に倒れた赤ずきんの手には真っ赤に染まったナイフが握られていました。
「こ……この、クソが……き」
赤ずきんはトドメと言わんばかりにナイフを狼に突き立て狼を殺してしまいました。
狼が絶命した後も赤すぎんは何度も何度も何度も繰り返しナイフを突き立てます。
ナイフが刺さる度に血が溢れ部屋中を真っ赤に染めます。
ふと、赤ずきんは自分が寒さに震えていないことに気付きました。自分が血に染まるたびに身体が暖まるのです。
赤ずきんは何度も何度も身体を温めるために狼の死体にナイフを突き刺しました。
「あぁ、寒くないわ」
後日、いつまでたっても帰って来ない赤ずきんを心配したお母さんはお婆さんのお家へ向かいました。
そこで、お母さんが見たのは真っ赤に染まった部屋で幸せそうに眠る愛娘と見るも無惨な姿になった狼の死体でしたとさ。
Merry bad end:絨毯で眠る少女
この作品は三年前某コミティアに参加した際に書いた物語です。
ちなみに無料配布分でね。どうせならこの作品が世に存在したっていう証明として公開いたしました。