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移動計画

第2章

 (ここは…どこ?赤ちゃんって…さっき、連れられて行かれたは?頭が混乱している…)


 ジャルは、赤ちゃんを、レノミンの膝に乗せレノミンの肩を抱いて、はなし始め、彼女が泣いているのが伝わってくる。


 「お嬢様、ありがとうございます。このようなお辛い出産を承諾してくださいました。それは領民、領主様の為と私たちは存じております。そして、私たちはずっと領主様の部下でした」


 「莫大な借金は、前領主による物で、決してお父様が作られてものではありません。領主様は、とても優秀でいらして、後一歩で完済されるはずでした。その為に、私たち5人も頑張ってきました」


 「しかし…領主様が突然の病にかかり、跡取りの男子がいない為、領地が没収される事は明白でした」


 「そのような時、国王からの突然の申し出…、領主様は大変反対されましたが、どんなに探しても、私たちには、他の方法が見つかりませんでした」


 「お嬢様、本当に、ありがとうございます。私たちを信じて、そばに置いて下さいました。それに、答える為に私たちは全力でお嬢様をお守りする決意をいたしました」


 その後、ミンクが話し出す。


 「お嬢様、お嬢様は双子をご懐妊されていました。こちらの可愛い女の赤ちゃんは、お嬢様のお子さんです。紹介が遅れましたが私は医師です。最初にお腹にふたり宿していると気が付いた時、それは驚きでしたが、喜びでもありました」

 

 「王宮の医師は、お嬢様を王妃と思い込んでいましたので、余り体に触れることは致しませんでした。その為、気づかない無能な医師たちでもありましたが、今は幸運だったと思います」


 「出産の時に、私たちも分娩室に入り、元気な男の子の誕生を見届け、周りが浮足立って、国王のもとに皇子を連れて行きました。その為、その後のすべて私とジャルが引き受けました」


 「ふっ、でも、計画通りでした。無能な医師たちはお嬢様を置いて走り、自分の手柄の報告に向かったのでした」ミンクは怒りに震えながら話を続ける。


 「その後、無事、女のお子様をご出産されて、先ずは赤ちゃんを城外のバルトに預けました。そして、まだ、目覚めていないお嬢様を荷物箱に入れ、私たちは宮殿を去りました。お嬢様や赤ちゃんの事も考えてあまり遠くには行けませんので、あらかじめ用意しておいた王都内のこの部屋にお連れしました」


 レノミンは小さな声で、


 「そんなことをして、大丈夫…?」

 

 「お嬢様、ありがとうございます。出産の時も私たちの名前を呼んでいただきました。もう、話をされても大丈夫ですよ」


 「大丈夫です。私たちが逃げ延びた後に、サンドロがお嬢様の使っていた部屋を爆破しました。お嬢様はご存じないでしょうが、私たちの部屋は宮殿からは遠く離れた場所で機械室の隣にあるような粗末な部屋だったのです」


 「その機械室の事故と言うことで、きっと片付けられるでしょう。どちらにしても国王が1ケ月はゆっくりしてと言う言葉は幻でしょう」


 レノミンは涙を浮かべて二人の顔を見ている。


 「……そうです。多分、出産後は殺されてしまうと思っていました。お嬢様も私たちも…。念の為に動物の骨などを撒いておきましたが、あの部屋は、木っ端ミジンの手はず、サンドロが、手掛かり一つも残すわけがありません」


 「お嬢様、いえ、レノミン領主様、小さいお嬢様に名前とお乳を差し上げましょう」


 言われるままに赤ん坊にお乳を与え、疲れたのかそのまま眠ってしまった。頭の中では、もう一人の男の子は、誰に、お乳をもらっているのかと、考えていた。


 何度か、誰かが、自分の胸元を解いていると思いながらも熟睡してしまった。母親失格だ。


 次の朝に、目が覚めて、隣をのぞくと、可愛い赤ん坊が本当に自分の近くで眠っていた。


 名前を付けなくては…可愛い、可愛い過ぎる、名前は…何がいいかなぁ?


 自分の好きな女優さんだと…グレースとかいいなぁ…美しい…自分で名付けられるのなら、グレースでも大丈夫なはず…グレースにしよう!!


 そういえば、自分の顔を、鏡でそんなに見ていなかった。


 いつも身の回りは、侍女たちが仕上げてくれていたので、産後は悲惨なのか?鏡で見てみよう。鏡の前に行き…

 (いやいや…前世よりもはるかに美しい…若い、お腹はタプタプしているが肩とかは薄っぺらで、手首も細い、スカートを挙げて…やっぱり、足も細い。これなら、グレースでOKでは?)


 トントン、

 「レノミン様、おはようございます。起きられて大丈夫ですか?」


 頷いて、

 「グレースにしました」と囁く。

 

 「グレース様ですね。なんて、可愛いお名前です。かしこまりました。朝食の後に他の3人も紹介します。グレース様は、大人しくて愛らしいです。我が領の宝ですね」


 自分の子供が褒められるのはなんて嬉しい事だとも思った。その後、男性3人が呼ばれて、紹介された。


 年齢は教えて貰えなかったが30歳にはなっていない感じの3人だった。

 

 3人とも剣術は素晴らしく、バルトは財政を立て直すことに信念を燃やして、サンドロは機械関係が得意で爆破はお手の物だった。


 ギシは物知りでどんな事も直ちに答えられるようにしている。ミンクは医師で多彩、応用が利く女子、ジャルは空を飛べるような能力を持つ運動神経抜群な女子だった。


 その5人がレノミンの前で膝をつく、


 「レノミン様、私たち5人は領主様に拾われ、育てて頂きました。本来なら領主様と一緒に、お嬢様の幸福の為に尽力しているはずでした。しかし、今回、尽力されたのはお嬢様です。ありがとうございました。そして、これからは私たちが全力でレノミン様とグレース様をお守りしていきます」


 何が何だかわからないが、立ち上がってレノミンも頭を下げた。


 「レノミン様、これからは私たちに、頭を下げないでください。レノミン様とグレース様が私たちの主です」


 うん、うん、と頷く、

 「これからの計画をお話ししてもよろしいですか?」


 うん、うん、と頷く

 「お二人の体調を見ながらコチャ領にもどりますが、最初のこの家はレノミン様の持ち物になっていますので、多少危険が伴います。それで、今日、グレース様の名義の変更を行いますがなるべく早く、次の所に移動して行きたいです。これから立ち寄る家は、すべてレノミン様の名義で購入してありますが、すべてをグレース様の名義に、変更をお願いできますか?」


 「国王は、これから1ケ月は、皇子の誕生で王宮を出られない程の祝賀が目白押しでしょう。国王がレノミン様をお探しになることは無いと思いますが、安全の為です」


 「私たちの名義で、領主さまのお金を使うことは出来ませんでしたので、レノミン様のお名前をお借りしました」


 「グレース様は、もちろんファースト家の戸籍に入り、国王が、前回、確約した、女性でも領主を認めると言う密約に基づきファース家の次期領主となります。ですので、国王に、知られない名前のグレース様の名義の方が安全だと判断しました。信じていただけますか?」


 (信じるも、まだ、お腹が痛いし、右も左もわからないので…この5人に賭けようと思い。)


 うん、うん、と頷く、

 「ありがとうございます。すべての名義変更に数日かかりますが、その後は体調次第でのんびり帰りましょう」


 「あのう…」


 「はい、そうですね、領土の屋敷の方は、現在は家令が守っていますが、家令も今回の事を知っていますので、そのまま屋敷を守る手配になっています」


 「この後、私たちが目指すのは、レノミン様がお好きだった湖畔の別荘になります。対外的には家令が屋敷で采配を振るい、お嬢様は、別荘で静養する形で、グレース様が、学校に上がれるまでしたいと思っています。その為、領主様がお亡くなりになって、使用人もだいぶ減らしました。」


 「しかし、ダリアは、湖畔に移ってもらっています。もちろん、グレース様の誕生は知らせてあります。父親の事は隠してますが、会える日を楽しみにしていると思います」


 レノミンの記憶が少し蘇ってきた。


 ダリアは、レノミンにとって、お母さんと一緒で乳母だ。


 そして、なぜかレノミンは、会いたいと思っていた。



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