はなし始める宰相
第18章
カタクリ国一行と宰相は湖畔の別荘に到着した。
今日はグレースも学校を休んでカタクリ国王の歓迎式に臨んだ。
コチャ領の領民たちは、そのあまりにも立派なカタクリ国の行列を見て度肝を抜かしたが、事前にグレースが王女と名乗り、現在は、国王と皇子も湖畔の別荘に滞在していると、通達していたので、震えあがるようなドキドキ感はなかった。
到着した一行を国王とレノミン、グレースが迎える。
馬車から降りるとすぐにレノミンとグレースに抱き着いた。
「ナナ・・・・・・」
「カタクリ国王、私たちのコチャ領土に歓迎します」とグレースが領土の花で作ったレイを国王の首にかける。それは昨日レノミンと二人で作った物だ。
カタクリ国王は何度もグレースにキスをしてグレースは無邪気に笑う。
レノミンとココ王女は本当に似ているが、グレースとナナ王女も瓜二つでそっくりだった。
なんの疑いも国王は持たなかったし、国王の周りの幹部クラスの人達も認め、ふたりに敬意を払った。
国王が前に出て挨拶をする。
「お久しぶりです。国王・・この度は我が国の為に、わざわざ、ご足労いただきありがとうございました」
二人の国王が握手をした瞬間に大きく花火が鳴った。この花火はサンドロに思いっきり上げてもいいと、バルトが許可したもので、一斉に上がったと思えば、順番に上がり、湖畔だけではなく、カタクリ国との境や学校の校庭、至る所で上がり、領民にカタクリ国王の歓迎を知らせた。
グレースが
「私の誕生日の100倍位、花火が上がっている! 」とカタクリ国王に、グレースが話すと、国王は、デレデレして本当に嬉しそうだった。
「長旅でお疲れでしょう。こちらに食事が用意してありますので、どうぞ・・、宰相も、ご一緒にいかがですか?どうぞ・・・」
トップ会談は食事をしながらの予定を組んでいたが、カタクリ国王の、たっての願いもあり、レノミンとグレースも同席することになった。
今回の為に、屋敷からの従業員をある程度、別荘に移し、屋敷はまだ『食いしん坊の妃とネズミの館』がオープンしていなかったので、カタクリ国の人の為にそこは開放して歓迎した。
それでも人では足りなかったが、一行の中には食事を作る人もいる様で、取り合えず、厨房に食料を沢山用意しておいた。
カタクリ国の宰相も加わり、6人での昼食会となった。
カタクリ国王はレノミンを見て、少しだけ目を潤ませて、
「君には、本当にすまない事をこの国はしたね。---しかしながら、今日のこの日を持てた事は、本当に嬉しいと思うよ。君の母親は病気がちで、我が家の遺伝子に問題があるのかとも思っていた、我が国の王室の女性はすべて短命なんだよ。グレースの様に健康な女の子を見たことが無い。グレースは明るくて、美しい・・我が国に連れて行きたい位だが、イヤ・・ここで健康に暮らした方がいいだろう・・もう、誰もこの世から消えて欲しくない・・・」
「カタクリ国王、私は、こんなに元気でもエミリオはまだベットにいるの、キャンディに毒が入っていて、本当に死にそうだったのよ。顔色が悪くて、でもね。ダリアの人参を食べて少し元気になったの、私は元気だから人参を食べなくてもいいの・・・良かったわ」
「----グレース、もしも、良かったら、おじい様と呼んでくれないか?本当は大叔父だけど、我が家は、女の子が存在しないので、そう呼ばれると嬉しい」
グレースはニコニコして
「おじい様! 」と呼ぶ。
「おじい様、後でエミリオにも会って下さる?エミリオは、本当はもう大丈夫だけど、まだ、寝ていたほうがいいって、ミンクが言うから・・・この美味しいお食事もまだ食べられないの・・」
「勿論だ、君たちにお土産もあるから後で会いに行こう」
「はい、おじい様、ふふふふ」
「お土産、嬉しい・・・ふふふふ」
グレースが、殆どカタクリ国王の相手をしていて、雰囲気は和やかだと言える。カタクリ国王は、この場に、二人が同席したこともあり緊張した話はしない、
「キース国王に聞きたい事があった、君はハナ国で金山を簡単に見つけたと言ったが、君には金山を見つける能力があるのかね?」
「あれですか?本当に偶然です。ハナ国のシン国王が発展が著しい領土に案内して下さって、そこが急激に発展したのは、領主の力もあるが、地震が発生して温泉が湧き出て、地形の変化が起こって、災害を転機に変えたと話して下さり。その場所を見て回った時に、川面にキラキラ光っている砂金が見えたのでもしかして?と思い、川を辿って行きました。何故か、そこは国王も立ち入り禁止の場所だったので、ここの領主はすでに金の採掘を行っているのですねって、お話しました」
「それで??」
「その後は、時間の関係で国に戻りましたが、その後に、シン国王より連絡を頂き、金山だったと言われました。その領土は違う鉱石を発掘していたみたいで、大変、感謝されました」
「その時に、ハナ国の前宰相が、こちらの国に粗悪な鉱石を送っていたことを知り、謝罪がありました。
その取り決めをしたのもあなたですね。ドント宰相。知っていたのですか?粗悪品と?結局はあちらの宰相も死亡していますが、真相解明にはまだ至っていないのが実情です」
「お父様、」
レノミンはグレースが会話に参加することを止めようとしたが、国王は首を振り、参加を認める。
「お父様は、ハナ国で金山を見つけて、この国にはないの?」
「それはわからない・・・この国が、見つける努力をすれば見つかるかもしれないし、もっと、いい物が、この国にも眠っているかも知れないから・・」
「はい、わかりました」
レノミンは急いでグレースを連れて席を立ち暇を告げた。
カタクリ国王は
「君は柔軟な考えで素晴らしい、あえて、グレースの意見を聞いたんだ」
「ええ・・子供はある時、大人に大切な物を、気づかせてくれることがあります。エミリオもそうでした」
「ふむ・・・」
「さあ・・・キョトンとしているドント宰相、話してもらいましょうか?私たち関係は御覧に入れたように良好です。娘の遺体もすでに我が国に眠りました。あなたはこの国を、また、その他の国をどうしたかったのですか?目的は何だったのでしょうか?病気で眠っていたナナ王女を連れ去る必要はなかったはずです」
ドント宰相はこの2日でめっきり老けた。目も虚ろで焦点が定まらない、それでも、語気はしっかりして、話し始めた。
「今は7月で、ここはサンシン国、キース国王と、カタクリ国王と、宰相と、私が、コチャ領の湖畔の別荘で話し合いを持っている。二国間に起きた過去の事の説明を聞きたいと、どうですか?私は正常です。気が狂っていると思わないで聞いて頂けますか?そうであれば話します。過去の話と未来の話」
他の3人は目を丸くして唾を飲み込んだ。そして、頷いた、それは、ドント宰相が初めて見せる真顔の表情だった。
「グルガシ国の海の向こうに、S国と言う国があります。このS国に4国は侵略されて、すべてを失います。---近い将来ハナ国とグルガシ国は、戦争状態に入ります。なぜ?そうなったのかは、その時こちらもカタクリ国との攻防戦で、両国を、気にしている場合ではなかったのでわかりません。我が国と、カタクリ国の戦争の起点となったのは、ナナ王女でした」
「------」
「どうして?」
「どうして?・・ナナ王女は、あなたのご両親にとっては、目に入れても惜しくない程の存在でした。違いますか?」
頷く、カタクリ国王・・・
「カタクリ前国王は、どのような理由であったかわかりませんが、ナナ王女を治す方法をこちらに求めたのです」
「言っている意味がわからない・・・どうしてそんな要求を他国にする必要がある!!」
「私は妄信だと確信していました。しかし、占い師の話を信じて、この国を脅かします」
二人の会話を少しだけ聞いたキース国王は頭を抱えて下を向いた。
(きっと・・・霧だ! 霧、霧の事を、誰かが密告したんだ。霧以外、考えられない・・・いや~~! ドキドキする。胃痛だ。)
そんな様子を見た3人は、
「あるのかね?」とカタクリ国王が聞く、
「いや~~~、すべての話を聞いてから答えます」
「??????」
「人参か?」
そこは、キッパリ、 「違います!」




