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カタクリ国が動く

第16章

 国王とレノミンは、エミリオの寝ている部屋で、グレースに自分たちのことを話した。


 「国王はグレースのお父様で、エミリオは私のお兄様なの?---どうして、今になって、こちらにいらしたの?」


 「それはね、エミリオがとっても重い病に罹ったのと、国内が、これからすごく大変になるから、少し避難させてもらうつもりです」


 「国はどうなるの?戦争とかになって、多くの人が死んじゃうの?」


 「そうだね・・悪い人はいなくなって、いい国にする為に僕は少し荒療治をしようと思っている」


 「荒療治??」


 「良くするためには、悪いものを体内から出さないと治らない・・国から悪をだして、もっと、いい国にしたいと考えている」


 「う~~ん、どの位、こちらにいらっしゃれるの?エミリオと一緒に学校に行ける?」


 「そっか・・エミリオは、今まで学校に通ったことがないから、グレースは色々教えてくれる?」


 「もちろん! ティアとシルキーも一緒だから大丈夫よ。でも侍女が必要だから、エミリオの侍女はどうするの?」


 「ダリアにお願いするつもりだ」


 「そうなの?後、お父様・・・エミリオと私は同じ誕生日だから、私をお姉さまにして下さらない?」


 「どうして?」

 「私、お姉さんって、エミリオに言ってあるから・・今更・・・お兄様なんて・・ちょっと・・」

 「それがグレースの願い?」

 「うん、お願い」


 「それなら、エミリオは弟にしようね」

 「本当?」


 「いいよ、レノミンさんはどう?」グレースの輝く目を見て、到底、ダメとは言えない。


 頷く、レノミン・・・

 「本当?嬉しい・・・ありがとう、お父様!!」

 (なんと、甘いのだろう・・・)


 ダリアがやって来て、エミリオに少しでも食事をさせるつもりらしい、


 「レノミン様、ベットに入って少しエミリオ様を支えてあげて下さい」


 レノミンは、そっとベットに入ってエミリオを支える。少しの水分でも取ってほしいと思っている。


 「エミリオ!起きて食事をしなさい。いつまでも寝ていてはダメヨ!」とグレースが言うと・・


 その声に少しエミリオが反応する。だんだんと目が覚めて行く。


 「グレース?グレースの声がする・・・僕・・死んだんだ・・」


 「エミリオ、何、言っているの、エミリオが私の家に来たのよ」


 国王、レノミン、ダリアは本当に喜んだ。感無量で二人の会話を聞いている。


 「グレース、グレースの誕生日に、キャンディを送ろうと思って、その前に毒見をしたら・・毒が入っていた・・・グレース、やはり、キャンディは食べない方がいい・・・死にたくないなら・・」


 「それなら、今度はわたしがお姉さまとして、毒見をしてあげる。ご飯は食べられる?」

 「うん、お腹が空いたよ・・・」


 「お母様、エミリオを甘やかしてはいけないわ、支えなくても大丈夫?」

 「ダメかも、まだ、くらくらするから・・・」


 「じゃ、ダリアが支えて、お嬢様がエミリオ様に重湯を少しづつあげて下さい。お姉さまとして・・」


 グレースは人に食べさせるのは初めてで、手が少し震えていたが、そこはお姉さまと言うプライドで乗り切り、その様子を見て、ダリアはまた泣いた。国王とレノミンの目にも涙が溢れ、グレースは不思議そうな顔をして皆を見ていた。


 その後、エミリオはまた眠りについたがグレースはその部屋を離れることはなく、ダリアとシルキーやティアまでも静かにエミリオに寄り添った。



 バルトが王都の状況を把握するためにサンドロを王都に派遣した。


 サンドロからの情報では、王都に変化は現れていないが、国境に行かされてギシはカタクリ国の兵の多さに驚いていた。


 何万の兵士がすでにそこには控えていた。カタクリ国の本気度がわかる。


 王宮の偵察に指名されたジャルは高い位置から観察している。


 「王宮には一応、上層部が集まり話し合いがもたれた模様です。しかし、こちらからの兵士は国境に向かいましたが、みるからに弱々しい感じで、あれでは戦争になりません・・・」


 「カタクリ国は、王都に入ることを躊躇っているご様子で、国境での話し合いを望んでいます」


 「こちらは国王が不在というカードで、会談を引き延ばす予定です」


 「皇子死亡と発表を、軽々しくしたことが、今になって自分の身に帰ってきているとは誰も思っていないのでしょうね」


 「いままで、コチャ領のことに目を向けていて、国全体を見ていなかったとは言え、本当にお粗末な上層部たちですね。これからどうするつもりでしょうか?」


 「多分、エミリオ皇子は偽物だと、カタクリ国に伝達するつもりでしょう」


 「それではナナ王女とココ王女の件で話がしたいと、きっと申し出があり、ココ王女の遺体確認を要求するでしょう」


 「しかし、ご遺体はすでにカタクリ国にお帰りになってますよね」


 「はい、それが、カタクリ国の国王の願いでしたから・・・わかっていたのですよ。ご自分の娘の寿命を・・・それでも、自分の父親の為に、こちらに嫁いで来たカカ王女は、素晴らしく勇気がある女性でした。カタクリ国にとってナナ王女が居なくなったことは黒い闇です。王室すべての後悔の闇です。


 それをどうしてもご自分の手で、解決したいとカタクリ国の国王はおっしゃっていました」


 「今日、グレースとエミリオを見ていて思ったのですが、互いに思いやり一緒に育ち、一人は病弱で、なんだか本当にカタクリ国の国王と王女のようで・・・もしも、グレースの目前で、痩せたエミリオがいなくなったら・・・グレースはどうするのだろう・・・と・・・」


 「もちろん、きっと、何があっても探す」


 その場にいたすべての人は、言葉にならなかった。もしも、そんなことがあったなら、生涯をかけて、グレース様はきっと、エミリオ様を探すことが明白だった。


 「ジャルから電話があり、こちらから宰相たちが出発しました。近衛兵たちが周りを囲んでいます」


 「王都の人達には警戒の鐘が鳴らされました。しかし、緊迫した雰囲気がありません」


 「多分、国王が皇子を殺したとか、報告するつもりでしょう・・・自分たちさえ助かればどの国にも平気で嘘をつく、だから、周りの国と僕は、この国を潰すつもりだった。君たちに会うまでは・・」


 「カタクリ国の国王の要求はただ一つだけ、ナナ王女が、どうやってこの国に連れて来られて、どんな扱いを受けたか、主犯は誰で、実行したのは誰?そして、なんの目的で病弱の王女を連れ去ったのか?真相解明!そこにはもう嘘はいらないとおっしゃっていた」


 「------」


 「本当にわかるのでしょうか?」


 「僕も調べてみたが真相にはたどり着かない・・・しかし、その時の国王は、すでに亡くなっているが、宰相は現在も一緒だ。悪の根源はすべて彼から始まっている。当時は国王より力があったのではないだろうか?」


 「その宰相は、この国をこんなに貶めて、ご自分にはどんな利益があるのでしょうか?」


 「国が衰えて、国が滅びるとなぜ?宰相の利益につながるのか?それでも国民の中には、やはり、血縁と言う文字が深くしみ込んでいます。貴族でも宰相でも国王になるには、法律を改定しなくてはならない、違いますか?」


 「例え僕がこのまま死亡しても、きっと、貴族たちは国王にはならない、いや、なりたくない?のか?代わりの誰かをその座に据える?」


 「国王を、お育てになった方は、どのような方だったのですか?何か国王に情報を残してませんか?」


 「------」


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