外交
第14章
夜明け、周りが薄っすら明るくなって、霧で50cm先も見えない、そこには人がいるのに、存在していないように・・・レノミンはデタラメな子守歌を口ずさみエミリオを抱いて何時間も立ったままだった。
座ってもきっと大丈夫、しかし、子供は立って寝かすが癖になっているのか、エミリオの為に、今は立っていたい。自分に出来ることが限られているから・・・
「うぅぅぅぅぅl・・・・」と初めてエミリオが声をだした。
「エミリオ?どう?エミリオ?」
「レノミン様、こちらに皇子を寝かしてください」いつの間にかレノミンの近くにベットが運ばれて、ミンクが見えない霧の中で診察する。
「ええ・・・え、呼吸が安定してきました。脈もあります。熱はまだありますが、峠は越えたでしょう」
ふーと、レノミンはその場で気を失った。その後の大騒ぎは、ミンクとジャルから聞いた。
「お目覚めですか?お茶の用意が出来ています」
びっくりして起きる。
「エミリオは?どこ?」
「別荘の特別室でお休みです。安心できる状態です」
「あの後、結局、ベットでお休みなったのはレノミン様で、レノミン様の後を国王が引き継いで、皇子を抱きながら朝を迎えました」
「国王には、もう大丈夫だと、お伝えしましたが、もしも、後遺症が残ってしまう事を恐れてそのままずっと、霧の中で抱いていました。その後、霧が晴れて、みんなで別荘にもどりました。心配しましたよ。皇子もですが、私たちは・・・レノミン様が霧に吸い込まれて行きそうで・・・倒られた時には本当に心配しました」
「そのままでいた方がいいのか?わからなかったのですが、私たちも霧に賭けました」
「そして、勝ちました」
「レノミン様・・・国王は本当にエミリオ皇子を大変、愛してるとわかりました。父親の愛情が溢れていました」
「グレース様は、まだ、エミリオ様の事を知りません。今日はレノミン様の事を大変心配して、学校に向かわれました」
「ティアが何度も何度も説得して、お母様を休ませてあげて下さいって、昨日はとても疲れたのでしょうって、学校に行かないと学校のお友達も心配しますよ・・・とあの手、この手で説得して、向かわれました」
「グレース様にとって、レノミン様が病気になられるのは初めてで、私たちも元気のないグレース様を見たのも初めてでした。ですので、お食事をたくさん召し上がってくださいね。体力をつけて、それからエミリオ様に会いに行きましょう」
レノミンは頷いた。
トントン、
「どうぞ・・・」
レノミンはそっとドアを開けて、顔だけをだして、部屋の中を確認する。国王はエミリオの近くの椅子から立ち上がり、
「昨日はありがとうございます。おかげでエミリオの命が救えました。大変、感謝しています」
「エミリオの顔を見てもいいですか?」
「どうそ、こちらです。着替えは家令の方は息子さんの物を用意して下さり、助かりました。後、自分のも・・・スイマセン・・」
レノミンはそっと顔を覗き込む、
「グレースとは似ていないわ・・・」
「二卵性だったのでは?」
「----双子だと知っていましたか?」
「宮殿の医者があなたのお腹が双子のように大きいと話しているのを聞いたことがあります」
「・・・しかし、皇子は一人でいいよな・・・とも、聞きました。グレースは1歳年上としていましたが、こちらの領ではエミリオと同じ年なんですね。ありがとう、子供の間違いを正してくれて、グレースを育ててくれて、ありがとう」
レノミンは黙ったままじっとエミリオの顔を見ていた。
トントン、家令が部屋に来て、
「国王、よろしいでしょうか?」
「レノミン様。エミリオ様の事をお願いできますか?」
レノミンは頷いた。
「エミリオ、6歳の誕生日に酷い目に遭いましたね。もう大丈夫ですよ。早く良くなってください」
別室で6人と国王は話し合う、
「王都では皇子が亡くなって、国王は気が狂ってどこかに消えたと噂になっています」
「そうなんだ・・・意外に正確な情報を流したんだ・・」
「国王はこれからどうなさるおつもりですか?」
「----君たちが心配なのはこの国?この領?レノミン?グレース?それとも自分?」
「君たちは、レノミンさんの事を、本当に大切に思っているのが、昨日から接して理解できたと、思っています。だから、僕はこの別荘には迷惑な存在だとも・・・しかし、少しだけ、エミリオの為と思って、ここに置いて欲しい・・・問題は、解決できないかも知れないが・・・3人を泣かしたくない・・」
「電話を貸してもらえますか?」
「どうぞ・・こちらです」
「---もしもし、シン国王ですか?キースです。お久しぶりです。はい、はい、その通りです。そちらにも伝わりましたか?はい、お願いします。一切の輸出と輸入を止めて下さい。はい、ええ、入金はありました。助かります。はい、よろしくお願いします」
「・・・どちらに電話を??」
「ハナ国のシン国王に、ハナ国からの輸出入を、僕の許可なく行わないって、決めてあるから、僕が消えたとなれば、止まるでしょ。僕は国内は全然ダメだけど、外交は上手くいっている。カタクリ国とも、今はいい関係を保っている。本当の王妃は、すでに亡くなっていて、遺体はカタクリ国の国王のもとに送ってある」
「まあ、それには理由があるのだけどね」
「国王は、信頼できる部下はいらっしゃらないのですか?」
「うん、いない!!あそこは腐った洞窟だと思っているから・・」
「失礼を承知でお聞きしますが、ハナ国は、国王をそんなに信じてくれているのですか?」
「あっ、そこ?うん、多分、ハナ国に行った時に、シン国王は教えたんだよ。金山があるよ!って、彼も素敵な人で信じてその場所を掘り始めたんだ。そしたら・・・」
「そしたら、見つかった!!」
「えーーーーーーっつ!! 」
「君たちには、本当は場所とかも教えたいけど、もう少し時間が欲しい、でも、金山が見つかった時に、条約を結んであって、生産量の1%を僕に入金してくれることにしてある。その1%は、金のままでもいいようになっているし、エミリオやグレース、レノミンの信託にも替えてある。だから、当分はお金に困らない・・・ここに、しばらく、置いて欲しい・・・!!」
「本当はハナ国にエミリオと一緒に亡命するのが願いだったけど・・・グレースやレノミンもいるし、国王として、それはどうなのかとも思って・・・いる」
6人は心の中でこの国王・・バカなのか優秀なのか、見極めができないと思っている。
「------」
「そうそう・・彼女、レノミンって、無口だよね。いつもあんなに大人しいの?」
家令が一歩前に出て、
「レノミン様はこのコチャ領に於いて、すべての面で素晴らしいお方です。いつも、適切に判断をなさって、私たちを導いてくださいます」
他の5人も少し怒った顔をして国王を見ている。
「いや、話したのは、2言3言で・・・普段からそうなのかと思って・・怖がらせるのもイケないと思って、一応、聞いておこうかなぁ~~」
「ううん(咳)、エミリオ様はまだ1週間以上はベットでの生活になります。グレース様は、今日は大変お母様を心配しておられました。ご対面はいつになさいますか?やはり、エミリオ様がお元気になられてからがよろしいですか?」
国王はしばらく下を向いて考えていた。
「---それは、レノミンさんと、少し話をして決めたいと思っています。母親の意見が一番正しいと信じて・・・」
「ええ、そうですね。わかりました」
「国王! 」
「はい」
「私たちはレノミン様とグレース様、そしてエミリオ様の為に何でも差し上げる覚悟はつねに出来ています。彼ら3人が安全にコチャ領で暮らせるのであれば国王のお手伝いもこちらから願います。ですので、今後のご予定があれば教えて下さい」
「うーーん、これから、カタクリ国に電話して、エミリオの事を報告する。報告するまでもなく、こちらの事は筒抜けなんだけどね。そうなると、戦争が起こると思う。カタクリ国の国王はエミリオの事、溺愛しているから・・・理由はね。レノミンさんって、きっと、王妃の従妹だと思うよ。そう・・カタクリ国王にとっては、エミリオは本当の身内だから・・・」




