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初等科とファースト家

第11章

 グレースは初等科に入学した。


 初等科からはお付きに侍女の同行が認められ、シルキーが毎日グレースにお供する。


 ティアは初等科の同行がNGになり、グレースは大変、遺憾を表したが、少し周りにも目が向けられるようになり、自分だけが特別なのが、恥ずかしいお年頃にもなっていた。


 レノミンは昼間、少しずつ領主としての勉強も始めた。


 主にギシが領土の隅々までのことをレクチャーして、バルトはいつものように財務担当・・・お金、お金、お金・・・・。


 その中での話題は町中にある屋敷についてだった。

  

 レノミンがコチャ領に戻ってから、一度も帰っていない屋敷は、使用人たちが管理しているが、今後はどうするか・・???


 「レノミン様のお考えはありますか?」


 「---私としては今更、屋敷に戻るのはちょっと・・・いいかなぁ・・と思っています。でも、屋敷の侍女の方や他の使用人の仕事がなくなるのは、ちょっと、困る・・・と思います」


 「その事でしたら、徐々に工場や本の製本の仕事に移動が可能です。屋敷の後はどうするかが一番の問題ですが、あの屋敷は代々の領主様がら受け継いだ屋敷でいらっしゃる。それを壊すことは領民に不安を与えると思います」


 「しかし・・・今・・・絵本の作者を探して、この領内を訪ねる旅行者も現れました。Ⅼ葉さまが、BL王と同一人物だとバレることが、一番の注意点になって来ています」


 「そうですね、最近は皇子も、さすがに、絵本を読んで欲しい年ごろではなくなって、電話も減り、グレース様のコントロールも必要なくなり、一安心でしたのに・・・・一難去って、また・・・」


 「すいません・・・」


 「とんでもありません。大きな領土の事業です。私たちの事業が何だか小さく思える程の・・」


 「提案ですが・・・屋敷の1階を『食いしん坊の妃とネズミ』のスペースにしてはどうでしょうか?」


 「どのようにですか?」


 「観光にいらっしゃる人が、そこに訪れるように誘導するのです。探して、探して、疲れて、コチャ領を回るよりも、すでに出来上がった場所でネズミたちに会って、または緑色のスープやチーズをご馳走して、なんとなく、満足して帰っていただけたら、コチャ領の為に、なるのではないかと考えました」


 「いいですね。それ・・いいです。さすが、です。レノミン様!!!」


 「1階だけなら、お父様の物が、傷つけられることは無いとギシが教えてくれました。2階、3階はご先祖様をお守りしながら、屋敷の維持の為、スペースの為、使用人にも働いて欲しいです」


 「具体的にはどのようなものを陳列しますか?」


 「そうですね、ぬいぐるみは出来るだけ配置します。後は絵も、手書きの物も小さいものであれば私自身が描いて販売可能です。カフェやレストランを併設するのであれば屋敷の料理人の方とか、別荘の方の方とかと相談して提案お願いします」


 「後は、庭がとてもキレイだったので、庭も公開してはいかがでしょうか?領主ばかりが立派な庭を楽しむのは・・ちょっと・・・・」


 「はい、いい案だと思います」


 「後・・・・・・今から工事を始めたら、丁度、オープンの前、グレースの6歳の誕生日です。学校も始まり、お友達も増えるでしょう。幼稚園までの特殊な警備で、周りはきっと面白くないと感じていると思います。初等科の同じクラスの子供たちを招いて、この際、グレースの身分を公表してもいいですか?」


 「グレースには、いつまも別荘に籠って暮らして欲しくないのです。あんなに明るい子供・・そんなにいないと思って、クラスに馴染んでお友達も作って欲しくて・・・」


 「・・・実は私たちも今度の誕生会でグレース様を社交界にデビューさせるつもりでした」


 「勿論、いいです。やりましょう。グレース様がきっと喜ぶ企画で演出します」


 「屋敷と庭を使用するのであれば、同じ学年のすべての子供たちを招待できます。侍女たちを連れてくるお子さんも多いと思いますが、クラスではなく学年ではどうでしょうか?」


 「なるべく、大勢の子供たちに領主の娘だと理解させましょう」


 「後、今回、オープンに当たり、不都合な事、不便な事などを浮き彫りにさせるチャンスでもあります。化粧室は子供サイズも作って、テーブルや椅子も小さめに、それに、庭も楽しめるよう安全な庭に・・・・出来ることは精一杯、グレースの為にしてあげたいです」


 「日頃、グレース様に、不満を持っているような子供たちに、納得してもらえたらいいです。グレース様は次期、領主になられるお方で、学校が滞りなく運営されているのも・・・レノミン様がこんなに頑張っているからだと」


 「そんなことないです。グレースが、毎日楽しく学校でも家でも過ごして欲しいだけです。このまま、永遠に、それだけが願いです。皆さん、よろしくお願いします」


 レノミンのこんなに固い決心を、聞いたのは初めてだ。どんなに娘を愛しているか周りの使用人たちは理解できている。レノミンの願いは、全員の願いと一致している。最善の道をいつも選んで準備をおこたらない。



 『食いしん坊の妃とネズミの館』はグレースの誕生日の1週間後にオープンが決まった。


 誕生日の招待状は、1ケ月前に学年全部の生徒に配られて、その日からグレースの周りには、この館のことを聞きに来る子供で溢れた。


 「Ⅼ葉様はコチャ領にいらっしゃるのは有名なお話だけど、もしかすると、領主様ですの?」


 「領主様はあなたのお母様ですの?」


 「だから、あんな素敵なティア様が、幼稚園の時に、いつも一緒にいらしていたの、知らなかったワ」


 「知っている?ティア様って、すでに最高学年の終了試験をトップの成績で取られていて、それはそれは優秀ですのよ。でも、代々、ファースト家の家令を務める家系らしく、もうすでに道は決まっているの・・・」


 「だから、あなた??ファースト家の??」


 「ええ、グレース・ファーストです」


 「!!!!!! 」


 「そうなんだ・・・・」


 「お母様が言うには、今回のお誕生日会には、凄いプランがあるらしいって、噂だけど、どんなご様子ですか?楽しみですね。羨ましい・・・。そのように大きなパーティー、今までなかったでしょ。前領主様が亡くなってからは、他の家でもそんなにパーティーが開かれなくて、両親たちも、今から、とっても楽しみにしているのよ」


 「ーーー私の誕生日パーティーですが・・・ご両親もいらっしゃるの?」


 「もちろんよ。今、町の仕立て屋は大忙しで毎日、行列が出来ているらしいわ」

 「どうして?」


 「あなたのお誕生日会に、行くために決まっているでしょ! 両親なんて、この学年で本当に良かったって、泣いて喜んだのよ。その日は、Ⅼ葉様も、お出でになるの?本当に、お会いしたいわ・・・」


 「私もワクワクしてもう何日も眠れないし、勉強も手につかない・・・」


 「ヤダー、私も・・・特に勉強の方が全然・・・あっ! いつもだった・・ワッワワワワワ・・・」


 そばでグレース様たちの話を聞いていたシルキーは、頭の中で警戒のベルが鳴りっぱなしだった。

 

 招待状には子供の名前しか記載されていないはず・・・その家すべての人を招待したはずはないのでは・・・・?


 早く、報告したい。こんな時にティアが居てくれれば・・・・


 その後、授業が始まり、侍女は廊下にでる。廊下の一番隅にシルキーが立った瞬間、空からジャルが降って来た。


 「招待客はその子の両親やその他も同行するらしい・・バルトに伝えて!」


 「OK!!多分、想定内だと思うけど、一度、別荘に戻ります。グレース様、危険が一杯だから警備を増やしてあるから心配しないで、しっかり、守って下さい。じゃ!! 」


 ひらりと、いつも通りいなくなった。しかし、何て図々しいのかとプンプン怒っているシルキーだった。


 グレース様が、ファースト家を初めて口にした日、学校の周りは緊張に包まれた。


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