色物
第10章
こちらの心配をよそに二人は時々、電話で話をする仲良しになった。
レノミンは色物の創作にとりかかった。バルトはお金になる事には、何でも協力してくれる。レノミンがいつも疑いの眼差しでバルトを見るが、
「レノミン様、レノミン様も含め、私たちは優秀です。お金のことは、そんなに気にしないでください。今の領土は大丈夫です。領土から色々な物を各地へ売りに出し、こちらも領土の為になる物を仕入れています」
「もしも、お辛いのであれば、出版事業は撤退しても、ぬいぐるみの方が残りますので、別荘のすべての人は養えます。言い換えれば、すべての人を一生、養えるほど儲かりました」
「---私・・あまり話せないと、思っているの・・でも、文章を書くときはスラスラ言葉が、出てくるの、好きなことで領土の為になるのであれば、領主として、少しでもお役に立ちたいと思っています」
バルトが参考書を貸してくれたので読んではみたが・・・・これはちょっと・・・自分では無理だと思い、性描写を抑えたBLにし、ソフト路線で、せつなさに重点を置いて、バルトに渡した。
バルトは今回の出版に当たり、相当こだわりを見せた。前回の情報漏洩を気にしていた。
今回は出版の委託は取らずに印刷から製本までコチャ領で行い、販路の開発には独自のルートを使った。
それは、レノミンが言った、若い女子が読めるような色物・・・がヒントとなり、思いっきり、ターゲットを絞った。最初の半年は音沙汰がなかったが、徐々に口コミによって、王都の学生の間に広まって行った。
「レノミン様、初刊から半年が経ちますが次巻はどうなりましたか?」
「一応、1巻で終了してもいい感じに終わらせてますが、続きも出来上がっています」
バロンには恥ずかしいので、別荘の人には言わないでって、念を押したのに・・・またまた、どこから漏れたのか、今では、別荘の使用人の女性たちは次巻を楽しみにしている。特に・・・ダリアとシルキーはあからさまにのぞき見している。
「レノミン様、2巻目が発行されるのですか?私たちも大変長く待ちました」
「---物語は、最後がわかってしまうと、もう価値がなくなってしまうと思うのよ・・だから、例え、身内でも教えられません」
「えーーーほんの少しだけでも、お願いします。気になって、気になって仕方がありません。誰にも言いません!! 」
バルトがやって来て、
「今回は、王都で先行販売になっていますので、コチャ領で販売されるのは1ケ月後です。しかし、レノミン様用に数冊ご用意はできますが、レノミン様がお二人にお貸するかは・・どうでしょうか?」
「そうですね・・・お二人には出来上がって、手にしてから渡します」
「今回も挿絵とかは一切なく、表紙も花と水だけの絵ですか?」
「はい、挿絵は今後もありません。想像の中の物語ですので、表紙は今回もシンプルです」
「でも、色物には挿絵があって、当然と思っている人が多いと思いますよ」
「それは、本当の色物で・・・・私のはソフトですから・・・・」
「でも、レノミン様が描く二人はどんなイメージなのか・・・読者としてはとっても気になります」
「読者のイメージを、作者が、勝手に描くことは良くないと考えています。だから、お二人は、お二人で好きな男性でイメージして下さい」
「でも、色物ではぬいぐるみを作れませんね・・・レノミン様が好きな・・儲けが・・・」
「そうですね。でも、今回は、本にオマケが付きます」
「??????」
「オマケって、何ですか?」
「女の子がちょっとバックの中に入れられるバックです」
「バックのバックですか?」
「はい、すでに工場では生産されています。もしも、工場の方で、どんなバックなのか外に漏れた場合は、工場は解散すると彼女たちには話してあります。今回は色んな意味での勝負になるでしょう」
「そんなに大変な・・・事なのですね。---私たちも我慢しましょう」
「1ケ月後にご購入されますと、オマケも付いてきますよ」
「---レノミン様、バルトに似て来ました」
「ハハハハハハハ・・・・」
ついに、2巻が発売された。前回もそうしたが、本屋での発売ではなく、新聞や花を置いてあるような往来の多い売店での販売にした。コアな読者はきっと毎日、この道を通り、チェックしているとバルトは考え、そこにはパンやお菓子も置いてあるので学生も良く利用している。パンのついでにソフトBLも購入可能だった。
王都での売店は5ケ所にした。それはもちろん5人が近くでマーケティングを行い、販売量、時間、性別、年齢などのチェックを行う為の5ケ所だった。
待ち合わせは、お昼時の、一番大きな売店の近くのお店だった。
「どうだった?」
「スゴイよ、今日の売店の売り上げは今年一番だって、オヤジが言うくらいだから・・」
「このまま、学校が、終わった頃には、争奪戦になりそうな勢いだけど・・売り切れにはならないのか?」
「5ケ所の近くの倉庫に、用意は出来ているがもう一度、納入するタイミングが微妙だよな。一度、売り切れにして、じらすか・・・今日のうちに売れるだけ売るか?どっちにする?」
「バルトはどう思う?」
「こんな事、初めてだからわからない・・・・判断がつかない・・・情けない・・」
「もしも、売れ残っても都市部で待っている読者も沢山いる、すべてを一気に売った方が良くないか?」
「---そうしよう。昼過ぎに一気に積み上げて、売ろう! 吉報を持ってコチャ領に戻りたい」
「うん! 」
それから、5ケ所全部で、次から次へと商品を並べて、売り、並べて、売るを繰り返し、倉庫の在庫は8割がなくなった。
王都での販売が、後、2割になったので売り上げを持って、早馬でコチャ領に向かった。
5人はくたくただったが、こんなに嬉しいことはなかった。レノミン様の喜ぶ顔が見れることが5人には何よりの達成感だった。
ミンクが馬に乗りながら、
「自分の売り上げより、最近は、レノミン様の事業が成功することに、意義を見出している。こんなに嬉しい事は生きていて初めてだと思う。幸せって、もしかするとこんな感じなのかなぁ・・」
「家族がいない僕たちに、家族の感覚をレノミン様は教えてくれているようだ・・・」
「変だよね。急いで帰って、レノミン様の顔が見たい。子供でもないのに褒めて欲しいなんて・・」
「---それ、グレース様だよ・・・ハハハハハハハ・・・・」
別荘に着いて、レノミンに報告する。
「王都での販売は完売と考えていいでしょう。後は地方に向けて徐々に売り出します」
「良かった。何もなかったの?みんなが無事で戻った事の方が嬉しいです。ご苦労様です。ありがとう。これで、グレースも学校に上がれますね。良かった」
「------」
「レノミン様・・・あの学校の理事長は、レノミン様ですよ。領主ですので・・次期理事長は・・」




